つみたてNISAは投資初心者を中心に人気がある非課税制度ですが、円安株高の進行や2024年から新しいNISAが始まることなどから「2023年の今始めるべきか?」「今からでは遅いのでは?」と考える人も多いのではないでしょうか。
結論、積立投資は長期保有すれば利益が出る可能性が高くなるため、 少額からでもつみたてNISAは今すぐはじめるべきです。
本記事では、つみたてNISAを今から始めても遅くはない理由や、始めるタイミング、注意点などについて詳しく解説します。つみたてNISAを今から始めるべきなのか悩んでいる人はぜひ参考にしましょう。
積立NISAを今すぐ始めるべき3つの理由
今から積立NISAを始めるのが遅くはない理由は、3つあります。
20年間保有すれば利益が出る可能性が高いから
積立NISAを今すぐ始めるべき1つ目の理由は、積立NISAを20年間保有すれば利益が出る可能性が高いからです。
上記の資料は、2000年12月末に100万円を投資した場合の、資産価額の推移を示します。投資対象とする資産によってパフォーマンスは異なりますが、外国株式に投資した場合、2022年には資産が4.4倍になっていることがわかります。
近年の株価の値上がりが好影響を与えているのは間違いありませんが、「ITバブル崩壊」、「リーマンショック」、「コロナショック」という3つの株価暴落があっても大きな利益が出ています。
このように、過去20数年を振り返ると世界的な暴落が何度か起きていますが、短期的に急落が起こったとしても焦って売らずに、長期間保有すれば利益を得られる可能性は高いでしょう。
年の途中から始めても40万円の投資枠を使い切れるから
積立NISAを今すぐ始めるべき2つ目の理由は、積立NISAを年の途中から始めても40万円の投資枠を使い切れるからです。
毎月の積立金額の上限は33,333円ですが、SBI証券や楽天証券などの大手ネット証券では「増額設定」や「ボーナス設定」といったサービスがあり、積立NISAの非課税枠を使い切れるように整備されています。
新しいNISAがスタートしても、現行の積立NISAの非課税枠は活用できるので、2023年中に始めておくのがおすすめです。
\年の途中からでも投資枠を使い切れる/
預金や貯蓄型保険ではほとんど利益が出ない
積立NISAを今すぐ始めるべき3つ目の理由は、預金や貯蓄型保険では利益がほとんど出ないからです。
例えばメガバンクの普通預金金利は0.001%であり、優遇金利が適用されるネット銀行などでも0.1~0.2%前後しかありません。
貯蓄型保険の返戻率は、契約内容や解約タイミングなどによって異なるため一概には言えませんが、10年満期で105%の返戻率だったとしても、年利に換算すると0.5%になります。
一方で、物の値段がどれくらい上がっているかを示す消費者物価指数(総合指数)は、前年同月比で3.2%上昇しています。
また、2020年を100とした場合、105.1まで上昇しました(2023年6月23日時点)。
単純に考えれば、2020年に100万円で買えた物が、2023年には105万円を超えるということになります。
この分を資産運用で補うには、100万円の元本を年利1.7%程度で運用する必要があることから、預金や貯蓄型保険では昨今の激しい物価上昇に対応できないという計算になります。
\インフレ対策の1つとして有効/
積立NISAを始めるタイミング
積立NISAを始めるタイミングは、余裕資金がある場合は「今すぐ」、貯金がない場合は「10万円貯めてから」が良いでしょう。自分の収入や貯金をみて、無理のない範囲で始めることが大切です。
原則:今すぐ始める
資金に余裕があり、長期間の保有が前提ならば、原則として今すぐ始めるのがおすすめです。現在の株価水準は高いと感じるかもしれませんが、長期投資が前提であれば利益を得られる可能性は高いと言えます。
「今は株価が高いから投資を始めようか迷っている」という人は、株式の組み入れ比率が低く、債券への投資割合が高い投資信託を選び、リスクを抑えて投資しましょう。
また「増額設定」や「ボーナス設定」といったサービスを利用すれば、年の途中で始めても40万円の非課税枠を使い切れます。
2023年中に積立NISAを始めておけば、2024年から始まる新しいNISAへの切り替えが自動で行われるため、余計な手間もかかりません。
新しいNISAの詳細は、以下の記事でわかりやすくまとめています。
\新しいNISAでもおすすめ/
例外:貯金がない人は10万円貯めてから始める
例外として、貯金がない人は少なくとも10万円貯めてから積立NISAを始めたほうが良いでしょう。なぜなら、10万円未満の貯金では急な出費に対応できなくなる可能性が高く、積立NISAで保有している商品を売却せざるを得なくなるからです。
■急な出費の例や金額
出費の事例 | 金額の目安 |
---|---|
結婚式のご祝儀 | 3万円 |
葬式の香典 | 3千~1万円 |
