FXをしていると、ある瞬間にスプレッド(売値と買値の差)が大きく広がることに気づき、「なぜ?」と驚いたり、不満を感じたりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
スプレッドの広がりは、取引コストや利益に直結する非常に重要なポイントです。この記事では、スプレッドが広がる主な理由や、スプレッドが広がりにくい口座の特徴を解説します。
さらに、スプレッドによるコストを抑える方法や、実際に複数口座を開設して比較するメリットについてもご紹介します。

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外資系金融会社で5年間勤めた経験を持つ。2012年からデイトレードを開始し、FXで年間700万円の利益をあげるなど、現役トレーダーとしても活動している。■保有資格
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FXのスプレッドとは?
FXのスプレッドとは、売値と買値の差のことです。FXは買いと売り両方で取引できますが、一般的には売値と買値のレートは一致していません。売値と買値のレートが一致していればスプレッドが0ということになります。

スプレッドはトレーダーにとっては取引コストとなるため、狭い方が有利です。
これからFX取引を始める初心者向けに、必ず押さえておきたいスプレッドの要点を詳しく解説します。
スプレッドはFX会社が設定する
スプレッドは各FX会社が独自に設定しているため、利用する会社によって大きく異なります。
一般的にスプレッドが狭い会社ほどトレーダーに有利に取引できるため、口座を選ぶ際はまずスプレッドの水準をチェックしましょう。
また、スプレッドは時間帯や相場状況によって大きく広がることがあります。その広がりやすさや傾向も会社ごとに異なるため、事前に把握しておくことが重要です。
公式サイトの広告にある数値だけでなく、実際の配信実績やユーザーの口コミも参考にしながら、より有利なスプレッドを提供しているFX会社を見極めましょう。
スプレッドは通貨ペアによって異なる
スプレッドは通貨ペアによって大きく異なります。
例えば、多くのトレーダーから人気を集めているGMOクリック証券(FXネオ)のスプレッドは以下のとおりです。
ドル円 | 0.2銭 | ユーロ円 | 0.4銭(午前9時~翌午前3:00) 5.9銭(左記以外の時間帯) |
---|---|---|---|
ポンド円 | 0.9銭 | 豪ドル円 | 0.5銭(午前9時~翌午前3:00) 5.8銭(左記以外の時間帯) |
ユーロドル | 0.3 pips(午前9時~翌午前3:00) 3.8 pips (左記以外の時間帯) |
ポンドドル | 1.0pips |
豪ドル米ドル | 0.4pips(午前9時~翌午前3:00) 5.8 pips (左記以外の時間帯) |
NZドル米ドル | 1.6pips |
取引量が大きい通貨ペアはスプレッドが狭く、取引量が少ない通貨ペアはスプレッドが広い傾向にあります。

また、FX会社によってスプレッドが狭い通貨ペアが異なる点も覚えておきましょう。
たとえば取引ツールに定評のあるOANDA証券のスプレッドと比較してみます。
ドル円 | 0.5銭 | ユーロ円 | 0.4~1.1銭 |
---|---|---|---|
ポンド円 | 0.9~1.9銭 | 豪ドル円 | 0.6~1銭 |
ユーロドル | 0.5~0.6pips | ポンドドル | 0.8~1.5pips |
豪ドル米ドル | 0.9pips | NZドル米ドル | 1.4pips |
ドル円のスプレッドはGMOクリック証券の方が狭いですが、NZドル米ドルのスプレッドはOANDAの証券の方が狭いです。
自分自身が最も取引したい通貨ペアのスプレッドを確認しておくと良いでしょう。
スプレッドは時間帯によって異なる

