【目次】
①️網屋IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 会社名
- 株式会社網屋
- コード
- 4258
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役会長 伊藤 整一 / 1958年生
- 会社住所
- 東京都中央区日本橋浜町三丁目3番2号
- 設立年
- 1996年
- 社員数
- 128人(2021年10月31日現在)
- 事業内容
- データセキュリティ事業(ログ管理製品「ALogシリーズ」等の販売)及びネットワークセキュリティ事業(ICT通信インフラネットワークの設計・構築をクラウド上から遠隔で行う「Network All Cloud」サービス等の提供)
- URL
- https://www.amiya.co.jp/
- 資本金
- 50,000,000円 (2021年11月18日現在)
- 上場時発行済み株数
- 4,000,000株
- 公開株数
- 1,029,600株
- 連結会社
- なし
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/12/03→1,700~1,970円に決定
- ブックビルディング期間:2021/12/07 - 12/13
- 公開価格決定:2021/12/14→1,970円に決定
- 申込期間:2021/12/15 - 12/20
- 上場日:2021/12/22→初値2,100円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:むさし証券
- 引受証券:水戸証券
- 引受証券:香川証券
- 大株主
- (株)チャクル 28.55%
- 石田晃太 17.82%
- 伊藤整一 11.14%
- 投資事業組合オリックス9号 9.80%
- (株)セキュアヴェイル 4.31%
- 網屋従業員持株会 3.67%
- 柴﨑正道 2.86%
- 新納隆広 2.47%
- 加藤光栄 2.08%
- 山﨑勝巳 1.73%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/12 単体実績
1,309,990 -105,945 -82,704 244,224 - 2019/12 単体実績
2,161,981 129,167 76,186 337,110 - 2020/12 単体実績
2,314,581 185,808 125,931 472,922 - 2021/09 第3四半期単体実績
2,146,087 297,552 191,746 664,669 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2022年3月21日まで、または
上場後180日目の2022年6月19日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 20億2831万2000円(1,029,600株×1,970円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 509,600株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- 株式会社網屋<4258>は企業データの証跡をAIテクノロジーで管理する「データセキュリティ事業」と企業インフラをクラウドで省人化した「ネットワークセキュリティ事業」を手がけるサイバーセキュリティ総合企業である。
■事業内容詳細
同社は顧客のビジネスを成功に導くセキュリティを目指したサイバーセキュリティ総合企業であり、下記2事業を展開している。
・データセキュリティ事業
・ネットワークセキュリティ事業
●データセキュリティ事業
データセキュリティ事業では、社内関係者によるデータの持ち出し、外部からのサイバー攻撃、上場企業の監査資料提出、テレワーク下での労務管理などで利用されるログの管理製品「ALogシリーズ」の開発と販売を行っている。
「ALogシリーズ」にはファイルサーバアクセスログ管理「ALog ConVerter」と統合ログ管理「ALog EVA」がある。初期にライセンス費/年間保守費/導入作業費を一括で受領し、次年度以降は毎年ソフトウェア保守料を受領するリカーリングモデルとなっている。尚、直接販売:間接販売=3%:97%であり、販売代理店経由の販売が中心である。
●ネットワークセキュリティ事業
ネットワークセキュリティ事業では、LAN/WANなどのICT通信インフラネットワークの設計・構築をしている。同事業が提供する「Network ALL Cloud」はクラウドから顧客のインフラ環境の運用をワンストップで代行する同社独自のサービスである。遠隔でネットワークを制御できるため、全国拠点を持つ小売り/外食・営業所・学校・塾・病院などの顧客に利用されており、多拠点店舗型の顧客が多いという特徴がある。
またその他にもクラウドVPNサービス「Verona」、クラウド無線LANサービス「Hypersonix」を提供している。
尚、直接販売:間接販売=58%:42%であり、直販が販売代理店経由の販売を若干上回っている。
■2020年12月期及び2021年12月期Q3(累計)セグメント利益
2020年12月期 売上高23億円(対前年同期比7.1%増)、営業利益1.9億円(同46%増)
・データセキュリティ事業 売上高11億円(同1.9%増)、セグメント利益6.0億円(同2.2%増)
・ネットワークセキュリティ事業 売上高13億円(同12%増)、セグメント利益2.2億円(同94%増)
