(画像=編集部作成)

【目次】
①️True Data IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
株式会社True Data
コード
4416
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 米倉 裕之 / 1966年生
会社住所
東京都港区芝大門一丁目10番11号
設立年
2000年
社員数
77人(2021年9月30日現在)
事業内容
全国の消費者購買データを扱うビッグデータプラットフォームを運営。POS/ID-POSなど消費者データ分析や購買行動分析ソリューションを小売業、消費財メーカー等に開発・提供。データマーケティング支援
URL
https://www.truedata.co.jp/
資本金
1,160,510,000円 (2021年11月11日現在)
上場時発行済み株数
4,609,400株
公開株数
1,233,400株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/11/29→2,000~2,220円に決定
ブックビルディング期間:2021/11/30 - 12/06
公開価格決定:2021/12/07→2,220円に決定
申込期間:2021/12/08 - 12/13
上場日:2021/12/16
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:いちよし証券
引受証券:みずほ証券
引受証券:大和証券
引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:東洋証券
引受証券:極東証券
引受証券:水戸証券
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
大株主
(株)プラネット 24.70%
(株)INCJ 22.34%
(株)デジタルガレージ 6.72%
AGB Nielsen Media Research B.V. 6.72%
第一生命保険(株) 6.30%
米倉裕之 4.73%
(株)タケオホールディングス 3.57%
(株)ドコモ・インサイトマーケティング 3.57%
(株)博報堂 3.57%
(株)博報堂プロダクツ 3.57%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2019/03 単体実績 
1,079,711 45,009 1,241 695,829
2020/03 単体実績 
1,011,356 -93,668 -96,859 598,970
2021/03 単体実績 
1,166,060 -64,335 -60,804 538,166
2021/09 第2四半期単体実績 
622,994 -2,728 -3,043 535,122
ロックアップ情報
株式会社プラネット、壱岐浩一、川崎清、米倉裕之、結城義晴、中津武は上場後90日目の2022年3月15日までは株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
27億3814万8000円(1,233,400株×2,220円)
潜在株数(ストックオプション)
321,200株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社True Data<4416>は小売業向けID-POSデータ分析やメーカー向けに消費者の購買動向を精緻に把握可能なツール提供などを行う企業である。スーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売業の購買データを取り扱うことで、購買傾向の把握や顧客の志向・ライフスタイル分析や様々なマーケティングが可能となっている。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■同社の特徴

同社はスーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売業の年間アクティブ会員数6,000万人、年間4.5兆円規模の購買データを取り扱う。購買傾向の把握に加えて、ID-POSデータを軸としたデータの掛け合わせにより、顧客の志向・ライフスタイル分析や様々なマーケティングが可能である。

同社はGoogleやSAPなどの巨大IT企業などとアライアンス関係を組むことで、データやソフトウェア、データ活用ノウハウを向上させるための競争力向上に注力している。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■ビジネスモデル

同社はデータプラットフォームを軸にして、データ保有者からデータ利用者へサービス価値を提供し対価を得ている。クラウド上で提供する商品・サービスへの利用料を顧客から受け取るビジネスモデルであり、継続的な収入が見込まれるストック型の収益構造である。2021年3月期時点ではストック売上の割合は77.9%であり、安定的な収益構造を構築している。

同社の代表的なサービス事例は下記である。

・ショッピングスキャン<リテール向けソリューション>
小売業の商品ごと、店舗ごとの購買行動を簡易に分析できる小売業向けのID-POSデータ分析ツール「ショッピングスキャン」を小売業に提供している。「ショッピングスキャン」は2021年3月期売上高2.5億円であるが、2019年3月期以降の顧客の継続率は100%である。

・イーグルアイ<メーカー向けソリューション>
全国及び地域単位での消費者の購買動向を早期かつ精緻に把握可能な「イーグルアイ」をメーカーに提供している。2021年3月期の「イーグルアイ」の売上高5.8億円、期末契約者数116社、継続率95%である。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■2021年3月期のサービス別売上高

2021年3月期 売上高12億円
・メーカー向けソリューション 6.6億円(対前年同期比20%増)
・リテール向けソリューション 2.5億円(同41%増)
・あらゆる産業向けソリューション 2.5億円(同▲11%減)

