(画像=編集部作成)

【目次】
①️三和油化工業IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
三和油化工業株式会社
コード
4125
市場
JASDAQスタンダード
業種
化学
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長執行役員 柳 均 / 1975年生
会社住所
愛知県刈谷市一里山町深田15番地
設立年
1970年
社員数
245人(2021年10月31日現在)
事業内容
化学品及び油剤製品を製造・販売する事業のほか、それらの使用後の産業廃棄物を収集し、中間処分並びに再資源化する事業
URL
https://www.sanwayuka.co.jp/
資本金
120,000,000円 (2021年11月18日現在)
上場時発行済み株数
4,286,000株
公開株数
880,000株
連結会社
6社
スケジュール
仮条件決定:2021/12/03→3,100~3,500円に決定
ブックビルディング期間:2021/12/07 - 12/13
公開価格決定:2021/12/14→3,500円に決定
申込期間:2021/12/15 - 12/20
上場日:2021/12/23→初値4,020円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:野村證券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
引受証券:東海東京証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
大株主
(有)エムエムエス 20.55%
柳忍 14.68%
柳均 14.68%
柳至 11.74%
三和油化社員持株会 11.63%
豊田通商(株) 9.86%
碧海信用金庫 4.93%
(株)十六銀行 4.70%
南海化学(株) 1.35%
内田清志 1.06%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2019/03 単体実績 
11,229,671 365,513 266,496 3,109,648
2020/03 連結実績 
12,462,438 977,032 624,336 4,729,958
2021/03 連結実績 
12,460,844 1,081,262 727,415 5,628,814
2021/09 第2四半期連結実績 
7,245,205 876,275 566,377 6,140,080
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2022年3月22日まで、または
上場後180日目の2022年6月20日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
30億8000万0000円(880,000株×3,500円)
潜在株数(ストックオプション)
なし
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
三和油化工業株式会社<4125>は化学品及び油剤製品の製造・販売及び使用後の産業廃棄物の中間処分並びに再資源化などを行う、愛知県刈谷市に本社を置く企業である。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は化学品及び油剤製品の製造・販売する事業のほか、それらの使用後の産業廃棄物を収集し、中間処分並びに再資源化する事業を中心に展開している。

主な事業は下記5つに区分されている。

・リユース事業
使用済みの廃溶剤、廃酸、有価金属等を含む産業廃棄物を同社の設備により中間処分・再資源化し、元の用途や素材として再使用するマテリアルリサイクルを目的としている。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
・リサイクル事業
 産業廃棄物を同社設備により中間処分・再資源化し、再生燃料やセメント・鉄鋼等の副原料及び副資材として2次利用を中心とした再資源化を目的としている。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
・化学薬品事業
 有機化合品や無期化合品及びそれらを精製・加工した化学品の製造・販売及び受託加工を中心に行っている。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
・自動車事業
 同社の祖業であり、自動車メーカー及び自動車部品メーカーをメイン顧客として、潤滑油や金属加工油などの油剤製品、工業用洗浄剤及び自動車製造工程で使用される各種副資材の製造・販売を行っている。

・PCB事業
ポリ塩化ビフェニル(略称:PCB)特別措置法に基づき、全国的に処理が進むPCB含有廃棄物の適正処理を行うためのソリューションを提供している。

上記の5事業はそれぞれ単独で成り立っている訳ではなく、同社の機能を活かして製品の製造・販売から使用後の産業廃棄物の有効利用までを物流や品質保証も含めて一気通貫で対応することを特徴としている。
 

■2021年3月期事業別売上高

2021年3月期 売上高125億円
・リユース事業 24億円(割合20%)
・リサイクル事業 42億円(同34%)
・化学品事業 25億円(同20%)
・自動車事業 22億円(同18%)
・PCB事業 11億円(同9.1%)

リユース事業とリサイクル事業の両者で売上の50%以上を占めている。また半導体・電池業界の成長を背景に化学品事業の売上が拡大中である。
 

■今後の取り組みについて

今後は本社(愛知県)のみならず、茨城事業所及び子会社のサンワ南海リサイクル株式会社(和歌山県)を加えた国内工場3拠点を中心に、産業廃棄物の収集・処理能力の向上と輸送コストの削減を図り、グループ全体としての売上拡大・収益性の向上を進める。

