ファブリカコミュニケーションズIPOレポート

【目次】
①️ファブリカコミュニケーションズIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(3/30追加)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/24追加)

会社名
株式会社ファブリカコミュニケーションズ
コード
4193
市場
JASDAQスタンダード
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 谷口 政人 / 1969年生
会社住所
愛知県名古屋市中区錦三丁目5番30号
設立年
1994年
社員数
144人(2021年1月31日現在)
事業内容
業務支援システム開発・販売事業、SMS配信ソリューション事業、インターネットメディア事業、WEBマーケティング事業、自動車整備・レンタカー事業
URL
https://www.fabrica-com.co.jp/
資本金
100,000,000円 (2021年3月5日現在)
上場時発行済み株数
2,175,800株
公開株数
511,500株
連結会社
1社
スケジュール
仮条件決定:2021/03/22→5,500~6,000円に決定
ブックビルディング期間:2021/03/23 - 03/29
公開価格決定:2021/03/30→6,000円に決定
申込期間:2021/03/31 - 04/05
上場日:2021/04/07→初値6,900円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:東海東京証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:野村證券
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:いちよし証券
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
引受証券:エース証券
引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
引受証券:水戸証券
大株主
(株)カービュー 30.34%
(株)インディゴベース 13.28%
谷口政人 11.56%
奥岡征彦 8.96%
近藤智司 8.40%
(株)SKコーポレーション 5.04%
(株)新東通信 2.60%
あいおいニッセイ同和損害保険(株) 1.56%
(株)エフケイ 1.56%
シナノベンチャーレーシング(合)・・・以下同率保有2名 1.56%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/03 単体実績 
2,024,259 42,122 48,571 85,293
2019/03 連結実績 
3,017,646 155,118 109,008 218,761
2020/03 連結実績 
3,903,055 340,899 113,116 351,980
2020/12 第3四半期連結実績 
3,488,960 452,893 293,538 645,503
ロックアップ情報
谷口政人、株式会社カービュー、奥岡征彦、近藤智司、安藤弘道、株式会社インディゴベース、株式会社SKコーポレーションは、上場後180日目の2021年10月3日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
28億1325万0000円(511,500株×5,500円)
潜在株数(ストックオプション)
485,200株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社ファブリカコミュニケーションズ<4193>は中古車販売業務支援クラウドサービス及び法人向けSMS送信サービスなどを手掛ける名古屋市に本社を置く企業である。

■事業内容詳細

同社は下記4つの事業部門を有している。

・U-CARSソリューショングループ
・SMSソリューショングループ
・インターネットサービスグループ
・オートサービスグループ

当初、自動車修理を行うオートサービスから事業を開始して、徐々に事業分野を拡大している。
ファブリカコミュニケーションズ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
 

●U-CARSソリューショングループ

U-CARSソリューショングループでは、自社開発した中古車販売管理システムと広告出稿プラットフォームを融合した中古車販売業務支援クラウドサービス「symphony(シンフォニー)」を、全国の自動車販売店に提供して定期的な利用料を得ている。

「symphony」は従来1台につき10~15分かかっていた中古車の仕入れ登録作業を、車両情報の自動取得により1台当たりの入力作業を約30秒で終えられる。また「symphonyに登録された中古車は、同社の自社メディアである「車選びドットコム」や「CarMe中古車」を含む10サイト以上の中古車情報サイトにワンクリックで広告掲載が可能である。
 
ファブリカコミュニケーションズ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●SMSソリューショングループ

SMSソリューショングループは、法人向けのSMS(ショートメッセージサービス)送信サービスをメイン事業としている。クライアントである事業者に対し、インターネットを通じてSMS送信機能を提供しており、SMSの送信数に応じて課金する従量課金での売上が計上されている。

同社SMSサービスの「メディアSMS」導入企業は、金融機関、不動産サービス業者、人材サービス業者、運送業者などであり、業種問わず幅広くサービスを提供中。大手のみならず小ロットでの配信が中心の企業も顧客として、実績を着実に積み上げている。
 
ファブリカコミュニケーションズ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●インターネットサービスグループ

インターネットサービスグループではU-CARソリューショングループやSMSソリューショングループのWeb集客支援を担っている。自動車Webマガジン「CarMe」の運営、You Tubeチャンネル「CARPRIME」「車選びドットコム<公式>」の運営等、自社メディアやサービスを展開中である。
 

●オートサービスグループ

オートサービスグループは事故で損害を受けた自動車の修理と修理期間中の代車となるレンタカーの貸出、車両事故のレッカーサービス等をワンストップで提供するサービスと、同社の祖業である自動車整備事業を行っている。
 

■2020年3月期部門別損益

2021年3月期 売上高39億円(対前年同期比29%増)、営業利益3.5億円(同92%増)
・U-CARソリューショングループ 売上高8.6億円(同9.5%増)、セグメント利益2.3億円(同32%増)
・SMSソリューショングループ 売上高17億円(同80%増)、セグメント利益3.8億円(同138%増)
・インターネットサービスグループ 売上高2.5億円(同3.4%増)、セグメント利益0.5億円(同▲47%減)
・オートサービスグループ 売上高11億円(同5.7%増)、セグメント利益0.5億円(同▲38%減)