病気やケガによる医療費 | 3,000円~ |
家電の故障 (買い替え) |
5~10万円 |
スマホの故障 | 2~3万円 |
積立NISAは長期間の分散投資を前提とした制度であり、投資期間が長期に及ぶほど価格変動リスクを抑える効果があります。しかし、短期間での売却は価格変動による影響を受けやすく、下落したタイミングで売却すれば損をしてしまいます。
したがって、保有商品を短期間で売却せざるを得ない状況を避けるためにも、最低でも10万円の貯金が必要です。あくまでも投資は余裕資金で始めるものであり、投資資金の捻出によって生活が苦しくなっては元も子もありません。
以下の記事でお金がない時の乗り切り方についてもまとめているので、なかなかお金が貯まらない人は参考にしましょう。
積立NISAを始めるときの注意点
積立NISAを始める際は、新しいNISAとは別で計算される点や、現行制度の利用は12月末までとなる点に注意が必要です。また、NISA口座の金融機関を変更したい場合は9月末までに手続きを完了しなければならない点にも注意しましょう。
2024年に始まる新NISAとは別で計算される
現行のNISAは、2024年に始まる新NISA(新しいNISA)とは別で計算されます。積立NISAと新NISAは別の制度であるため、現行の積立NISAで保有する商品と同じものを新しいNISAで購入しても、同一管理はできません。
なお、2023年中に積立NISAで購入した商品は、2042年末で非課税保有期間が満了します。
期間満了後は税制上、2042年末の価格で購入したことにされ自動的に課税口座へ移る仕組みになっており、新しいNISAに移せません。
現行のNISAと新NISAでは口座の区分が異なるため別々に計算されますが、どちらも投資信託の預かり一覧で確認できるため、特に不都合はないでしょう。
積立NISAで投資ができるのは12月末まで
現行の積立NISAで投資ができるのは、2023年の12月末までです。2024年以降は新しいNISAの非課税枠が使えますが、現行制度の非課税枠である40万円は、2023年中に使わなければ消滅します。現行制度と新制度の非課税枠は別に持てるので、最大限活用したい場合は2023年中に始めておくのがおすすめです。
なお、12月末といっても投資信託の受渡日が年内である必要があります。2023年の最終受渡日は12月29日(金)となるので、購入する投資信託の受渡日をよく確認しておきましょう。
例えば、SBI証券で人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の場合、受渡日は「約定日から4営業日後」、約定日は「注文日の翌営業日」となります。クリスマスが米国では休業日になることを考えると、遅くとも12月21日(木)までに注文する必要がある点に注意が必要です。
\楽天ポイントが投資に使える/
NISA口座を変更したい場合は9月末まで
NISA口座を他の金融機関に変更したい場合は、9月末までに手続きを行う必要があります。金融機関側の手続きに2週間程度かかることが想定されるので、遅くとも9月中旬頃までに手続きを終えておきましょう。
金融機関を変更する場合は、現在の利用先から「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を受け取り、変更先に提出する必要があります。書類のやり取りにも時間がかかるため、なるべく早めに手続きを始めるのがおすすめです。
なお、2023年分の非課税枠を利用している場合、本年中に金融機関を変更することはできない点にも注意しましょう。
積立NISAを始めるときの積立注文のタイミング
金融機関によっては、積立NISAの積立注文のタイミングを「毎日」「毎週」「毎月」から選択可能です。おすすめの買付頻度を解説します。
毎月1回がおすすめ
長期間の積み立てを前提とする場合、「毎月1回」がおすすめです。積み立て頻度が細かいほど買付タイミングを分散させる効果がありますが、「毎日」と「毎月」ではリターンの差に大きな差はありません。「毎日500円ずつ15年間積み立てた場合」と「毎月1万円ずつ15年間積み立てた場合」のリターンの差は、0.3%未満です。
積立頻度が「毎月」であれば、金融機関によってはクレジットカード決済で投資信託を積み立てることができます(以下クレカ積立)。クレカ積立ならポイントを貯めつつお得に積み立てることが可能となるため、あえて「毎日」を選ぶ必要はないでしょう。
例えばSBI証券なら、東急カードを使って積み立てれば、毎月の決済額に応じて0.5~5.0%のVポイントが還元されます。クレカ積立に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
\ポイント還元率が最大5%/
細かいタイミングは気にしなくていい
