【目次】
①️Green Earth Institute IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 会社名
- Green Earth Institute株式会社
- コード
- 9212
- 市場
- マザーズ
- 業種
- サービス業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役CEO 伊原 智人 / 1968年生
- 会社住所
- 東京都文京区本郷七丁目3番1号
- 設立年
- 2011年
- 社員数
- 30人(2021年10月31日現在)
- 事業内容
- バイオリファイナリー技術を活用した、グリーン化学品の開発及び事業化
- URL
- http://gei.co.jp/ja/
- 資本金
- 773,100,000円 (2021年11月19日現在)
- 上場時発行済み株数
- 10,063,000株
- 公開株数
- 3,840,200株
- 連結会社
- なし
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/12/06→1,060~1,160円に決定
- ブックビルディング期間:2021/12/08 - 12/14
- 公開価格決定:2021/12/15→1,160円に決定
- 申込期間:2021/12/16 - 12/21
- 上場日:2021/12/24→初値1,160円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:みずほ証券
- 引受証券:大和証券
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SMBC日興証券 (SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:ちばぎん証券
- 大株主
- UTEC2号投資事業有限責任組合 17.88%
- 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 17.33%
- 伊原智人 5.78%
- PNB-INSPiRE Ethical Fund 1 投資事業有限責任組合 4.68%
- ニッセイ・キャピタル5号投資事業有限責任組合 4.42%
- DIC(株) 4.01%
- UMI1号投資事業有限責任組合 3.87%
- エア・ウォーター株式会社 2.89%
- (株)新生銀行 2.69%
- 川嶋浩司 2.60%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2018/09 単体実績
188,842 -90,109 -175,690 406,395 - 2019/09 単体実績
202,040 -275,578 -289,303 441,092 - 2020/09 単体実績
334,338 -113,960 -116,424 324,847 - 2021/06 第3四半期単体実績
312,578 -55,781 -58,065 816,782 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2022年3月23日まで、または
上場後180日目の2022年6月21日までは普通株式の売却ができず(例外あり) - 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 44億5463万2000円(3,840,200株×1,160円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 1,264,500株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- Green Earth Institute株式会社<9212>はコネリ型細菌という微生物を活用した高効率な発酵技術をコア技術とする技術開発型ベンチャー企業である。同社技術を活用してバイオマス(植物原料)から化学品を作ることを目的としているが、同社自らは生産設備を保有せず、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸としている。
■従来技術との違い
従来の発酵法によるバイオマス(植物原料)からの化学品の生産は、微生物の生命活動(増殖)を利用し、その生命活動のための多段階の酵素反応(代謝)の過程で生成される物質を得るものであり、微生物の分裂増殖に依存して生産が行われる。
一方で同社の増殖非依存型バイオプロセスは微生物(コリネ型細菌)が、増殖できない酵素抑制条件において、増殖をしないものの代謝活性を高く維持する特徴があり、増殖させずに代謝のみを行わせることで低コストで高い生産性を発揮する。
従来の発酵法に比べ増殖のエネルギー、場所、時間を必要とせず、小規模な設備で短時間に対象物質を多量に得ることができる。
■事業内容詳細
同社自らは生産設備を保有せず、研究開発事業とライセンス・製品販売事業の2つのビジネスモデルを軸としている。
新技術の商用化には以下4つの段階がある。
・Stage0→技術開発の対象を選定する
・Stage1→技術的及び市場的な可能性を実証する
・Stage2→対象製品に対する需要を抱える企業等と最適な菌体及び生産プロセスを開発する
・Stage3→事業化された技術のパイロットテストの実施、パイロット後の商用化された技術をパートナー企業等にライセンス供与・当該技術を使用して自社販売(外部へ委託生産し、同社が販売)
