IEO(アイイーオー)は仮想通貨を用いた資金調達の手法の一つです。今後日本でも広まっていくと予想されており、投資家や企業の注目を集めています。IEOの仕組みやICO(アイシーオー)、STO(エスティーオー)との違い、メリット・デメリットについて解説します。

有名なIEOの資金調達例や傘下の流れも解説するので、ぜひ参考にしてください。

IEOとは

(画像=PIXTA)
 

IEO(Initial Exchange Offering/イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)は、仮想通貨を発行して資金調達する手段の一つです。大枠でいえば、株式投資におけるIPOの仮想通貨版と考えると分かりやすいでしょう。

株式投資におけるIPO(Initial Public Offering/イニシャル・パブリック・オファリング)は、日本語で「新規公開株」と呼ばれます。具体的には、企業が証券取引所に上場し、誰でも株式を購入できるよう売り出すことです。投資家が企業の株式を購入することで、企業は多額の資金を調達できます(正確にはIPOでは株式を買う権利を抽選で手にすることになりますが、ここでは簡略化して説明しています)。

仮想通貨においても同様です。企業が新しい仮想通貨を発行し、投資家が購入できるよう公開することで、企業は資金を調達できます。

ICOからIEOへ

IEOを理解するには、IEOより前に登場したICOについて知っておく必要があります。続いて、ICO市場が急拡大し、詐欺事件等の影響で縮小し、IEOが登場した経緯について、解説します。

ICOの登場と急拡大

IEOが登場する前、最初に登場したのはICO(Initial Coin Offering/イニシャル・コイン・オファリング)でした。ICOは、トークンセールと呼ばれることもあります。

ICOでは、企業がプロジェクトの目的や方針、資金の使い道等をホワイトペーパーにまとめてインターネット上で公開し、仮想通貨を発行します。プロジェクトの目的や方針に賛同する投資家が新しく発行された仮想通貨を購入することで、企業は資金を調達します。仮想通貨が投資対象というだけで、仕組みそのものは、IPOと同様です。

世界初のICOは、2013年に行われました。また、2014年のイーサリアムのICOでは、約18億円相当の資金調達に成功し、ICOの知名度が一気に上がりました。ICO市場は急拡大し、2017年にICOで調達された資金は約6800億円にものぼるといわれています。

ICOのメリットと課題

ICOのメリットは、IPOより低コストで資金調達できること。上場にまつわる複雑な手続きを踏む必要もなく、世界中から簡単に資金を募ることができます。

一方で、IPOのようにきちんとした審査が行われるわけではないため、投資家のリスクが高いという問題点がありました。投資家からすると、企業やプロジェクトが信頼に足るかどうかを見極めるのは容易ではありません。

同時に、詐欺まがいのICOも多数登場しました。2021年10月にも、ICOを悪用したとして、ウェブ広告会社社長を含む6人の容疑者が日本で逮捕されたのです。容疑者は価値のない仮想通貨を発行し、全国約1000人の投資家が合計約16億円を騙し取られました。

また、詐欺目的のICOではなかったとしても、当初の予定通りプロジェクトが進まないことも多々あります。開発が始まらなかったり、途中で頓挫したりして、約束されていた商品やサービスが実際には提供されないというケースも。そうなると、仮想通貨の価値もなかなか上がらず、リスクをとったにもかかわらず投資家は十分なリターンを得られません。

金融庁は、このような注意点を記し、ICO詐欺に注意するよう呼び掛けています。

IEOの目的と仕組み

ICO市場は2017年に急拡大したものの、2018年にコインチェック事件が起きたことで、大幅に縮小しました。コインチェック事件とは、日本の大手仮想通貨取引所コインチェックが悪意あるハッカーの攻撃を受け、580億円相当の仮想通貨ネム(NEM)が流出した事件です。流出事件の影響で、ビットコインを始め多くの仮想通貨が急落し、仮想通貨バブルは崩壊しました。

