【目次】
①️エクサウィザーズIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 会社名
- 株式会社エクサウィザーズ
- コード
- 4259
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 石山 洸 / 1982年生
- 会社住所
- 東京都港区東新橋一丁目9番2号
- 設立年
- 2016年
- 社員数
- 233人(2021年9月30日現在)
- 事業内容
- AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決
- URL
- https://exawizards.com/
- 資本金
- 100,000,000円 (2021年11月18日現在)
- 上場時発行済み株数
- 79,308,000株
- 公開株数
- 29,607,200株
- 連結会社
- 1社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/12/07→1,050~1,150円に決定
- ブックビルディング期間:2021/12/08 - 12/14
- 公開価格決定:2021/12/15→1,150円に決定
- 申込期間:2021/12/16 - 12/21
- 上場日:2021/12/23→初値1,030円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 引受証券:大和証券
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:SBI証券
- 引受証券:楽天証券
- 大株主
- 春田真 10.64%
- 古屋俊和 10.11%
- (株)ベータカタリスト 10.03%
- (株)INCJ 7.96%
- アイエスジーエス1号投資事業有限責任組合 7.85%
- D4V1号投資事業有限責任組合 5.74%
- 坂根裕 5.45%
- 石山洸 4.83%
- 竹林洋一 4.53%
- 浅谷学嗣 2.19%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2019/03 単体実績
985,315 -386,633 -353,146 875,849 - 2020/03 単体実績
2,063,876 -422,900 -469,644 1,985,688 - 2021/03 連結実績
2,612,944 -451,345 -592,688 2,383,294 - 2021/09 第2四半期連結実績
1,971,545 -336,246 -388,189 2,066,714 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2022年3月22日まで、または
上場後180日目の2022年6月20日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 340億4828万0000円(29,607,200株×1,150円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 11,265,000株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- 株式会社エクサウィザーズ<4259>はAIを活用したコンサルティングなどを行うAIプラットフォーム事業及びAIプロダクト事業を手がける2016年設立のAIベンチャー企業である。
■事業内容詳細
同社は下記2事業を手がけているが、セグメント間での継続的なシナジー創出により成長を加速させる計画である。
・AIプラットフォーム事業
・AIプロダクト事業
●AIプラットフォーム事業について
AIプラットフォーム事業では、個別企業を顧客として同社のAIプラットフォーム「exaBase」に蓄積されたデータ基盤を用いたコンサルティング、アルゴリズム解析、ソフトウェア開発を行う。
50名の社内コンサルタントや192名のエンジニアチームにより、顧客の課題特定から実際の業務・サービスへの実装と投資対効果の最大化までのプロセスを一貫してサポートする。
2021年3月期の顧客数は90社、長期継続顧客売上比率50%、上位10顧客の平均年間売上高1.2億円である。
具体的には下記の事例がある。
●AIプロダクト事業
AIプロダクト事業では、多くの企業に共通した業務課題に向けて、顧客の業務プロセスに安易に導入・活用可能なAIソフトウェア群を提供している。顧客は自社で新規にAIアルゴリズムを設計・開発することなく、完成度の高いAIを業務において活用できる。
デジタル化による労働力減少への対応ツールとなるDX AIプロダクトと、増大する社会保障費への対応ツールとなるソーシャルAIプロダクトの2つの領域でツールを提供している。
■2021年3月期セグメント別損益及び主要顧客
2021年3月期 売上高26億円、営業利益▲5.1億円
・AIプラットフォーム事業 売上高23億円、セグメント利益5.7億円
・AIプロダクト事業 売上高3.6億円、セグメント利益▲11億円
AIプラットフォーム事業中心の売上構成であり、同部門の売上が全体の8割以上となっている。セグメント利益も5.7億円あり黒字化。
AIプロダクト事業は売上3.6億円に留まり、セグメント利益▲11億円の赤字である。新規サービスの提供などが進む一方で、組織拡大に伴う人員増加、プロダクト開発に係る先行投資などが発生し赤字となっている。