スプレッドは取引する時間帯によって大きく変動するため、エントリーのタイミングには注意が必要です。
特に日本時間の早朝5時~7時頃はスプレッドが広がりやすい時間帯です。また、重要な経済指標の発表時も、スプレッドが最も拡大しやすいタイミングのひとつです。
こうした時間帯にスプレッドが広がるのは、取引量が少なく市場の流動性が低下していたり、売買注文が一方向に偏ってしまうことが原因です。詳しい仕組みは後述しますが、「原則固定スプレッド」と表示している会社でも例外的に広がることがある点は覚えておきましょう。
原則固定スプレッドと変動スプレッドの違い
国内のFX会社では原則固定スプレッドを採用しているところが多いですが、中には変動スプレッドを提供している会社もあります。
原則固定スプレッドは、基本的にスプレッドが一定に保たれており、例外的に経済指標の発表時や日本時間の早朝などで一時的に広がる仕組みです。
一方、変動スプレッドは常にスプレッドが動いているため、実際に約定したときのコストを把握しにくいという特徴があります。タイミングによっては急に広がってしまい、取引コストが予想しづらい点がデメリットです。
そのため、原則固定スプレッドのほうがシンプルで取引判断に迷いにくく、特にFX初心者にはおすすめです。
FX口座のスプレッドを確認する時に注意すべきポイント
FX口座のスプレッドを確認する際、特に注意すべきポイントは以下の4点です。
通貨ごとのスプレッドを確認
FXのスプレッドは通貨ペアごとに異なるため、必ず取引する通貨ペアのスプレッドを確認しておきましょう。
一般的に国内FX会社ではドル円のスプレッドが最も狭い傾向があります。ただし、トレーダーによってよく取引する通貨ペアや得意とする通貨ペアは異なります。
例えば、デイトレードやスキャルピングといった短期売買をメインにしている場合は、値動きの小さい高金利通貨ペアをあまり取引しないため、そのスプレッドを気にする必要はほとんどありません。
一方で、スイングトレードなど長期売買を中心にしている場合は、取引回数が少なく1回の損益が大きいため、そもそもスプレッドの影響は小さく、気にする必要がないケースもあります。
自分がどのような取引スタイルなのか、そして頻繁に取引する通貨ペアはどれかを把握した上で、スプレッドを確認するようにしましょう。
スプレッド実績値を確認
FXのスプレッドには「広告表示」と「実績値」の2種類があります。
広告表示は、公式サイトなどに掲載されているスプレッドの目安です。一方、実績値とは実際の取引時にどれくらいのスプレッドが提示されたかを示す数値で、平均値や最大スプレッドが公開されています。
スプレッドは時間帯や経済イベントによって拡大するため、広告表示と実績値が異なるのは珍しくありません。そのため、公式サイトで公開されている実績値を必ずチェックしておくことが大切です。

約定力を確認
FX口座を選ぶ際は、スプレッドとあわせて約定力も確認しておきましょう。
スプレッドを確認する目的は、取引コストをできるだけ抑えるためです。ただし、実際の取引コストにはスプレッド以外に約定力も関わってきます。

約定力とは「希望した価格で注文を成立させる力」のことです。約定力が弱いと、狙った価格で注文が通らず、不利なレートで約定してしまうことがあります。
これは実質的にスプレッドが広がったのと同じで、余計なコストがかかる状態です。
したがって、取引コストを正しく抑えるためには、スプレッドだけでなく約定力もあわせて確認することが大切です。
スプレッドに関する口コミは要注意
FX会社が掲示しているスプレッドが本当に取引時にも提示されるかどうかは、実際に取引してみなければわかりません。
そのため、各社の口コミで報告されているスプレッドは参考になります。ただし、口コミをすべて鵜呑みにするのは危険です。
スプレッドは取引する時間帯や通貨ペア、取引量によって変動します。しかし口コミの中には、取引状況の詳細が書かれていないものも少なくありません。
正しく判断するためには、時間帯や通貨ペアなど条件が明示されている口コミかどうかを確認しながら参考にすると安心です。
FXのスプレッドが広がる理由は?
FXのスプレッドが広がるのは、取引量が減って流動性が低下したときや、売買注文に大きな偏りが発生したときです。
では、なぜこのような状況になるとスプレッドが広がるのでしょうか。その理由を理解するために、まずFX会社が行うカバー取引について見てみましょう。
一般的な店頭FXでは、トレーダーとFX会社が直接取引を行います。しかしこのままでは、トレーダーが利益を得るとFX会社は損失を抱えることになり、利益が相反してしまいます。
そこでFX会社は、トレーダーから受けた注文と同じ内容の注文を金融機関に発注し、リスクをヘッジします。これをカバー取引と呼びます。
例えば、トレーダーが「ドル円を1ドル=100.000円で買い注文」した場合、FX会社は「1ドル=100.000円の売り注文」を受けて取引を成立させますが、そのままではFX会社に損失リスクが残ります。そこで同時に金融機関へ「1ドル=100.000円の買い注文」を出し、リスクを回避するのです。

