【目次】
①️ペイロールIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 会社名
- 株式会社ペイロール
- コード
- 4489
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 湯浅 哲哉 / 1958年生
- 会社住所
- 東京都江東区有明三丁目5番7号
- 設立年
- 2017年
- 社員数
- 566人(2021年4月30日現在)
- 事業内容
- 給与計算業務等のアウトソーシング事業
- URL
- https://www.payroll.co.jp/
- 資本金
- 100,000,000円 (2021年5月18日現在)
- 上場時発行済み株数
- 17,906,100株
- 公開株数
- 6,838,000株
- 連結会社
- 1社
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/06/01→1,280~1,380円に決定
- ブックビルディング期間:2021/06/03 - 06/09
- 公開価格決定:2021/06/10→1,380円に決定
- 申込期間:2021/06/14 - 06/17
- 上場日:2021/06/22→初値1,290円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:野村證券
- 引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:東海東京証券
- 引受証券:岡地証券
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:いちよし証券
- 大株主
- Pacific グロース投資事業有限責任組合 22.13%
- Pacific戦略投資1号投資事業有限責任組合 21.11%
- Pacific2号投資事業有限責任組合 14.05%
- リサ・コーポレート・ソリューション・ファンド4号投資事業有限責任組合 14.01%
- Pacific グロース3号投資事業有限責任組合 7.08%
- Pacificプリンシパル投資事業有限責任組合 6.91%
- (株)アイネット 5.53%
- 湯浅哲哉 5.46%
- ペイロール従業員持株会 2.30%
- 山﨑雅敏 0.28%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/03 単体実績
2,772,056 -17,138 -294,436 7,929,761 - 2019/03 連結実績
6,629,003 934,257 649,372 9,097,302 - 2020/03 連結実績
7,252,039 1,069,577 727,897 9,829,413 - 2020/12 第3四半期連結実績
4,886,936 634,434 416,672 10,246,086 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2021年9月19日まで
または、上場後180日目の2021年12月18日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 94億3644万0000円(6,838,000株×1,380円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 600,000株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- 株式会社ペイロール<4489>は給与計算のアウトソーシング事業を手掛ける企業である。投資ファンドが株式シェアの8割以上を持つファンド子会社となっている。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■沿革
同社は1989年4月に個人事業主向け記帳代行業務の受託を目的として千葉県市原市に設立された、有限会社コンフィデンスサービスが前身である(旧株式会社ペイロール)。その後、株式会社インテリジェンス→株式会社パソナと筆頭株主が変わるが、2013年4月にVCのジャフコグループ<8595>のファンド子会社となった。
そして2017年4月に設立された現・株式会社ペイロールと旧株式会社ペイロールが合併し現在に至っている。
■事業内容
同社はマネージドサービス(同社の従業員が提供する初期導入から給与計算業務の運用に関する各種サービス)とクラウドサービス(同社のクラウドベースのシステムにより提供されるWebサービス)を用いた給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を主たる事業としている。
同社の給与計算業務のアウトソーシングサービスは、給与・定期賞与計算はもちろん年末調整補助業務や地方税特別徴収補助などの季節性業務、身上異動等の人事関連業務、従業員及び各拠点との直接対応など、給与計算に係わる様々な周辺業務をサポートする「フルスコープ型アウトソーシング」である。顧客企業が人事・労務関連業務の工数削減を行うことで、コア業務に特化するためのサービスとなる。
給与計算のみを受託するのではなく、サポート範囲を給与計算に係わる業務とするなどした結果、顧客満足度も上がり、2020年3月期は97.8%のリテンション率(継続売上比率に類似)となった。また2020年3月期の給与計算処理実績人数は98万人(前期93万人、対前年同期比+5.8%増)である。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■具体的サービス
同社サービスは①給与計算業務アウトソーシング、②マイナンバー管理サービスが提供されており、それぞれの具体的なサービスは下記となっている。
- (画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
