【目次】
①️Appier Group IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(3/18追加)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/15追加)
- 会社名
- Appier Group株式会社
- コード
- 4180
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役CEO 游 直翰 /1979年生
- 会社住所
- 東京都港区愛宕二丁目5番1号
- 設立年
- 2018年
- 社員数
- 492人(2021年1月31日現在)
- 事業内容
- 最先端の機械学習を活用したAI技術によって、マーケティングとセールスの領域において、企業の持つデータが真の価値を発揮することを可能にするAIプラットフォームの提供
- URL
- https://www.appier.com/ja/
- 資本金
- 6,063,000円 (2021年2月24日現在)
- 上場時発行済み株数
- 99,872,490株
- 公開株数
- 17,890,500株
- 連結会社
- 14社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/03/12→1,400~1,600円に決定
- ブックビルディング期間:2021/03/15 - 03/19
- 公開価格決定:2021/03/22→1,600円に決定
- 申込期間:2021/03/23 - 03/26
- 上場日:2021/03/30→初値2,030円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:SMBC日興証券> (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:BofA証券
- 引受証券:野村證券
- 引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:UBS証券
- 大株主
- Plaxie Inc. 18.54%
- SEQUOIA CAPITAL INDIA INVESTMENTS IV 16.67%
- Global Premier Group Limited 6.90%
- TA STRATEGIC PTE. LTD. 5.88%
- 蘇 家永 4.75%
- ソフトバンクグループ(株) 4.74%
- HIPPO TECHNOLOGY INVESTMENT COMPANY LIMITED 3.95%
- GSEN APPIER CLIENT ASSET ACCOUNT 3.86%
- ASEAN CHINA INVESTMENT FUND III L.P. 3.79%
- HIPPO II TECHNOLOGY INVESTMENT COMPANY LIMITED 3.62%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/12 連結実績
6,290,557 -1,963,946 -1,949,589 -4,246,189 - 2019/12 連結実績
7,219,735 -2,253,407 -2,349,727 -6,513,598 - 2020/09 第3四半期連結実績
6,176,274 -1,367,315 -1,393,295 7,904,770 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後180日目の2021年9月25日まで
または、上場後360日目の2022年3月24日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 286億2480万0000円(17,890,500株×1,600円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 2,172,490株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- Appier Group株式会社<4180>はマーケティングとセールス領域で活用されるAIプラットフォームを提供する台湾で創業された企業である。
■沿革
同社の前身は2012年6月に台湾で設立され、AIを活用した企業のマーケティングソリューションの研究を開始した。
2014年7月にAppier Japan株式会社が設立され、2018年4月にグループの中間持株会社としてAppire Group合同会社を設立した。その後2019年1月にAppire Group合同会社の組織変更によりAppier Group株式会社が設立されている。
最終的に2021年2月にグループ再編が行われ、持株会社のAppier Holdings,Inc.の株式分配が行われ、同社が持株会社となり現在に至っている。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■事業内容
同社はAIマーケティングソリューションをSaaS型モデルで提供する。AIにより自動的に消費者の行動を予測するという特徴を持った、マーケティング及びセールス活動の全領域を支援するソリューションを提供している。
同社のAIプラットフォーム上で提供されるソリューションは、最先端のAIモデルによって将来予測を行う特徴を持ち、下記4つのツール及び領域に分けられている。
・潜在ユーザーの予測及び獲得:CrossX
・ユーザーの維持及び関係構築:AIQUA
・購買・アクションへの動機付け:AiDeal
・オーディエンス・インテリジェンス:AIXON
SaaS型のサービス提供形態であり、既に2020年12月期時点でリカーリング売上収益比率は96%となっており、殆どの売上は継続的な売上が見込める先である。
また同社では全エンジニアの約70%(2021年1月末時点)がAIまたはビッグデータ領域の博士号または修士号を有している。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■同社顧客基盤
