これから投資を始める人のなかには「元本割れが怖い」「絶対に損したくない」と考える人もいるだろう。残念ながら投資にリスクはつきものであり、「絶対に損をしない方法」は存在しない。投資初心者にとって利用しやすいつみたてNISAでも、損をする可能性はある。
では一体、つみたてNISAで損をする確率はどれぐらいだろうか?参考となるデータがあるなら、事前にチェックしておきたい人も多いだろう。
そこで本記事では、つみたてNISAで元本割れする(損をする)確率について解説する。つみたてNISAで後悔しないためのコツもあわせて紹介するので、資産運用に不安を抱えている人はぜひ参考にしてほしい。
目次
つみたてNISAで元本割れをする確率は?
つみたてNISAで元本割れする確率は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が出している運用シミュレーション上では投資期間が1年だと30%、10年だと0%となっている。元本割れとは、相場の変動により、当初投資した資金が減ることを意味する言葉だ。たとえば投資信託を10万円買ったとしよう。1年後に基準価格が下がり、資産が9万円になった。その場合、最初の10万円から1万円減っているので「元本割れ」している状態といえる。
GPIFの運用シミュレーションを実際に見ながら詳細を確認していこう。
投資期間が1年だと30%以上
下の図は、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4種類の資産に25%ずつ投資し、1年間運用した場合の成果を表している。
結果は、53回のうち16回、割合にして約30.2%が元本割れした。平均のリターンは107万円(7.0%)だが、最小値は▲29.0%、最大値は+32.0%と上下3割ほど振れており、振れ幅が大きい。
たとえば東日本大震災や、ロシアによるウクライナ侵攻など予期できないことが起こると、相場は荒れる。回復するまでには時間を要するだろう。下落に焦って売ってしまう気持ちもわかるが、つみたてNISAで購入できる投資信託は長期投資向きの性質を持つ。そのため、焦らず持ち続けることが望ましい。
10年運用すると0%
下の図は、先ほどと同じく国内債券、外国債券、国内株式、海外株式に25%ずつ投資し、10年間運用した場合の成果を表している。
運用を10年間続けた場合に元本割れした回数は、44回中0回であった。リーマンショックやITバブル崩壊を含む時期でさえ、元本割れしていない。
シミュレーションでは、投資期間の長いほうが元本割れのリスクは減った。最大20年間非課税で保有できるつみたてNISAであれば、元本割れのリスクを抑える長期投資が可能だ。
参考までに、同様の条件で20年間運用した場合のシミュレーション結果が以下の図である。
20年間保有した場合も元本割れせず、収益率は2%~8%に落ち着いている。本データは、あくまで過去の実績をもとにシミュレーションした運用結果だ。しかし、長期的な分散投資の効果がよくわかるデータといえるだろう。
\取扱銘柄が豊富で低リスクな銘柄を選びやすい/
つみたてNISAの3つのデメリット
つみたてNISAは名前のとおり、積立投資しかできない。また「長期、分散、積立投資」の支援を目的とする制度であるため、購入できる商品も一部の投資信託に限られている。ここでは、つみたてNISAのデメリットを3つ解説する。
1. 一部の投資信託とETFにしか投資できない
つみたてNISAでは、ETF8本、ETF以外の投資信託219本の計227本(2023年4月27日時点)にしか投資ができない。公募投資信託の総数が約6,000本(2023年3月末時点)であることから、つみたてNISAで購入できる投資信託は全体の5%にも満たない。株式への投資は日本株と外国株どちらへもできない。
ETFは8本だけが対象であることから、つみたてNISAで購入できるのは、ほとんど投資信託に限定されると考えていいだろう。さらに投資信託においても、金融機関によっては対象商品の取り扱いが10本に満たないところもある。
ETFとは
株式市場に上場している投資信託。日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動するように運用される。
投資先が少ない一方で、つみたてNISAの対象商品は、金融庁の要件を満たしたリスクやコストの低いものに厳選されている点にも注目したい。投資初心者の場合、選択肢が限られているほうが迷わず資産運用に取り組めるだろう。
2. 一括投資はできない
つみたてNISAは、毎年40万円が新規非課税投資枠として利用できる。毎月積み立てるなら、1ヵ月の投資額は3万3,333円までだ。たとえば気になっている投資信託があり、「いいタイミングだから50万円買おう」というスポットでの一括買付はできないので注意しよう。
一方で、つみたてNISAは基準価格が安いときに口数を多く、高いときに少ない口数で自動的に購入できる仕組みだ。毎月1万円ずつ積み立てるとしたら、基準価格が8,000円の月には1万2,500口、基準価格が2万円の月は5,000口が自動で買い付けられる。
なお、一括投資は一般NISAなら可能だ。どうしても一括投資したい場合は、一般NISAを利用するとよいだろう。
3. 運用商品の見直しがしづらい
運用商品の見直しがしづらいのもデメリットだ。相場の状況が変わって運用商品を入れ替えたくても、元本割れの状態で売却するのは避けたい。それだと、利益が非課税になるNISAのメリットが活かせないからだ。また、一度積み立てはじめると、資産を売却してもそれまでに使った投資枠は復活しない。
たとえば毎月2万円ずつ、1月~5月の5ヵ月間積み立てたとしよう。この時点で年間投資枠の残りは30万円だ。たとえ6月に10万円分すべて売却したとしても、年間投資枠は40万円には戻らない。
つみたてNISAは、最長20年間商品を非課税で保有できる。その点は大きな魅力だが、商品を入れ替えづらい点は不便だ。 2024年から始まる新しいNISAでは、枠の再利用が可能になる。現行制度のデメリットは解消されるということだ。なお、現行のNISA制度(一般NISA・つみたてNISA)を利用している人は、新制度が始まるタイミングで自動的に新しいNISA口座が設定されるので、心配はいらない。手続きが面倒そうだと二の足を踏んでいる人は、安心してつみたてNISAを始めてほしい。つみたてNISAで後悔しないための4つのコツ