各Stageとライセンス、製品販売(自社販売)の対応は下記となる。
■今後について
今後は①各化学品市場への参入、②パイプラインの拡大により成長を果たす計画である。
まず①各化学品市場への参入については、フェーズ1として食品添加物、飼料添加物、化粧品原料等のアミノ酸市場(ライセンスモデル)、フェーズ2として市場が拡大しているバイオ樹脂市場(ライセンスモデル)、フェーズ3として高付加価値市場(自社販売モデル)へ順次参入する予定である。
また②パイプラインの拡大については、新たな製品を生産する菌体の開発(新規)と、既に開発した生産性の高い菌体を基にした類縁製品を生産する開発(波及)の強化のみならず、国内外の既存設備を活用し多数のパイプラインの事業化を進める計画である。
■業績推移
2018年9月期 売上高1.9億円、経常利益▲0.9億円、当期純利益▲1.8億円
2019年9月期 売上高2.0億円、経常利益▲2.8億円、当期純利益▲2.9億円
2020年9月期 売上高3.3億円、経常利益▲1.1億円、当期純利益▲1.2億円
2021年9月期 売上高5.0億円、経常利益▲0.6億円、当期純利益▲0.7億円
2022年9月期(予想) 売上高8.4億円、経常利益▲0.3億円、当期純利益0.8億円
着実な増収が続いているものの赤字が継続中。ただし2019年9月期の経常利益▲2.8億円に比べ、2020年9月期は▲1.1億円であり赤字幅は縮小した。
2021年9月期も増収・赤字縮小が続き、経常利益及び当期純利益の赤字額は▲1億円未満となった。
2022年9月期は売上高8.4億円、経常利益▲0.3億円の予想である。経常利益は若干の赤字だが、営業利益はわずかの黒字(3百万円)、当期純利益は0.8億円の黒字予想。売上内訳は研究開発(Stage2)4.8億円、ライセンス・製品販売(Stage3)3.6億円を見込んでいる。
尚、2020年9月期が公開申請決算期であり期越え決算でのIPOである。
■財務内容
2020年9月末時点で資産合計5.7億円に対し純資産合計3.2億円、自己資本比率57%である。借入金1.0億円に対し現預金4.6億円を有している。
現預金4.6億円などの流動資産合計5.0億円、機械及び装置0.4億円などの有形固定資産0.7億円であり、資産の殆どが流動資産から構成されている。
尚、2021年9月期は資産合計11億円、純資産合計8.0億円であり、自己資本比率71%である。
■資金使途
IPOにより15億円の資金調達を行い、下記使途が予定されている。
・第2研究所の建設及び新たな設備投資 11億円
・研究開発及び増進のための採用費及び人件費などの運転資金 3.5億円
調達資金の大半は、多様なパイプラインへの対応可能な研究開発機能を備える第2研究所の建設関連投資に充当される。
公募940,000株に対し売出2,900,200株であり、売出株の多いIPOである。売出はVC保有株を中心に行われる。
■株主構成
筆頭株主のUTEC2号投資事業有限責任組合(株式シェア18%)他、多数のVCが出資しておりVC比率は47%である。VCはIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結済み。
第2位株主は国の外郭団体である公益財団法人地球環境産業技術研究機構(同17%)。伊原社長は第3位株主(同5.8%、うち2.9%は潜在株式)である。
第6位株主のDIC株式会社(同4.0%)は株主且つ取引先として同社の成長を支援している。
■まとめ
コネリ型細菌という微生物を活用した高効率な発酵技術をコア技術に、バイオマス(植物原料)から化学品を作る技術開発型ベンチャー企業のIPO案件である。
着実に増収を続けており、2021年9月期は売上高5.0億円、経常利益▲0.6億円となった。経常利益の黒字まであと一歩の状態である。2022年9月期は売上高8.4億円、経常利益▲0.3億円の予想であり、経常利益は赤字が続くが営業利益及び当期純利益は黒字化する。
2021年9月期までに一定の事業立ち上げはなされているが、IPOによる調達資金を活用してどのようなスピード感で各Stageの進展による事業のスケールアップが行われるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、地球環境産業技術研究機構(RITE)において、30年近く開発されてきた、バイオマスから化学品を製造するバイオリファイナリー技術を活用した、グリーン化学品の開発及び事業化を展開している。
上場市場は東証マザーズ。 株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が117億円、2022年9月期の業績予想ベースのPER 155.6倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が51億円と大きく、黒字化の道筋が個人投資家には見えにくこともあり、初値は寄付き近辺で付くと予想する。事業モデルはバイオベンチャーに似ていて、開発先行型でライセンス供与等の形で収益を刈り取っていく形となっている。
セカンダリー市場においては、当社の株主にはベンチャーキャピタルの存在が大きく、上場時に売出しをした後のも上場前の発行済株式数の18.8%が残るため、ロックアップ解除後の売り圧力となることは間違いない。おそらく機関投資家が積極的に買っていくような銘柄ではないので、市場で時間をかけながらベンチャーキャピタルの売りが続くと考えられるので、上値の思い展開はベンチャーキャピタルの売りが終わるまで続くと考えておくべきだろう。