(画像=編集部作成)

【目次】
①️PHCホールディングスIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
PHCホールディングス株式会社
コード
6523
市場
市場第一部
業種
電気機器
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長CEO ジョン・マロッタ / 1979年生
会社住所
東京都港区西新橋二丁目38番5号
設立年
2013年
社員数
181人(2021年7月31日現在)
事業内容
各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売
URL
https://www.phchd.com/jp
資本金
36,409,120,000円 (2021年9月7日現在)
上場時発行済み株数
122,975,015株
公開株数
22,088,000株
連結会社
77社
スケジュール
仮条件決定:2021/09/28→3,250~3,500円に決定
ブックビルディング期間:2021/09/29 - 10/05
公開価格決定:2021/10/06→3,250円に決定
申込期間:2021/10/07 - 10/12
上場日:2021/10/14→初値3,120円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
引受証券:野村證券
引受証券:みずほ証券
引受証券:BofA証券
引受証券:ゴールドマン・サックス証券
引受証券:J.P.モルガン証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
大株主
KKR PHC Investment L.P. 45.77%
三井物産(株) 20.17%
(株)生命科学インスティテュート 12.59%
パナソニック(株) 10.79%
LCA 3 Moonshot LP 4.69%
PHCホールディングス従業員持株会 0.83%
平嶋竜一 0.21%
宮﨑正次 0.21%
大塚孝之 0.20%
山根健司 0.19%
業績動向(単位:百万円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2019/03 連結実績 
186,546 20,650 15,453 65,262
2020/03 連結実績 
272,637 5,611 5,276 70,275
2021/03 連結実績 
306,071 22,788 16,906 107,018
2021/06 第1四半期連結実績 
80,909 14,112 10,384 118,992
ロックアップ情報
指定された株主は上場後180日目の2022年4月11日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
1509億9630万0000円(46,460,400株×3,250円)
潜在株数(ストックオプション)
5,784,179株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
PHCホールディングス株式会社<6523>は糖尿病患者向け血糖自己測定システムの開発・販売、診療所・病院・薬局向けシステム、研究機関向けライフサイエンス機器などの開発・製造・販売などを手掛ける企業である。パナソニックグループから独立したヘルスケア事業を源流としており、投資ファンドが筆頭株主(株式シェア45%)となっている。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■沿革

同社は1948年に事業を開始した大新鉱業株式会社(後の松下寿電子工業株式会社→パナソニック株式会社による完全子会社化)、1966年に事業を開始した三洋電機株式会社の薬用保冷庫事業の2つの源流を有している。

2012年4月にパナソニック株式会社と三洋電機株式会社が経営統合し、両社のヘルスケア及びライフサイエンス事業をパナソニックヘルスケア株式会社に事業統合した。その後、2014年に投資ファンドのKKRの支援を受けてカーブアウトを行い、パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社として事業を開始。企業再編を経て現在のPHCホールディング株式会社の体制となった。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容

同社は下記3事業領域を展開している。

・糖尿病マネジメントドメイン
・ヘルスケアソリューションドメイン
・診断・ライフサイエンスドメイン
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●糖尿病マネジメントドメインについて

糖尿病マネジメントドメインでは、主に血糖自己測定システム等の高精度で簡便な検査・分析機器の開発・製造・販売を行っている。
 

●ヘルスケアソリューションドメインについて

ヘルスケアソリューションドメインでは、医療情報システム分野のIT製品の開発・販売を行っている。具体的には診療所・病院向けの診療報酬請求明細書作成、カルテの電子化、薬局向けの電子薬歴システムなどを提供する。

また2019年8月に株式会社三菱ケミカルHDの子会社の買収により、臨床検査領域への事業拡大を図っている。
 

●診断・ライフサイエンスドメイン

診断・ライフサイエンスドメインでは、生命科学分野の研究を行う大学や研究機関向けのライフサイエンス機器、創薬・研究領域におけるクリーンな環境維持に必要な機器などの開発・製造・販売を行っている。
 

■セグメント別損益

2021年3月期 売上収益3,061億円(対前年同期比12%増)、連結利益176億円(同34%増)
・糖尿病マネジメント 売上収益1,081億円(同▲9.5%減)、セグメント利益239億円(同2.3%増)
・ヘルスケアソリューション 売上収益1,161億円(同31%増)、セグメント利益45億円(同7.8%増)
・診断・ライフサイエンス 売上収益799億円(同28%増)、セグメント利益5.1億円(前年同期▲34億円)