ビール会社や飲料会社などに向けた、メーカー向けソリューションが売上の半数以上を占めており、2021年3月期は増収となった。

リテール向けとあらゆる産業向けの売上規模は同等であるが、リテール向けは増収の一方で、あらゆる産業向けは減収となっている。
 

■業績推移

2019年3月期 売上高11億円、経常利益0.5億円、当期純利益0.0億円
2020年3月期 売上高10億円、経常利益▲0.9億円、当期純利益▲1.0億円
2021年3月期 売上高12億円、経常利益▲0.6億円、当期純利益▲0.6億円
2022年3月期(予想) 売上高13億円、経常利益0.2億円、当期純利益0.1億円

2018年3月期に売上高10億円の大台に到達後は、売上高10~12億円台で推移している。経常利益は2019年3月期の0.5億円がピークであり、2020年3月期、2021年3月期と赤字が継続中。

2022年3月期は売上高13億円、経常利益0.2億円とする増収黒字化の予想である。2022年3月期Q2(累計)は売上高6.2億円、経常利益▲0.0億円となった。
 

■財務内容

2021年3月期末時点で資産合計8.9億円に対し純資産合計5.4億円、自己資本比率60%である。借入金1.2億円に対し現預金4.3億円を有しており、財務内容に特段の懸念事項はない。尚、無形固定資産にソフトウェア2.7億円を計上している。

キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)は2020年3月期0.3億円、2021年3月期1.4億円とプラスが継続中。減価償却費が2020年3月期1.0億円、2021年3月期1.2億円計上されており、営業C/Fのプラスに貢献している。
 

■資金使途

IPOにより6.8億円の資金調達を行い、下記使途が予定されている。

・人材の新規採用費及び人件費 1.9億円
・システム開発資金 1.8億円
・借入金の返済 1.0億円
・研究開発費 0.2億円
・広告宣伝費 0.2億円

調達資金はデータサイエンティストなどの専門人材や営業活動の推進のためのコンサルタントの人員の新規採用及び人件費と、サービスのアップデートや新規機能追加開発などのシステム開発資金を中心に充当される。

また公募株数170,000株に対し売出株数1,063,400株であり売出株の多いIPOである。売出は第2位株主の株式会社INCJのみが行う。
 

■株主構成

筆頭株主は株式会社プラネットであり株式シェアの25%を保有している。第2位株主(株式シェア22%)は株式会社INCJ(旧産業革新機構)であるが、全保有株式を売出にて売却する。

事業会社が株式会社プラネット以外にも、株式会社デジタルガレージ(同6.7%)、調査会社ニールセンのオランダ本社(同6.7%)、第一生命保険株式会社(同6.3%)など複数社が株主参入している

米倉社長は第6位株主(同4.73%、うち3.6%は潜在株式)である。

事業会社、個人など株主は多岐に渡るが、株式会社INCJを除き投資会社の株主参入はない。
 

■まとめ

小売業向けID-POSデータ分析やメーカー向けに消費者の購買動向を精緻に把握可能なツール提供などを行う企業のIPO案件である。

データプラットフォームを軸にして、データ保有者からデータ利用者へサービス価値を提供し対価を得るビジネスを展開しており、飲料メーカーなどが主要顧客である。クラウド上で提供する商品・サービスへの利用料を受け取るビジネスモデルであり、顧客は殆ど継続顧客となるため手堅い事業展開がなされている。

2020年3月期、2021年3月期と2期続けて赤字であるが、減価償却費の計上により営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで推移している。

積み上げ型のビジネスモデルであり今後も着実な成長が期待できる。IPO後は営業キャッシュ・フローに加えて増益もスピード感を持って進めることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、全国の消費者購買データを扱うビッグデータプラットフォームを運営しており、具体的にはPOS/ID-POSなど消費者データ分析や購買行動分析ソリューションを小売業、消費財メーカー等に開発・提供するデータマーケティング支援事業を展開している。

上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額 が102億円、2022年3月期の業績予想ベースのPERは1,060倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が31億円あるが、 既存株主には90日間のロックアップがあり、需給はタイトとは言えないまでも、需給が崩れるほどの売りは出ないと考えられるので、初値は前場の中頃の時価帯に付くと推測する。

初値が付いた後の値動きとして、当社の上場の翌週からIPOラッシュが始まるため、上場当日に買いを入れた個人投資家がバイアンドホールドするとは考えずらく、上場当日においては、初値が維持される可能性は低いと考えておいた方が良いだろう。

中長期的な株価動向は業績連動することは言うまでもないが、目論見書に市場規模が250億円とあり、当社ほどのビッグデータを保有していても、なかなかマネタイズするのは難しいと言えそうだ。

上場後の調整局面を経て、本格的に株価が動くとすれば、来年の決算発表での来期の業績予想が大幅な増収増益となる以外にはないと考えておくべきだろう。