もともと詐欺事件なども問題視されていたことから、ICO市場は現在も縮小傾向にあります。

代わって登場したのが、IEOなのです。

IEOは、仮想通貨取引所が企業をサポートし、プロジェクトの内容を精査した上で、仮想通貨を発行する仕組みです。仮にプロジェクトの内容に問題があったと発覚すれば、取引所自体が信頼を失うことに。そのため、企業が安易に仮想通貨を発行して資金調達することができなくなり、投資家のリスクが低減します。

つまりIEOでは、ICOのように企業と投資家が直接やり取りするのではなく、仮想通貨取引所が間に入ることで、健全な資金調達・投資を実現できるようになりました。企業としても、仮想通貨取引所のサポートを受けて仮想通貨発行に臨むことができます。

なお、IEOでは、投資家は公開後の価格より低い価格で仮想通貨を購入できることが一般的です。

IEOとSTOの違い

ICOの問題点を解消する仮想通貨を用いた資金調達の手法として、IEOの他、STO(Security Token Offering/セキュリティ・トークン・オファリング)も登場しました。

STOとは、株式や社債のように、有価証券として発行された仮想通貨のこと。政府から正式に発行が認められているSTOは、株式や社債同様、比較的安心して投資できる投資対象といえます。

日本でもSTOは注目を集め、2020年5月に「金融商取引法(金商法)」が改正されました。海外でも、STOの市場は急拡大しつつあります。

IEOのメリット・デメリット

続いて、IEOのメリット・デメリットについて解説します。

IEOのメリット

IEOのメリットは、ICOと比べて信頼性が高いこと。仮想通貨取引所がプロジェクト内容や運営の健全性、技術力、今後の将来性などを精査することから、投資家は一定の安心感を持って投資判断ができます。

もちろん、明確な審査基準等が定められているわけではないため、IEOだからといってすべてが安心というわけではありません。しかし、一定の知名度を持つ仮想通貨取引所であれば、ユーザー離れを防ぐため、ずさんな審査をする可能性は低いといえます。

IEOは、企業にもメリットをもたらします。かつてICOが悪用されたことでその市場が縮小し、企業としても資金調達しにくい状況になりました。

しかし、IEOの登場によって、仮想通貨の発行による資金調達が引き続き可能となりました。企業としては、株式や債券など従来の資金調達の手法に加えて、資金調達の選択肢が増えたといえます。

また、IEOでは仮想通貨取引所がプロジェクト内容を精査します。取引所の審査に通りIEOを実現できれば、知名度が上がり、世の中の信頼感を得られます。

IEOのデメリット

仮想通貨取引所が間に入ることで信頼性が増したとはいえ、値上がりが保証されるわけではありません。IEOで過剰に期待が高まると、一気に暴落するリスクもあります。企業としても、資金調達という目的は達成できても、暴落によって投資家からの印象が悪化するのは避けたいでしょう。

仮想通貨そのものが値動きが激しく、法律や規制もまだ十分に整備されていないことから、企業も投資家もリスクを踏まえてIEOを利用する必要があります。

IEOでの資金調達例

IEO市場は世界では拡大しつつありますが、日本ではまだあまり事例が多くありません。有名なIEOの事例は、日本国内の大手仮想通貨取引所コインチェックによる、パレットトークン(PLT)のIEOです。続いて、PLTの事例について詳しく解説します。

パレットトークン(PLT)のIEOの概要

2021年7月1日に、大手仮想通貨取引所のコインチェックが、国内初のIEOの申し込みを開始しました。IEO銘柄として採用されたのは、パレットトークン(PLT)です。

IEOは大きな話題となり、申し込みが殺到し、わずか6分で調達目標金額の9億3150万円を突破。募集終了までには、224億円もの金額が集まりました。また、申し込み倍率は24.11倍にまで上ったのです。

パレットトークン(PLT)とは?

PLTは、エンターテイメント分野で強みを持つNFTプラットフォーム「パレット(Palette)」で流通する仮想通貨。パレットでは、NFT化したアニメやマンガ、音楽などを、ユーザーが自由に売買できます。

NFT(非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いたデジタルトークンのこと。NFTによって、アート作品やゲームのアイテムなどのデジタルコンテンツに製作者が誰なのかを記録し、唯一無二のものだと証明できるようになりました。

NFTは、インターネットの世界に画期的な変革をもたらす存在として注目を浴びています。今後、パレットの普及が進むにつれ、仮想通貨PLTの価値も上昇すると見込まれます。

パレットトークン(PLT)の価格は上がったのか?

