ブレインズテクノロジーIPOレポート

【目次】
①️ブレインズテクノロジーIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
ブレインズテクノロジー株式会社
コード
4075
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 齋藤 佐和子 / 1973年生
会社住所
東京都港区高輪三丁目23番17号
設立年
2008年
社員数
46人(2021年5月31日現在)
事業内容
エンタープライズAIソフトウェア事業(データ検索製品の開発・提供、データ分析製品の開発・提供)
URL
https://www.brains-tech.co.jp/
資本金
72,500,000円 (2021年6月22日現在)
上場時発行済み株数
5,370,000株
公開株数
820,000株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/07/08→1,630~1,780円に決定
ブックビルディング期間:2021/07/09 - 07/15
公開価格決定:2021/07/16→1,780円に決定
申込期間:2021/07/19 - 07/26
上場日:2021/07/28
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:野村證券
引受証券:みずほ証券
引受証券:いちよし証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
大株主
齋藤佐和子 54.17%
中澤宣貴 12.64%
NVCC7号投資事業有限責任組合 5.42%
SMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合 5.42%
河田哲 4.51%
今野勝之 4.51%
三生6号投資事業有限責任組合 2.71%
林琢磨 2.53%
榎並利晃 2.35%
田中幸一 0.81%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/07 単体実績 
282,340 17,413 17,417 -38,262
2019/07 単体実績 
432,740 11,744 39,937 1,674
2020/07 単体実績 
631,597 65,142 78,874 80,549
2021/04 第3四半期単体実績 
646,310 130,869 86,796 167,346
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年10月25日まで
または、上場後180日目の2022年1月23日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
14億5960万0000円(820,000株×1,780円)
潜在株数(ストックオプション)
788,000株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
ブレインズテクノロジー株式会社<4075>は、企業がデジタル技術による業務やビジネスの変革(DX)を加速するための、エンタープライズAIソフトウェア事業を展開する企業である。
 
ブレインズテクノロジー
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■提供ソリューション

同社は下記2つのソリューションを提供している。

・異常検知ソリューション「Impulse」
・企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」
 

●異常検知ソリューション「Impulse」について

異常検知ソリューション「Impulse」はデータ分析を行うためのソフトウェアであり、製造業等で設備の故障検知の仕組みを作るなどの用途での利用例がある。「Impulse」により実装されたAIは、企業内のシステムとして組み込まれることで予知保全や品質管理等の業務の高度化や省人化に貢献する。2014年に製品提供を開始しており、製造業・建設業・IT業を中心に21,000を超える機械学習のモデル運用を支えている。

また企業活動のAI導入が進まないという課題解決のために、「Impulse」は高度な分析技術を持ったデータサイエンティストに限らず、より幅広いユーザーが利用できるための機能や、AI技術の導入・運用のハードルを下げるためのアーキテクチャや機能を備えている。
 
ブレインズテクノロジー
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」

企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」は、企業内のファイルサーバやポータル、オンラインストレージ等に保存されている莫大な文書やデータの横断的な一括検索が可能である。2012年に大容量データを迅速に検索したいという顧客の声から生まれ、製造業・建設業・IT業を中心に利用されている。

 

■ソフトウェア提供形態と売上構成

同社のエンタープライズAIソフトウェアは、顧客ニーズに合わせてクラウド型とオンプレミス型を併用して提供中。ソフトウェアの提供形態にかかわらず、売上はソフトウェア売上と作業売上で構成される。

2020年7月期のソフトウェア売上比率は59%であり半数を超えている。またソフトウェア売上のうち、継続的な売上が見込める利用料と保守ライセンス料は売上全体の34%である。

ストック売上比率は34%に留まっているが、着実にその比率は高まっている。
 
ブレインズテクノロジー
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■2020年7月期の主要売上先

2020年7月期 売上高6.3億円(対前年同期比46%増)
・丸紅情報システムズ株式会社 0.9億円(割合14%)

丸紅情報システムズ株式会社が主要取引先であり、2019年7月期の売上割合15%、2021年4月期Q3同10%で推移している。また岡谷システム株式会社について2020年7月期は主要取引先に該当しないが、2019年7月期の売上割合13%(売上高0.6億円)、2021年4月期Q3同17%(同1.1億円)であり主要売上先となっている。