また成長が期待される電子材料分野・環境リサイクル分野に対して資源を投入し、既存事業の強化も図る考えである。
 

■業績推移

2019年3月期 売上高112億円、経常利益3.7億円、当期純利益2.7億円
2020年3月期 売上高125億円、経常利益9.8億円、当期純利益6.2億円
2021年3月期 売上高125億円、経常利益11億円、当期純利益7.3億円
2022年3月期(予想) 売上高140億円、経常利益14億円、当期純利益10億円
※2020年3月期より連結決算
※2022年3月期より売上基準の変更を予定、従来基準では売上高149億円(経常利益以下に変化はない)

2021年3月期は対前年同期比で売上は横ばいであったが増益を果たし、経常利益10億円の大台に到達した。

2022年3月期は売上高140億円、経常利益14億円の増収増益を予想している。化学品事業の大幅な伸びが見込まれている。2022年3月期Q2(累計)は売上高73億円、経常利益8.8億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。
 

■財務内容

2021年3月期末時点で資産合計171億円に対し純資産合計56億円、自己資本比率33%である。借入金78億円に対し、現預金15億円を有している。

資産合計171億円のうち、建物及び構築物38億円、土地46億円などの有形固定資産合計109億円となっている。また投資有価証券6億円(うち2.9億円が株式会社デンソー)を保有している。

キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)が2020年3月期13億円、2021年3月期18億円となっている。減価償却費(2020年3月期6.0億円、2020年3月期6.2億円)が営業C/Fを押し上げ。
 

■資金使途

IPOにより28億円の資金調達を行い、下記使途が予定されている。

・茨城事業所の再資源化設備及び付帯設備の設置に係る工事費用 5.2億円
・本社石根工場の焼却設備の修繕に係る工事費用 1.2億円
・本社家下工場の再資源化設備及び付帯設備の設置に係る工事費用 7.0億円
・本社家下工場の半導体・電池材料設備及び付帯設備に係る工事費用 5.0億円
・子会社のサンワ南海リサイクル株式会社の再資源化設備及び付帯設備の設置に係る工事費用 6.0億円

調達資金は設備資金に充当される。

尚、公募のみが行われ売出は行われない。
 

■株主構成

筆頭株主(株式シェア21%)の有限会社エムエムエスは柳社長が取締役を務める企業であり、役員等により総株主等の議決権の過半数が保有されている企業である。また柳社長及び柳一族が個人で41%の株式を所有しており、柳社長の関係先で株式の60%以上が保有されている。

取引先として豊田通商株式会社が第6位株主(同9.9%)となっており、また金融機関として碧海信用金庫(同4.9%)、株式会社十六銀行(同4.7%)が株主参入している。
 

■まとめ

化学品及び油剤製品の製造・販売及び使用後の産業廃棄物の中間処分並びに再資源化などを行う、愛知県刈谷市に本社を置く企業のIPO案件である。自動車メーカー及び自動車部品メーカーをメイン顧客とする潤滑油や金属加工油などの油剤製品の製造・販売からスタートし、リサイクル事業に本格参入し横展開している。

2020年3月期及び2021年3月期は売上高約125億円、経常利益約10億円で概ね横ばいの業績であった。一方で、半導体・電池業界の成長を背景に化学品事業が伸びるなどして、2022年3月期は売上高140億円、経常利益14億円の増収増益を予想しており順調な進捗を見せている。

IPOによる調達資金を活用して設備投資を行い事業拡大が見込まれるが、どの程度までの成長を行うことができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、化学品及び油剤製品を製造・販売する事業のほか、それらの使用後の産業廃棄物を収集し、中間処分並びに再資源化する事業を展開している。

上場市場は東証JASDAQ。 株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が150億円、2022年3月期の業績予想ベースのPER15 倍となっている。2022年3月末の配当予想は1株当り25円、公開価格の配当利回りは0.7%。上場当日の株価動向は、資金吸収額が35億円とJASDAQとしてはやや大きめであることに加えて、事業承継的な色彩の強いIPOなので、成長性に難あることから、初値は前場のかなり早い時間帯に付くと推測する。

セカンダリー市場においても、成長性の観点から、機関投資家の買いは期待薄なので、公開価格のバリュエーションであるPER15倍程度の水準が続くのではないだろうか。もし、株価が動くようなことがあるとすれば、今期末の配当性向が10%程度なので、仮に配当性向が2倍、3倍になるなら買われる可能性もあるが、有利子負債の額が大きいだけに増配は期待できないとみておくべきだろう。