2024年以降、現行のNISA制度が恒久化する予定だ。しかし、以下のような疑問や悩みをお持ちではないだろうか。

疑問

  • NISAの恒久化とはどのような意味なのか
  • 新しいNISAとはどのような制度なのか
  • 現在NISAで保有している資産はどうなるのか

そこで本記事では、新しいNISAの概要や現行制度からの改正点などを詳しく解説する。新しいNISAに関する疑問や悩みを解決できる内容になっているので、ぜひ一読してほしい。

解決できる内容

  • 現行制度からの主な改正点
  • 口座開設期間が恒久化
  • 現行のNISA制度が一本化
  • 年間投資枠の拡大
  • 生涯投資枠の新設
  • 非課税保有期間の無期限化
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目次

  1. 2024年から恒久化される新しいNISAとは
  2. 現行のNISAからの改正点
    1. NISAの恒久化が実現
    2. 現行のNISA制度が一本化
    3. 年間の投資枠が拡大
    4. 生涯投資枠の新設
    5. 非課税保有期間が無期限に
  3. 今年しか使えない現行のNISAを開設する意味はある?
  4. NISAが恒久化される前に口座を開設しておくべき証券会社
    1. SBI証券
    2. 楽天証券
    3. マネックス証券
  5. 新しいNISAについてよくある質問
    1. 現行のNISAで保有している商品はどうすればいいですか?
    2. ジュニアNISAで保有している商品はどうなりますか?
    3. ジュニアNISAで保有している商品はどうなりますか?
  6. NISAは恒久化されて使いやすくなる

2024年から恒久化される新しいNISAとは

2024年から恒久化される新しいNISAとは、現行のNISAを抜本的に拡充し、口座開設期間を恒久化する新制度のことだ。「貯蓄から投資へ」をスローガンに掲げ、国民の資産所得を倍増させることが目的となる。 新しいNISAの概要は以下のとおりだ。

  つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無制限
非課税保有限度額(総額) 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
口座開設期間 恒久化
投資対象商品 金融庁の基準を満たす投資信託(現行のつみたてNISAと同様) 上場株式、ETF、投資信託(一部除外)
買付方法 積立 一括・積立

出典:金融庁|新しいNISA
 

新しいNISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が設定される。各投資枠は併用可能となり、最大で年間360万円までの投資が可能だ。非課税保有限度額(総額)は最大1,800万円までとなり、現行制度から大幅に拡充される。

なお、つみたて投資枠のみの利用で1,800万円の非課税保有限度額(総額)を使い切ることは可能だが、成長投資枠のみの利用は最大1,200万円までとなる。

現行のNISAからの改正点

現行のNISAと新しいNISAの違いを以下の表にまとめる。

  現行NISA 新しいNISA
つみたてNISA 一般NISA つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 40万円 120万円 120万円 240万円
非課税保有期間 20年 5年 無制限
制度併用 不可
非課税保有限度額 (総枠) 800万円 600万円 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
ロールオーバー 不可 2023年まで(新しいNISAへのロールオーバーは不可) なし(非課税保有期間が無期限のため)
口座開設期間 2042年まで※ 2028年まで※ 恒久化
投資対象商品 金融庁の基準を満たす投資信託 上場株式、ETF、投資信託 現行のつみたてNISA対象商品と同様 上場株式、ETF、投資信託(一部除外)
買付方法 積立 一括・積立 積立 一括・積立
※2024年からの新制度開始に伴い、現行の制度は2023年までとなる見込み 出典:金融庁|新しいNISA

NISAの恒久化が実現

現行の制度では口座を開設できる期間が限られているが、新しいNISAでは恒久化が実現する。

これまでは、一般NISAで株式や投資信託への長期投資を考える場合、買付から5年ごとにロールオーバーの手続きを行う必要があった。しかし、口座開設期間の恒久化によって、ロールオーバーの手続きが不要となる。

口座開設期間の恒久化により、新制度では煩雑な手続きが不要となる。そのため、より長期的な視点で投資できるようになるだろう。

なお、現行制度と新制度は完全に分離して考える必要がある。

例えば、2023年中にNISA口座を開設し、年間投資枠を全て利用した場合でも、2024年から始まる新制度の年間投資枠に影響はない。一般NISAなら5年間(2027年まで)、つみたてNISAなら20年間(2042年まで)非課税で保有することが可能だ。 現行制度の年間投資枠に加えて、新制度の年間投資枠も利用できることから、2023年中にNISA口座を開設することがおすすめである。

ただし、現行のNISAで保有する金融商品を、新しいNISAにロールオーバーすることはできない点に注意が必要だ。非課税保有期間が満了する場合、課税口座に移管するか、売却するかのどちらかとなる。

現行のNISA制度が一本化

現行制度は一般NISAとつみたてNISAの選択制だが、新制度では成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となる。 例えば、新しいNISAのつみたて投資枠で投資信託を積み立てし、成長投資枠で上場株式やETFを買付(一括または積み立て)することが可能になるのだ。strong>