2021年3月期はアフラック生命保険株式会社に対する売上高が3.0億円(割合12%)となっている。2022年3月期Q2(累計)も売上高2.4億円(同12%)であり、主要顧客として安定的な売上が計上されている。
■業績推移
2019年3月期 売上高9.9億円、経常利益▲3.9億円、当期純利益▲3.5億円
2020年3月期 売上高21億円、経常利益▲4.2億円、当期純利益▲4.7億円
2021年3月期 売上高26億円、経常利益▲4.5億円、当期純利益▲5.9億円
2022年3月期(予想) 売上高47億円、経常利益▲0.8億円、当期純利益▲1.0億円
※2021年3月期より連結決算
増収が続いており2021年3月期は売上高26億円に到達した反面、経常利益は▲4億円前後の赤字が継続している。
2022年3月期は売上高47億円、経常利益▲0.8億円の大幅増収及び赤字幅縮小の予想である。2021年5月より完全子会社化したエクスウェアの業績取り込み効果(売上高8.4億円)に加え各事業の伸びを背景に増収を果たし、黒字化一歩手前までの進捗が見込まれている。2022年3月期Q2(累計)は売上高20億円、経常利益▲3.4億円である。
■財務内容
2021年3月期末時点で資産合計37億円に対し純資産合計24億円、自己資本比率65%である。借入金8.2億円に対し現預金23億円を保有している。
資産合計37億円のうち、現預金23億円、売掛金6.0億円などで流動資産合計31億円である。また無形固定資産としてソフトウェア3.9億円が計上されている。
■資金使途
IPOにより41億円の資金調達を行い(別途海外での調達も予定されているが金額は未定)、下記使途が予定されている。
・事業拡大のための採用費及び人件費 22億円
・プロダクト開発のためのソフトウェア開発投資 8.6億円
・exaBase強化のための研究開発費 1.4億円
・広告宣伝・販売促進等のマーケティング投資 0.8億円
・売上拡大に伴う運転資金 3.5億円
・借入金の返済資金 5.0億円
調達資金の半数以上は事業成長のためのAIコンサルタントやエンジニア等の採用費及び人員増加に伴う人件費などに充当される。
また公募4,000,000株に対し売出25,607,200株であり売出の多いIPOである。売出は株式会社INCJを始め幅広い株主により行われる。
■株主状況
筆頭株主(株式シェア11%)の春田真氏は同社取締役会長であり、また第3位株主(同10%)の株式会社ベータカタリスト(投資会社)の代表取締役CEOである。
第4位株主の株式会社INCJ(旧:産業革新機構、同8.0%)など多数の投資会社やVCが株主参入している。投資会社やVCはIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結済み。
またSOMPOホールディングス株式会社(同1.9%)、株式会社三菱UFJ銀行(同1.7%)、SMBC日興證券(同1.0%)などの金融機関も株主参入している。
石山社長は株式の4.8%(うち1.7%は潜在株式)を保有する。
個人やVC、金融機関などが幅広く株式を保有する状態である。
■まとめ
AIを活用してAIプラットフォーム事業及びAIプロダクト事業を手がける、2016年設立のAIベンチャー企業のIPO案件である。
各業界に詳しいコンサルタントを擁し、AIプラットフォーム「exaBase」に蓄積されたデータ基盤を用いたコンサルティング、アルゴリズム解析、ソフトウェア開発を行うAIプラットフォーム事業は黒字化するなど順調な成長を見せている。ただしプロダクト販売により利益率の高いAIプロダクト事業は、先行投資により赤字が続いている。2022年3月期は売上高47億円、経常利益▲0.8億円の大幅増収かつ赤字解消目前まで迫る予想である。
IPOにより約40億円の資金調達が行われる中で、どのタイミングでプロダクト事業の本格的な立ち上がりがなされ、どのような成長スピードとなるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、人工知能(AI)ソリューションの開発販売。独自開発のAIアルゴリズムとさまざまな業界や業務に関する知見を組み合わせたAIサービスを開発・提供する事業を展開している。
上場市場は東証マザーズ。 株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が805億円、2022年3月期の業績予想は赤字となっているので、PERは計測不可となっている。公募売出し金額は372億円だが、そのうち、131億円が親引けとなり、実質的な資金吸収額は241億円となる。上場当日の株価動向は、資金吸収額と赤字業績予想からすると、同日に5社のIPOが予定されており、かなり厳しい展開から始まるのではないかと予想する。
正直なところ、この規模のAIを使ったDX開発会社がこれほどの株価が付くほどの価値があるのかどうかは疑問である。だが、131億円もの親引けとなるほど、当社と事業で協業したい投資家がいることからすれば、素人には理解できない事業資質があるということだろう。
セカンダリー市場においては、当社は3月決算で、5月中旬には来期の業績予想が出て来るので、来期黒字転換すれば、公開価格も正当化されるはずだが、来期も赤字予想となると、いつになったら黒字化するのか不透明になり、長期保有の投資家にもネガティブな要因となるかもしれず、そのタイミングで当社の株式を保有しているのはリスクになるかもしれない。