毎月の買付日を選択できる金融機関もありますが、細かいタイミングは気にしなくて良いでしょう。給料日に合わせるなど、任意のタイミングを選んで問題ありません。
「月末や月初は注文する人が多く、基準価額に影響があるから購入を避けるべきでは?」といった意見もありますが、投資信託の純資産総額や株式市場の売買代金などから見れば、市場へのインパクトは微々たるものです。
仮に、積立NISAの口座を持っている人全員(約783万口座、2023年3月末時点)が毎月3万3,333円を積み立てた場合でも、月に2,600億円程度の影響しかありません。日本の株式市場だけでみてもおおむね1日3兆円以上の売買があるため、積立NISAが市場に与える影響がいかに小さいかが分かるでしょう。
したがって、買付タイミングによる影響は気にせずに自分の生活スタイルに合わせて選びましょう。
積立NISAにおすすめの証券会社
積立NISAにおすすめの証券会社は、大手ネット証券のなかでも有名なSBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社です。
対面証券や銀行などに比べて取扱銘柄数が豊富で、クレカ積立のポイント還元をはじめとしたサービスが充実しています。
■積立NISAにおすすめの証券会社
SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | |
取扱銘柄数 | 205本 | 194本 | 177本 |
ポイント 還元 (クレカ 積立) |
0.5~5.0% | 0.5~1.0% | 最大1.1% |
ポイント 還元 (投信保有 残高) |
0.0175~0.15% | 10~500ポイント | 0.00%,0.03%,0.08% |
ポイント 投資 |
◯ | ◯ | ✕(積立NISAは対象外) |
SBI証券
SBI証券は、積立NISAの取扱銘柄数が205本あり、業界最多を誇ります。金融庁に届出済の投資信託は235本(2023年7月5日現在)のため、全体の8割以上を取り扱っていることになります。
豊富な選択肢から投資先を選べるので、信託報酬を含めた保有コストが低い商品を選びやすいでしょう。
また、東急カードでクレカ積立をすると、積立金額の0.5~5.0%のポイントが還元されます。還元率はカードのステータスによって異なり、年会費無料のカードでは0.5%となります。カードの種類に応じた還元率は以下の通りです。
さらに、SBI証券では投資信託の保有残高に応じてポイントが毎月還元される「投信マイレージ」というサービスがあります。還元率は年率0.0175~0.15%となり、銘柄によって異なります。
例えば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の還元率は年率0.0415%で、楽天証券やマネックス証券よりもらえるポイントは多いです。
SBI証券には「かんたん積立アプリ」があり、積立NISAの注文がアプリで完結できます。パソコンに慣れていない人は、スマホアプリで簡単に注文できるSBI証券で積立NISAを始めましょう。
\アプリで簡単に注文できる/
楽天証券
楽天証券は、つみたてNISAの対象となる投資信託を194本取り扱っており、SBI証券に次いで豊富なラインナップを取り揃えています。
また、楽天カードで積立設定すると、決済額の0.5~1.0%のポイントが還元されます。カードの種類に応じた還元率は以下の通りです。
■楽天証券のクレカ積立
さらに、楽天証券では貯まった楽天ポイントを使って投資ができます。つみたてNISAを含む投資信託でのポイント利用だけではなく、日本株や米国株、バイナリーオプションに利用することも可能です。
楽天ポイントをよく貯める人、使う人は楽天証券でつみたてNISAを始めましょう。
\ポイント投資できる商品が豊富/
マネックス証券
マネックス証券の取扱銘柄数は177本で、SBI証券や楽天証券に比べるとやや少ないですが、対面証券や銀行などに比べると十分豊富なラインナップといえます。
マネックス証券の魅力は、年会費無料のカードでも、クレカ積立で最大1.1%のポイントが還元される点です。
年会費無料のカードで比較すると、SBI証券や楽天証券の還元率は0.5%または1.0%(条件つき)に留まるため、マネックス証券のほうが高いです。
投信残高に対するポイント還元率は、銘柄によって0.03%または0.08%となっていて、残高に応じて毎月付与されます。保有残高が40万円、還元率が0.08%であれば、320ポイントを受け取れる計算です。
マネックス証券で貯まる「マネックスポイント」は、つみたてNISAの買付に利用できないものの、dポイントやTポイント、Pontaポイント、Amazonギフトカードに等価交換できます。
クレカ積立などのポイント還元率を重視する人は、マネックス証券でつみたてNISAを始めましょう。
\クレカ積立のポイント還元率最大1.1%/
そもそもつみたてNISAはどんな制度?