4サービスいずれも黒字である。2021年3月期はSMSソリューショングループが大幅な増収増益を果たしており、全体でも大幅な増収増益を達成した。

U-CARソリューショングループも増収増益となったが、SMSソリューショングループはそれ以上に伸びており、セグメント利益はSMSソリューショングループが3億円を超えU-CARソリューショングループ(2.3億円)を上回っている。
 

■業績推移

2018年3月期 売上高20億円、経常利益0.4億円、当期純利益0.5億円
2019年3月期 売上高30億円、経常利益1.6億円、当期純利益1.1億円
2020年3月期 売上高39億円、経常利益3.4億円、当期純利益1.1億円
2021年3月期(予想) 売上高47億円、経常利益5.5億円、当期純利3.5益億円
※2019年3月期より連結決算


増収増益を続けており、2020年3月期に経常利益は3億円の大台に到達した。

2021年3月期も増収増益は続き売上高40億円、経常利益5億円の大台到達の予想である。2021年3月期Q3(累計)は売上高35億円、経常利益4.5億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。また、既にQ3時点で2020年3月期の経常利益は上回っている。

2021年3月期の部門別売上高(予想)は、U-CARソリューショングループ9.7億円(対前年同期比14%増)、SMSソリューショングループ24億円(同43%増)、インターネットサービスグループ2.5億円(同0.8%増)、オートサービスグループ11億円(同▲6.2%減)であり、引き続きSMSソリューショングループが大きく伸びる予想である
 

■財務内容

2020年3月期末時点で資産合計17億円、純資産3.5億円、自己資本比率20%である。借入金7.8億円に対し、現預金6.9億円などの流動資産合計11億円となっている。

資産の部にソフトウェア及びソフトウェア仮勘定として無形固定資産1.5億円が存在する。また減価償却費が2019年3月期と2020年3月期のいずれも0.8億円が計上されている。
 

■資金使途

IPOにより9.3億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。

・設備資金 3.4億円
・運転資金 2.0億円
・投融資資金 2.5億円
・長期借入金返済 1.4億円

調達資金はSMSソリューショングループを手掛ける子会社・株式会社メディア4uへの投融資と、オートサービスグループのセールアンドリースバック取引に係る車両2.1億円中心に幅広い分野に投じられる。

公募株数100,000株に対し、売出株数411,500株と売出株の多いIPOである。売出は筆頭株主の株式会社カービューが保有777,000株のうち344,000株を拠出する。
 

■株主構成

筆頭株主は業務提携先で自動車情報関連サイトなどを運営する株式会社カービュー<未上場>(株式シェア30%)である。ただし同社は保有777,000株のうち344,000株を売出に拠出するため、IPO後の株数は半減する

第2位株主は谷口社長の資産管理会社である株式会社インディゴベース(同13%)。谷口社長は個人でも第3位株主(同12%)であり、谷口社長の関係先で株式シェアの25%を有している。

業務提携先、個人及び取引先中心の株主構成となっている。
 

■まとめ

中古車販売業務支援クラウドサービス及び法人向けSMS送信サービスなどを手掛ける、名古屋市に本社を置く企業のIPO案件である。

自動整備事業からスタートした後、中古車販売業務支援クラウドサービスそしてSMS送信サービスに事業を拡大して現在に至った。自動車関連事業の中古車販売業務支援クラウドサービスも伸びているが、法人向けSMS送信サービスであるSMSソリューショングループの急成長が同社成長を支えている。

2021年3月期は売上高47億円、経常利益5.5億円の予想であり、経常利益は大台の5億円到達が見込まれるなど、成長が継続している。

IPOによる調達資金を活用するなどして現在の成長を続けることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、独自開発した中古車販売業務支援クラウドサービス「symphony(シンフォニー)」と、SMS配信プラットフォーム「メディアSMS」を主軸にインターネットサービス事業を展開している。上場市場は東証JASDAQ。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が130億円、2021年3月期の業績予想ベースのPERが37.84倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が35億円とJASDAQ銘柄としては大きく、需給はやや緩いと考えられるが、事業の成長性およびEPSの伸び率からすると公開価格は割安感があり、寄り付きから買いが集まりそうで、初値は後場まで持ち越されると推測する。

セカンダリー市場においては、今期の第三四半期までの業績が通期の業績予想の進捗率で85%となっており、業績予想の上振れも期待できそうだ。また、5月中旬の決算発表時に開示される来期の業績予想でこれまでの数年と同じだけの成長を見せれば、上場直後の調整から見直し買いが強く入る可能性があるので注目したい。目論見書を読む限りにおいては、当社のサービスを日本国内のどれだけの中古車ディーラーが使っているのかわからないが、まだまだ顧客開拓余地があると考えられるので、成長性に陰りが出て来るにはまだ相当の時間を要するのではないだろうか。