(画像=編集部作成)

【目次】
①️JDSC IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
株式会社JDSC
コード
4418
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 加藤 聡志 / 1980年生
会社住所
東京都文京区本郷二丁目38番16号 JEI本郷ビル8階
設立年
2018年
社員数
55人(2021年10月31日現在)
事業内容
AIや機械学習等を活用したアルゴリズムモジュールの開発とライセンス提供事業及びITシステムの開発と運用事業
URL
http://jdsc.ai/
資本金
100,000,000円 (2021年11月15日現在)
上場時発行済み株数
12,811,700株
公開株数
2,440,000株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/12/02→1,620~1,680円に決定
ブックビルディング期間:2021/12/03 - 12/09
公開価格決定:2021/12/10→1,680円に決定
申込期間:2021/12/13 - 12/16
上場日:2021/12/20→初値1,681円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:大和証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:みずほ証券
引受証券:野村證券
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
引受証券:いちよし証券
引受証券:岩井コスモ証券
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
大株主
加藤聡志 38.31%
UTEC4号投資事業有限責任組合 19.70%
(株)SMBC信託銀行(特定運用金外信託 未来創生2号ファンド) 12.64%
金井正義 7.31%
コタエル信託(株)(信託口) 6.30%
淵高晴 2.89%
橋本圭輔 2.01%
ダイキン工業(株) 1.68%
中部電力(株) 1.68%
中村大介 0.87%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2019/06 単体実績 
119,273 -12,159 -8,235 293,764
2020/06 単体実績 
515,515 -81,945 -86,428 385,291
2021/06 単体実績 
1,089,424 27,825 27,719 3,051,881
2021/09 第1四半期単体実績 
316,275 50,774 42,161 3,094,955
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2022年3月19日まで
または、上場後180日目の2022年6月17日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
40億9920万0000円(2,440,000株×1,680円)
潜在株数(ストックオプション)
1,423,100株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社JDSC<4418>は大手企業をパートナーとする共同研究開発を通じて、産業共通課題を解決するAI関連のサービスやソリューションを創出し、それらを自社プロダクトとして他企業にも提供する企業である。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は「AIソリューション事業」の単一セグメントである。各産業を代表する大手企業をパートナーとする共同研究を通じて、産業共通課題を解決するAI関連のサービスやソリューションを多数創出する。またそれらを自社プロダクトとして他企業にも提供して収益を計上する。

現在、需要予測関連ソリューション、マーケティング最適化ソリューション、データ基盤構築ソリューション等の7つのサービスを展開している。

同社は一過性のAIアルゴリズム受託開発やシステム受託開発、コンサルティングビジネスとは異なり、産業全体の課題に対してAIを活用して改善効果を創出することで継続的な収入を得るビジネスモデルである。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■同社の特徴

同社の特徴は下記3点があげられる。

① AIアルゴリズムに関する技術面での豊富な知見
② AIによる解決策の提示から実行まで一気通貫で支援するビジネス面での高い執行能力
③ 大手企業との共同開発と産業横展開を両立する生産性の高いビジネスモデル

まず①について、同社は東京大学大学院工学系研究科の松尾豊教授や田中謙司准教授、同大学院情報学環の越塚登教授らを顧問または社外取締役として招聘することで技術的な知見から助言を得ている。同社の正社員の約4割は理系の修士・博士で、東京大学と共同で執筆した国際学会論文や共同で取得した特許権はいずれも同社のAIソリューション構築に大きく貢献している。

次に②について、同社は技術面で優れたチームに加えて、ビジネスマネジメントや課題発見、プロジェクトマネジメント、事業開発に優れたチームを構築している。正社員のうち3割程度がコンサルティングや投資銀行、外資系メーカー等のプロフェッショナルファーム出身のメンバーで構成されている。

最後に③について、同社は各産業の大手企業と強固なパートナーシップを結びながら共同でAI活用を推進しており、共同開発フェーズ時点で多数の顧客から収益を得ている。同社単独での開発と比較して、大手企業の予算や人的リソースを活用できるため、開発費用の抑制ができ生産性及び収益性の向上が可能である。
 
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■2021年6月期主要取引先

2021年6月期 売上高11億円
・学校法人駿河台学園 3.2億円(割合30.0%)
・ダイキン工業株式会社 1.4億円(同13%)
・イオントップバリュ株式会社 1.2億円(同11%)

2021年6月期は上記3社で売上高の約半数が計上されている。特に学校法人駿河台学園は2020年6月期の割合41%、2022年6月期Q1は同30%で推移している。学校法人駿河台学園とは2021年3月に「難関国公立私立大入試・個別試験対策ICT教材」を共同開発しており、同社の主力取引先である。