ネットワークセキュリティ事業が伸びており、2020年12月期は同事業の売上高がデータセキュリティ事業を上回った。セグメント利益は依然としてデータセキュリティ事業が中心であるが、ネットワークセキュリティ事業も対前年同期比94%増の2.2億円となり利益貢献を始めている。
2021年12月期Q3(累計) 売上高21億円、営業利益2.9億円
・データセキュリティ事業 売上高8.0億円、セグメント利益4.4億円
・ネットワークセキュリティ事業 売上高13億円、セグメント利益2.7億円
ネットワークセキュリティ事業の売上高がデータセキュリティ事業を大幅に上回り、セグメント利益はQ3(累計)で前年の通期を上回った。
データセキュリティ事業が安定的な推移を見せる中で、ネットワークセキュリティ事業の成長が同社の成長を支える状態である。
■業績推移
2018年12月期 売上高13億円、経常利益▲1.1億円、当期純利益▲0.8億円
2019年12月期 売上高22億円、経常利益1.3億円、当期純利益0.8億円
2020年12月期 売上高23億円、経常利益1.9億円、当期純利益1.3億円
2021年12月期(予想) 売上高27億円、経常利益2.2億円、当期純利益1.4億円
※2018年12月期は3月から12月に決算期変更を実施
2019年12月期に売上高20億円の大台に到達するなど着実な増収増益を続けている。
2021年12月期は売上高27億円、経常利益2.2億円の増収増益の予想である。2021年12月期Q3(累計)は売上高21億円、経常利益3.0億円であり、既に経常利益は前年の通期数字を突破しており通期予想達成に向けた進捗は順調である。
■財務内容
2020年12月期末時点で資産合計19億円に対し純資産合計4.7億円、自己資本比率25%である。借入金2.2億円に対し現預金9.4億円を保有する。尚、顧客からの前払い費用として前受金を負債の部に7.4億円計上。
また資産の部にソフトウェア1.1億円など無形固定資産1.2億円を計上している。
キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)が2019年12月期2.1億円、2020年12月期2.7億円と安定的に2億円以上計上されている。減価償却費の計上(2019年12月期0.4億円、2020年12月期0.7億円)、前受金の増加(2019年12月期1.1億円、2020年12月期1.4億円)により営業C/Fが押し上げられている。
■資金使途
IPOにより7.2億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。
・2事業の新規顧客の拡大及びブランディング、知名度向上のための宣伝広告費 2.0億円
・AI技術者やデータサイエンティストなどの人材確保に伴う採用費及び教育費 1.0億円
・事業拡大のための既存製品のSaaS版開発などの研究開発費 3.5億円
調達資金は研究開発費中心に、宣伝広告費、人材採用費及び教育費に充当される。
公募429,600株に対し売出600,000株であり、売出が公募を若干上回るIPOである。売出は伊藤会長(240,000株)、石田社長(160,000株)、VCファンドの投資事業組合オリックス9号(200,000株)で行われる。
■株主構成
筆頭株主は創業者の伊藤会長の資産管理会社である株式会社チャクル(株式シェア29%)。伊藤会長は第3位株主(同11%、うち0.6%は潜在株式)でもあり、伊藤会長の関係先で株式の40%が保有されている。第2位株主(同18%、うち7.8%は潜在株式)は石田社長。
第3位株主はVCの投資事業組合オリックス9号(9.8%)であるが、保有400,000株のうち半数の200,000株は売出で売却される。
また第5位株主は事業会社として株式会社セキュアヴェイル(同4.3%)が株主参入している。
全体的には個人中心の株主構成となっている。
■まとめ
企業データの証跡をAIテクノロジーで管理する「データセキュリティ事業」と企業インフラをクラウドで省人化した「ネットワークセキュリティ事業」を手がけるサイバーセキュリティ総合企業のIPO案件である。
1996年の創業後、セキュリティ事業中心に事業展開がなされてきたが、「ネットワークセキュリティ事業」(2010年開始)の伸びが加速しており、同社全体の成長に繋がっている。
システムのクラウド化ニーズを背景に「ネットワークセキュリティ事業」が成長を続ける中で、IPOによる調達資金を活用して同社全体としての成長を加速させることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、データセキュリティ事業(ログ管理製品「ALogシリーズ」等の販売)及びネットワークセキュリティ事業(ICT通信インフラネットワークの設計・構築をクラウド上から遠隔で行う「Network All Cloud」サービス等の提供)を展開している。
上場市場は東証マザーズ。 株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が79億円、2021年12月期の業績予想ベースのPER57.9 倍となっている。上場当日の株価動向は、同日IPO6社の中では資金吸収額が二番目に小さく、需給は比較的タイトで、初値は前場の半ばの時間帯にそこそこの水準で付くかもしれないが、後場の遅い時間帯まで買いが持続しないと見ておくべきだろう。
セカンダリー市場においては、事業内容は今の時代にマッチしていて成長性があるように見えるが、売上の伸びに対して粗利益が伸びていないという現実があることから、2月中旬の決算発表で、来期の業績予想が出るまでは手掛けにくく、公開価格のPERの水準は期待値が大きすぎるかもしれない。