アイスコIPOレポート

【目次】
①️アイスコIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(3/30追加)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/22追加予定)

会社名
株式会社アイスコ
コード
7698
市場
JASDAQスタンダード
業種
卸売業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 相原 貴久 / 1971年生
会社住所
神奈川県横浜市泉区新橋町1212番地
設立年
1952年
社員数
651人(2021年1月31日現在)
事業内容
アイスクリーム・冷凍食品(冷食)卸販売を行うフローズン事業及び生鮮食品スーパーの展開を行うスーパーマーケット事業の運営
URL
http://www.iceco.co.jp/
資本金
75,000,000円 (2021年3月5日現在)
上場時発行済み株数
1,822,500株
公開株数
533,000株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/03/19→1,750~2,000円に決定
ブックビルディング期間:2021/03/23 - 03/29
公開価格決定:2021/03/30→2,000円に決定
申込期間:2021/03/31 - 04/05
上場日:2021/04/08→初値2,900円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:野村證券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
大株主
(株)KANコーポレーション 38.70%
相原敏貴 21.07%
相原貴久 8.60%
アイスコ従業員持株会 4.56%
江崎グリコ(株) 4.30%
相原久子 3.01%
青木哲也 2.58%
野口みゆき 2.58%
永野泰敬 1.03%
山本宗男 0.95%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/03 単体実績 
32,991,382 831,414 416,732 1,498,096
2019/03 単体実績 
35,214,791 419,247 223,205 1,718,105
2020/03 単体実績 
36,728,211 212,303 144,457 1,833,626
2020/12 第3四半期単体実績 
31,514,514 880,986 567,535 2,379,581
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年7月6日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
9億3275万0000円(533,000株×1,750円)
潜在株数(ストックオプション)
139,050株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社アイスコ<7698>はアイスクリーム・冷凍食品の卸売と食品スーパーマーケット「スーパー生鮮館TAIGA」を展開する横浜市に本社を置く企業である。
 
アイスコ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■沿革

同社は1948年5月に相原冷菓店として、アイスキャンデーの製造・販売・卸売り等の経営から事業を開始。

その後2009年4月にスーパーマーケット事業を展開する株式会社大我産業を吸収合併して、スーパーマーケット事業部を発足した。

アイスクリーム・冷凍食品の卸売事業が祖業であるが、その後の事業買収によりスーパーマーケット事業を展開し現在に至っている。
 

■事業内容詳細

同社は下記2事業を展開している。

・フローズン事業
・スーパーマーケット事業

●フローズン事業

フローズン事業では関東及び東海エリアを中心に13拠点の物流センター・営業所と約300台の配送用トラックを所有し、主にドラッグストア、食品スーパー等の小売店で販売されるアイスクリーム及び市販用冷凍食品の卸売を行っている。

同社はアイスクリーム・冷凍食品の卸問屋として「ドロップ納品」(商品をバックヤードに置いてくるだけの納品スタイル)ではなく、売り場に直接陳列して納品する「フルメンテナンスサービス」(得意先の売り場に直接商品を納品し、売り場づくりまで同社配送員が行うサービス)を主として提供している。

また同社の配送は通常9割を自社社員が手掛けており、残り1割を協力会社等に委託している。自社社員で配送することで、きめ細かいサービスを提供するとともに、フルメンテナンスサービスの質を高める教育を積極的に行い、得意先の開拓、拡大を図っている。

発注から売り場づくりに至る、納品に係る付随業務を提供するフルメンテナンスサービスの需要が一層高まると同社は考えており、同サービスの品質を高めることで成長を図る考えである。
 

●スーパーマーケット事業

スーパーマーケット事業では神奈川県中心に「スーパー生鮮館TAIGA」を8店舗、テナントを2店舗展開している。

直営店舗は出店立地の環境に応じ主に売り場面積150坪から320坪の範囲で店舗展開を進めている。
 
アイスコ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■2020年3月期セグメント別損益及び主要取引先

2020年3月期 売上高367億円(対前年同期比4.3%増)、営業利益1.5億円(同▲55%減)
・フローズン事業 売上高273億円(同9.7%増)、セグメント利益0.7億円(同▲63%減)
・スーパーマーケット事業 売上高94億円(同▲8.9%減)、セグメント利益0.8億円(同▲42.9%減)

フローズン事業は対前年同期比で増収となったものの、フローズン事業とスーパーマーケット事業のいずれも減益となっている。

フローズン事業は物流拠点の開発や委託費用の増加を受けて減益となり、スーパーマーケット事業は減収に加え店舗の大型改装や老朽化した設備の入替を行った結果として、減益となった。

