株式や投資信託を対象としている税制優遇制度であるNISAに加えて、2018年1月からはつみたてNISAもスタートした。これは、対象となる金融商品が公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されている。税制優遇となる投資枠は一般NISAよりも低いものの、非課税期間が長いのが特徴だ。
つみたてNISAとは
つみたてNISAとは、個人投資家に向けて特に少額での投資を支援するための非課税優遇制度だ。2018年1月からスタートしており、3ヵ月後となる2018年3月末での口座数は50万7,462口座となっている。一般NISAとつみたてNISAを合わせた総口座数は1,167万9,355口座であることと比較しても、かなり順調な滑り出しといえる。
投資で利益を出した場合、他の収入と同じように税金を支払う必要がある。税率は20.315%と定められている。投資信託を運用して10万円の利益が出た場合なら、支払うべき税金は20,315円だ。

しかし、一般NISAまたはつみたてNISAの口座を開設し、その口座を利用しての投資・運用で得た利益に関しては非課税となる。非課税対象となるのは、投資から得られる分配金や譲渡金だ。例えば10万円の分配金を、NISA口座を利用した投資によって得た場合、10万円がそのまま受け取れる。
つみたてNISAの特徴は、「長期・積立・分散投資」を対象としていることにある。つみたてNISAの対象となる金融商品は、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されている。この2つの金融商品は、手数料が低く分配金は頻繁に支払われないため、長い期間をかけて少額を積み立てていくのに向いている。
非課税対象となるのは公募株式投資信託と上場株式投資から得られる分配金や譲渡金で、年間に投資できる新規投資額の上限は40万円まで。最長20年間、得られた分配金や譲渡金は非課税となる。投資可能期間は2037年までとなっており、2018年からスタートすれば最長20年間投資を行うことができる。20年間での非課税投資枠合計額は最大800万円だ。
対象となる商品は、金融庁の定めた長期積立、分散投資に適したものに限られる。例えば公募株式投資信託の場合、販売手数料はゼロのノーロードのものだけに限られている。また、信託報酬は国内株のインデックス投信であれば0.5%以下と一定水準以下。さらに信託契約期間は無期限または20年以上に限定されている。
NISAとつみたてNISAの比較
一般NISAとつみたてNISAは、どちらか一方しか口座を開設することはできない。一般NISAの口座を既に開設していても、今年度まだ一般NISAでの投資を行っていなければ、つみたてNISAに切り替えられる。もし、今年度既に一般NISAでの投資枠を使用していても、年が変わればつみたてNISAに切り替えることができる。
一般NISAとつみたてNISAを比較していこう。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
利用できる対象者 | 日本国内に住む20歳以上の人(口座開設する年の1月1日現在) | 日本国内に住む20歳以上の人(口座開設する年の1月1日現在) |
投資可能期間 | 2014年~2023年までの10年間 | 2018年~2037年までの20年間 |
非課税期間 | 投資した年から最長5年間(ただしロールオーバーを利用すれば最大10年間) | 投資した年から最長20年間 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年120万円まで | 新規投資額で毎年40万円まで |
投資対象商品 | 上場株式(ETF、REITを含む)、投資信託 | 金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETF |
投資方法 | 一括買付、積立 | 定期的かつ継続的方法による積立のみ |
資産の引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 |
他の投資との損益通算、繰越控除 | 不可 | 不可 |
金融機関の変更 | 年単位であれば可能 | 年単位であれば可能 |
つみたてNISAは「積立投資専用のNISA」である
つみたてNISAは積立投資のみを対象とする税制優遇制度だ。
つみたてNISAと一般NISAとの一番大きな違いは、投資対象となる金融商品だ。一般NISAでは、上場株式(ETF、REITを含む)、投資信託が対象となるが、つみたてNISAでは金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETFに限られる。金融庁が定める基準とは、販売手数料が無料、信託報酬は一定水準以下など手数料が安く、長期積立や分散投資に適していることだ。
投資方法も、一般NISAが通常の株式投資と同じようにNISA口座を利用して一括買付を行えるのに対して、つみたてNISAでは定期的かつ継続的に積み立てを行うことと限定されている。少額をコツコツと積み立て、低リスクで、貯蓄感覚で行うことができるのがつみたてNISAだ。
非課税で投資できる期間と上限額が違う
非課税対象となる上限額も一般NISAとつみたてNISAでは大きく違う。一般NISAでは年間120万円まで毎年新規に投資できるが、つみたてNISAでは年間40万円までが上限だ。また、投資可能期間は一般NISAが最大10年間、つみたてNISAが最大20年間と異なるため、投資可能期間中毎年上限額一杯に投資を行った場合は、一般NISAが1,200万円なのに対してつみたてNISAは最大800万円となる。