このような仕組みのため、FX会社は顧客の注文より少しでも有利なレートでカバーできれば、利益になります。

FX取引にはスプレッドがあるため、FX会社は常に顧客の注文より有利なレートでカバー取引を行えます。これがスプレッドがFX会社の収益源となる仕組みです。
ただし、すべての注文が直接カバー取引に回されるわけではありません。多くのFX会社では、まず顧客同士の注文を突き合わせて成立させ(マリー取引)、残った分だけを金融機関にカバー発注しています。
前述の通り、突発的なニュースや重要な経済指標の発表などによって取引量が減少して流動性が下がったり、売買注文が一方向に偏ったりすると、スプレッドは拡大しやすくなります。
多くのFX会社は公式に理由を公表していませんが、店頭FXの仕組みを踏まえると、流動性が低い状況でも顧客より有利なレートでカバーするためと考えるのが自然です。
つまり、スプレッドが広がるのはFX会社がリスクを抑え、健全に運営するための対応策ともいえます。
狭いスプレッドはトレーダーにとって魅力的ですが、取引タイミングによって広がることは避けられません。あらかじめ理解したうえで、取引時間帯や重要イベントのスケジュールに注意して取引することが大切です。
FXのスプレッドが広がりやすいタイミングは?
FXのスプレッドは、原則固定スプレッドのFX会社であっても、一時的に大きく拡大することがあります。
早朝
FXのスプレッドは、流動性が低下する時間帯に拡大しやすいという特徴があります。
日本時間の早朝は特に取引量が少なく、市場の流動性が落ちるため、スプレッドが広がりやすい時間帯です。
中でも朝5時~7時頃は、原則固定スプレッドを掲げている会社でも例外的に大きく広がることがあるので注意しましょう。

また、時間帯によって提供するスプレッドを変えているFX会社もあるので、公式サイトで確認しておきましょう。
経済指標発表時
注目度の高い経済指標が発表されるタイミングは、取引を控える人が増えて流動性が低下したり、大口注文が集中したりするため、一時的に大きな値動きが起こります。その結果、スプレッドが最も広がりやすいタイミングの一つです。
そのため、取引を行う前に特に注意すべき経済指標を確認しておきましょう。
- 米国雇用統計
- 米国FOMC
- 各国政策金利発表
- 消費者物価指数(CPI)
- GDP
経済指標の発表スケジュールは、各FX会社の公式サイトで確認できます。例えば、外為どっとコムの「経済指標カレンダー」なら、重要度や国を絞り込める機能があり、視覚的にも見やすいためおすすめです。

