つみたてNISAでETFに投資できるのか? メリットはあるのか?
(画像=NETMONEY編集部)

2018年1月より開始のつみたてNISA。同制度の対象となる金融商品は2023年7月現在で235本が金融庁により発表されている。

これらの金融商品の中心は投資信託であるが、実はETFについても一部対象となっている。今回はつみたてNISAに対応しているETFについて解説していく。

この記事の専門家
森永 康平
監修者経済アナリスト
詳細はこちら 金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。

■SNS・HP等リンク

冨田 和成
監修者株式会社ZUU代表取締役
詳細はこちら 神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野にて起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

■SNS・HP等リンク
X

詳細はこちら キャリアコンサルタント・特定社会保険労務士・産業カウンセラー・ファイナンシャルプランナー・グッドライフ設計塾代表。愛知大学法経学部経済学科卒業後、証券会社、銀行、生保、コンサルティング会社勤務後、独立開業。49歳から2年間で社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格など7つの資格を取得。合計で13の資格を持ち、様々な知識を活かしてコンサルティング、研修やセミナーの講師、カウンセリングなどを幅広く活動。最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワークライフバランスの推進、女性の活躍促進事業などで活躍している。

■SNS・HP等リンク
Website

石井僚一
著者個人投資家・金融ライター
詳細はこちら 大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。 株式市場の解説や個別銘柄の財務分析、IPO関連記事を得意としている。株式会社ZUUでは長くIPO記事を担当。複数媒体に寄稿しており、Yahoo!トップページに掲載実績あり。

■SNS・HP等リンク
X
  1. 投資信託とETFの違いとは
  2. つみたてNISAでETFの取扱はあるのか
    1. 最も身近な指標?日経225に連動――「ダイワ上場投信-日経225」
    2. TOPIXに連動――「ダイワ上場投信-トピックス」
    3. 400銘柄で構成されるJPX日経400に連動――「ダイワ上場投信-JPX日経400」
  3. ETFのメリットとは?
    1. 手数料が安い
    2. リアルタイムで購入可能
    3. 保有コストが低水準
    4. 少額投資&分散投資が可能
  4. なぜ積立NISAのETF取扱数は少ないのか?
    1. ETF買付手数料のメリットが失われた
    2. 信託報酬のメリットが失われた
    3. 金融庁によるETFの厳しい要件

投資信託とETFの違いとは

投資信託は銀行や証券会社等の金融機関で販売されていることもあり、多くの方になじみがある一方、ETFはあまりよくわからないという方もいるのではないだろうか。つみたてNISA対応のETFを紹介する前にETFについて解説しよう。

ETFとはExchange Traded Fundの頭文字をとったもので、日本語に直すと上場投資信託と呼ばれる。つまり金融機関で一般的に販売されている投資信託に対し、ETFは証券取引所に上場している投資信託という事だ。

投資信託の中で上場しているものはETF、上場していないものは一般的な投資信託と、違いは上場しているか否かということだが、この違いによってETFに様々なメリットが生まれるのである。

ETFのメリットについてはこちらで紹介する。

つみたてNISAでETFの取扱はあるのか

つみたてNISAとは
(画像=NETMONEY編集部)

さっそく、新制度であるつみたてNISAで購入可能なETFについて紹介していこう。つみたてNISA対応のETFは2023年7月現在で8本となっている。つみたてNISAの対象金融商品235本中227本は投資信託となっており、ETFはわずか8本だ。

現在つみたてNISA対象として採用されているETF8本のうち代表的な3本は以下の通りだ。

それでは各ETFについて詳しくみていこう。

最も身近な指標?日経225に連動――「ダイワ上場投信-日経225」

まず紹介するのはダイワ上場投信-日経225だ。このETFは日経平均株価を構成する銘柄すべての株式を組み入れることを原則とし、日々のETFの変動率と日経平均株価の変動率とを一致させることを目指すインデックス投信である。

日経平均株価はご存知の通り日本の経済を代表する指数だ。東証1部上場企業の中から各セクターを代表する銘柄を225社抽出し、それらの銘柄の株価を平均したもの(実際には単純平均ではなく株式分割の補正等も行われる)が日経平均株価となっている。

東証1部上場の企業の中からさらに225銘柄に絞り込まれた指標で、当然ながら採用銘柄は日本を代表するような大手企業が名を連ねている。そのため業界大手企業の業績が色濃く反映されるという特徴がある。

日経平均採用銘柄225社の株式を全銘柄組み込むことを原則としているため、ETFを購入することによって、日本を代表する企業225銘柄すべてに分散投資している事と同様の効果を得ることができる。