現行のつみたてNISAで投資信託の積み立てしかできないことに不満があった人でも、新制度では柔軟に投資を行えるようになる。 ただし、成長投資枠の投資対象商品は、現行の一般NISAとは若干異なる点に注意が必要だ。具体的には、以下の上場株式や投資信託などが除外される。

注意

  • 整理、監理銘柄
  • 信託期間が20年未満の投資信託
  • 毎月分配型の投資信託
  • デリバティブ取引を用いた一定の投資信託

つまり、リスクが高いと判断されるものや、長期投資にそぐわないものは除外されることになる。現行のNISAで保有している銘柄や商品を新しいNISAでも買付したいと考えている場合、投資対象外となるケースもあるだろう。

年間の投資枠が拡大

新しいNISAでは、年間投資枠が拡大する。現行制度の年間投資枠は、一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円までとなっている。一方、新制度では成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円まで投資可能となる。

先述したように、新制度では成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能となるため、最大で年間360万円まで投資枠が拡大するのがポイントだ。現行制度の投資枠では物足りないと考えている人にとっては朗報だろう。 また、つみたてNISAの年間投資枠である40万円までという金額は、1ヵ月あたりで考えると割り切れない金額であることが分かりづらいポイントでもあった。新制度ではそれが解消され、月10万円×12ヵ月=120万円と分かりやすくなる点もメリットといえる。

生涯投資枠の新設

新しいNISAでは「生涯投資枠」が新設され、最大1,800万円までの投資が可能となる。つみたて投資枠だけで1,800万円分利用可能で、成長投資枠のみの利用は1,200万円までとなる。

現行制度の最大投資枠は、一般NISAが600万円、つみたてNISAが800万円であったことから、投資枠が大幅に拡大する。

なお、生涯投資枠は「簿価残高方式」で管理され、売却すると翌年に投資枠が復活する。

新しいNISAの簿価残高方式とは

簿価とは「帳簿価額」のこと。新しいNISAでは金融商品の取得価額(購入時の金額)を基に残高を管理する。例えば、上場株式の取得価額が100万円であれば、値上がりによって評価額が上昇した場合でも、消費される投資枠は100万円となる。仮に、株価が値上がりして200万円で売却した場合でも、翌年に再利用できる投資枠は「100万円」となる。

現行制度との大きな違いは、一度利用した投資枠を再利用できる点だ。仮に、1,800万円分の生涯投資枠を使い切ったとしても、保有資産を売却すれば新たに投資することが可能となる。

非課税保有期間が無期限に

現行のNISAでは非課税保有期間が5年(一般NISA)、または20年(つみたてNISA)と決められているが、新しいNISAでは無期限となる。したがって、期間満了に伴う売却や、ロールオーバーの手続きをする必要がないのがポイントだ。

生涯投資枠である1,800万円の範囲内であれば、生涯非課税のまま保有することも可能となる。

投資期間を長く取ることで、「価格変動リスクを抑えられる」「複利効果が大きくなる」といったメリットがあり、より安定した運用が可能となるだろう。

価格変動リスクとは

上場株式や投資信託の価格が変動することによって生じるリスクのこと。価格の変動要因はさまざまで、景気や経済の動向、政治の情勢、企業の業績などが挙げられる。

複利効果とは

元利合計額(元本と利子の合計)に対して利子がつくこと。運用で得た利益を再投資することで、利益が利益を生み、長期におよぶほど複利効果が大きくなる

今年しか使えない現行のNISAを開設する意味はある?

2023年中に現行のNISAを開設することで、以下のようなメリットがある。

・新しいNISAとは別枠で投資枠を持てる

現行のNISAと新しいNISAは別制度であり、それぞれの投資枠を持つことができる。現行NISAの年間投資枠である120万円または40万円に加えて、2024年からの生涯投資枠1,800万円を利用できる。

・早いうちから投資を経験できる

投資で成功するには、勉強しつつ投資経験を積むことが重要だ。少額からでも早いうちから投資を始めておくことで、知識やスキルを身に付けられる。

・現行NISAの口座があれば、新しいNISAの口座が自動で設定される

現行のNISA口座がある金融機関に、新しいNISAの口座が自動で設定される。したがって、後々の面倒な手続きが不要となるのがメリットだ。

NISAが恒久化される前に口座を開設しておくべき証券会社

NISAが恒久化される前に口座開設をおすすめする証券会社は、「SBI証券」、「楽天証券」、「マネックス証券」の3社だ。 NISAは1人1口座しか開設できないため、自分に合った証券会社を選ぼう。

