【目次】
①️ワンダープラネットIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(5/25追加)
- 会社名
- ワンダープラネット株式会社
- コード
- 4199
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長CEO 常川 友樹 / 1981年生
- 会社住所
- 愛知県名古屋市中区錦三丁目23番18号
- 設立年
- 2012年
- 社員数
- 195人(2021年3月31日現在)
- 事業内容
- エンターテインメントサービス事業
- URL
- https://wonderpla.net/
- 資本金
- 250,001,000円 (2021年5月7日現在)
- 上場時発行済み株数
- 2,149,412株
- 公開株数
- 189,300株
- 連結会社
- 1社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/05/21→2,410~2,560円に決定
- ブックビルディング期間:2021/05/25 - 05/31
- 公開価格決定:2021/06/01→2,560円に決定
- 申込期間:2021/06/02 - 06/07
- 上場日:2021/06/10→初値4,115円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:大和証券
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:野村證券
- 引受証券:マネックス証券 (マネックス証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 引受証券:東海東京証券
- 大株主
- 常川友樹 16.05%
- JAPAN VENTURES I L.P. 11.93%
- (株)海外需要開拓支援機構 10.97%
- 石川篤 9.63%
- グローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合 8.39%
- ユナイテッド(株) 8.30%
- ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合 6.42%
- 久手堅憲彦 4.54%
- 西條晋一 4.28%
- LINE Ventures Japan有限責任事業組合 2.57%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/08 単体実績
2,664,911 -793,198 -835,966 107,289 - 2019/08 単体実績
2,856,258 -136,974 12,030 819,323 - 2020/08 連結実績
3,434,910 312,018 224,235 1,043,559 - 2021/02 第2四半期連結実績
1,881,268 141,585 176,939 1,520,502 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後180日目の2021年12月6日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
- 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 4億8460万8000円(189,300株×2,560円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 236,984株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- ワンダープラネット株式会社<4199>はスマートフォン向けのゲームアプリの企画・開発・運営・販売を行う名古屋市に本社を置く企業である。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
■事業内容詳細
同社は2012年9月に設立され、スマートフォン向けのゲームアプリの企画・開発・運営・販売を行っている。アップルやグーグルが運営するプラットフォーム等を通じてゲームタイトルを提供する。
同社の提供するゲームタイトルは、ユーザーが無料でダウンロードして楽しむことができる。ゲーム内での一部アイテムの獲得や機能拡張を行う際は月額での課金が必要となるフリーミアモデルであり、課金により得られた金額が同社の収入となる。
また同社が開発・運営等を担当し協業パートナーが配信を行うタイトルは、同社が契約に基づき協業パートナーから受領する金額を売上高としている。
■同社がサービスを提供する代表的なタイトル
同社がサービスを提供する代表的なゲームタイトルは下記である。
・『クラッシュフィーバー』(オリジナルタイトル、世界合計1200万ダウンロード)
→企画・開発・運営の全てを自社で行う完全オリジナルタイトル。
・『ジャンプチ ヒーローズ』(協業パートナーとの開発、世界合計1100万ダウンロード)
→他社保有のIPを活用して企画・開発・運営を行う。費用負担を抑えられリスク低減できる特徴があり、IPのファンのうち一定数をユーザーとして獲得できる可能性がある。
・『このすばらしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』(他社開発タイトル、海外100万ダウンロード)
→他社が日本で実績があり海外未配信のタイトルを短期間で海外向けに開発を行い、リリース後も安定した運営を同社が行う。新規開発と異なり開発費用が抑えられ、短期間でリリース可能である。
