iDeCo,確定拠出年金
(写真=PIXTA)

筆者はファイナンシャルプランナーとして資産形成のご相談をお受けしている。最近はiDeCoの認知度も高まり加入希望者も増えた。しかし、会社員の多くは始める前に、あまりの手間にくじけてしまいそうになるのだ。

目次

  1. 任意加入なのに会社に届けなければならない
  2. 会社の担当者も知らない、iDeCoの手続きにおける注意点
    1. 会社の担当者の理解度
    2. 会社に提出する書類
    3. 給与天引きに注意
    4. 小規模事業主掛金納付制度
  3. 会社が行うiDeCoの手続き
    1. 事業主の証明書の発行
    2. 現況届の提出
    3. 各種変更手続き
    4. 年末調整
  4. 会社員がiDeCoに加入できる条件
    1. 会社に企業年金がない場合
    2. 会社が企業型DCを採用しているがiDeCoとの併用を認めている
    3. 会社にDBや厚生年金基金だけがある
  5. iDeCoの上限金額
    1. 会社に企業年金がない場合
    2. 企業型DCに加入している場合
    3. 会社に確定給付企業年金(DB)のみがある場合
  6. 会社員がiDeCoに加入するメリット
    1. 所得控除が受けられる
    2. 運用益が非課税になる
    3. 転職先にiDeCoの資産を持ち運ぶことができる
  7. 会社員がiDeCoに加入するデメリット
    1. 運用次第で元本割れのリスクがある
    2. 原則60歳まで引き出すことができない
    3. 手数料がかかる
  8. iDeCoハラスメントに負けるな
  9. iDeCoに関するよくある質問
    1. 積み立て金額はいくらから設定できるの?
    2. 積み立て金額は変更できるの?
    3. 運用商品はどんなものがあるの?
  10. 実際に口座開設しiDeCoを始めてみる
  11. 記事にコメントいただいた専門家

任意加入なのに会社に届けなければならない

iDeCoはあくまでも「私的年金」の位置づけだ。公的年金では不足する老後資金を補完するのが目的であり、加入者には自己責任が求められる。

基本的に20歳以上60歳未満の全ての方(※)が加入でき、多くの国民の皆様に、より豊かな老後の生活を送っていただくための資産形成方法のひとつとして位置づけられています。

※企業型確定拠出年金に加入している方は、企業型年金規約でiDeCoに同時加入できる旨を定めている場合のみiDeCoに加入できます。

引用元:iDeCoの特徴|iDeCoってなに?|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

しかし税金の扱いは公的保険レベルに手厚い。掛金は全額所得控除となりこれは社会保険料と同等の扱いだ。受取の際、一時金であれば退職金扱い、年金であれば公的年金扱いとむしろ受け取り方にバリエーションがある分、公的年金より使い勝手が良い。

60歳まで引き出しができないが、これも公的年金と同じ。だからこそ、万が一自己破産した場合でも差し押さえ財産とならず老後資金は保全される。

60歳になるまで、原則として資産を引き出すことはできません。

引用元:iDeCoの特徴|iDeCoってなに?|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

自己責任なので、運用自体は加入者自身で行うが、国の年金制度への不安が高まる中、公的年金とは財布を分けて「自分年金を持つこと」をメリットと考える人も多いだろう。

筆者のもとにも、iDeCoで老後の資産形成を始めたいというご相談者が多いのだが、会社員の場合「会社に内緒で加入ができない」という話をすると、一様にめんどくさそうな顔になる。すぐに始められないので、出鼻をくじかれたような気がするのだ。

会社員の場合、会社の福利厚生制度によって掛金上限額が異なることは前回のコラムでお伝えしたが、適切な掛金で運用がされているのかどうかを確認するために会社の証明が必要なのだ。企業年金の有無、企業型確定拠出年金をしている場合、会社としてiDeCo併用を認めているかどうか、本当に厚生年金加入者なのかどうか(会社として厚生年金に適切に加入しているのか)が問われるのだ。