日経平均という分かりやすい指数に連動するETFであり、今後日経平均の上昇に期待をする方にはこちらのETFがおすすめだ。

【名称】ダイワ上場投信-日経225
【証券コード】 <1320>
【基準価格】2万9,923円(2021年10月15日終値)
【基準価格の表示単位】1口
【売買単位】1口
【商品分類】追加型投信/国内/株式/ETF/インデックス型
【信託報酬】年率0.275%(税込)以内

TOPIXに連動――「ダイワ上場投信-トピックス」

次に紹介するのはダイワ上場投信-トピックスだ。このETFではTOPIXを構成する全銘柄の株式の時価総額構成比率95%以上を構成する銘柄の株式を組み入れることを原則とし、TOPIXの変動率に一致させることを目指すインデックス投信だ。

TOPIXは東京証券取引所に上場する銘柄から算出される指標だ。1968年1月4日を「100」として、現在どれだけの時価総額であるかが簡単にわかる指標となっている。

TOPIXは日経平均株価の225社に比べてより日本経済や市場全体の影響を受けやすいと言える。

同ETFではTOPIXを構成する全銘柄の株式の時価総額構成比率95%以上を構成する銘柄の株式を組み入れることを原則としており、TOPIXと変動率が一致することを目指している。同ETFに投資を行なうことによって、2,000社を超える銘柄に分散投資を行なうのと同様の効果を得ることができる。

日経平均の225社に比べ、さらに多くの2,000社を超える採用銘柄があるTOPIX、より多くの国内株へ分散投資を希望する方にはこちらのETFがおすすめだ。

【名称】ダイワ上場投信-トピックス
【証券コード】 <1305>
【基準価格】2万1,285円(2021年10月15日終値)
【基準価格の表示単位】1口
【売買単位】10口
【商品分類】追加型投信/国内/株式/ETF/インデックス型
【信託報酬】年率0.275%(税込)以内

400銘柄で構成されるJPX日経400に連動――「ダイワ上場投信-JPX日経400」

次に紹介するETFはダイワ上場投信-JPX日経400だ。このETFは上場する400銘柄で構成されるJPX日経400の変動率に一致させることを目指すインデックス投信である。

具体的な基準として対象となる市場に上場している銘柄の中からまず上場後3年未満、過去3期いずれかの期で債務超過、過去3期すべての期で営業赤字、過去3期すべての期で最終赤字の企業を除外する。

その後直近3年間の売買代金や選定基準日時点における時価総額を勘案し上位1,000銘柄を選定する。選ばれた1,000銘柄の中から3年平均ROE(株主資本利益率)や3年累積営業利益、時価総額(選定基準日時点)により点数を付け、独立社外取締役の選任、IFRS採用、英文資料の開示などの加点を行ない最終的にスコアが高い400銘柄が選定される。

TOPIXの場合であれば債務超過の企業や慢性的な赤字企業などが含まれるが、JPX400ではそれらが排除される仕組みとなっているため、対象となる市場の優良銘柄のみを集めた指標となっている。

同ETFに投資を行なうことで前述の通り、幅広い指標から選別された優良銘柄400銘柄に分散投資することが可能となっている。日経平均やTOPIXへの投資だけでなく、同ETFへの投資も検討の余地がある商品だ。

【名称】ダイワ上場投信-JPX日経400
【証券コード】 <1599>
【基準価格】18万6,578円(2021年10月15日終値)
【基準価格の表示単位】1口
【売買単位】1口
【商品分類】追加型投信/国内/株式/ETF/インデックス型
【信託報酬】年率0.275%(税込)以内

ETFのメリットとは?

ETFのメリットについて4つ紹介しよう。

手数料が安い

1つ目のメリットは売買手数料が安く抑えられる点である。一般的な投資信託の場合、銀行や証券会社で購入する際には買付手数料が発生する。商品によっても異なり、手数料が低水準の投資信託も存在するが、買付金額に対し3%程度のものが多い。

一方でETFの場合は、貸付手数料は株式取引と同じ手数料となるケースが多い。

一般の投資信託は100万円分の購入に対し3万円程度の買付手数料が必要である一方、ETFで購入する場合は数百円程度で済み、手数料の差が大きなメリットとして挙げられる。

リアルタイムで購入可能

2つ目のメリットはETFの場合だとリアルタイムで購入が可能という点だ。一般的な投資信託は1日1回等といった基準価格でのみ売買が可能となっている。

一方ETFの場合は株式と同様に取引所で売買されるので、取引所の売買可能時間であれば朝の注文は朝の価格で、昼の注文は昼の価格でと市場の時価によって売買が可能だ。

又、株式と同様に指値注文や成行注文なども可能であり、市場の動向を睨みながら自分のタイミング、価格で売買ができることもありがたい。

保有コストが低水準

3つ目のメリットはETFの保有コストが低水準であるという点だ。一般的な投資信託では信託報酬という保有コストが発生する。信託報酬は、投資信託を販売した金融機関や実際に投資信託の運用を行なう信託銀行等に支払われるものである。

