ペルセウスプロテオミクスIPOレポート
会社名
株式会社ペルセウスプロテオミクス
コード
4882
市場
マザーズ
業種
医薬品
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長執行役員 横川 拓哉 / 1960年生
会社住所
東京都目黒区駒場四丁目7番6号
設立年
2001年
社員数
22人(2021年4月30日現在)
事業内容
医薬品等の研究開発、製造、販売
URL
https://www.ppmx.com
資本金
604,000,000円 (2021年5月19日現在)
上場時発行済み株数
11,686,400株
公開株数
3,300,000株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/06/02→830円 ~ 870円
ブックビルディング期間:2021/06/04 - 06/10
公開価格決定:2021/06/11→870円に決定
申込期間:2021/06/14 - 06/17
上場日:2021/06/22→初値1,005円
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主幹事証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:みずほ証券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:いちよし証券
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
引受証券:藍澤證券
引受証券:岩井コスモ証券
引受証券:エイチ・エス証券
引受証券:極東証券
引受証券:東洋証券
引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
引受証券:水戸証券
引受証券:むさし証券
大株主
富士フイルム(株) 32.39%
NVCC8号投資事業有限責任組合 13.81%
DBJキャピタル投資事業有限責任組合 4.82%
SBI4&5投資事業有限責任組合 4.82%
エムスリー(株) 4.82%
イノベーション・エンジン産業創出投資事業有限責任組合 4.23%
みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合 4.17%
横川拓哉 4.11%
Newton Biocapital I Pricaf privée SA 3.57%
三菱UFJキャピタル(株) 3.09%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/03 単体実績 
303,983 -163,663 -178,284 1,490,676
2019/03 単体実績 
275,959 -145,545 -163,054 1,327,621
2020/03 単体実績 
85,759 -834,362 -841,731 485,889
2020/12 第3四半期単体実績 
50,120 -287,533 -288,978 1,207,951
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年9月19日まで
または、上場後180日目の2021年12月18までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
28億7100万0000円(3,300,000株×870円)
潜在株数(ストックオプション)
838,600株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社ペルセウスプロテオミクス<4882>は東京大学発の創薬バイオベンチャーである。富士フィルムが株式シェア32%を有する筆頭株主となっている。
ペルセウスプロテオミクス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■沿革

同社は2001年2月に東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された蛋白質発現・抗体作成技術を基盤として、診断・創薬標的に対応する抗体の医療への活用を目指して設立された。

2009年に富士フィルムが株主割当増資により株式の77%を保有し親会社となった。しかし2018年3月の第三者割当増資の結果、富士フィルムの株式シェアは49%となりその他の関係会社となった(現在の株式シェアは32%)。ただし現在も富士フィルムが筆頭株主である。
 
ペルセウスプロテオミクス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は創業以来、医薬品シーズ抗体を創生することで、がん及びその他疾患の医療用医薬品の研究開発及び関連業務を行っている。

同社の長年の経験に基づいたハイブリドーマ法と、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法により、高機能抗体を取得した上で、必要により抗体に遺伝子工学的な改変あるいは科学的な修飾を施して、抗体医薬品候補としての研究開発を進めている。

創薬の収益モデルは、国内外の製薬企業に対して同社が開発した医薬候補品を導出(特定の医薬品を開発、販売するために必要な知的財産権の使用を許可すること)することによる契約一時金収入、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入等から構成される。一般的な創薬ベンチャーと同様の収益モデルである。

また創薬のみならず、抗体研究支援、抗体・試薬販売の事業も展開している。
 

■創薬パイプライン

同社はこれまで創出したがん治療用抗体のうち、肝臓がんを標的とする抗体、固形がんを標的とするRI標識抗体を、それぞれ製薬メーカーである中外製薬、富士フィルムに導出した。現在導出先により臨床試験が行われている。

また難治性血液がんを標的とした抗体は、2014年に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラムに採択され開発を進め、2018年より企業主体の開発に切り替えて自社で治験を推進中である。更に難治性固形がんを標的とした薬物結合抗体(ADC)等、数々のがん治療用抗体の研究開発を進めている。
 

●中外製薬との開発状況

中外製薬と開発中のPPMX-T001は肝臓がんを対象疾患としている。第Ⅰ相試験で患者の有効性が確認されたが、第Ⅱ相試験は主要評価項目が未達となり現在試験は行われていない。アテゾリズマブとの併用での第Ⅰ相試験が行われている。

また固形がんに向けては米国及び欧州での第Ⅰ相試験が2019年8月に終了し、日本での第Ⅰ相試験を実施中。
 

●富士フィルムとの開発状況

富士フィルムと開発中のPPMX-T002(固形がんが対象)は米国で2019年より第Ⅰ相試験を拡大し、日本の厚生労働省が定める第Ⅱ相試験相当を実施している。また2020年4月より日本での第Ⅰ相試験を実施している。

