【目次】
①️紀文食品IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(3/30追加)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/24追加)
- 会社名
- 株式会社紀文食品
- コード
- 2933
- 市場
- 市場第一部
- 業種
- 食料品
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 堤 裕 / 1956年生
- 会社住所
- 東京都中央区銀座五丁目15番1号
(最寄りの連絡場所) 東京都港区海岸二丁目1番7号 - 設立年
- 1947年
- 社員数
- 1063人(2021年1月31日現在)
- 事業内容
- 水産練り製品類、惣菜類、水産珍味類等の食品製造販売及び仕入販売
- URL
- https://www.kibun.co.jp/
- 資本金
- 4,425,800,000円 (2021年3月8日現在)
- 上場時発行済み株数
- 22,208,181株
- 公開株数
- 4,144,000株
- 連結会社
- 14社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/03/22→1,060~1,160円に決定
- ブックビルディング期間:2021/03/24 - 03/30
- 公開価格決定:2021/03/31→1,160円に決定
- 申込期間:2021/04/02 - 04/07
- 上場日:2021/04/13→初値1,271円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:みずほ証券
- 引受証券:野村證券
- 引受証券:大和証券
- 引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:極東証券
- 引受証券:エース証券
- 大株主
- 保芦將人 25.79%
- (株)紀鳳産業 9.75%
- (株)みずほ銀行 4.74%
- (株)匠屋松兵衛 4.11%
- 紀文グループ社員持株会 3.84%
- 落合正行 3.07%
- キッコーマン(株) 2.96%
- 野村ホールディングス(株) 2.60%
- (株)大和証券グループ本社 2.34%
- みずほキャピタル(株) 1.93%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/03 単体実績
46,318,372 1,949,995 2,021,569 5,066,801 - 2019/03 連結実績
103,237,692 2,054,654 474,465 5,531,713 - 2020/03 連結実績
102,252,620 2,307,862 983,273 3,604,324 - 2020/12 第3四半期連結実績
76,452,095 2,854,637 2,058,918 5,348,326 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2021年7月11日まで
または、上場後180日目の2021年10月9日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×公開価格)
- 54億2864万0000円(4,144,000株×1,310円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- なし
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- 株式会社紀文食品<2933>は水産練り製品、惣菜等の食品の製造販売などを行う国内大手企業である。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■事業内容
同社は下記3事業部門から構成されている。
・国内商品事業
・商品関連事業
・海外食品事業
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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●国内商品事業について
国内商品事業では、主に国内で水産練り製品、惣菜、水産珍味等の食品の製造及び販売を行っている。グループ全体として「恵庭工場(北海道)」、「東京工場(千葉県)」、「船橋工場(千葉県)」、「横浜工場(神奈川県)」、「静岡工場(静岡県)」、「岡山総社工場(岡山県)」などの工場で製造することで、日本全国に安定供給できる体制を整えている。
また水産練り製品以外にも、すり身、冷凍魚等の水産物品、卵、穀物、大豆、胡麻等の農畜産物などの食品の輸出入・国内仕入販売も手掛けている。
●食品関連事業
食品関連事業の内容はロジスティクス事業であり、チルド食品の国内物流を核に、荷主から物流を一貫して請け負う3PL(サードパーティ・ロジスティクス)ビジネス及び複数の顧客と同社が車両を共有して配送する共同配送事業などを行っている。
●海外食品事業
海外食品事業では、海外において水産練り製品等の食品の製造販売及び水産練り製品やすり身等の畜産水産品の輸出入及び仕入販売を行っている。
海外に関連会社含め9拠点を有し事業展開している。
■2020年3月期部門別損益
2020年3月期 売上高1022億円(対前年同期比▲1.0%減)、営業利益28億円(同6.2%増)