ただし、ここで注意しておきたいのが一般NISAの投資可能期間は2014年から2023年までの10年間であることだ。2018年時点で考えると投資可能期間は残り6年間。2018年から2023年まで投資を行った場合の最大金額は720万円。2018年に口座を開設した場合、最大金額はつみたてNISAの方が多くなる。
投資対象となる金融商品が異なる
つみたてNISAの投資対象となる金融商品は、金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETFに限られている。これは、長期の積立・分散投資に適した金融商品のみに限定しているからだ。
つみたてNISAに適するとされる金融商品は、まず販売手数料が無料であるノーロード投信のみ。信託報酬は一定の水準よりも低いものとされている。また、長期的に積立・分散投資を行うよう、頻繁に分配金が支払われないように定められている。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAのメリットは、あらかじめ決まった金額を続けて投資することで、リスクと手間を減らすことができるという点だ。
投資は、値動きを見て安く購入しなければ損をしてしまう。値動きは様々な要因で起こるため、タイミングを見極めるのは投資初心者にとって難しいものだ。しかし、つみたてNISAは、あらかじめ決まった金額を続けて投資する積立投資という方法だ。投資を行う期間を長期に分散し、こつこつと積み立てるように投資していく。これは、価格が高い時期にまとめて購入してしまうなどの値動きによるリスクを低減することにつながるため、投資初心者にとってメリットが大きい。
投資枠があらかじめ年間40万円と低く抑えられているのもメリットだ。投資初心者にとって、いきなり大きな金額を投資してしまうのはリターンが大きくなる可能性がある反面リスクも大きい。しかし、年間40万円までと決められていることで、リスクを軽減することができる。
また、投資初心者にとって、どの金融商品を選べばいいのかというのもハードルが高い問題だ。投資信託・ETFに限定しても、選択肢はかなり広い。どれが自分に適しているのかを見つけるだけでも難しい場合がある。
しかし、つみたてNISAの対象となる金融商品は、金融庁が設けた基準により、販売手数料無料で信託報酬も低水準のものに限られている。初心者でも選びやすい商品に限られているだけでなく、必要となる手数料が少ないのもメリットだ。
つみたてNISAのデメリット
つみたてNISAのデメリットは、投資先の幅が少ないため、投資経験が多い個人投資家にとっては不向きであるという点だ。つみたてNISAは個別の会社の株式への投資はもちろん、投資信託・ETFも金融庁の基準をクリアしたものに限られている。そのため、投資経験の多い個人投資家からすると、もっとリターンが期待できる金融商品があるのでは、と感じてしまうことがある。
また、つみたてNISAの非課税投資枠は40万円と一般NISAよりもかなり低い。投資枠が少ないことは、投資経験者にとっては特にデメリットとなる。
つみたてNISAで取引できる金融商品
つみたてNISAで取引できる金融商品は、金融庁が定める基準に適した投資信託・ETFに限られている。
具体的には、販売手数料が無料であるノーロード投信に限られ、信託報酬は一定の水準よりも低いものでなくてはならない。また、長期間に渡って積立・分散投資を行うため信託期間が長期のもので、頻繁に分配金が支払われない福利効果が期待できる商品と定められている。
2018年9月28日時点で、つみたてNISAの対象となる金融商品は公募投信が158本、ETFが3本の合計161本となっている。前回金融庁が発表した2017年10月時点での103本よりも60本近く増加している。商品の幅が広がったことでより投資を行いやすい環境が整い、つみたてNISAがより魅力的になってきている。
つみたてNISAとiDeco(イデコ)の違い
iDeCo | つみたてNISA | |
---|---|---|
利用できる対象者 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満の人(口座開設する年の1月1日現在) | 日本国内に住む20歳以上の人(口座開設する年の1月1日現在) |
積立時の所得控除 | 掛金全額が所得控除 | 所得控除の適用なし |
運用中の税制優遇 | 運用益は全額非課税 | 投資した年から最長20年間非課税 |
払い出し時の税制優遇 | 一時金:退職所得控除 年金:公的年金等控除 |
非課税 |
非課税投資枠 | 働き方や勤務先の年金制度によって異なる(14万4,000円から81万6,000円) | 新規投資額で毎年40万円まで |
投資対象商品 | 定期預金・保険・投資信託 | 金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETF |
資産の引き出し | 原則60歳になるまで不可 | いつでも可能 |
口座開設手数料・口座管理 | 口座開設手数料:2,777円 | 無料 |
手数料 | (税込)~口座管理手数料:年間2,004円(税込)~(金融機関によって異なる) | |
最低加入金額 | 5,000円 | なし |
個人型確定拠出年金iDeCoは、老後資産を自分で作るための制度だ。そのため利用できるのは60歳までに限られている。しかし、つみたてNISAは資産運用のため、20歳以上であれば誰でも利用できるという違いがある。また、運用益は、老後の資産形成を目的とするiDeCoは60歳まで引き出し不可だが、つみたてNISAはいつでも引き出すことができる。
所得控除の対象となるかどうかも大きな違いだ。iDeCoは掛金が全額所得控除されるため、住民税と所得税が安くなる。しかし、つみたてNISAは所得控除の適用がないため、現在の収入に対して減税を目的とするならiDeCoの方が向いている。