またPPMX-T004も富士フィルムに導出済みであるが、開発状況は非開示となっている。
 

●自社開発について

固形がんが対象となるPPMX-T003は、JST(科学技術振興機構)、AMED(日本医療研究開発機構)プロジェクトから自社開発に切り替えて、現在第Ⅰ相試験を実施中である。
 
ペルセウスプロテオミクス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■業績推移

2018年3月期 売上高3.0億円、経常利益▲1.6億円、当期純利益▲1.8億円
2019年3月期 売上高2.8億円、経常利益▲1.5億円、当期純利益▲1.6億円
2020年3月期 売上高0.9億円、経常利益▲8.3億円、当期純利益▲8.4億円
2021年3月期 売上高0.7億円、経常利益▲4.1億円、当期純利益▲4.1億円
2022年3月期(予想) 売上高0.7億円、経常利益▲5.8億円、当期純利益▲6.3億円

まだ治療薬の上市に至っておらず、開発ステージのため赤字が継続中。また2020年3月期以降は提携先の製薬会社からの開発マイルストーン収入が発生しておらず、売上高は1億円未満となっている。

2022年3月期も過去と同様の状況であり、開発段階が続く見込みである。

尚、2020年3月期決算が公開申請決算期であり、期越え決算でのIPOとなっている。
 

■財務状況

2020年3月期末時点で資産合計5.5億円に対し純資産合計4.9億円、自己資本比率89%である。借入金なく現預金4.8億円を有している。

また2021年3月期末時点では資産合計11億円、純資産合計11億円、自己資本比率97%であり、増資実行により純資産合計などが増加している。
 

■資金使途

IPOにより29億円の資金調達を行い、下記の使途を予定している。

・治験及び研究開発に係る研究開発費 14億円
・研究者の人件費、賃借料等の研究開発運営経費 6.2億円
・管理部門の人件費、賃借料等の事業運営の運転資金 8.3億円
・設備投資資金 0.6億円

調達資金は自社で開発中のパイプライン(PPMX-T003)の研究開発費を中心に充当される。

尚、売出は行われず公募(3,300,000株)のみのIPOである。
 

■株主状況

筆頭株主は富士フィルム(株式シェア33%)である。また子会社の富士フィルム富山化学も株式シェア0.7%の出資を行っている。

横川社長は潜在株式で4.1%の株式シェアを有している。

第2位株主のNVCC8号投資事業有限責任組合以下、VC等が合計12名義で出資しておりVC比率は52%である。尚、多数のVCがIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結している。

また事業会社としてエムスリー(2413:株式シェア4.8%)が株主参入している。
 

■まとめ

東京大学発で富士フィルムが筆頭株主の創薬バイオベンチャーのIPO案件である。

現状では治療薬の上市に至っておらず、開発ステージのため赤字が継続中。中外製薬及び富士フィルムに対し同社が創出した抗体の導出を行っている。また今回のIPOによる資金調達で、自社でのPPMX-T003の研究開発を進める計画である。

中外製薬及び富士フィルムに対し導出した抗体及び自社で研究開発を進める抗体について、最終的に治療薬として上市されるのか、またその時期はいつになるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、医薬品等の研究開発、製造、販売するバイオベンチャー企業で、長年の経験に基づいたハイブリドーマ法と、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法により、高機能抗体を取得したうえで、必要により抗体に遺伝子工学的な改変あるいは化学的な修飾を施し、抗体医薬品候補としての研究開発を進めている。

これまでに創出したがん治療用抗体のうち、肝臓がんを標的とする抗体及び固形がんを標的とする放射性同位体標識抗体を、それぞれ中外製薬株式会社及び富士フイルム株式会社に導出し、現在、導出先により臨床試験が行われている。上場市場は東証マザーズ。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が101億円、業績予想ベースのPERは赤字で計算不能となっている。上場日の株価動向は、資金吸収額が33億円とマザーズ銘柄としてはさほど大きくないが、赤字のバイオベンチャー企業の初値買いの需要は限定的であり、初値が公開価格割れとなるリスクもあると推測する。また、発行済株式数の41.3%をVCが保有しているため、仮に株価が公開価格の1.5倍を上回るとロックアップが解除されて需給が崩れることになる。

セカンダリーマーケットにおいては、バイオベンチャーの株価が大きく動き時は、会社が開示する臨床試験などの進捗に大きく前進があったときなので、会社の四半期決算以外の開示には注目しておいた方が良いだろう。