  SBI証券 楽天証券 マネックス証券
NISA対象商品 【国内株式】 現物取引(東証、名証、札証、福証)、ETF、ETN、国内REIT、IPO、PO、立会外分売、単元未満株(S株)) 【外国株式】 米国、中国、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア 【外国ETF】 米国、中国(香港)、韓国、シンガポール 【投資信託】 【国内株式】 現物取引(東証、名証)、国内ETF、国内REIT、公募増資、PO、立会外分売) 【外国株式】 米国、中国、アセアン(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア) 【外国ETF】 米国、中国、シンガポール 【投資信託】 【国内株式】 現物取引(東証、名証、札証、福証)、ETF、ETN、国内REIT、IPO、PO、単元未満株(ワン株)) 【外国株式】 米国、中国 【外国ETF】 米国、中国 【投資信託】
取扱銘柄数 一般NISA 投資信託:2,571本 米国株式:5,600銘柄超 投資信託:2,547本 米国株式:4,900銘柄超 投資信託:1,337本 米国株式:5,000銘柄超
つみたてNISA インデックス型:168本 アクティブ型:25本 ンデックス型:125本 アクティブ型:65本 イ インデックス型:146本 アクティブ型:21本
※2023年5月16日時点

SBI証券

SBI証券は取扱商品や取扱銘柄が非常に多く、豊富なラインナップから投資先を選択できる点が魅力だ。

一般NISAの対象となる投資信託の取扱数は2,571本あり、主要ネット証券では最多水準となる。つみたてNISAの対象となる投資信託は、金融庁が指定する227本のうち193本を取り扱っている。

また、9ヵ国の外国株式を投資対象とし、米国株の取扱銘柄数は5,600銘柄を超えている。米国株投資に興味がある人にも向いているだろう。 さらに、IPO(新規公開株)の取扱実績が豊富で、2022年の実績は89本となっている。上場銘柄全体の8割以上となり、抽選に参加できる機会が多いのもSBI証券の魅力だ。

楽天証券

楽天証券の魅力は、投資で楽天ポイントが貯まる、使える点だ。楽天経済圏の利用でさらにポイントが貯まりやすくなるため、楽天ユーザーにおすすめの証券会社である。

取り扱う商品も非常に多く、豊富なラインナップから投資先を選択できる。一般NISAの対象となる投資信託の取扱数は2,547本であり、SBI証券に劣らない水準だ。つみたてNISAの対象となる投資信託は、金融庁が指定する227本のうち190本を取り扱う。

米国株の取り扱いは4,900銘柄を超えているため、米国株投資に興味がある人にも十分なラインナップといえる。

マネックス証券

マネックス証券の魅力は、米国株と中国株の取扱銘柄が豊富な点だ。

米国株の取扱銘柄数は5,000銘柄を超えており、SBI証券や楽天証券と同様に豊富な取扱数を誇る。中国株は2,000銘柄(2021年2月1日現在)を超えており、香港市場に上場する銘柄のほぼすべてをカバーしている点も強みだ。 また、IPO(新規公開株)の取扱実績が豊富で、2022年実績は61本であった。上場銘柄全体の6割近くを取り扱っている。

新しいNISAについてよくある質問

現行のNISAから新しいNISAへ変更する手続きは必要ですか?

現行のNISAから新しいNISAへ変更する手続きは不要である。現在、NISA口座を保有している金融機関に、新しいNISAの口座が自動で設定されるからだ。新制度開始に伴い、手続きが煩雑化しないように考慮されている。

現行のNISAで保有している商品はどうすればいいですか?

現行のNISAで保有している商品は、非課税期間が満了となるまで保有可能で、途中売却も可能だ。ただし、非課税期間満了時は「売却」または「課税口座への移管」となり、新しいNISAにロールオーバーはできない。

一般NISAは買付から5年、つみたてNISAは20年で非課税期間が満了する。例えば、2023年に買付した場合、一般NISAは2027年末まで、つみたてNISAは2042年末まで非課税で保有可能だ。

ジュニアNISAで保有している商品はどうなりますか?

ジュニアNISAで保有している商品は、子どもが18歳になるまで非課税で保有できる。 2024年以降はいつでも売却できるが、新しいNISAへのロールオーバーはできない。なお、新制度の開始に伴う手続きは不要だ。

NISAは恒久化されて使いやすくなる

新しいNISAは、口座開設期間の恒久化や投資枠の拡大、非課税保有期間の無期限化などにより、利便性が大幅に向上する。現在NISAを利用していない人も、利用を検討する価値が大いにあるだろう。 まだNISA口座を持っていないという人には、2023年中の開設をおすすめする。その理由は以下の3つだ。

3つの理由

  • 新しいNISAとは別枠で投資枠を持てる
  • 早いうちから投資を経験できる
  • 現行NISAの口座があれば、新しいNISAの口座が自動で設定される

SBI証券なら、NISAの口座開設をオンラインで完結することも可能だ。オンラインでの手続きなら「申し込みフォームの入力」と「本人確認書類のWebアップロード」のみで、最短2営業日でNISA口座の開設が完了する。 短時間で簡単に手続きできるので、早速NISA口座を開設してみてはいかがだろうか。