既に2020年8月期の海外売上比率35%であり、海外の売上は同社収益を支える状態である。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)■開発体制
同社では独立した3つのスタジオ(名古屋スタジオ、グローバルスタジオ、タノシムスタジオ)でゲームの企画・開発・運営を行っており、各スタジオの特徴は下記である。
・名古屋スタジオ(自社開発を強みとし、名古屋にて開発から運営の全てを担う)
・グローバルスタジオ(東京:一気通貫の海外展開を強みとし、東京にて開発から運営の全てを担う)
・タノシムスタジオ(東京:M&Aで参画、新規チャレンジを担う)
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)■業績推移
2018年8月期 売上高27億円、経常利益▲7.9億円、当期純利益▲8.4億円
2019年8月期 売上高29億円、経常利益▲1.4億円、当期純利益0.1億円
2020年8月期 売上高34億円、経常利益3.1億円、当期純利益2.2億円
2021年8月期(予想) 売上高38億円、経常利益4.8億円、当期純利益10億円
※2020年8月期より連結決算
増収は続いたものの2019年8月期まで経常利益ベースで赤字が継続しており、2020年8月期に経常利益と当期純利益の両者が黒字化した。
2021年8月期は対前年同期比で増収増益を予想しており、経常利益は4億円台に到達の予想である。また繰延税金資産の回収可能性があるとの判断から法人税等調整額▲6.1億円(▲は利益)を計上予定であり、当期純利益は10億円の見込みである。2021年8月期Q2(累計)は売上高19億円、経常利益1.4億円であり、売上は通期予想達成に向け順調に推移している。
■財務内容
2020年8月期末時点で資産合計24億円に対し純資産合計10億円、自己資本比率44%である。借入金2.4億円に対し現預金11億円を有しており、財務内容に対し特段の懸念事項はない。
キャッシュ・フロー計算書において、2020年8月期の営業活動によるキャッシュ・フローは前受金の増加(2.2億円)、未払金の増加(1.0億円)などにより5.3億円となり、税金等調整前当期純利益(3.0億円)を大きく上回っている。
■資金使途
IPOにより1.9億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。
・新規開発タイトルにかかる人件費・外注費 1.4億円
・借入金返済の一部 0.4億円
調達資金の大半はゲームタイトルの新規開発資金に充当される。
また公募株数50,000株に対し、売出株数139,300株であり売出株数が多数のIPOである。売出は第2位株主であるJAPAN VENTURES I L.P.の保有株のみで行われる。
■株主構成
常川社長が筆頭株主であり株式シェア16%を有している。
第2位株主はVCのJAPAN VENTURES I L.P.(株式シェア12%)だが、所有278,700株のうち139,300株は売出株として拠出される。
第3位株主の株式会社海外需要開拓支援機構(政府系投資ファンド、同11%)以下、VCが多数株主参入しておりVC比率は52%である。VCはIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結済み。
■まとめ
スマートフォン向けのゲームアプリの企画・開発・運営・販売を行う名古屋市に本社を置く企業のIPO案件である。海外への展開にも注力しており、2020年8月期時点で海外向け売上は35%。
2020年8月期に黒字化を果たし、2021年8月期は対前年同期比で増収増益の予想で経常利益は4億円台の到達予想である。
他社ゲームアプリの海外展開などで手堅く収益を上げ、自社開発アプリで成長を加速させるモデルとなる。IPOによる調達資金を活用するなどして、自社開発アプリでヒット作品を生み出し成長を加速させることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、スマートフォンを中心としたスマートデバイス向けアプリ・ゲームの企画、開発、運営、販売を行うエンターテインメントサービス事業をApple Inc.、Google Inc.が運営するプラットフォーム等を通じて国内外のユーザーに提供する事業を展開している。上場市場は東証マザーズ市場。
株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が55億円、2021年8月期業績予想ベースだとPERは5.5倍となっているが、法人税等調整額△614 百万円を今期は計上する見込みなので、その分を差し引いたPERは14倍程度となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が6億円弱となっていることから、需給はかなりタイトで、初値は後場の遅い時間となる可能性が高い。しかしながら、VCの保有株数は発行済株式総数の52.4%となっていることから、ロックアップの条件を満たすと一気にVCの売りが殺到することが予想されるため、公開価格から1.5倍以上の株価が付いた後は深追いは禁物と言える。
セカンダリーマーケットにおいては、上場のボラティリティ相場が落ち着いた後の10月上旬に決算発表を迎えることになり、来期の業績予想次第で株価は大きく動きそうだが、VCが保有する株式が多く市場で流通していると上値の重い展開も予想されるので、大口保有のVC株主においては、大量保有報告で持ち分の移動を確認したほうがよいだろう。