その確認のための書類が、金融機関から届けられる「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」だ。

 
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会社の担当者も知らない、iDeCoの手続きにおける注意点

iDeCo,イデコ
(画像=ZUU online編集部)

会社の担当者の理解度

会社員のiDeCo手続きが悩ましいのは、会社の担当者もそれをどうしたら良いのか分からないという点だ。大企業は別にして、中小一般企業ではまだまだiDeCoの認知度が低い。

会社員がiDeCoを始めるにあたり、事業所が国民年金基金連合会に事業所登録を行う必要がある。その会社で最初のiDeCoの加入希望者があれば、その人が持ち込む「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」を記入すれば、それがそのまま事業所登録の申請書となり、手続きが完了すると国民年金基金連合会から事業所番号の通知がある。その後は事業所番号をもって手続きを行えばよい。

厚生年金保険の適用事業所において、個人型確定拠出年金への加入を希望する、最初の従業員の方が出た際に、従業員の方と事業主の方がご記入のうえ、ご提出いただく「新しいタブでPDFが開きます 事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」により、「登録事業所」として、国民年金基金連合会に登録させていただいております。

引用元:事業主の方へ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

通常iDeCoの手続きは総務や人事が行うのだろうから、担当者であれば今後社員からiDeCo加入の書類がくることを前提として以下のことは覚えておきたい。また会社に書類を持っていく立場の人も、担当者が渋い顔をしたら以下のように対応してもらえば問題はないので一読をお勧めする。

会社に提出する書類

書類の中身自体はそれほど難しくない。厚生年金適用事業所の登録住所の記載であったり会社の退職金制度や企業年金制度の確認でなので、人事や総務の方であれば問題なく記入できるだろう。

手が止まるとしたら、掛金の納付方法の選択だ。ここは会社として方針を決めなければならない。加入者の掛金を本人の口座振替とする(個人払込)か給与天引き(企業払込)とするか、あるいは両方を選択する。

手続きとして簡単なのは、口座振替(個人払込)である。会社は証明書を出すだけであとは本人が金融機関とやり取りをするだけだ。税金の還付は年末調整で行う。この際、生命保険料の控除の手続きと同様、加入者に国民年金基金から「小規模企業共済等掛金控除証明書」が届くので、この提出をもって年末調整を行う。

このあたりの手順はそれほど戸惑うところではない。この他、年に1回、現況届といってその加入者が会社に在籍しているかどうかを証明する書類が届くが、これも手間ではないだろう。

給与天引きに注意

一方給与天引き(企業払込)を選ぶときは注意が必要だ。お金の流れとしては、会社は加入者の給与から掛金を天引きする。天引きした掛金は全加入者分まとめて会社指定の口座より一括で引き落とされる。引き去りは国民年金基金連合会が行う。

口座振替と異なり特に注意をしなければならない点は二つ。まず税金の手続きは年末調整では行わずに、毎月の給与で源泉徴収するので給与計算上の変更が生じる。また加入者は掛金の金額変更が年に1回認められているだが、会社への申し出を徹底しておかないと、天引き額と国民年金基金連合会の引き去り額との差額が生じてしまう。当然退職時も給与計算の〆などに合わせしっかりスケジュール管理をしないとお金の差異が生じる。現況届はもちろん行わなければならない。

小規模事業主掛金納付制度

現実的には社内整備が間に合わないなどの理由で口座振替とする会社の方が多いようだ。会社にとってはどちらを選んでも罰則などないし、加入者にとってもどちらでも特にデメリットになることはない。

しかし2018年以降100人以下の企業で企業型確定拠出年金を導入していない場合、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者に対し会社が掛金を上乗せ支給してもよいと定めた「小規模事業主掛金納付制度」が本格始動する見込みだ。これは加入者にとっては、会社からお金がもらえるのでとてもありがたい制度である一方、経営者としてはその財源をどう捻出すべきか頭の痛いところになるだろう。