 

■業績推移

2018年7月期 売上高2.8億円、経常利益0.2億円、当期純利益0.2億円
2019年7月期 売上高4.3億円、経常利益0.1億円、当期純利益0.4億円
2020年7月期 売上高6.3億円、経常利益0.7億円、当期純利益0.8億円
2021年7月期(予想) 売上高8.6億円、経常利益1.3億円、当期純利益1.0億円

着実な増収増益が続いており、2018年7月期に黒字化して以降は黒字を維持している。

2021年7月期は売上高8.6億円、経常利益1.3億円の予想であり、増収及び経常利益1億円の大台突破を予想する。2021年7月期Q3(累計)は売上高6.5億円、経常利益1.3億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。

 

■財務状況

2020年7月期末時点で資産合計5.2億円に対し純資産合計0.8億円、自己資本比率15%である。借入金2.0億円に対し、現預金3.2億円を有している。また無形固定資産としてソフトウェア0.9億円が計上されている。

キャッシュ・フロー計算書において、2020年7月期の営業活動によるキャッシュ・フローは減価償却費(0.5億円)、売上債権の減少(0.2億円)、前受収益の増加(0.2億円)などから1.8億円となり、税引前当期純利益(0.6億円)を大幅に上回った。

 

■資金使途

IPOにより9.2億円の資金調達が行われ、下記使途を予定している。

・自社ソフトウェア製品の強化を目的とした研究開発費 5.9億円
・開発体制の強化及び営業体制の強化を目的とした研修採用費 0.9億円
・インターネット広告やイベント参加費等の広告宣伝費 0.9億円
・自社ソフトウェア製品の追加機能開発のための外注費の増加費用分 0.8億円

調達資金の半数以上は自社ソフトウェアの強化や機能追加のための研究開発や外注費に充当される。

 

■株主構成

齋藤社長が筆頭株主であり株式シェアの54%を保有している。また第2位株主は中澤取締役(株式シェア13%、うち1.8%は潜在株式)である。

VCがNVCC7号投資事業有限責任組合(同5.4%)、SMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合(同5.4%)、三生6号投資事業有限責任組合(同2.7%)の3名義で株主参入しており、VCシェアは14%である。VCはいずれも期間90日、株価1.5倍以上のロックアップ契約を締結している。

 

■まとめ

企業がデジタル技術による業務やビジネスの変革(DX)を加速するための、エンタープライズAIソフトウェア事業を展開する企業のIPO案件である。

同社AIソフトウェアはAI技術の導入・運用のハードルを下げるためのアーキテクチャや機能を備えており、製造業・建設業・IT業を中心に導入が進んでいる。継続的な売上が見込めるストック売上比率は2020年7月期34%まで伸びており、着実に拡大を続けている。

2021年7月期は売上高8.6億円、経常利益1.3億円を予想しており、経常利益が1億円を突破して本格的な利益計上ステージに入る予想である。

着地な成長を続けているが、IPOによる調達資金を活用するなどして成長スピードを上げることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、エンタープライズ AI ソフトウェア事業(データ検索製品の開発・提供、データ分析製品の開発・提供)を展開している。サービスとしては、異常検知ソリューション「Impulse」と、企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」の2つをクラウド型とオンプレミス型にて提供・販売している。上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が96億円、2021年7月期の業績予想ベースのPERは91.9倍となっている。

上場当日の株価動向は、資金吸収額は17億円とさほど大きくなく、AI関連サービスということもあって、個人投資家の人気も高くなりそうで、初値は後場まで持ち越されると推測する。初値が付いた後も、VCの売りがでなければ、公開株を手に入れた個人投資家の売りをこなした後に買い直されてストップ高の水準までいくかもしれない。

セカンダリ-市場においては、売上は昨対比での伸び率は落ちるかもしれないが、ビジネスモデルを見ると、利益率は高まると考えられるので、9月中旬に開示される来期の業績予想には期待したいところだが、利益成長率が2倍未満のとなると失望売りに繋がる可能性もあるので、決算発表前後はボラティリティが高まる可能性があると考えておいた方が良いだろう。