IEOが実施されてから、PLTの価格はどのように推移したのでしょうか?

PLTの価格は、上場後に急上昇しました。IEOでは1枚あたり約4円で販売されましたが、上場後急上昇し、7月31日には80円に達しました。約20倍という驚異的な値上がりです。仮にIEOに参加し、100万円分のPLTを抽選で取得していたら、約1ヵ月で2000万円の資産を築けたことになります。

PLTはその後一度は下落したものの、再び上昇に転じ、8月23日に95円と最高値をつけました。8月末から9月にかけては再び下落を始め、10月30日現在の価格は49円です。しかし、NFT市場は今後も拡大が期待されていることから、PLTの価格が上昇する可能性は十分にあるでしょう。また、10月30日現在の価格でも、IEOにおける価格の約12倍です。

国内初のIEOは大成功を収め、IEOに参加した多くの投資家に利益をもたらしました。

国内初IEOを実施したコインチェックとは

国内初IEOを実施した仮想通貨取引所コインチェックについても簡単に解説します。

コインチェックは、17種類の仮想通貨を取り扱っており、日本国内では銘柄数が豊富な仮想通貨取引所です。国内仮想通貨取引アプリのダウンロード数No.1で、初心者でも直感的に操作できることで人気を博しています。

IEOは終了しましたが、コインチェックで口座開設すれば、PLTを現在の価格で購入することも可能です。また、コインチェックは今後もIEOを実施する可能性は十分にあります。チャンスを逃さないためにも、先に口座開設しておくと良いかもしれません。

IEOの参加する流れ

今後、IEOが実施されるなら、プロジェクトの内容等を確認した上で、参加してみるのも面白いかもしれません。

IEOに参加するためには、IEOを実施する仮想通貨取引所で口座開設しておく必要があります。IEOは常に行われているわけではありません。しかし、今後IEOが実施される可能性を考慮して、あらかじめ口座開設して投資経験を積んでおくと安心です。

続いて、IEOに参加する時の流れを簡単に解説します。

アカウント作成を行う

まずは仮想通貨取引所で口座開設します。仮想通貨取引所によっても異なりますが、基本的な口座開設の流れは次の通りです。

1.メールアドレスを入力する。
2.送信されたメールのリンクをクリックする。
3.氏名、住所、電話番号等の情報を入力する。
4.マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類を提出する(スマホで撮影して本人確認できる仮想通貨取引所がほとんど)。
5.電話番号のSMS認証や二段階認証の設定をする。

手続きが終われば、口座開設が完了します。住所等に誤りがあるとスムーズに口座開設できないので、入力の際には十分注意しましょう。

コインを購入する

続いて、銀行振込やコンビニ入金等の方法で、日本円を入金。入金額が反映されたのを確認したら、仮想通貨を購入します。パソコンやスマホアプリで該当する通貨を選び、数量等を入力して購入ボタンを押すだけで、簡単に購入できます。

IEOによって条件は異なりますが、コインチェックのIEOでは、コインの最低保有量が参加条件として定められていました。また、コインの保有量に応じてIEOの抽選券が配布される仕組みでした。その場合、多くのコインを保有していた方が、当選確率が上がります。

抽選と交換

IEOが実施されたタイミングで、参加の申し込みをします。期日に抽選が行われ、抽選に当たると、保有している通貨が新しく発行されたトークンと交換されます。

IEOとはまとめ

IEOは世界的にも注目されており、今後、仮想通貨による資金調達は爆発的に増えていくと予想されます。また、IEOやSTO以外にも、新たな仮想通貨による資金調達の手法が確立される可能性もあります。

仮想通貨やブロックチェーンがもたらすビッグウェーブに乗り、資産形成に効果的に役立てるためにも、仮想通貨投資の経験を積んでおきましょう。