・国内食品部門 売上高727億円(同▲2.7%減)、セグメント利益15億円(同19%増)
・海外食品事業 売上高109億円(同1.8%増)、セグメント利益7.9億円(同▲17%減)
・食品関連事業 売上高186億円(同4.5%増)、セグメント利益4.3億円(同9.5%増)
主力事業の国内食品事業が減収となったため、全体でも若干の減収となっている。しかし国内事業は減収の一方で増益を果たしており、全体としても増益となった。
海外食品事業は若干の増収ながら、対前年同期比▲17%の減益。一方で食品関連事業は増収増益を果たしており堅調な推移を見せている。
また同社の売上高は10~12月の第3四半期が下記のように最多となる、その結果、営業利益は上期が赤字で下期が黒字という状態である。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■業績推移
2018年3月期 売上高463億円、経常利益19億円、当期純利益20億円
2019年3月期 売上高1032億円、経常利益21億円、当期純利益4.7億円
2020年3月期 売上高1023億円、経常利益23億円、当期純利益9.8億円
2021年3月期(予想) 売上高1006億円、経常利益30億円、当期純利益20億円
※2019年3月期より連結決算
売上高1000億円超、経常利益約20億円の状態から、徐々に増益が続いている。2021年3月期は対前年同期比で経常利益は+28%の増益予想である。また当期純利益は同+107%となり倍増の予想である。
2021年3月期Q3(累計)は売上高765億円、経常利益29億円であり、通期予想の達成に向け順調に推移している。
■財務内容
2020年3月期末時点で資産合計524億円に対し、純資産合計36億円、自己資本比率6.9%である。
借入金288億円に対し、現預金26億円を保有。流動資産216億円、建物などの有形固定資産194億円に次いで、投資その他の資産合計107億円となっている。尚、投資その他の資産合計のうち75億円が退職給付に係る資産である。
キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フローは2019年3月期▲6.4億円、2020年3月期1.2億円で推移している。退職給付に係る資産及び負債の減少が2019年3月期▲22億円、2020年3月期▲24億円発生しており、本科目により営業活動によるキャッシュ・フローが大きく減少している。
■資金使途
IPOにより37億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。
・既存商品生産設備の更新及び新規商品生産設備の新設費用 31億円
・海外事業の製造ライン増説(連結子会社に対する投融資) 5.6億円
調達資金の大半は生産設備の更新や新設に充当される。
■株主構成
代表取締役会長の保芦將人氏が筆頭株主であり株式シェアの26%を有している。第2位株主の株式会社紀鳳産業(同9.8%)に加えて株式会社松嶋商事(同1.7%)も、保芦会長が議決権の過半数を持つ企業である。保芦会長の関係先で37%の株式が所有されている。
第3位株主の株式会社みずほ銀行(同4.7%)、8位野村HD株式会社(同2.6%)、9位株式会社大和証券グループ本社(同2.3%)など、多数の金融機関が株主として参入している。
また第7位キッコーマン株式会社(同3.0%)を始め取引先も多数が株主となっている。
■まとめ
日本を代表する水産練り製品、惣菜等の食品の製造販売などを行う企業のIPO案件である。売上高1000億円超、経常利益約20億円の状態から、徐々に増益が続いている
練り物製品が有名であるが練り物をはじめとする国内商品事業、3PLビジネスなどを手掛ける商品関連事業、海外展開を行う海外食品事業の3事業から構成されている。ただし最大の事業部門は国内商品事業である。
既に大手の地位を確立する国内市場は、少子高齢化により今後は市場縮小が予想される。国内事業の効率化を行いながら海外事業などにより継続的な成長を行うことができるか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社グループは、日本国内において水産練り製品、惣菜、水産珍味類等の食品の製造販売及び水産練り製品の原材料となるすり身及び水産練り製品等の水産品、農畜産品の輸出入と国内仕入販売事業を展開している。上場市場は東証1部。
株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が257億円、2021年3月期業績予想ベースのPERは12.6倍となっている。1株当りの配当は2021年3月期は12円で公開価格での配当利回り1%となっているが、上場した後の配当額については未定となっている。上場当日の株価動向は、上場市場が東証1部でPERの水準も低いことから、資金吸収額が55億円あっても初値は壊れることはないと考える。
むしろ、その知名度の高さから個人投資家で長期保有の目的の買いも見込める銘柄である。いまのところ、株主優待は発表されていないが、個人向けの商材を扱う企業なので、配当に加えて優待があれば、上場後の株価も堅調に推移すると考えられる。
セカンダリー市場においては、5月の決算発表で開示される来期の業績の動向よりも、実際の配当額や優待の中身などで個人投資家の買いが入る可能性もある。上場後の需給においても、特段、売り急ぐ株主も居ないことから値が大きく崩れることはないと推測するが、上場後に公開価格近辺で株価が推移するなら、長期保有目的で少し保有する戦略もありだろう。