スパイダープラスIPOレポート


【目次】
①️スパイダープラスIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(近日中に追加予定)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/15追加)

会社名
スパイダープラス株式会社
コード
4192
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 伊藤 謙自 /1973年生
会社住所
東京都豊島区東池袋一丁目12番5号
設立年
2000年
社員数
95人(2021年1月31日現在)
事業内容
建設業を主な対象とした建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売
URL
https://spiderplus.co.jp/
資本金
100,000,000円 (2021年2月24日現在)
上場時発行済み株数
31,808,100株
公開株数
7,645,200株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/03/12→1,010~1,160円に決定
ブックビルディング期間:2021/03/15 - 03/18
公開価格決定:2021/03/19→1,160円に決定
申込期間:2021/03/22 - 03/25
上場日:2021/03/30→初値1,722円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:野村證券
引受証券:大和証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:いちよし証券
引受証券:岩井コスモ証券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
引受証券:みずほ証券
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
大株主
伊藤謙自 59.24%
(株)CHIYOMARU STUDIO 6.16%
DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合 5.53%
安藤龍平 4.56%
増田寛雄 2.81%
大村幸寛 2.71%
野田隆正 1.96%
吉田淳也 1.78%
鈴木雅人 1.53%
村商(株) 1.27%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2017/12 単体実績 
586,711 -46,495 -49,791 107,777
2018/12 単体実績 
909,077 -123,809 -124,899 282,864
2019/12 単体実績 
1,286,109 59,458 63,142 346,607
2020/09 第3四半期単体実績 
1,454,331 178,819 173,208 519,815
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年6月27日まで
または、上場後180日目の2021年9月25日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
88億6843万2000円(7,645,200株×1,160円)
潜在株数(ストックオプション)
4,300,000株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
スパイダープラス株式会社<4192>は建設業を主な対象とした建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売などを手掛ける企業である。
 
スパイダープラス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は1997年に個人事業として伊藤社長が創業し、熱絶縁工事の施行を中心に事業を開始した。その後、2010年9月にIT事業を立ち上げている。

現在は建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を手掛けるICT事業が中心であるが、熱絶縁工事を請け負うエンジニアリング事業も継続している。

●ICT事業について

ICT事業では同社開発の建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売を行っている。

「SPIDERPLUS」はタブレット/スマートフォンで建設現場の図面のペーパレス化を図るとともに、検査機器と連携して業務効率化ができるサービスである。 2011年9月に「SPIDERPLUS」をリリースした後、順次顧客の声を反映させる形で機能充実やオプション機能の開発を続けている。尚、主なオプション機能としては、杭施行記録機能、工事進捗管理機能、指摘管理機能などがある。 同社は熱絶縁工事の施行から事業を開始しており、建設業を理解した上で建設業界において利用されるアプリの開発を行い、利用者数を伸ばしている。
スパイダープラス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●「SPIDERPLUS」契約者数の推移

「SPIDERPLUS」の契約者数などは下記の推移を見せている。
 
スパイダープラス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

「SPIDERPLUS」の契約者数及びID数ともに着実な増加を見せている。また毎月経常的に得られる「SPIDERPLUS」の月額利用料の合計額であるMRRは2020年12月1.4億円である。また月額利用料の積み上がり状況の指標であるARRは17億円まで拡大している。
 

■2019年12月期の部門別損益

2019年12月期 売上高13億円(対前年同期比42%増)、営業利益0.6億円(前年同期▲1.2億円)
・ICT事業 売上高9.6億円(同74%増)、セグメント利益2.8億円(同95%増)
・エンジニアリング事業 売上高3.3億円(同▲8.4%減)、セグメント利益0.4億円(同▲4.8%減)
売上全体の75%がICT事業から構成されており、2019年12月期からICT事業はセグメント利益で大幅な黒字である。

同社の祖業であるエンジニアリング事業は売上高約3億円の事業で減収だが、セグメント利益はわずかながら黒字となっている。
 

■業績推移

2017年12月期 売上高5.9億円、経常利益▲0.5億円、当期純利益▲0.5億円
2018年12月期 売上高9.1億円、経常利益▲1.2億円、当期純利益▲1.2億円
2019年12月期 売上高13億円、経常利益0.6億円、当期純利益0.6億円
2020年12月期 売上20高億円、経常利益1.1億円、当期純利益1.0億円
2021年12月期(予想) 売上高22億円、経常利益▲5.9億円、当期純利益▲5.9億円