元本割れする確率を抑えたければ、商品選びと金融機関選びを重視しよう。つみたてNISAの対象商品は227本と限られており、取扱銘柄数は金融機関によって異なるからだ。
ネット証券なら取扱銘柄数が比較的多いことに加え、なかにはポイント還元のサービスも存在する。ここではつみたてNISAで後悔しないためのコツを4つチェックしていこう。
\つみたてNISAの対象商品を193本取り扱う/
1. ポイント還元率の高い金融機関に口座を開設する
元本割れの確率を少しでも抑えたいなら、ポイント還元率の高い金融機関を選ぼう。一度に貯まるポイントは小さいものの、還元されたポイントの分だけ元本割れの可能性が低くなる。
下表のようにネット証券はポイント還元率が高い。取扱銘柄数も豊富なため、低コストな商品も見つかりやすいだろう。
■金融機関ごとのポイント還元情報
証券会社 | ポイント還元の有無 | 貯まるポイント | ポイント付与 | つみたてNISAの取扱銘柄数 | |
---|---|---|---|---|---|
保有残高または積立額 | クレカ積立 | ||||
野村證券 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | 7本 |
三菱UFJ | ◯ | Pontaポイント | ・運用商品残高50万円以上で50ポイント/月 ・投資信託の積立1万円ごとに30ポイント/月(上限300ポイント/月) |
✕ | 12本 |
SBI証券 | ◯ | Tポイント Vポイント Pontaポイント dポイント JALマイル |
0.0175%~0.25%(年率)※ | 0.50%~5.0% (Vポイントのみ) |
193本 |
楽天証券 | ◯ | 楽天ポイント | 始めて到達した基準残高に応じて10~500ポイント | 0.5%~1.0% | 190本 |
マネックス証券 | ◯ | マネックスポイント | 0.03%~0.08% (年率) |
1.10% | 167本 |
(2023年5月12日時点)
※JALマイルのみ記載付与率の0.5倍
出典:野村證券、三菱UFJフィナンシャル・グループ、SBI証券、楽天証券、マネックス証券
保有残高に対するポイント還元で選ぶなら、最大0.25%(年率)の還元率を誇るSBI証券に軍配が上がる。また、クレジットカードでの積み立てで選ぶなら、還元率1.1%のマネックス証券がおすすめだ。
2. できる限りコストの低い商品を選ぶ
投資信託は、保有しているだけでも手数料が発生する。信託報酬といって、投資信託を運用してもらうための費用だ。保有額に応じて一定割合が毎日差し引かれる。
手数料を支払っている感覚は薄いが、商品を選ぶ際は必ず確認してできる限りコストの低い商品を選ぼう。類似している商品でも、それぞれ信託報酬が異なる場合があるためだ。コストが高ければその分得られるリターンは低くなり、元本割れの可能性が上がってしまう。
上のグラフは、年率0.19%と年率1.0%の信託報酬で運用した場合のリターンの差を示している。年率だけ見ると小さな差に思えるが、20年経てばリターンの差は25.0%以上開くこともある。
また、つみたてNISA対象商品のうち、国内外に投資するインデックス投信の信託報酬は平均0.3%(2023年3月時点)であった。商品選びの目安として覚えておこう。
\低コスト商品が豊富/
3. 株式以外にも投資するバランス型の商品を選ぶ
年金積立金の資産構成は、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式をそれぞれ25%ずつ組み入れることを基本としている。つみたてNISAで元本割れを防ぎながら運用したい人は、年金積立金のようにバランスの取れた分散投資を心がけよう。
株式のみで構成されている商品の場合、リーマンショック時のような相場変動が起きたときには、半値になることを覚悟しなければならない。だからといって債券ばかりに投資する商品では、大きな利益を期待できない。なぜなら債券は、リスクが低い代わりに期待できるリターンも小さいからだ。
たとえば、つみたてNISAの対象商品の1つである「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」の資産構成は次のとおりだ。
年金積立金の資産構成とほぼ同じであることがわかる。国内外の株式や債券をバランスよく組み入れている投資信託を「バランス型」という。金融機関のWebサイトやアプリなどで商品を選ぶ際、ジャンルで絞り込み検索をかけると見つけやすい。
4. 最低でも10年は保有する
元本割れを避けるには、最低でも10年は保有しよう。理由は2つある。まず、過去の実績ではあるが、先述のとおり 長期分散投資で10年積み立てていけば、元本割れの可能性は大きく抑えられるからだ。
2つ目の理由は、つみたてNISAにおける20年経過後の落とし穴を避けるためだ。たとえば、つみたてNISAで2023年に買った商品は、20年経過後の2043年になると課税口座へ移行される。新しいNISA口座(つみたて投資枠および成長投資枠)へは移せず、新制度移行の直前に評価額が下がると非課税のメリットが小さくなってしまう。
例えば、もともと購入価格が40万円だったとしても、課税口座に移行するときの評価額が35万円であれば、35万円が移行後の取得価格となる。仮にその後45万円まで上がったタイミングで売却すると、実質5万円しか利益が出ていないのに、税制上10万円が利益として課税対象になる。
不利な条件で課税口座へ移行するのを防ぐため、まず10年保有し、利益が出ていたらその時点で売却しておく方法がある。仮に損していた場合は売らずに保有しておき、残りの10年間で値段が戻るのを待てばよいだろう。
つみたてNISAで投資をするのが不安な人によくある質問
つみたてNISAでは比較的リスクを抑えて投資ができる。とはいっても、投資信託で運用する以上、元本が割れる可能性はゼロではない。
ここでは、つみたてNISAでの投資に不安を抱える人によくある質問を3つ紹介する。
- 1. 元本割れは借金になるのでしょうか?
