T.S.I IPOレポート

【目次】
①️T.S.I IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(近日中に追加予定)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(3/2追加)

会社名
株式会社T.S.I
コード
7362
市場
マザーズ
業種
サービス業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 北山 忠雄 /1954年生
会社住所
京都市西京区桂南巽町75番地4
設立年
2010年
社員数
260人(2020年12月31日現在)
事業内容
サービス付き高齢者向け住宅の建築及び介護サービスの提供
URL
http://www.t-s-i.jp/
資本金
98,200,000円 (2021年2月12日現在)
上場時発行済み株数
1,528,000株
公開株数
400,000株
連結会社
1社
スケジュール
仮条件決定:2021/03/01→1,700~2,000円に決定
ブックビルディング期間:2021/03/03 - 03/09
公開価格決定:2021/03/10→2,000円に決定
申込期間:2021/03/11 - 03/16
上場日:2021/03/19→初値4,000円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:野村證券
引受証券:大和証券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:西村証券
引受証券:東海東京証券
大株主
北山忠雄 53.58%
北山優吾 10.42%
北山千賀子 8.14%
北山裕美 8.14%
北山雄三 8.14%
北田翔士 2.44%
北山由紀子 2.04%
吉国潤子 1.22%
中村眞里 髙岡まり子 平田勇介 三宅裕介 松嶋美智子 0.41%
横田和恵 宇野亜沙美 福村高志 北山英一 藤井清史 0.41%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2017/12 単体実績 
1,188,796 -12,480 -13,826 272
2018/12 連結実績 
2,172,316 60,693 78,297 58,546
2019/12 連結実績 
2,385,476 107,219 76,503 135,049
2020/09 第3四半期連結実績 
2,243,812 118,066 81,568 216,618
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年6月16日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
6億2000万0000円(400,000株×1,550円)
潜在株数(ストックオプション)
なし
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社T.S.I<7362>はサービス付き高齢者向け住宅の建築及び介護サービスを京都府・滋賀県中心に提供する京都市に本社を置く企業である。
 
T.S.I
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

事業内容詳細

同社は下記3つの介護サービス及び不動産事業を手掛けている。

・サービス付き高齢者向け住宅
・訪問介護/介護予防・日常生活支援
・居宅介護支援
・不動産事業

尚、サービス付き高齢者向け住宅、訪問介護/介護予防・日常生活支援、居宅介護支援は介護事業として同一セグメントとなっている。

●サービス付き高齢者向け住宅及び不動産事業
同社はサービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」の運営を行っている。サービス付き高齢者向け住宅は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の第5条において「状況把握サービス」、「生活相談サービス」を行うことが必須とされている。その中で同社施設は、「介護特化型」で自立から重度までを対応している。

「アンジェス」は京都府・滋賀県を中心に7府県に24拠点・746室を展開する。施設数・居室数は年々着実に増加している。

また「アンジェス」は開設後1年未満の平均稼働率が2017年度81.0%であり、全国平均を約12ポイント上回る。更に開設後1年以上を経過した全拠点の平均稼働率は97.2%(2020年9月末時点)であり、満室に近い状態である。

同社は自社営業部隊を有しており、繰り返し入居者を紹介してもらいやすい体制を構築しており、安定的な入居を維持している。
 
T.S.I
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

尚、連結子会社の株式会社北山住宅販売が「アンジェス」の設計・建築を行っている。「アンジェス」は外部オーナーが施主となり保有するスキームでの事業展開だが、株式会社北山住宅販売は「アンジェス」を6棟保有しており不動産事業を展開している。
 
T.S.I
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●訪問介護/介護予防・日常生活支援
訪問介護とは要介護認定を受けた利用者に対して、介護福祉士(ケアワーカー)や訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅へ訪問し、食事・排泄・入浴など直接体に触れる身体介助や掃除・選択などの家事面における生活援助を行うサービスである。同社の訪問介護事業所「ケアステーションあんじぇす」のスタッフは、サービス付き高齢者向け住宅のスタッフも兼務してサービスを提供している。

●居宅介護支援
居宅介護支援では、ケアマネジャーが要介護・要支援認定された要介護者や要支援者、その家族の生活環境の状況を確認し、利用者やその家族に対して、介護や支援の内容について確認し、それに基づきケアプランを作成している。
 