詳細はまだ発表されていないが、少なくとも掛金を出すかどうかの会社の取決めは労使合意を必要するので、会社としての方針は考えておくべきだろう。この拠出をする場合、iDeCoの掛金は給与天引き(企業払込)が前提となる。

イデコを取り扱うネット証券会社を以下で比較したので参考にしてほしい。

 
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株投資家のコメント

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会社が行うiDeCoの手続き

iDeCoに加入を希望する従業員がいる場合、会社で行わなければならない手続きには以下のようなものがある。

事業主の証明書の発行

従業員がiDeCoの申請を行う際、事業主は「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」(事業主の証明書)を発行する必要がある。加入を希望する従業員は「事業主の証明書」を運営管理機関から取り寄せ氏名や基礎年金番号などを記載。その後従業員が事業主に「事業主の証明書」を提出する。そのため事業主は事業主名称や所在地などの必要事項を記載し従業員に返却しなければならない。

「事業主の証明書」は、従業員から運営管理機関に提出される。60歳未満の厚生年金保険の第2号被保険者である従業員は、後述するように「加入できる条件」があり、条件を満たしていることを事業所に証明してもらうために「事業主の証明書」が必要だ。

従業員がiDeCoに加入できるよう事業主は速やかに「事業主の証明書」を発行する必要がある。

現況届の提出

iDeCoに加入した従業員は、iDeCoの加入条件や掛け金の限度額に変動がないか、年1回届け出ることが法令で決められている。その証明は、従業員自身ではなく事業所が行うことになっており事業所は「第2号加入者の届出書(事業主取りまとめ)兼第2号加入者に係る事業主の証明書」(現況届)を提出しなければならない。

現況届では、加入者である従業員の在籍確認や確定給付企業年金の資格の有無、会社の企業型年金の実施状況などを証明する。現況届は、年1回、加入者の記録を管理する記録関連運営管理機関から事業主に郵送されるため、証明事項を記載して返送。届出期日までに提出しないと加入者の掛け金が引き落とせなくなることもあるため、注意が必要だ。

各種変更手続き

「会社の名称や所在地などを変えた」「iDeCoに加入している人を採用した」といった場合は、事業主が変更手続きを行わなければならないケースがある。主な変更手続きは、以下の通りだ。

事業主に関する事項の変更

  • 事業所の名称や所在地等が変わったとき
  • 掛け金の引き落とし口座や引き落とし金融機関を変更するとき
  • 掛け金の納付方法を変更するとき
  • 登録事業所を廃止するとき(企業型年金の導入や事業所の合併)
  • 企業年金制度を変更するとき

加入者に関する事項の変更

  • iDeCoに加入している人を採用したとき(前職が会社員・自営業者など・専業主婦または主夫のいずれだったかで必要となる届出が異なる)
  • 加入者が退職するとき
  • 加入者が掛け金額を変更するとき(毎月定額拠出か年単位拠出かで必要となる届出が異なる)
  • 「事業主払込」を選択している加入者の掛け金を納付できないとき

年末調整

iDeCoの加入者は、掛け金の納付方法として「事業主払込」「個人払込」のいずれかを選択している。加入者が「個人払込」を選択している場合は、加入者から提出される「小規模企業共済等掛金払込証明書」に基づいて年末調整を行うことが必要だ。毎年10月ごろ国民年金基金連合会から加入者のもとに「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付されるので事業主は加入者に証明書を提出するよう促す。

なお加入者が「事業主払込」を選択している場合、掛け金を給与から天引きすることになる。iDeCoの掛け金は「小規模企業共済等掛金」として全額が所得控除の対象だ。そのため源泉徴収税額を算出する際に考慮する必要がある。「事業主払込」を選択している加入者の年末調整については、源泉徴収ですでに天引きしている納付済掛金額を確認し必要があれば行う。