また2020年3月期の主要取引先は株式会社クリエイトエス・ディー(神奈川県地盤のドラッグストア)が売上高79億円(割合22%)、株式会社ドンキホーテ及びそのグループが売上高70億円(同19%)であり、両社で売上高の4割が計上されている。2019年3月期及び2021年3月期Q3時点も同様の状態である。
 

■業績推移

2018年3月期 売上高330億円、経常利益8.3億円、当期純利益4.2億円
2019年3月期 売上高352億円、経常利益4.2億円、当期純利益2.2億円
2020年3月期 売上高367億円、経常利益2.1億円、当期純利益1.4億円
2021年3月期(見込) 売上高402億円、経常利益7.6億円、当期純利益4.9億円
2022年3月期(予想) 売上高420億円、経常利益5.4億円、当期純利益3.8億円


着実に増収は続いているが、利益は2018年3月期がピークである。経常利益は2018年3月期の8.3億円をピークに減益が継続している。

2021年3月期は増収増益で、売上高400億円の大台到達並びに経常利益7億円の回復を見込む。経常利益は2018年3月期水準には及ばないが、当期純利益は同水準を若干上回る見込みである。

また2022年3月期は増収の予想だが、経常利益は5.4億円と減益を予想している。

尚、フローズン事業でのアイスクリームという製品の特性上、売上高はQ2の割合が高くなる傾向がある。2020年3月期の各四半期の売上高及び営業利益は下記で推移した。
 
アイスコ
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■財務内容

2020年3月期末時点で資産合計136億円に対し、純資産合計18億円、自己資本比率13%である。借入金43億円に対し、現預金13億円など流動資産合計70億円となっている。また土地(25億円)及び建物(22億円)などで有形固定資産53億円を計上している。

キャッシュ・フロー計算書では営業活動によるキャッシュ・フローが2019年3月期6.8億円、2020年3月期3.1億円となっている。年間3.7~3.8億円の減価償却費が計上されており、当期純利益に比べ営業活動によるキャッシュ・フローは増加している。
 

■資金使途

IPOにより5.1億円の資金調達を行い、フローズン事業の販売網拡大に伴う配送用トラックの購入資金に3.8億円を充当する予定である。
 

■株主構成

筆頭株主(株式シェア39%)の株式会社KANコーポレーションは相原社長及び相原会長の資産管理会社である。相原社長は第3位株主(同8.6%)でもある。また第2位株主(同21%)は相原会長であり、相原社長及び相原会長の関係先で約7割の株式が保有されている安定的な株主構成である。

事業会社として第5位株主に江崎グリコ株式会社<2206>(同4.3%)が株主参入しているが、それ以外に取引先や金融機関などの株主参入はなく、個人中心の株主構成となっている。
 

■まとめ

アイスクリーム・冷凍食品の卸売と食品スーパーマーケット「スーパー生鮮館TAIGA」を展開する横浜市に本社を置く企業のIPO案件である。

着実な増収が続く反面、2018年3月期の経常利益8.3億円をピークに2020年3月期は経常利益2.1億円まで減少している。

2021年3月期は増収増益となり、売上高402億円、経常利益7.6億円の着地を見込んでいる。ただし2018年3月期の経常利益の水準には及ばない。また2022年3月期は増収減益予想である。

IPOを契機に、調達資金を活用するなどして継続的な利益成長を行う体制整備を行うことができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、アイスクリーム・冷凍食品(冷食)卸販売を行うフローズン事業及び生鮮食品スーパーの展開を行うスーパーマーケット事業の展開している。上場市場はJASDAQ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が36億円、2022年3月期の業績予想ベースのPERが9.7倍となっている。配当は未定だが目論見書を読む限り、上場後に実施を開示すると推測する。
 
上場当日の株価動向は、資金吸収額が12億円で需給はさほど緩くはないが、2022年3月期の業績が減益予想となっていることから、成長性に欠けるとの見方が個人投資家に広がると、初値は前場の早い時間に付くと予想する。同日にJASDAQに上場する銘柄が他に1社あり、比較されると割負けする可能性が高い。

セカンダリー市場においては、主力のアイスクリームが季節商品であり、今年の夏が猛暑になるか冷夏になるかによって業績が左右されるので、第2四半期の開示のタイミングで株価が大きく上にも下にも動く可能性がある。また、長期的な需給については、金融の投資家が株主に入ってないので、株価は純粋に業績連動となると考える。