【目次】
①️セルムIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(3/25追加)
③株式マーケットアドバイザー・天野秀夫 氏のコメント(3/25追加)
- 会社名
- 株式会社セルム
- コード
- 7367
- 市場
- JASDAQスタンダード
- 業種
- サービス業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 加島 禎二 /1967年生
- 会社住所
- 東京都渋谷区恵比寿一丁目19番19号
- 設立年
- 2016年
- 社員数
- 123人(2021年1月31日現在)
- 事業内容
- 人材開発・組織開発事業
- URL
- https://www.celm.co.jp/
- 資本金
- 116,520,000円 (2021年3月2日現在)
- 上場時発行済み株数
- 6,226,300株
- 公開株数
- 1,835,000株
- 連結会社
- 6社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/03/17→1,040~1,280円に決定
- ブックビルディング期間:2021/03/19 - 03/25
- 公開価格決定:2021/03/26→1,280円に決定
- 申込期間:2021/03/29 - 04/01
- 上場日:2021/04/06→初値1,502円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:野村證券
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:エース証券
- 引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
- 大株主
- (株)アイランドプラス 18.05%
- 加島禎二 16.60%
- 加藤友希 9.93%
- 田口佳子 9.93%
- 若鍋孝司 9.02%
- (株)PINE RIVER 7.22%
- (株)アイズ 6.32%
- 山崎教世 4.06%
- 小林剛 2.96%
- 吉冨敏雄 2.10%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/03 単体実績
3,970,854 551,468 409,365 1,070,188 - 2019/03 連結実績
5,561,579 646,931 373,916 1,304,133 - 2020/03 連結実績
5,298,706 588,142 336,527 1,639,766 - 2020/12 第3四半期連結実績
3,274,640 272,111 127,435 1,762,407 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2021年7月4日まで
または、上場後180日目の2021年10月2日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×公開価格)
- 17億655万0000円(1,835,000株×930円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 500,000株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- 株式会社セルム<7367>は法人顧客に対して人材開発・組織開発の支援事業を展開する企業である。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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同社の前身は1995年12月に設立された株式会社セルム(原始セルム)である。その後、事業再編及び経営陣によるMBOを経て、現在の株式会社セルムの体制となっている。
■沿革
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■同社ビジネスの特長
同社ビジネスは下記の特徴を有している。
・企業経営並びにコンサルティングファームでの経験を有する独立したプロフェッショナルタレントを中心とした1,200人超(2020年3月末現在の契約人数、うち2020年3月期の稼働人数530人)の講師・コンサルタントのネットワーク。
・経営課題に対して自社固有の解を探求し続ける大手企業との長期間のパートナーシップ。
・定型の人材開発・組織開発プログラムを持たず、プロフェッショナルタレントとの共創によるテーラーメイド型のプログラム提供。
同社は上記特徴を活かして、経営的な視点・視座で顧客企業とともにディスカッションを通じて課題を特定し、解決策を顧客企業とともに練り上げ、企画の提案や実行支援を行っている。
■事業内容
同社は人材開発・組織開発事業とその他事業の2事業を運営するが、主なサービスとしては下記を提供している。
・次期経営幹部人材を発掘し・育成する「経営塾」
・現役員陣等への経営メンタリング
・ミドルマネジメント革新
・人材開発体系の構築コンサルティング
・経営理念・ビジョン浸透/企業風土改革支援
・ASEAN・中国における人材開発・組織開発支援
・ファーストキャリア開発事業
・障がい者の雇用・活躍支援
・その他(コーポレートベンチャーキャピタル事業、幼児向けバイリンガル英語教育事業)
上記を大手企業中心にサービス提供している。また5年以上の継続取引顧客からの売上が約7割であり、安定的な顧客基盤を有している。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■今後の経営戦略等