- 元本割れしても、借金にはならない。元本割れとは、たとえば投資した1万円が9,999円以下になってしまうことをいう。たしかに損にはなるが、減った1円は他人から借りているわけではないため、借金ではない。
- 2. どれくらいの利益が見込めますか?
- 積立額や運用利回りなどの条件によって異なるため、ここでは次の条件で運用したと仮定して話を進める。
● 積立額:毎月1万円
● 運用利回り:3.69%(年金積立金運用の平均収益率)
● 積立期間:20年
上の条件で運用すると、20年目には354万2,701円となる。毎月1万円ずつタンス預金した場合と比べると、約114万もの差が出る。
金融庁のHPにある 「資産運用シミュレーション」を利用すれば、積立金が将来いくらになるのか試算可能だ。投資計画を立てる際に活用してみよう。
つみたてNISAで元本割れしづらい証券会社3選
「つみたてNISAで後悔しないための4つのコツ」の章で、金融機関選びが重要だと述べた。最後に、ポイント還元率の観点から、つみたてNISAで元本割れしづらい証券会社を3社紹介する。
1. SBI証券
貯まるポイント | 投信保有ポイント | クレカ積立 | 対象カード |
---|---|---|---|
Tポイント Vポイント Pontaポイント dポイント JALマイル |
0.0175%~0.25%(年率)※ | Vポイントのみ 0.50%~5.0% |
東急カード |
(2023年5月12日時点)
出典:SBI証券
※JALマイルは上記適用還元率の0.5倍
SBI証券は、楽天証券やマネックス証券と比べると、投信保有ポイントの付与率が高い。貯められるポイントも幅広く、利便性が高い証券会社といえる。
SBIグループは、国内で初めて証券口座の開設数が1,000万を超えた金融機関だ。多くの投資家に利用されている証券会社なので、初心者でも安心して取引できるだろう。
2. 楽天証券
貯まるポイント | 投信保有ポイント (基準残高にはじめて到達した場合) |
クレカ積立 | 対象カード |
---|---|---|---|
楽天ポイント | 到達残高に応じて 10ポイント~500ポイント (最低10万円で10ポイント) |
0.5%~1.0% | 楽天カード |
(2023年5月12日時点)
出典:楽天証券
楽天証券は、クレカ積立が魅力だ。還元率も他の2社と比較して見劣りせず、貯まった楽天ポイントはつみたてNISAを含む投資に利用できる。楽天市場をよく利用する人や、キャッシュレス決済で楽天ポイントを日常的に使っている人であれば、お得に投資することが可能だ。
なお、楽天証券はクレカ積立のポイント進呈率を、2023年6月分から引き上げると発表している。クレカ積立に興味がある人は、楽天証券を検討してみよう。
3. マネックス証券
貯まるポイント | 投信保有ポイント | クレカ積立 | 対象カード |
---|---|---|---|
マネックスポイント | 0.03%~0.08%(年率) | 1.1% | マネックスカード |
(2023年5月12日時点)
出典:マネックス証券
クレカ積立をするなら、ポイント付与率1.1%のマネックス証券がおすすめだ。マネックスポイントは投資信託の購入に使えるほか、次に挙げる他社ポイントサービスやギフト券にも交換できる。
⚫︎ dポイント
⚫︎ amazonギフト券
⚫︎ Tポイント
⚫︎ pontaポイント
⚫︎ nanacoポイント
⚫︎ WAONポイント
⚫︎ ANAマイレージクラブ
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amazonやnanaco、WAONをよく利用する人にとっては、特に使い勝手の良い証券会社といえるだろう。
ーWebメディア「NET MONEY」ー