IPO株(新規公開株)の購入は多くの人から人気を集める投資方法の一つである。その魅力について「ローリスク・ハイリターン」と評する人も多いが、リスクがないわけではないし、せっかく抽選に当選して購入権を得ても、ステップ通りに手続きをしなければ購入はできない。
ステップ(1) 上場承認
IPO株を買う投資家から見たIPOステップの始まりが「上場承認日」だ。上場承認日とは証券取引所に株式の上場が承認された日のことで、この日に今後のIPOのステップや「想定価格」などが告知される。上場に関する情報は上場承認日より前からさまざまな予測はされるが、この上場承認日に一般の投資家などがIPOの詳しい内容を知ることになる。上場承認されると証券コードも決まる。
「想定価格」とは正式には「想定発行価格」といい、その後に決定される「公募価格」がいくらになるかという予測となる。ステップ(4)で詳しく述べるが、公募価格は「募集価格」とも呼ばれ、実際にIPO株が新規に投資家などに販売されるときの価格のことだ。
上場承認されると、IPOをする企業のブランドが一気に知れ渡る。新聞やテレビ、Webニュースなどで取り上げられるからだ。このことは企業がIPOを実施するメリットの一つにもなっている。
ステップ(2) 仮条件決定
IPOの次のステップとなるのが「仮条件」の決定だ。証券取引所が上場を承認してからしばらくたつと仮条件が決定され、公表される。具体的に言えば、仮条件とは公募価格を決めるための値幅のことで、仮条件で公表された値幅の範囲内で公募価格が決まる。
ではどのように値幅が決まるのか。これは証券会社が機関投資家や企業の経営者、銀行、保険会社などの金融機関に聞き取りを行って決定する。具体的には、目論見書などの資料やその企業の強みや特徴、成長過程などを参考に、ヒアリングの相手にそのIPO株をいくらで買いたいかを聞き取ることになる。
その結果、例えば「1株2000円~2050円」という形で仮条件が決まる。この価格幅はIPO銘柄によって違いがある。2000円のことを「仮条件の下限」、2050円のことを「仮条件の上限」と呼ぶ。
ステップ(3) ブックビルディング
仮条件が決まると、いよいよ「ブックビルティング」のフェーズに移る。
ブックビルディングとは、公募価格を決定するためのいわゆる「値決め」のこと。投資家が仮条件で示された値幅において申し込み株式数と希望株価を示し、それらの需要をもとに上場を予定している企業と証券会社が最終的に公開価格を決定する。希望株価の示し方には「成行」という方法もある。
ブックビルティングに参加するためには、対象となるIPOの主幹事もしくはそれ以外の幹事の証券会社に口座を持っていなければならない。主幹事とは、上場予定企業とともにIPOの手続きを進めていく証券会社のことを指し、主幹事はIPOにおいて上場予定企業に最も近い存在であると言える。IPO後も主幹事はその上場企業をサポートする。
これらの証券会社に口座を持っていたとしても、過去一定の期間内に全く取引をしていなかったり、購入金額に相当する預かり資産がなかったりすると、ブックビルディングに参加できないこともある。そのため事前に証券会社に詳細を確認しておく必要がある。
証券口座名 | IPO 実績 |
IPO抽選方法 |
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1位 | 85社 | 完全抽選 70% チャレンジP 30% 店頭配分あり |
2位 | 52社 | 店頭90% ネット10% 完全平等抽選(※) |
3位 | 50社 | 100%完全平等抽選 |
39社 | 100%完全平等抽選 | |
38社 | 100%完全抽選 | |
19社 | システムでの 平等抽選 |
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18社 | 70% 完全抽選 |
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詳細はこちら | 1社 | 100% 完全平等抽選 |
証券口座名 | IPO実績 | IPO抽選方法 | ||
---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | ||
1位 | 86社 | 84社 | 85社 | 完全抽選 70% チャレンジP 30% 店頭配分あり |
2位 | 66社 | 61社 | 52社 | 店頭90% ネット10% 完全平等抽選 (※) |
3位 | 50社 | 45社 | 50社 | 100%完全平等抽選 |
47社 | 37社 | 39社 | 100%完全平等抽選 | |
11社 | 26社 | 38社 | 100%完全抽選 | |
23社 | 24社 | 19社 | システムでの平等抽選 | |
9社 | 21社 | 18社 | 70%完全抽選 | |
詳細はこちら | 1社 | 0社 | 1社 | 100%完全平等抽選 |
LINE証券がIPOの取扱を開始
LINE証券は2021年5月からIPOを取り扱っており、既に3件の実績がある。
LINE証券は野村證券ホールディングスとLINEにて、共同開発したスマホ投資サービスなので、野村證券からIPOの委託が回ってくる。
野村證券はIPOの幹事になる機会が多く、IPOの割当数が多い主幹事も2020年に22社(全体の23.7%)を行っているので、LINE証券への委託にも期待が持てる。
ステップ(4) 公募価格の決定
次のステップが「公募価格」の決定だ。公募価格はブックビルディングで投資家から示された希望購入価格と希望購入株数をもとに決定される。
記事の後半でも触れるが、この公募価格によってそのIPO株の人気の程度を計ることができる。例えば、仮条件の上限もしくは上限に近い価格で公募価格が最終決定した場合、そのIPO株に対する人気が高いということになる。逆に仮条件の下限もしくは下限に近い価格に公募価格が落ち着いた場合は、投資家からの人気は低かったというわけだ。
実際のところ、公募価格は仮条件の上限になるケースが多い。一方で公募価格が仮条件の下限となるケースも少なからずある。公募価格が仮条件の上限ではない場合はそのIPO株の購入を控えた方が良いという考え方をする投資家もいる。
IPO株に関するQ&A
IPOのブックビルティングとは?