今後については下記施策による成長を計画している。
・顧客基盤の一層の充実
・既存顧客企業における各部門の各部門との取引拡大
・好循環サイクルと顧客リピートの維持
・プロフェッショナルタレント基盤の拡充
同社の主要顧客は売上高1兆円以上の大手企業であるが、今後は売上高2000億円~1兆円規模の企業に対するアプローチも開始する。
同社は既存顧客との取引が多いものの、取引部署は人事部門が多い状態にある。しかし同社サービスは人事部門以外にも提供可能であり、顧客の連結グループ企業や人事以外の部門との取引拡大を目指す。
■業績推移
2018年3月期 売上高40億円、経常利益5.5億円、当期純利益4.1億円
2019年3月期 売上高56億円、経常利益6.5億円、当期純利益3.7億円
2020年3月期 売上高53億円、経常利益5.9億円、当期純利益3.4億円
2021年3月期(予想) 売上高43億円、経常利益2.9億円、当期純利益1.3億円
※2019年3月期より連結決算
売上高50億円超、経常利益6億円前後の水準で2019年3月期~2020年3月期は推移した。
2021年3月期は減収減益(対前年同期比、売上高▲19%減、経常利益▲50%減)の予想であり、利益は半減する見込みである。新型コロナウイルス感染症の影響で顧客の研修施策の延期・キャンセルが発生しており、同社業績に大きな影響を与えている。
2021年3月期Q3(累計は)売上高33億円、経常利益2.7億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。
■財務状況
2020年3月期末時点で資産合計37億円に対し、純資産合計16億円、自己資本比率44%である。借入金14億円に対し、現預金7.1億円を保有している。
資産合計37億円のうち、過去の企業再編により計上されたのれんが22億円あり、資産合計のうち58%を占めている。
■資金使途
IPOにより15億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。
・業務効率化とセキュリティ強化などを目的とした基幹システムへの投資 4.5億円
・中長期成長に向けた人材確保のための採用費及び人件費 2.3億円
・販売促進及び新規事業開発に向けたマーケティング活動に対する支出 1.7億円
・プロフェッショナルタレントへの報酬の支払いを含む運転資金 4.0億円
調達資金は基幹システムへの投資を中心に充当されるが、人件費・マーケティング費・運転資金にバランスよく配分される。
■株主構成
筆頭株主の株式会社アイランドプラスは加島社長の資産管理会社であり、株式シェア18%を有している。加島社長は第2位株主(株式シェア17%)でもあり、加島社長の関係先で株式シェアの35%が保有されている。
個人中心の株主構成であり、ファンドや金融機関の株主参入はない。
■まとめ
法人顧客に対して人材開発・組織開発の支援事業を展開する企業のIPO案件である。 社外のプロフェッショナルタレントを活用する形で、大手企業に対して人材開発・組織開発のサービスを提供している。取引先は売上高1兆円を超える大手中心であり、5年以上の継続取引顧客からの売上が約7割を占めるなど、安定的な顧客基盤を有している。
2019年3月期~2020年3月期は売上高50億円超、経常利益6億円前後の水準で推移したが、2021年3月期は新型コロナウイルス感染症の影響により売上高43億円、経常利益2.9億円で減収減益の予想である。IPO直後の決算が減収減益となるが、IPOによる調達資金を活用するなどして再度成長軌道に乗ることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - 株式マーケットアドバイザー・天野秀夫氏のコメント
- 同社は、大手企業を主要取引先として、人と組織に関わるコンサルティングや人材の育成と開発を支援する人材開発・組織開発ビジネスを展開している。連携する1200名超のビジネス・プロフェッショナルによる知見と経験が活かしていることが特徴だ。
公開価格から試算したIPO時の推定時価総額は79億円規模で、会社側の2021年3月期業績1株利益予想26.4円から計算した公開価格1280円のPERは48.4倍。有力な類似対象企業とみられる東証1部のリンクアンドモチベーション<2170>がPER100倍超、インソース<6200>が同63倍という水準からすると、株価バリュエーションに割高感はない。
公開株式数(公募株数+オーバーアロットメント含む売り出し株数)が200万株強と多いものの、大株主にはすべて価格解除条項がない90日間のロックアップが掛かっており、上場前株主にベンチャーキャピタルも見られないことから、大口売りの懸念は少ない。IPO時の需給的は締まっているとみられる。また、想定価格930円に対してブックビルディング仮条件が上限1280円、下限1040円と上振れて決定したことが注目される。想定価格に対して仮条件が上振れて決定したIPO銘柄は、公開価格に対して初値は上に飛びやすくなる傾向がある。公開価格水準が1280円と低いことからも、個人投資家による初値買いを集めやすい。
悩ましいのは業績予想にある。新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、会社側は2021年3月期売上高42億9000万円(前期比19%減)、営業利益3億円(同50%減)見込みと、大幅な減収減益予想を開示している。ただ、通期予想に対する第3四半期(4-12月)業績の進捗率は売上高で76%、営業利益で89%に達しており、増額修正期待も膨らみやすい。セカンダリー市場については、2022年3月期の収益見込みが焦点になり、上場時のIRおよび2021年3月期本決算での業績予想が、株価トレンドを決めてくることになるだろう。