会社員がiDeCoに加入できる条件

会社員がiDeCoに加入できるかどうかは、20歳以上60歳未満という条件に加え勤務先が採用している企業年金制度によって決まる。以下のいずれかのパターンに当てはまれば加入することが可能だ。

会社に企業年金がない場合

確定給付企業年金(DB)や企業型DC、厚生年金基金といった企業年金制度がない、あるいは退職一時金制度や中小企業退職金共済制度を採用している会社に勤めている人は、iDeCoに加入できる。

会社が企業型DCを採用しているがiDeCoとの併用を認めている

会社が企業型DCを採用している場合、原則はiDeCoに加入できない。しかし会社が企業型DCの掛け金上限額を引き下げ年金規約で従業員にiDeCoとの併用を認めている場合は加入できる。

会社にDBや厚生年金基金だけがある

会社が企業年金としてDBや厚生年金は採用しているが企業型DCは採用していない場合もiDeCoに加入できる。

勤務先の年金制度や年金規約など不明点があれば総務などの担当者に確認しよう。なお2022年10月以降は法改正により企業型DCとiDeCoの併用に関する要件がなくなり本人の意思でiDeCoに加入できるようになる。ただし「マッチング拠出」(企業型DCにおいて会社側が出す掛け金に、従業員が掛け金を上乗せするもの)との同時利用はできないため、注意が必要だ。

また2022年の法改正では、他にも拡充される点が2つある。

2022年の法改正におけるiDeCoの変更点

  • 2022年5月よりiDeCo加入年齢の上限が従来の60歳未満から65歳未満に拡大される
  • 2022年4月よりiDeCo受取開始可能年齢上限75歳に拡大(従前は60歳以降70歳まで)

iDeCoの上限金額

iDeCoの掛け金には、上限が設定されている。会社員がiDeCoに加入した場合は、勤務先が採用している企業年金制度によって掛け金の上限が異なるのが特徴だ。

会社に企業年金がない場合

勤務先に企業年金(企業型DC、DB、厚生年金基金)がない場合、掛け金の上限は月額2万3,000円、年額27万6,000円となる。勤務先が退職一時金制度や中小企業退職金共済制度を採用している場合も同様の額だ。ちなみに企業年金がない会社員のiDeCo平均月額掛け金は、2021年6月時点で1万6,423円となっている。また新規加入者は前年同期比168.5%であった。

企業型DCに加入している場合

勤務先が企業型DCに加入しておりiDeCoへの加入が認められている場合、掛け金の上限はその会社がDBや厚生年金基金を導入しているかどうかで異なる。DBや厚生年金基金を導入しているならiDeCoの掛け金上限は月額1万2,000円、年額14万4,000円。一方でDBや厚生年金基金は導入しておらず企業型DBだけの場合、掛け金の上限は月額2万円、年額24万円となる。

会社に確定給付企業年金(DB)のみがある場合

勤務先がDBや厚生年金基金のみに加入していて企業型DCには加入していない場合、iDeCoの掛け金上限は月額1万2,000円、年額14万4,000円だ。DBや厚生年金基金は「確定給付型」とよばれる年金制度で従業員が高齢になったときに給付される年金額があらかじめ決まっている。従業員にとっては、運用によって給付額が変動するiDeCoや企業型DCに比べて高い給付水準だ。

そのため後述するような非課税のメリットが得られるiDeCoの掛け金上限が抑えられていると考えられる。

会社員がiDeCoに加入するメリット

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会社員がiDeCoに加入するメリットには、以下のようなものがある。加入できる条件が整っていれば会社員もぜひiDeCoを利用したいところだ。

所得控除が受けられる

iDeCoの掛け金は、全額が「所得控除」として所得(会社員の場合は、給与から給与所得控除額を差し引いた「給与所得」)から差し引かれる。所得金額は、所得税率を乗ずるもととなるため、この額が少なくなるということは、所得税や住民税が軽減されるということだ。例えばiDeCoの掛け金が毎月1万円なら1年間の掛け金は12万円となる。

