【目次】
①️ユミルリンクIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
ユミルリンク株式会社
コード
4372
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 清水 亘 / 1971年生
会社住所
東京都渋谷区代々木二丁目2番1号
設立年
1999年
社員数
111人(2021年7月31日現在)
事業内容
メッセージングプラットホーム事業
URL
https://www.ymir.co.jp
資本金
118,281,000円 (2021年8月17日現在)
上場時発行済み株数
3,892,600株
公開株数
1,276,000株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/09/01→950~1,000円に決定
ブックビルディング期間:2021/09/03 - 09/09
公開価格決定:2021/09/10
申込期間:2021/09/13 - 09/16
上場日:2021/09/22→初値1,711円
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主幹事証券:野村證券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
大株主
アイテック阪急阪神(株) 87.45%
清水亘 7.33%
及川英夫 4.76%
佐野拓 0.28%
市川卓也 0.17%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/12 単体実績 
1,248,531 176,526 120,228 713,204
2019/12 単体実績 
1,453,291 233,325 159,871 873,075
2020/12 単体実績 
1,629,752 326,340 224,013 1,097,089
2020/06 第2四半期単体実績 
912,221 177,653 121,907 1,218,997
ロックアップ情報
アイテック阪急阪神株式会社、清水亘、及川英夫、佐野拓は、上場後90日目の2021年12月20日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
12億7600万0000円(1,276,000株×1,000円)
潜在株数(ストックオプション)
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
ユミルリンク株式会社<4372>はメッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」の開発及び提供を行っている。親会社は阪急阪神HDグループのアイテック阪急阪神株式会社であり子会社上場となる。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書

■沿革

同社は1999年7月に有限会社ユミルリンクとして設立され、2000年6月に株式会社化された。

2002年1月に株式会社サイバーエージェント<4751>が親会社となった後、2005年12月にサイボウズ株式会社<4776>、2011年2月アイテック阪急阪神株式会社(親会社は阪急阪神HD:9042)と親会社が移り変わり現在に至っている。

業績面では2003年7月にメール配信ASPサービス(現、Cuenote FC)を開始した後、各種メッセージングサービスを追加している。
 

■事業内容詳細

同社はメッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」を開発し提供している。

「Cuenote」は顧客のマーケティング、コミュニケーション活動を支援するソフトウェアシリーズである。「安全・信頼性」、「利便性」、「経済的合理性」の向上を踏まえ、企画から保守を一気通貫でサービス提供できるノウハウを持つ垂直統合型のビジネスモデルで提供する。

「Cuenote」シリーズは下記の5つのサービスラインナップにより構成されている。また「Cuenote」の活用事例は下記となる。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書
「Cuenote」の主な特徴としては、メールを高速配信する処理性能を有することで、大量の会員に対してタイムリーかつ確実に情報を届けられること、豊富な機能を持ちメールマーケティングを実行する上で幅広い業界や分野で利用できること、操作性が高く業務の効率化が可能であることなどがあげられる。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書

■2020年12月期の収益モデル別売上高

2020年12月期 売上高16億円(対前年同期比12%増)
・ストック型収益 16億円(同14%増)
・スポット型収益 0.7億円(同16%減)

主力商材の「Cuenote FC」の提供形式はSaaS型とソフトウェア型があるが、2020年12月期時点ではストック型収益となるSaaS型でのサービス提供が殆どである。

メールサービス解約率は2020年12月期0.39%に留まる。殆どの顧客がサービスを継続しており、積み上げ型の安定的なビジネスモデルを構築している。
 

■業績推移

2018年12月期 売上高12億円、経常利益1.8億円、当期純利益1.2億円
2019年12月期 売上高15億円、経常利益2.3億円、当期純利益1.6億円
2020年12月期 売上高16億円、経常利益3.3億円、当期純利益2.2億円
2021年12月期(予想) 売上高18億円、経常利益3.2億円、当期純利益2.2億円

着実な増収増益を続けている。2019年12月期に経常利益2億円、2020年12月期に経常利益3億円の大台に到達した。

2021年12月期は売上高18億円、経常利益3.2億円の増収及び利益は横ばいの予想である。技術人員4名の増員や給与改定などの売上原価の上昇により、増収の一方で利益水準は横ばいの予想となっている。

2021年12月期Q2(累計)は売上高9.1億円、経常利益1.8億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。
 

■財務状況

2020年12月期末時点で資産合計14億円に対し純資産合計11億円、自己資本比率76%である。借入金なく現預金1.9億円を有しており、財務内容について特段の懸念事項はない。

資産合計14億円のうち、現預金1.9億円、売掛金2.1億円、預け金7.6億円などの流動資産が12億円あり、資産合計の82%が流動資産により構成されている。
 

■資金使途

IPOにより3.0億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。

・データセンターのサービス用基盤設備の新設やサーバ機材のリプレース費用などの設備資金 2.3億円
・採用活動費や広告宣伝費などの運転資金 0.7億円

調達資金の大半はサービス提供能力強化のための設備資金に充当される。

また公募338,200株に対し売出931,800株であり売出株の多いIPOである。売出は親会社のアイテック阪急阪神株式会社の保有株を中心に行われる。
 

■株主構成

筆頭株主は阪急阪神HDグループのアイテック阪急阪神株式会社であり株式の87%を保有する。保有3,108,500株のうち931,800株を売出株に充当するが、筆頭株主の座は維持される。

清水社長は第2位株主であり株式の7.3%を所有している。
 

■まとめ

メッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」の開発及び提供を行う企業のIPO 案件である。親会社が阪急阪神HDグループのアイテック阪急阪神株式会社であり子会社上場となる。1999年の設立後、親会社の変遷があったものの2011年2月にアイテック阪急阪神株式会社が親会社となり現在に至る。

業績は売上高15~20億円、経常利益2~3億円前後で着実な増収増益で推移している。ただし人員増加などにより、2021年12月期は売上高18億円、経常利益3.2億円の増収及び利益横ばいの予想である。

メッセージングプラットフォーム「Cuenote」で、サブスクリプション型のビジネスモデルを構築しており、業績は安定している。IPOによる調達資金を活用するなどして継続的な増収増益を加速させることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、メッセージングプラットフォームの運営事業を展開している。2011年2月から阪急阪神ホールディングスの子会社。消費者や社員らとのエンゲージメント向上を目的とした法人のマーケティング、コミュニケーション活動を支援するメッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」をSaaS形式で企業や自治体などに提供しており、売上の96.7%(取引額基準)を占めている。上場市場は東証マザーズ。

株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が39億円、2021年12月期の業績予想ベースのPERが17.53倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が15億円弱しかないことから、需給はタイトになるが、同日上場が当社も含めて3社あることから人気のでる銘柄とそうでない銘柄に別れる可能性が高いと考えられるが、個人的な見解としては、当銘柄が意外と人気化するのではないかと推測する。

セカンダリー市場においても、親会社が大株主でロックアップ解除後も売りそうにないので、需給の悪化は見込む必要はない。成長性においては急成長はないものの緩やかな成長は維持できるビジネスモデルなので、PERで言えば、30倍前後程度のバリュエーションまでは許容されるのではないだろうか。