FX取引では必ず損切りを設定することが基本です。ただし、取引の方向が正しかったとしても、スプレッドの拡大によって一時的にレートが損切りラインに到達してしまうことは珍しくありません。
その結果、思わぬ損失につながる可能性があります。取引コストを抑え、不要な損失を避けるためにも、重要な経済指標の発表時には取引を控えることをおすすめします。
各市場のオープン
各市場のオープン時間もスプレッドが大きく拡大するため、注意が必要です。特にロンドン市場とニューヨーク市場のオープン時間は必ず把握しておきましょう。
- ロンドン市場:日本時間16時から(冬時間は17時)
- ニューヨーク市場:日本時間21時から(冬時間は22時)
なお、外国には夏時間の冬時間があり、時期によってオープンの時間帯が異なります。
- 夏時間:3月第2日曜日から
- 冬時間:11月第1日曜日から
ロンドン市場とニューヨーク市場では取引が非常に活発になるため、トレーダーにとって取引チャンスです。しかし市場オープンの時間帯はスプレッドの拡大に加えて、大きな取引が集中して難しい取引になる可能性があるため、十分に注意しましょう。
世界の祝日
世界の祝日も流動性が低下して、スプレッドが拡大する可能性があります。
特に、日本では平日でアメリカやイギリスは祝日という日には十分に注意しましょう。たとえば、以下のような日です。
- クリスマス
- 米国独立記念日
- 米国奴隷解放記念日
- 米国感謝祭
- 聖金曜日
- 英国イースターマンデー
- 英国バンクホリデー
祝日を把握せずに取引を行うと、期待していた値動きがなく、突発的な値動きによって損失が発生する可能性が高い点にも留意しましょう。
突発的な事件
突発的な事件は、大きな値動きとともにスプレッドも急拡大します。ただ、予期できないことも少なくないため、避けられないケースがある点も覚えておきましょう。
過去に大きな値動きが発生した突発的な事件には、以下のようなものがありました。
- 9.11同時多発テロ
- 東日本大震災
- スイスフランショック
- イギリスブレグジット
- トランプ大統領当選
相場はサプライズを嫌うと言われ、予期せぬ出来事や予測を裏切る結果には非常に敏感に反応します。小口から大口のあらゆる注文が殺到することは想像に難くないでしょう。
このようなタイミングで取引コストがかさむことは仕方のないことですが、損切りしないことによる大きな損失は避けるべきです。値動きの動向を予測することは難しいため新規取引は控え、保有ポジションは早々に手仕舞うことをおすすめします。
FXは取引タイミングに気をつけてスプレッドコストを抑えよう
スプレッドはトレーダーにとって取引コストです。本記事で解説した取引コストを抑えるための要点を覚えておきましょう。
- 早朝や指標発表時はスプレッドが拡大しやすい
- FX会社や通貨ペアによってスプレッドは異なる
- スプレッド実績値や約定力も要確認
スプレッドは取引量が少なく流動性が低下したり、売買注文が大きく偏ったりするタイミングで、大きく拡大します。
スプレッドの拡大は、チャートを見ながら確認すると最もわかりやすいです。広がるタイミングや広がり方などを把握できれば、不用意な取引を防止することにも繋がります。
FX口座は無料で開設できますし、口座開設すればほとんどの取引ツールは利用可能です。複数社のFX口座を開設して、実際にどの程度スプレッドが拡大するのか、確認してみましょう。
FX会社のスプレッドに関するFAQ
FX会社のスプレッドに関するよくある質問をまとめました。
「まだ疑問が残っているな」と感じている方は、以下の質問を参考にしてみてください。
- ①急激な相場の変動があり、スプレッドを広げてでもFX会社が取引相手を見つけたいケース
- ②買い手と売り手が少ないため、スプレッドを広げてFX会社が取引相手を見つけるケース
実際に取引をする前に、「デモ口座を開設して日本時間早朝や経済指標発表時に約定力を確認してみる」、「少額で取引して約定力を確認してみる」といった形で自分でもテストをすると安心して取引をすることができます。
当記事で紹介している会社は、すべて金融庁から許可を受け財務局に登録されおり、かつ金融先物取引業協会に加入している業者です。
本記事で参考にしたサイト一覧
- GMOクリック証券FXネオの評判・口コミは?
- みんなのFXの評判・口コミは?
- みんなのFXとLIGHT FXの違いは?
- LINE FXの評判・口コミは?
- DMM FXの評判・口コミは?
- 松井証券(MATSUI FX)の評判・口コミは?
- 外為どっとコムの評判・口コミは?
- ヒロセ通商(LION FX)の評判・口コミは?
- SBI FXトレードの評判・口コミは?
- 楽天FXの評判・口コミは?
- マネーパートナーズFXの評判・口コミは?
- FXTF(ゴールデンウェイ・ジャパン)の評判・口コミは?
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