【目次】
①️モビルスIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
モビルス株式会社
コード
4370
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 石井 智宏 / 1973年生
会社住所
東京都品川区西五反田三丁目11番6号 サンウエスト山手ビル5階
設立年
2011年
社員数
71人(2021年6月30日現在)
事業内容
コンタクトセンター向けSaaSプロダクト(モビシリーズ)などのCXソリューションの提供
URL
https://mobilus.co.jp/
資本金
90,000,000円 (2021年7月29日現在)
上場時発行済み株数
5,570,844株
公開株数
1,101,800株
連結会社
なし
スケジュール
仮条件決定:2021/08/16→1,060~1,280円に決定
ブックビルディング期間:2021/08/18 - 08/24
公開価格決定:2021/08/25
申込期間:2021/08/26 - 08/31
上場日:2021/09/02
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:大和証券
引受証券:野村證券
引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
引受証券:静銀ティーエム証券
引受証券:極東証券
大株主
ラン・ホアン 31.12%
阮明徳 10.47%
三菱UFJキャピタル5号投資事業有限責任組合 9.31%
エヌ・ティ・ティ・コムウェア(株) 9.10%
トランス・コスモス(株) 6.39%
グローバル・イノベーション・ファンドⅢ 6.39%
石井智宏 4.50%
(株)オウケイウェイヴ 3.66%
KSP4号投資事業有限責任組合 3.35%
SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合 1.70%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/08 単体実績 
679,793 103,341 69,109 827,333
2019/08 単体実績 
741,094 -88,845 -103,980 723,352
2020/08 単体実績 
952,657 54,645 74,504 1,251,518
2021/05 第3四半期単体実績 
899,106 119,559 139,906 1,391,425
ロックアップ情報
指定された株主は上場後90日目の2021年11月30日まで
または、上場後180日目の2022年2月28日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
14億1030万4000円(1,101,800株×1,280円)
潜在株数(ストックオプション)
519,372株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
モビルス株式会社<4370>はコンタクトセンター向けにSaaS形式でチャットサポートシステムなどを提供する企業である。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書
 
 

■事業内容詳細

同社はコンタクトセンター向けにSaaS形式で独自のチャットサポートシステムの提供と、顧客のROI向上を実現する上で不可欠なコンサルテーションサービスやカスタマイズ開発サービス(プロフェッショナルサービス)などを提供している。

これまでのコールセンターは基本的に電話対応のみを行う場所であったが、コンタクトセンターは電話に加えてチャット、メール、SNS、Fax、Webページなど複数のチャネルで顧客対応を行う。同社の提供するコンタクトセンターを対象としたチャットサポートシステムは下記特徴を有している。

・自動応答と有人対応とのシームレスなハイブリッド連携による効率化。
・独自開発したオペレーション支援AI「ムーア(MooA)」によるオペレータや管理者の負担軽減の実現
・コンタクトセンターの詳細状況を確認するためのKPI(Key Performance Indicator)のモニタリング機能
・チャットボット向けAIの精度を左右する教師データメンテナンスを可能とする独自機能
・顧客のROIの最大化を追求するための、コンタクトセンターオペレーションに精通したコンサルタントによるROI改善コンサルティングサービス

同社のチャットボットMOBI BOTは3年連続売上シェアNo.1(ITR「ITR Market View:ビジネスチャット市場2020」より)に選ばれており、2019年度は市場シェア15.2%の実績を持つ。また顧客サポートの課題を解決するITサービスを網羅的に幅広くカバーしており、他ベンダーのサービスとは一線を画している。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書
  

■四半期別の売上先別推移

同社サービスは直販、代理店、OEMの形式で提供されている。2020年8月期第1四半期(Q1)以降の四半期の推移は下記である。
画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書
  
直販、代理店、OEMいずれも着実な伸びを見せている。2021年8月期Q3時点で直販及び代理店が売上約2億円で同レベルである。またOEMが1.7億円と直販・代理店より若干少ない程度であり、3者の売上バランスが取れている。

ARRも着実に増加しており、2021年8月期Q2に5億円を突破してQ3も上昇した。尚、解約率は2021年8月期Q3時点で1.02%に留まっており、サブスクリプション型のビジネスモデルを構築している。

 

■2020年8月期のサービス部門別売上高

2020年8月期 売上高9.5億円(対前年同期比29%増)
・SaaSサービス 売上高3.9億円(同59%増)
・プロフェッショナルサービス 売上高2.8億円(同28%増)
・イノベーションラボサービス(受託開発サービス) 売上高2.9億円(同2.7%増)

SaaSサービスの売上高が最多であるが3サービスの売上バランスは取れている。また伸び率はSaaSサービスが対前年同期比59%増であり最も伸びている。

2020年8月期主要売上先
・株式会社J.score 売上高2.0億円(割合21%)
・NTTコムウェア株式会社 売上高1.2億円(同13%)