2019年12月期セグメント別損益

2019年12月期 売上高24億円(対前年同期比9.8%増)、営業利益1.1億円(同64%増)
・介護事業 売上高20億円(同25%増)、セグメント利益1.4億円(同216%増)
・不動産事業 売上高4.2億円(同▲29%減)、セグメント利益0.2億円(同▲71%減)


介護事業が増収増益を果たしており、特にセグメント利益は対前年同期比216%増と大幅な増益を達成している。
 

業績推移

2017年12月期 売上高12億円、経常利益▲0.1億円、当期純利益▲0.1億円
2018年12月期 売上高22億円、経常利益0.6億円、当期純利益0.8億円
2019年12月期 売上高24億円、経常利益1.1億円、当期純利益0.8億円
2020年12月期 売上高29億円、経常利益1.3億円、当期純利益1.0億円
2021年12月期(予想) 売上高33億円、経常利益1.6億円、当期純利益1.2億円
※2018年12月期より連結決算

年間4億円前後の増収ペースだが、増益ペースは0.3~0.5億円のペースに留まっている。その中で2020年12月期に当期純利益で1億円の大台に到達した。

2021年12月期も着実な増収増益ペースが維持される予想である。

尚、2019年12月期が公開申請決算期であり期超え決算でのIPOとなっている。
 

財務状況

2019年12月期末時点で資産合計21億円に対し、純資産合計1.4億円、自己資本比率7%である。借入金15億円に対し現預金4.2億円を保有している。

資産合計21億円のうち、建物及び構築物・土地の有形固定資産が12億円計上されており、資産合計の58%が有形固定資産である。

キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フローは2018年12月期▲0.4億円、2019年12月期1.9億円である。入居者からの前受金の増減(2018年12月期▲0.7億円、2019年12月期0.5億円)の影響が大きい状態にある。
 

資金使途

IPOにより5.0億円の資金調達を行い、子会社北山住宅販売において「アンジェス」の新規拠点の土地取得及び自社物件の建物建築等に4.2億円を充当する予定である。
 

株主構成

北山社長が株式シェア54%を保有する筆頭株主。また北山社長の一族で8割以上の株式が保有されており、安定的な株主構成である。

個人中心の株主構成であり、ファンドや金融機関などの株主参入はない。
 

まとめ

京都府・滋賀県中心に、サービス付き高齢者向け住宅「アンジェス」の建築及び介護サービスを提供する企業のIPO案件である(本社は京都市)。

「アンジェス」というブランドのサービス付き高齢者向け住宅を7府県に24拠点・746室を展開している。また訪問介護/介護予防・日常生活支援、居宅介護支援も手掛けており、顧客に対しワンストップでの介護サービスの提供が行われている。

着実に施設数を増加させる一方で、高い入居率も維持しており、順調に増収が続いている。しかし増益ペースは増収ペースに比べると一歩遅れている。

IPOによる調達資金を活用してサービス付き高齢者向け住宅の建築を続ける計画である。高齢化社会の進展により、今後の増収も期待できるが、低い利益水準に留まっておりIPO後の利益率の推移が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、京都、滋賀を地盤として、サービス付き高齢者向け住宅の建築及び介護サービスの提供を事業としている。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が約30億円、2021年12月期の業績予想ベースPERの24.6倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が9億円と小さいことから需給はタイトと考えられるが、事業の成長が乗数的に伸びるビジネスではないことから、上場日の前場の終わり、もしくは、後場寄りすぐに初値は付くと予想する。同日に他に1銘柄がIPOが予定されており、人気で負ける可能性もありえる。

セカンダリー市場においては、中長期的な成長は人口動態から十分あり得るため、長期保有を前提なら上場後に株価が弱含んだところで買っておく戦略も有効と考えるが、短期勝負で売買したい投資家の期待に応えることは難しいのではないだろうか。

当社の事業で差別化があるとすれば、看取り、をメニューに入れているところである。この部分が評価されれば、稼働率は維持され、ある一定の利益率で成長する可能性も十分あり得る。但し、ひとつだけ留意したいのは、介護保険や国の補助金の制度変更があったときは大きく収支構造が変化することがあり得るため、いまの収支構造が崩れることも可能性についても念頭に置いておきたい。