つみたてNISAを取り扱う主なネット証券
つみたてNISAを取り扱う主なネット証券を紹介していこう。
SBI証券 手数料が無料
SBI証券では、現行の制度の下ではつみたてNISAの手数料を無料にしている。買付時手数料はもちろん、売却時の手数料も無料だ。2018年9月5日時点での取扱商品は日経平均株価を投資対象としたものから先進国株式、新興国株式などさまざまに取り揃えている。
楽天証券 楽天スーパーポイントがたまる
楽天証券では、つみたてNISA口座での取引でも楽天ポイントがたまるのが特徴だ。さらにポイントを使って積立投資も可能。つみたてNISAの対象となる販売手数料無料(ノーロード)投資信託は145本以上もあり、幅広い商品から選ぶことができる。
松井証券 ETF除く投信取り扱い
松井証券では、つみたてNISAはETFを除く投資信託のみを取り扱っている。銘柄は130以上あり、投資信託のみでも選ぶ幅が広い。また、スマートフォン向けの専用アプリで簡単に投資が可能であり、電話やメール、チャットでの問い合わせにも対応してくれるので投資初心者でも始めやすい。
マネックス証券 対象ファンドはほぼカバー
マネックス証券でもつみたてNISAを取り扱っている。2018年9月30日時点での取り扱いファンド数は130。つみたてNISAの対象となるファンドのほとんどをカバーしている。
ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券) ひふみプラスのみ取り扱い
ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)で取り扱うつみたてNISAの対象商品は、2018年9月25日時点でひふみプラス1本のみに厳選されている。アクティブファンドの中でも注目されるひふみプラスに投資しようと考えているなら、ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)を候補に入れても良いだろう。
>>ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)の口座開設はこちら
au カブコム証券 3プランの試算が見られる
au カブコム証券では、Webサイト上で簡単にNISAのシミュレーションを行うことができる。毎月の積立額と積立期間を入力すると、利回りの異なる3種類のプランの試算結果を見られる。NISA口座の保有年数に応じて売買手数料の割引が受けられるau カブコムならではのNISA割特典があるのも魅力と言える。
つみたてNISA口座開設の流れ
つみたてNISAの口座を開設するには、まず、利用する金融機関を決める必要がある。証券会社はもちろんだが、銀行・信託銀行、信用金庫・信用組合、郵便局、労働金庫、農協、生命保険会社でもつみたてNISA口座を開設することは可能だ。ただし、一般NISAを取り扱っている金融機関であっても、つみたてNISAを取り扱っていない場合もあるので注意しておこう。特に、取扱商品数は金融機関によって大きく異なるため、あらかじめリサーチが必要だ。
金融機関を決めたら、NISA口座開設書類を取り寄せる。書類を記入し、住民表の写しやマイナンバー書類、本人確認書類などとともに金融機関に送付する。送られた書類を元に金融機関が税務署に口座開設を申請し、確認が済んだのち、つみたてNISA口座開設が完了する。
一般NISA口座をすでに保有している場合、つみたてNISA口座に切り替えることができる。しかし、今年すでに一般NISA口座で金融商品を購入している場合は、年度が替わるまでは切り替えができないので注意してほしい。(ZUU online編集部)
実際につみたてNISAを始めてみる
口座開設数1位、IPO取扱数1位、投信本数1位、外国株取扱国数1位
>>SBI証券の口座開設はこちら
口座開設数2位、外国株や投資信託に強く、マーケットスピードも使える
>>楽天証券の口座開設はこちら
米国株の取扱に強く、IPO取扱数2位、ミニ株も取引できる、手数料も安い
>>マネックス証券の口座開設はこちら
三菱UFJフィナンシャル・グループで安心、ミニ株も取引できる
>>au カブコム証券の口座開設はこちら
業界最安水準の手数料が売り
>>ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)の口座開設はこちら
どの約定金額でも手数料最安レベル
>>GMOクリック証券の口座開設はこちら
IPO当選確率を上げるならおすすめ、ツールも魅力的
>>岡三オンライン証券の口座開設はこちら
株主優待名人の桐谷さんも開設、少額取引の手数料が0円
>>松井証券の口座開設はこちら
主幹事も多く務め、IPO取り扱い銘柄が非常に多いSMBC日興証券
>>SMBC日興証券の口座開設はこちら
手数料が業界最安値水準な上に取引でポイントがたまるDMM.com証券
>>DMM.com証券の口座開設はこちら
個人投資家 Q.利用している証券会社と選んだ理由、評価しているポイントについて教えてください。
もっぱら利用しているのは楽天証券です。その理由は、貸株サービスが便利だから。貸株サービスとは、保有中の株式を証券会社へ貸し出し、その見返りに貸株金利を得られるというものです。 ほかのネット証券にも同様のサービスがありますが、100株単位で自分が貸したい株数を選択できるというのは楽天証券だけですね。それに、確定申告の際に必要な貸株で得た利益の証明書も作成してもらえるのも助かります。いろいろな証券会社の口座を試してみたうえで、現在は楽天証券がメインの証券会社になっていますね。
響煇嚆矢さんのインタビュー記事はこちら