つみたてNISAは、長期間の積立、分散投資を支援することを目的に、2018年1月から開始された非課税制度です。
投資対象となるのは金融庁の基準を満たす投資信託のみで、「購入手数料無料」「信託報酬が一定水準以下」といった条件が定められています。
一般NISAとの違い
■つみたてNISAと一般NISAとの違い
つみたてNISA | 一般NISA | |
---|---|---|
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 20年 | 5年 |
非課税 保有限度額 (総枠) |
800万円 | 600万円 |
ロールオーバー | 不可 | 2023年まで |
投資対象商品 | 投資信託 | 投資信託 株式 ETFなど |
買付方法 | 積立 | 一括・積立 |
つみたてNISAよりも一般NISAの方が年間の投資枠が大きく、一方で非課税の保有期間はつみたてNISAの方が長くなっています。そのほか、つみたてNISAと一般NISAについては、以下の記事で詳しくまとめています。
新NISAになったら現行のつみたてNISAはどうなる?
新NISA(新しいNISA)になったらつみたてNISAはどうなるかについて、現行のNISAと新NISAの違いを見てみましょう。
■現行NISAと新NISA(新しいNISA)の違い
現行NISA | 新しいNISA | |||
---|---|---|---|---|
つみたてNISA | 一般NISA | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 20年 (2042年まで) |
5年 (2027年まで) |
無期限 | |
制度併用 | 不可(選択制) | 可 | ||
非課税 保有限度額 (総枠) |
800万円 | 600万円 | 1,800万円 (成長投資枠は1,200万円まで) |
|
ロールオーバー | 不可 | 2023年まで | なし | |
口座開設期間 | 2023年まで | 2024年から (恒久化) |
||
投資対象商品 | 投資信託 | 投資信託 株式 ETFなど |
つみたてNISAと同様 | 一般NISAとほぼ同様 (一部除外) |
買付方法 | 積立 | 一括・積立 | 積立 | 一括・積立 |
新しいNISAの開始とともに、現行のつみたてNISAでは新規投資ができなくなります。2024年以降、非課税で投資信託を積み立てたい場合は、新しいNISAの「つみたて投資枠」を利用します。
なお、現在つみたてNISAで保有する商品は、20年間非課税のまま保有可能です。2023年に購入した場合は、2042年12月末まで非課税で保有できます。
つみたてNISAについてよくある質問
つみたてNISAについてよくある質問を以下にまとめました。
- 円安株高の今でもつみたてNISAを始めるべきですか?
-
つみたてNISAは長期間の積み立てを前提としており、短期的なタイミングを見極めて行う投資ではないので、円安株高の今でも始めるべきです。過去の実績では「ITバブル崩壊」「リーマンショック」「コロナショック」といった大幅な下落があっても20年間保有していれば利益が出ています。
- 売却のタイミングはいつにすればいいですか?
-
「目標金額に到達した」「十分に利益が見込める」といった場合であれば、売却を検討してよいタイミングです。つみたてNISAの非課税保有期間は20年間となりますが、必ずしもこだわる必要はありません。長期投資を前提にしつつも、十分な成果を得られたら売却してもよいでしょう。
- iDeCoとはどう違いますか?
-
iDeCo(個人型確定拠出年金)との主な違いは、以下の3点です。
- ・出金の可否(iDeCoは60歳になるまで原則出金できない)
- ・口座管理手数料の有無(iDeCoは口座管理手数料が必要)
- ・税制優遇の種類(iDeCoは掛金全額が所得控除の対象となる)
興味のある方は、以下の記事を参照しましょう。
つみたてNISAとiDeCoは併用可能なため、資金に余裕があれば両方を活用するのも1つの方法です。つみたてNISAとiDeCoの活用方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
つみたてNISAを始めるタイミングはできるだけ早く
長期間保有すれば利益が出る可能性が高いことや、年の途中から始めても40万円の投資枠を使い切れることなどから、つみたてNISAを今から始めても遅くはありません。
少ない金額でもいいので早めに始めて、長期間、継続的に保有することが大切です。
SBI証券なら、「クレカ積立」や「投信マイレージ」でポイントを貯めつつお得に投資ができます。業界最多のラインナップから投資信託を選べる点も魅力です。
つみたてNISAをどこで始めるか迷う人は、SBI証券を選びましょう。
\取扱銘柄数No.1/
詳細はこちら
証券会社で約8年間、株式や投資信託、生命保険等の販売に携わる。
退職後はフリーライター兼個人投資家として活動。
金融ジャンルの記事を中心に執筆しつつ、日々のマーケット動向も注視している。
■保有資格
・証券外務員一種
・生命保険募集人
・2級FP技能士
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