2020年の売上収益における同社サービスの提供先はEコマース&小売とゲームが同率の28%である。次でソーシャル&エンターテイメント19%、消費財9%と続く。
主な活用事例及び827社の顧客のうち著名企業は下記となっている。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
2019年12月期は株式会社サイバーエージェント<4751>に対し、主力売上先として売上高9.7億円(割合13%)が計上されている。また割合は2018年12月期15%、2020年12月期19%で推移しており、継続的な大口顧客である。
■業績推移
2018年12月期 売上収益63億円、税引前損失▲20億円、当期損失▲19億円
2019年12月期 売上収益72億円、税引前損失▲23億円、当期損失▲24億円
2020年12月期(未監査) 売上収益90億円、営業損失▲16億円、当期損失▲15億円
2021年12月期(予想) 売上収益109億円、営業損失▲16億円、当期損失▲17億円
※同社はIFRSを採用
※当期損失=親会社の所有者に帰属する当期損失
2019年12月期まで50億円を超える売上収益は計上されているものの、▲20億円前後の赤字も計上されている。
2020年12月期も増収となり売上収益90億円まで拡大。また売上の拡大により赤字額は減少しており、当期損失▲15億円まで赤字幅が減少した。
2021年12月期は売上収益100億円の大台突破の予想である。ただし営業人員やエンジニア人員に対する先行投資などが発生し、2020年12月期程度の赤字計上予想となっている。
尚、2019年12月期が公開申請決算期であり期越え決算でのIPOである。
■財務内容
2019年12月期末時点で資産合計121億円に対し、資本合計▲65億円であり債務超過。2020年12月期は資産合計124億円に対し、資本合計77億円であり、自己資本比率62%まで回復した。借入金19億円に対し、現預金82億円を保有している。また過去に複数回のM&Aや事業再編を行っており、2020年12月期はのれん及び無形資産が13億円計上されている。
キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フローが2019年12月期▲18億円、2020年12月期▲8億円とマイナス。ただしマイナス幅は改善されている。また2019年12月期の財務活動によるキャッシュ・フローは親会社からの借入による収入(108億円)により111億円となっている。
■資金使途
IPOにより138億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。
・製品開発を行うエンジニア、営業人員などの人件費 111億円
・SaaSサービスを提供するためのクラウドサービス利用料 13億円
・新規顧客獲得のための広告宣伝費 2.5億円
・借入金の返済 11億円
調達資金は主に開発及び営業人員に向けた人件費(資産化の要件を満たした開発関連支出を含む)に充当される。
■株主構成
筆頭株主(株式シェア19%)のPlaxie INC.は游社長及び李COOが支配する企業である。
第2位株主(同17%)のSEQUOIA CAPITAL INDIA INVESTMENTS IVは米国の著名VCであるSEQUOIA CAPITALの運営する投資ファンドである。
第6位株主(同4.8%)としてソフトバンクグループ株式会社<9434>が株主参入している。またソフトバンクグループのLINE株式会社も1.0%の株主となっている。
また国内大手VCのJAFCOもファンドで株式シェア2.0%の出資を行っている。
■まとめ
台湾で設立された、国内及び海外に広く拠点を持つマーケティングとセールス領域で活用されるAIプラットフォームを提供する企業のIPO案件である。
AIなどで博士及び修士号を持つ多くのエンジニアが多数所属するAIベンチャー企業であり、米国の著名VCであるSEQUOIA CAPITALが出資している。ただし年間▲10億円以上の赤字が計上されており、利益成長はこれからの段階である。
IPOによる調達資金を活用してどのようなスピードで成長して、どのタイミングで黒字化するのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。- IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、AI(人工知能)によって自動的に消費者の行動を予測するという特徴をもった、マーケティングとセールスの活動の全領域を支援するソリューションをSaaS(Software as a Service)形式で顧客に提供する事業を展開している。
株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が約1,600億円、2021年12月期の業績予想ベースは赤字となっているが、売上予想が約110億円でPSRは15倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が300億円を超すが、AI銘柄ということで人気化する可能性があるが、さすがに300億円超の流動性から、初値は前場の時間帯に付くと予想するが、これまで上場したAI銘柄の人気からすると、後場まで持ち越しになる可能性も否定できない。
初値が付いた後の株価の動きは、公募・売出し玉を仕入れた外国人投資家の売りがでなければ、国内の機関投資家からの買いも期待できるだけに、ストップ高になることも考えられる。
少し長い時間軸で見ると、株主のほとんどがVCであるがゆえに、ロックアップ後には間違いなく売りが出て来ると予想できる。時価総額が大きく、流動性もあるので、国内外の機関投資家へのブロックトレードで売却されると考えるが、流通株が多くなればなるほど、最初に買った投資家のイグジットが出て来そうなので、ロックアップが明けるあたりにいったん株価は弱含む可能性を見ていくべきだろう。