また2022年6月期Q1はDCM株式会社が売上高0.6億円(同18%)となり、第2位の売上先として浮上した。
 

■業績推移

2019年6月期 売上高1.2億円、経常利益▲0.1億円、当期純利益▲0.1億円
2020年6月期 売上高5.2億円、経常利益▲0.8億円、当期純利益▲0.9億円
2021年6月期 売上高11億円、経常利益0.3億円、当期純利益0.3億円
2022年6月期(予想) 売上高15億円、経常利益0.3億円、当期純利益0.3億円

2019年6月期が設立第1期である。設立第1期と第2期は赤字となったが、設立第3期となる2021年6月期に黒字化した。

2022年6月期は売上高15億円、経常利益0.3億円の増収及び利益は横ばいの予想である。増収がなされるものの、人件費の増加などにより利益は横ばいの予想となっている。2022年6月期Q1は売上高3.2億円、経常利益0.5億円となり、通期計画達成に向け順調なスタートを切った。
 

■財務内容

2021年6月期末時点で資産合計32億円に対し純資産合計31億円であり、自己資本比率96%である。借入金なく現預金30億円を有しており、財務内容について特段の懸念事項はない。資産の殆どが現預金により構成されている。

キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)は2020年6月期▲0.7億円とマイナスだが、2021年6月期は1.5億円と大幅なプラスである。前払費用の減少(0.4億円)、未払金の増加(0.2億円)、未払消費税等の増加(0.2億円)が営業C/Fの大幅プラスの要因である。
 

■資金使途

IPOにより6.5億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。

・事業拡大の加速を図るための賃金や採用費等の人件費 5.4億円
・新たなAIソリューション等の開発のための研究開発費 0.5億円
・事業拡大に伴って増加する通信費 0.4億円

調達資金の大半が事業拡大のための賃金や採用費等の人件費に充当される。

また公募400,000株に対し売出2,040,000株であり、売出株が多いIPOである。売出はVCのUTEC4号投資事業有限責任組合の保有株中心に行われる。
 

■株主構成

加藤社長が筆頭株主であり株式シェアの38%を保有している。

第2位株主はUTEC4号投資事業有限責任組合(株式シェア20%)、第3位株主もVCの未来創世2号ファンド(同13%)。他にも複数のVCが株主参入しておりVC比率は38%である。UTEC4号投資事業有限責任組合はIPO90日のロックアップ契約を締結している。尚、殆どのVCは上場前の第三者割当増資による株式取得であり、継続所有等の確約を行っている。

取引先としてダイキン工業株式会社(同1.7%)、中部電力株式会社(同1.7%)、学校法人駿河台学園(同0.3%)なども株主参入している。
 

■まとめ

国内のAI研究で著名な東京大学の松尾豊教授などが支援を行うAIベンチャーのIPO案件である。大手企業をパートナーとする共同研究開発を通じて、産業共通課題を解決するAI関連のサービスやソリューションを創出し、それらを自社プロダクトとして他企業に提供するビジネスモデルである。

大手企業との協業による研究開発及びサービスのプロダクト化を行うことで、研究開発投資を抑制でき、また実際の企業のニーズをくみ上げた形でのプロダクト開発が可能である。

2018年7月の設立ながら、2021年6月期は売上高11億円、経常利益0.3億円となり黒字化するなど順調に成長している。現状では大手企業との共同開発ステージのプロダクトが多いものの、どのタイミングで開発プロダクト提供が事業の中心となり成長が加速するのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、AI や機械学習等を活用したアルゴリズムモジュールの開発とライセンス提供事業及びIT システムの開発と運用事業を展開している。

上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が215億円、2022年6月期の業績予想ベースのPER 717倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が47億円とマザーズ銘柄としては大きいが、東大卒AIベンチャー企業ということで、上場前のファイナンスで時価総額が100億円を越えており、VCなどのプロの投資家の評価はかなり高いが、IPOラッシュが始まり、初値はそこそこ付くかもしれないが、引けにかけて弱含む展開を想定する。

セカンダリー市場においては、業績をベースにしたバリュエーションで買える銘柄ではないので、経営陣がIR活動を通じて投資家を啓蒙し続けて、期待値を維持できなくなれば株価は伸び悩む可能性がある。12月はIPOラッシュとなるので、年末までに公開価格を割込むような事態が起こると再浮上には相当な業績を上げる以外には方法はないかもしれない。

ポジティブサイドを見ると、AIで解決できる分野を幅広く持っている企業なので、市場の期待を高める啓蒙活動ができれば大化けする可能性も十分ありえる銘柄である。