毎期増収を続けている。利益面では2018年12月期に▲1億円を超える赤字を計上したが、2019年12月期は経常利益0.6億円となり黒字化した。

2020年12月期は売上高20億円、経常利益1.1億円で着地しており、経常利益1億円の大台に到達した。

2021年12月期も増収を予想しているが、採用人員の増加による人件費及び新規顧客獲得のための宣伝広告費により、経常利益▲5.9億円の赤字予想である。

尚、2019年12月期が公開申請決算期であり期越え決算でのIPOとなっている。
 

■財務状況

2019年12月期末時点で資産合計8.7億円に対し、純資産合計3.5億円、自己資本比率40%である。借入金2.7億円に対し現預金4.1億円を有している。また資産合計のうち流動資産合計が7.9億円で殆どを占めている。

2020年12月期末時点では資産合計9.1億円、純資産合計4.1億円、自己資本比率45%となっている。

キャッシュ・フロー計算書では、営業活動によるキャッシュ・フローが2018年12月期▲1.0億円、2019年12月期0.2億円であり、2019年12月期にプラス転換した。また2020年12月期の営業活動によるキャッシュ・フローは1.3億円まで伸びている。
 

■資金使途

IPOにより43億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。

・システムリニューアル費 3.0億円
・広告宣伝費 11億円
・借入金返済 5.0億円
・採用費及び人件費 17億円
・システム開発費 2.8億円

調達資金は事業拡大のための広告宣伝費、採用費及び人件費中心に充当される。

また公募株数3,220,000株に対して売出株数4,425,200株であり、売出株数の多いIPOである。売出はVC保有株を中心に行われる。
 

■株主構成

筆頭株主は伊藤社長であり株式シェア59%を保有している。

VCでは第3位株主のDCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合(株式シェア5.5%)以下、多数のVCが株主参入しておりVC比率は約10%である。尚、VCはIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結済み。

個人及びVC中心の株主構成となっている。
 

■まとめ

建設業を対象とした建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売を主に手掛ける企業のIPO案件である。

IT化が遅れながらも慢性的な人手不足の建設業界に対して、タブレット/スマートフォンで建設現場の図面のペーパレス化を図るとともに、検査機器と連携して業務効率化を行うサービスを提供している。同社自体が熱絶縁工事を請け負うエンジニアリング事業を手掛けており、現場のサービスニーズをくみ上げた上でサービス提供がなされている。

サブスクリプション型のビジネスモデルであり、2019年12月期に黒字化して、2020年12月期も黒字を維持した。しかし2021年12月期は積極的な人員採用及び宣伝広告活動により、経常利益▲5.9億円と赤字の予想である。

IPOにより40億円の資金調達を行うが、2021年12月期に積極的な投資活動を行うことで成長をどの程度加速させることができるか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、建設業を主な対象とした建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売が主軸事業で売上の75%を占めている。上場市場は東証マザーズ。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が369億円、2021年12月期の業績予想ベースのPERは赤字のため算出できない。2021年12月期の売上予想が22億円であることから、PSRは約18倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が76億円もあることから、初値は前場には付くと推測する。初値の付いた後は、公開価格で買った個人投資家の売りが一巡した後にじわじわと買われる展開を予想する。ビジネスモデルが、サブスクリプション型でARRが毎年成長していることに加えて、NRRが145%といったん顧客になると使い続けられるという特性があることから、非常に高い株価のバリュエーションになっていると考えられる。

セカンダリー市場においては、今期の業績予想の数値がかなり保守的に出ていることから、期中のどこかで業績予想の上方修正があると考えられる。 上場直後の高値からの調整局面で仕込み、上方修正で売るという戦略もある銘柄だと考えられる。需給の観点から、VC保有の半分は売出しで流通株になるが、残りの半分(発行済株式の約5%)がロックアップ明けに出てくるので要注意である。