ソフトバンクとみずほ銀行によるスマホの個人向け融資サービス提供の株式会社J.score向けの売上が、2020年8月期は最多である。ただし2021年8月期Q3時点ではNTTコムウェア株式会社が1位となり逆転した。両者で全体売上の約3割を占める状態が2019年8月期以降続いている。

 

■業績推移

2018年8月期 売上高6.8億円、経常利益1.0億円、当期純利益0.7億円
2019年8月期 売上高7.4億円、経常利益▲0.9億円、当期純利益▲1.0億円
2020年8月期 売上高9.5億円、経常利益0.5億円、当期純利益0.7億円
2021年8月期(予想) 売上高12億円、経常利益1.3億円、当期純利益1.5億円
2022年8月期(予想) 売上高15億円、経常利益2.8億円、当期純利益2.1億円

増収が続いているが、2019年8月期は若干の赤字となった。しかし2020年8月期には黒字を回復。

2021年8月期も増収の予想であり、経常利益は1.3億円と1億円を超える予想である。
2021年8月期Q3(累計)は売上高9.0億円、経常利益1.2億円であり、通期予想達成に向け順調に進捗している。

2022年8月期も増収増益となり、売上高15億円、経常利益2億円の大台到達により、本格的な利益計上ステージ入りが予想されている。

 

■財務状況

2020年8月期末時点で資産合計16億円に対し純資産合計13億円、自己資本比率76%である。借入金1.6億円に対し現預金11億円を有しており、財務内容に対し特段の懸念事項はない。

資産合計16億円のうち、最大の科目は現預金11億円となっている。

キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フローが2019年8月期▲0.7億円に対し、2020年8月期2.0億円と急増した。税引前当期純利益▲0.9→0.5億円の黒字化に加え、減価償却費0.3→0.7億円の増加、未払消費税の増減▲0.1→0.3億円がその背景である。

 

■資金使途

IPOにより6.0億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。

・SaaSプロダクトのバージョンアップ(新規機能追加等)のソフトウェア投資 4.5億円
・借入金返済 1.5億円

調達資金の大半はオペレーション支援AIの追加機能開発等のソフトウェア製品の開発費に充当される。

また公募360,000株に対し、売出741,800株であり売出の多いIPOである。売出は株式会社オウケイウェイヴ210,000株を最多に、創業時の代表取締役ラン・ホアン氏やVCの保有株にて行われる。

 

■株主構成

筆頭株主(株式シェア31%)のラン・ホアン氏は創業時の代表取締役。第2位株主(同10%)の阮明徳氏は同社従業員である。

第3位株主(同9.3%)の三菱UFJキャピタル5号投資事業有限責任組合他、VCが多数出資を行っておりVC比率は27%。大半のVCはIPO後90日、株価1.5倍のロックアップ契約締結済み。

事業会社として取引先でもあるNTTコムウェア株式会社(同9.1%)、トランス・コスモス株式会社(同6.4%)、株式会社オウケイウェイヴ(同3.7%)、株式会社文化放送(同1.2%)などが出資している。尚、株式会社オウケイウェイヴは保有210,000株の全株を売出にて売却する。

石井社長は第7位株主(同4.5%、うち2.0%は潜在株式)である。

 

■まとめ

コンタクトセンター向けにSaaS形式でチャットサポートシステムなどを提供する企業のIPO案件である。

電話対応のみのコールセンターから、チャットなども活用したコンタクトセンターを活用する流れの中で、同社のコンタクトセンター向けサービスの採用が進んでいる。同社のチャットボットは、2019年度は市場シェア15.2%で業界No1とされている。

顧客のサービス解約率も低水準で推移しており、サブスクリプション型のビジネスモデル構築がなされている。経常利益は2020年8月期の0.5億円から、2021年8月期1.3億円、2022年8月期2.8億円と増益が続く予想である。

2021年8月期、2022年8月期の予想数字を達成した後も、継続的に増収増益を続けることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、コンタクトセンター向けSaaS プロダクト(モビシリーズ)などのCXソリューションの提供事業を展開している。上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が71億円、2021年8月期の業績予想ベースのPERは47.35倍となっている。

上場当日の株価動向は、資金吸収額が16億円とさほど大きくないので、需給からするとかなり強くなると見込むが、既存株主の半数以上が公開価格の1.5倍でロックアップが解除される契約を結んでいることから、初値がその水準を越すと売りが出やすくなることを念頭においておくべきだろう。セカンダリー市場においては、当社のビジネスモデルはストック型のSaaSモデルなので、契約数が積み上げられることで、毎年売上が伸びることになり、公開価格のPERの水準である約50倍は妥当だと考えられる。

来期も今期同様の成長すると考えると、株価が2倍になったとしても割高感はなく、上場直後に既存株主や公募・売出し株を買った個人投資家の売りで株価が大幅に売り込まれることがあれば、買いのチャンス到来となるかもしれない。 株価が動意づくタイミングとしては、8月決算発表の10月中旬に来期の業績予想が出る時期がひとつの目途となりそうだ。