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■2020年3月期の販売実績
2020年3月期 売上高73億円(対前年同期比9.4%増)
・給与計算関連サービス 63億円(同+9.4%)
・年末調整補助業務 9.5億円(同+9.6%)
給与計算関連サービスが売上高の8割以上を占める主力サービスである。ただし給与計算関連サービスに加え、年末調整補助業務も対前年同期比+9%以上の伸びを見せている。
■業績推移
2018年3月期 売上高28億円、経常利益▲0.2億円、当期純利益▲3.0億円
2019年3月期 売上高66億円、経常利益4.3億円、当期純利益0.8億円
2020年3月期 売上高73億円、経常利益4.2億円、当期純利益0.8億円
2020年3月期(IFRS実績) 売上収益72億円、営業利益12億円、当期利益7.3億円
2021年3月期(IFRS実績) 売上収益75億円、営業利益12億円、当期利益7.6億円
2022年3月期(IFRS予想) 売上収益86億円、営業利益15億円、当期利益11億円
2018年3月期は旧株式会社ペイロールとの合併後の第1期決算である。尚、合併前の旧株式会社ペイロールの2017年3月期は売上高60億円、経常利益7.0億円であった。
旧株式会社ペイロールの時代に比べ増収はなされており、2020年3月期に売上高70億円の大台に到達している。経常利益は2019年3月期、2020年3月期と4億円台が続いているが、増収ほどの伸び幅ではない。
2021年3月期よりIFRS決算のみの開示である。2021年3月期は対前年同期比で増収となるが利益は横ばいの予想。2022年3月期から増収増益の予想である。
尚、2020年3月期決算が公開申請決算期であり期越え決算でのIPOとなっている。
■財務状況(IFRSベース)
2020年3月期末時点で資産合計203億円、純資産合計98億円、自己資本比率48%である。借入金63億円に対し、現預金7.5億円を保有している。
資産合計203億円のうち、過去の企業合併時などに計上されたのれんが110億円計上されており最大の資産科目である。
キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フローが2019年3月期18億円、2020年3月期15億円を計上されている。減価償却費及び償却費が2019年3月期6.8億円、2020年3月期9.2億円計上されており、税引前利益に比べ営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増えている。
また2021年3月期末時点では資産合計207億円、純資産合計106億円、自己資本比率51%である。
■資金使途
IPOにより5.2億円の資金調達を行い、下記使途を予定している。
・基幹システム機能強化のための設備資金 5.0億円
調達資金は新規顧客の受注獲得や既存顧客の満足度向上のための、基幹システム機能強化の設備資金に充当される。
また公募株数428,000株に対し、売出株数6,410,000株であり売出株数が大幅に多いIPOである。売出は投資ファンド保有の株式が充当される。
■株主構成
投資ファンドのPacific グロース投資事業有限責任組合が筆頭株主であり、株式シェアの22%を有している。またPacific グロース投資事業有限責任組合などクレアシオン・キャピタル株式会社が運営するファンドが合計5名義で株式シェア71%となっている。
また、リサ・コーポレート・ソリューション・ファンド4号投資事業有限責任組合が第4位株主(株式シェア14%)であるが、売出にて全株式を売却する。投資ファンドで8割以上の株式が所有されているが、投資ファンドの保有分は売出分を除き、IPO後90日間のロックアップ契約を締結済み。
また湯浅社長は株式シェア5.5%(うち2.0%は潜在株式)を有している。
■まとめ
投資ファンドが株式シェアの8割以上を持つ、給与計算のアウトソーシング事業を手掛ける企業のIPO案件である。
顧客の継続率が高く、顧客の着実な積み上げにより増収を継続している。また給与計算に加えて、マイナンバー管理サービスを手掛けるなどのサービスラインナップの拡充も行われている。ただし利益面では2021年3月期は対前年同期比でほぼ横ばいであり、2022年3月期からの増益予想である。
IPOによる調達資金を活用するなどして成長を加速させることができるのか、という点が今後の注目点になると考えられる。尚、投資ファンドが8割以上の株式を所有しており、IPO後の株主構成についても注意が必要である。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社グループは当社及び連結子会社1社から構成されており、マネージドサービスと、クラウドサービスを用いた給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を主たる事業として展開している。上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が247億円、2022年3月期業績予想ベースのPERは22.7倍となっている。
上場当日の株価動向は、資金吸収額が108億円と超大型のマザーズ上場となることに加えて、同日上場が他に2社もあって、需給が厳しい銘柄に向かう資金量が限定的となるかもしれないことから、初値は前場の早い時間帯に付くと予想する。 また、発行済株式の86.1%をVCが保有しており、そのうち35.7%が売出しされるが、約50%が上場後に市場に出て来ることになり、上場後も株価の上値は重くなる場面があると考えておくべきだろう。事業の成長性については、まだまだ顧客開拓の余地があると考えられるので、株価のバリュエーションを維持しながら株価の動きには期待したいところだ。
セカンダリーマーケットにおいて、投資のタイミングとしては、ロックアップ解除時期の上場から3カ月後あたりで株価が緩んだタイミングがベストかもしれない。