糖尿病マネジメントとヘルスケアソリューションは売上収益1,000億円を超える類似の事業規模である。ただしセグメント利益は糖尿病マネジメント239億円に対し、ヘルスケアソリューション45億円である。利益面では糖尿病マネジメントが他2部門を大幅に上回る。

診断・ライフサイエンスについて2020年3月期は赤字であったが、2021年3月期は黒字化した。
 

■業績推移

2019年3月期 売上収益1,865億円、営業利益227億円、当期利益155億円
2020年3月期 売上収益2,726億円、営業利益132億円、当期利益53億円
2021年3月期 売上収益3,061億円、営業利益176億円、当期利益169億円
2022年3月期(予想) 売上収益3,190億円、営業利益200億円、当期利益135億円
※同社はIFRSを採用
※当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益

企業買収などもあり毎期増収を続けている。ただし営業利益は2019年3月期(227億円)がピークであり、当期利益は2021年3月期(169億円)がピークである。

2022年3月期も増収の継続を予想しており、営業利益は200億円の回復が予想されている。
 

■財務内容

2021年3月期末時点で資産合計5,690億円に対し、資本合計1,076億円、自己資本比率19%である。借入金3,215億円に対し、現預金608億円を有している。

企業再編に伴うのれんが2,065億円計上されており、資産合計の36%を占めている。また無形固定資産1,073億円などの計上もある。
 

■資金使途

IPOにより208億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。

・設備投資資金 106億円
・残額を長期借入金の返済
糖尿病マネジメントセグメントの販売拠点・物流拠点の強化や松山工場の設備装置・金型等の生産設備強化等に資する設備投資、診断・ライフサイエンスセグメントにおける群馬工場の老朽化設備の更新による生産応力の増強などに設備投資資金は充当される。

また公募6,611,700株に対し国内売出6,964,100株が行われる。別途、実質的には公募となる海外売出も8,512,200株行われる。
 

■株主構成

筆頭株主は投資ファンドのKKR PHC Investment L.P.(株式シェア46%)、第2位株主は三井物産株式会社(同20%)、第3位株主(同13%)の株式会社生命科学インスティテュートは株式会社三菱ケミカルHDのグループ会社である。また同社の設立母体のパナソニック株式会社も第4位株主(同11%)として残っている

ファンド及び事業会社中心の株主構成である。
 

■まとめ

2014年にパナソニック株式会社からカーブアウトした、糖尿病患者向け血糖自己測定システムの開発・販売、診療所・病院・薬局向けシステム、研究機関向けライフサイエンス機器などの開発・製造・販売などを手掛ける企業のIPO案件である。

糖尿病関連の糖尿病マネジメントドメインと診療用IT機器関連のヘルスケアソリューションドメイン中心の売上構成であるが、利益面では糖尿病マネジメントドメインの貢献が非常に大きい状態である。

IPOによる調達資金を活用して、海外展開を行うなどにより継続的な成長を果たすことができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、旧パナソニックヘルスケア(現PHC)の持ち株会社で、現在は米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下、第2位株主の三井物産の持ち分法適用関連会社で各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売をグローバルに展開している。上場市場は東証1部。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が4304億円、 2021年3月期の業績予想ベースのPERは31.85倍となっている。2021年3月期の1株当りの配当予想は23円、公開価格ベースの配当利回りは0.65%となっている。

上場当日の株価動向は、資金吸収額が約900億円と相当大きく、公開価格を少し上回る水準で初値は付くと推測する。セカンダリー市場においては、既存の大株主には180日間のロックアップがあり、需給が大きく崩れるような売りは出ないと考えるが、気になるのは海外投資家に販売された玉が上場直後に売りにでるリスクを見ておかないとけない。

10月という月は海外投資家、なかでも、短期筋のヘッジファンドの決算絡みの時期に入っていることから、利が乗ればすぐに売る可能性もあり、上値が重い展開も予想シナリオにもっておいた方が良いだろう。一方、もう少し長い目で見れば、事業の成長性もあり、公開価格程度で仕込めるなら長期保有の株主には下値不安が少なく有望銘柄となりそうだ。