所得税と住民税の税率をそれぞれ10%と仮定すると1年間で2万4,000円税金が軽減されることになるのだ。所得控除を受ける方法は、掛け金の払込方法によって異なる。給与から天引きされる「事業主払込」の場合は、毎月源泉徴収が行われるので加入者で手続きはしなくてよい。一方口座振替で払い込む「個人払込」の場合は、年末調整を受けて所得控除の手続きをする必要がある。

運用益が非課税になる

株や投資信託などを運用すると通常は、その運用益に対して15.315%の所得税および復興特別所得税と5%の地方税が課税される。しかしiDeCoの運用益には課税されない。iDeCoは、受取開始年齢が原則60歳以降になっており老後の資金形成を目的とした長期運用を想定している。税金が引かれないまま運用益を再投資することができるため、他の金融商品に比べてより多くの資産を増やすことが可能だ。

※積立金に対して特別法人税(年1.173%)が課税されるが現在は課税が停止されている。

転職先にiDeCoの資産を持ち運ぶことができる

今の勤務先でiDeCoに加入しその後転職した際にiDeCoの資産を持ち運ぶことができる。転職先が企業型DCを導入していれば手続きにより企業型DCに移換することが可能だ。また企業型DCを導入している企業の場合、規約でiDeCoに加入することが認められていればiDeCoを継続することもできる。一方、転職先が企業型DCを導入していない場合は、iDeCoをそのまま継続することが必要だ。

「資産の持ち運びができる」ことは、企業年金とは異なる大きなメリットとなる。企業年金を採用している企業では、退職時に年金資産を精算することになり転職先へ持ち運ぶことができない。

会社員がiDeCoに加入するデメリット

iDeCoにはさまざまなメリットがある一方でデメリットもある。

運用次第で元本割れのリスクがある

iDeCoは、お金を積み立てながら金融商品を運用するものだ。運用商品には、定期預金や保険といった「元本確保型」と複数の国内外の株式や債券を運用のプロが投資する「投資信託」がある。運用商品は、加入者が選ぶが「投資信託」を選択した場合、運用次第で元本割れのリスクがあるため、注意が必要だ。しかし高い収益が期待できるのは「元本確保型」よりも「投資信託」である。

また投資信託商品と一口にいってもリスクの高低はさまざまだ。商品の性質を理解し投資商品を分散させるなどリスク回避を行いながら運用することが重要である。

原則60歳まで引き出すことができない

iDeCoは、老後の生活資金を加入者自身が運用することで確保したり増やしたりすることを目的にしている。なぜなら税制の優遇が受けられるのも「老後の資産形成」という性質があるからだ。「原則60歳まで年金資産を引き出せない」としているのもiDeCoの趣旨に則ったものといえるだろう。60歳から年金資産を受け取ることができ、受取方法は「一時金」「年金」「一時金+年金」の3つある。

iDeCoの受け取り方法

  • 一時金:一括で受け取る方法
  • 2年金:5年以上20年以下の期間で運営管理機関が決めた方法で支給を受ける方法
  • 一時金+年金:年金資産の一部を一時金として受け取り残りを年金で受け取る方法

手数料がかかる

iDeCoに加入するとさまざまな事務手数料がかかるので加入前にしっかりと把握しておきたい。手数料には、iDeCoを実施する「国民年金基金連合会」に支払うものと加入者にiDeCoの運営に関して必要なサービスを提供する「運営管理機関」(iDeCoを扱う金融機関)に支払うものがある。国民年金基金連合会に支払う手数料は、以下の通りだ。

国民年金基金連合会に支払う手数料

  • 加入・移換時手数料:2,829円(初回のみ)
  • 加入者手数料:105円(掛け金納付の都度)
  • 還付手数料:1,048円(掛け金を加入者に還付する必要が応じたときにその都度)