投資信託協会が発表している公募株式投資信託の信託報酬の平均は2021年9月末のデータで1.03%となっている。仮に1%としても100万円の投資信託を保有している場合単純計算で年1万円もの信託報酬を支払わなければならないのだ。

一方ETFの場合は、一般的な投資信託同様に信託報酬は発生するが、低水準に抑えられているのが特徴だ。実際のETFの信託報酬は商品によって異なるが、例えば日経225連動型上場投資信託 <1321> の場合であれば、2021年9月29日時点の信託報酬は年0.198%(税込)とかなりの低水準となっている。

運用コストは0.1~1%程度と、インデックスファンドを含む一般的な投資信託に比べて低くなっており、長期投資に適した商品と言われています。

引用元:ETFの概要 | 日本取引所グループ

少額投資&分散投資が可能

4つ目のメリットは投資信託と同様少ない金額から分散投資が可能という点だ。株式投資の場合は個別銘柄に投資する為、単元株を購入できるだけの金額が必要となる。

一方のETFでは例えば日経225連動型上場投資信託などに投資することによって、最低2万数千円程度から分散投資することができる。銘柄によっては1,000円以下から始められるETFも存在する

日本株のほか、外国株やREIT(不動産投資信託)、商品などの指標に連動するものなど、種類も豊富。値動きの異なるETFを組み合せることによって、国際分散投資を実現できます。

引用元:ETFの概要 | 日本取引所グループ
株投資家のコメント

なぜ積立NISAのETF取扱数は少ないのか?

これまで紹介してきたように魅力あるETFだが、残念ながらつみたてNISAでは対象となっているETFがわずか8本と極めて少ない状況だ。

一般の投資信託に比べて多くのメリットがあるはずのETFだが、ETFの対象商品の少なさは実はつみたてNISA特有の理由も影響している。

ETF買付手数料のメリットが失われた

つみたてNISAでは残念ながらETFの魅力の一つであった買付手数料の安さというメリットが相対的に失われている。積立NISAでは一般の投資信託の買付手数料をゼロにしなければならないという決まりがある。

一方でETFは販売手数料がもともと低水準だったこともあり、同制度では1.25%以下にするようにと定められている。株式の売買手数料と同様の低水準な手数料体系が売りであったETFだが、同制度の対象となる一般の投資信託が全て買付手数料ゼロとなったことにより、取扱い金融機関によってはETFの方が買付手数料が高くなる場合があるのだ。

信託報酬のメリットが失われた

これまで一般の投資信託は信託報酬が高く、ETFは信託報酬が安いといったイメージがあった。しかしつみたてNISAでは国の基準により一般の投資信託の信託報酬についても低水準にすることが定められている。具体的な信託報酬の水準は指定以下の通りだ。(数値は全て税抜き)

投資信託の信託報酬の基準
・指定インデックス投信
国内資産を対象とする投信 0.5%以下
海外資産を対象とする投信 0.75%以下

・指定インデックス投信以外の投資信託
国内資産を対象とする投信 1%以下
海外資産を対象とする投信 1.5%以下

このような基準を国が発表し、各社が対応を行った結果、基準をさらに下回る低水準な信託報酬の投資信託が同制度の対象商品に数多く追加された。このような各社の努力により、ETFのメリットが相対的に減少する結果となった。

金融庁によるETFの厳しい要件

その他にもETFがつみたてNISAに少ない理由がある。国が同制度の対象となるETFについて基準を定めている。主な基準は以下の通りだ。

ETFの基準
  • 信託契約期間が無期限又は20年以上であること
  • 分配頻度が毎月でないこと
  • ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

以上の3点が守られる他、以下の要件についても全てを満たす必要がある。

ETFの要件
  • 指定されたインデックスに連動していること
  • 投資の対象資産が株式であること
  • 最低取引単位が1,000円以下
  • 販売手数料:1.25%以下
  • 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
  • 金融庁へ届出がされていること

このように同制度の対象となるETFには厳しい基準が定められている。初心者でも気軽に積み立てが可能なように、ETFは最低単位が1,000円以下となっている。現在国内取引所に上場しているETFは数多く存在するが、最低取引単位が1,000円以下のETFとなると数が限られてくる。

また、ETFの場合は取引所に上場することが大前提となる。上場コスト等を考えて、割に合わないと判断した可能性もある。

これまでの常識ではETFで購入した場合の方がお得と言われていたが、つみたてNISAの場合は必ずしもそうではない。

つみたてNISAでETFを検討している方は、ETFだから絶対にお得といった先入観に囚われることなく、冷静に他の対象商品と比べて投資を行なっていただきたい。