ブックビルディングとは、公募価格を決定するためのいわゆる「値決め」のこと。
IPO投資は少額でも可能?
一株からIPO投資ができる証券会社もあるため、少額でもIPO投資が可能である。
■公式ブログ:Be a pioneer
■公式Twitter:@hibiki_koshi
8月のIPO銘柄を紹介:株式会社クラシコム<7110>
会社名 | クラシコム |
市場・コード/業種 | グロース・7110/小売業 |
上場日 | 8月5日 |
申込期間(BB期間) | 7月25日~8月2日 |
おすすめ証券会社 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券(旧:カブドットコム証券)、SBIネオトレード証券(旧:ライブスター証券)、DMM.com証券 ※委託販売の配分がなかったため取扱中止、みずほ証券(主幹事)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(主幹事)、いちよし証券 |
フィスコ分析による 市場の注目度 | ★★★(最高★5つ) |
株式会社クラシコム<7110>は8月5日に東証グロース市場に上場予定の、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」の運営を行い服飾雑貨等の販売を行う企業である。
同社は2006年9月の設立後、2007年9月に自社ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開設して、北欧ヴィンテージ食器の販売を開始した。以降、北欧雑貨の取扱い(2008年8月)、オリジナルブランド「KURASHI&Trips PUBLISHING」のアパレル・雑貨販売本格化(2017年3月)、「北欧、暮らしの道具店」アプリリリース(iOS版2019年11月、Android版2020年4月)を経て、現在に至っている。
業績は下記の推移である。
2020年7月期 売上高34億円、経常利益5.6億円、当期純利益3.7億円
2021年7月期 売上高45億円、経常利益7.9億円、当期純利益5.7億円
2022年7月期(予想) 売上高51億円、経常利益8.3億円、当期純利益5.5億円
増収増益が続いているが、もう1点注目すべきは利益率の高さである。2021年7月期の経常利益率は17%であり、ECサイト運営事業者としては非常に高い。決算の開示がある2017年7月期以降、高い利益率で黒字が維持されている。また、2021年7月期の自己資本比率も70%であり非常に高い。なお、株主は青木社長(株式シェア75%)、佐藤取締役(同20%)など個人株主のみである。
YouTubeやSNSの積極的な活用で、「北欧、暮らしの道具店」は独自の世界観を構築し、高い利益率を維持してで成長が続いている。IPO後も高い利益率を維持しながら成長を続けることが出来るのか、という点が今後の注目ポイントになると考える。
プロフィール
・石井僚一
金融・投資ライター
大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。 株式市場の解説や個別銘柄の財務分析、IPO関連記事を得意としている。株式会社ZUUでは長くIPO記事を担当。
複数媒体に寄稿しており、Yahoo!トップページに掲載実績あり。
\楽天ポイントでお得に投資!/
個人投資家 Q.利用している証券会社と選んだ理由、評価しているポイントについて教えてください。
もっぱら利用しているのは楽天証券です。その理由は、貸株サービスが便利だから。貸株サービスとは、保有中の株式を証券会社へ貸し出し、その見返りに貸株金利を得られるというものです。 ほかのネット証券にも同様のサービスがありますが、100株単位で自分が貸したい株数を選択できるというのは楽天証券だけですね。それに、確定申告の際に必要な貸株で得た利益の証明書も作成してもらえるのも助かります。いろいろな証券会社の口座を試してみたうえで、現在は楽天証券がメインの証券会社になっていますね。
響煇嚆矢さんのインタビュー記事はこちら