運営管理機関に支払う手数料は、機関ごとに異なる。そのためiDeCoを申し込む運営管理機関を選ぶ際は、各金融機関で手数料がどれくらいかかるのか考慮してから選択することが賢明だ。

iDeCoハラスメントに負けるな

実際、証明書の提出の段階で、苦労をしている人は少なくない。

ある方は、総務部門がアウトソーシングされていて、書類作成の依頼をしても対応が遅く本当にやってもらえているのか不安だとおっしゃったり、ある方はどの部署に書類作成を依頼して良いのか分からず直属の上司に尋ねると「投資のことを考える暇があるなら、もっとまじめに仕事に取り組め」と信じられない言葉を浴びせられたとのことだ。これはもうiDeCoハラスメントと言うべき深刻な問題であろう。

公務員はさらに複雑で、団体ごとに取扱いが異なるらしい。「らしい」としか書けないのは、国民年金基金連合会であっても実態はまだ把握しきれていないのだという。例えば県立中学校の教師は、事業所の証明は学校長にはもらえない。

県の職員としてしかるべき対応部署に証明書を依頼しなければならないのだが、この指示系統が明確になっているという団体は現時点では非常に少ないようだ。

第2号被保険者(会社員、公務員)と比べると第1号被保険者(自営業者など)と第3号被保険者(専業主婦など)の手続きは簡便だ。すべての書類は、加入者自身が記入すれば良い。しかし、今後会社勤めをする、第3号被保険者のパート勤務だったが、正社員登用となったなどという場合は、第2号被保険者として届け出が必要になることを覚えておこう。

そもそも第2号被保険者のややこしさは、掛金上限額を所属する会社の福利厚生制度で判断しているところに起因する。例えば企業年金がある会社はない会社に比べ手厚い老後資金が準備されているから自助努力枠であるiDeCoの掛金は少額で良いだろうという判断だ。

しかし企業年金があったとしても、その内容は会社によりマチマチであり、必ずしも手厚い老後の保障がある会社ばかりとも限らない。それに、企業年金がある会社に勤めているとはいえ、長く勤めなければその恩恵もわずかだ。

筆者としては、働き方、生き方が多様化している現代においては第2号被保険者のiDeCo掛金はフラットにして、あくまでも私的年金として会社への届け出を不要にすべきだと思っている。厚生年金加入かどうかは、基礎年金番号で十分把握できるので、問題はないはずなのだが、私の声だけではなかなか国会までは動かせないのが残念でならない。

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山中伸枝(やまなかのぶえ)
確定拠出年金相談ねっと代表 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからは自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、FPを目指す。著書:「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書(インプレス)ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他

iDeCoに関するよくある質問

積み立て金額はいくらから設定できるの?

iDeCoの積み立て金額は毎月最低5,000円から1,000円単位で設定することが可能だ。

積み立て金額は変更できるの?

iDeCoの積み立て金額は年に1回だけ変更することができる。

運用商品はどんなものがあるの?

iDeCoで運用できる商品は「元本確保型」と「元本確保型以外(価格変動型)」の2種類がある。「元本確保型」は保険や定期預金のことを指す。一方で「元本確保型以外(価格変動型)」は投資信託等のことを指す。リターンとリスクの両面から自分の考えににあった商品を選択するといいだろう。

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記事にコメントいただいた専門家

有限亭玉介
有限亭玉介(ゆうげんていたますけ)
日々トレードを重ねる個人投資家・ブロガー。金融情報会社フィスコのソーシャルレポーターとして、20以上のメディアに株についての記事を配信するほか、株&猫ブログ『儲かる株情報「猫旦那のお株は天井知らず」』では、独自の視点で注目した銘柄を随時紹介している。趣味は野球、落語、酒。猫旦那(飼い猫)の名前は「なつ」、含み益はもっぱら家族(嫁&娘)に献上。

■公式ブログ:儲かる株情報「猫旦那のお株は天井知らず」
■公式Twitter:@kabureport_cat