【目次】
①️Institution for a Global Society IPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 会社名
- Institution for a Global Society株式会社
- コード
- 4265
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 情報・通信業
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 福原 正大 / 1970年生
- 会社住所
- 東京都渋谷区恵比寿南一丁目11番2号
- 設立年
- 2010年
- 社員数
- 41人(2021年10月31日現在)
- 事業内容
- AIを活用した人材評価プラットフォームを企業や学校に提供するHRTech×EdTech企業
- URL
- https://i-globalsociety.com/
- 資本金
- 59,901,000円 (2021年11月26日現在)
- 上場時発行済み株数
- 4,296,000株
- 公開株数
- 1,915,300株
- 連結会社
- なし
- スケジュール
- 仮条件決定:2021/12/10→1,660~1,720円に決定
- ブックビルディング期間:2021/12/13 - 12/17
- 公開価格決定:2021/12/20→1,720円に決定
- 申込期間:2021/12/21 - 12/24
- 上場日:2021/12/29→初値2,002円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:野村證券
- 引受証券:みずほ証券
- 引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:いちよし証券
- 引受証券:丸三証券
- 引受証券:岩井コスモ証券
- 引受証券:極東証券
- 大株主
- UTEC3号投資事業有限責任組合 17.59%
- 福原正大 14.43%
- TUSキャピタル1号投資事業有限責任組合 13.18%
- みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合 9.89%
- 慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合 9.11%
- 岩永泰典 7.50%
- (株)ウィザス 6.69%
- 船野智輝 5.37%
- (株)KEIアドバンス 4.05%
- 学校法人河合塾 2.31%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2019/03 単体実績
248,243 -193,295 -211,037 630,194 - 2020/03 単体実績
314,217 -107,557 -249,109 436,637 - 2021/03 単体実績
514,426 9,123 3,690 440,327 - 2021/09 第2四半期単体実績
268,460 -29,378 -29,523 410,804 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2022年3月28日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
- 調達額(公開株数×仮条件上限)
- 32億9431万6000円(1,915,300株×1,720円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 356,500株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- Institution for a Global Society株式会社<4265>はAIを活用した企業の人材評価システムや生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システムを開発提供する企業である。
■事業内容詳細
同社は下記2事業を展開している。
・HR事業
・教育事業
同社の基幹システム「GROW」は、回答者自身の気質(性格)を潜在的な認知バイアスから除去して正確に測る技術(特許取得)や、他者による評価を補正し忖度などの評価におけるバイアスを除去するためのAIアルゴリズム(特許取得)に強みがあり、公平で一貫した評価が可能である。「GROW」を基盤として、HR事業と教育事業の2事業が展開されている。
また新規事業として、ブロックチェーン技術を用いてAI活用により教育・人材育成支援を強化する実証実験を慶應義塾大学経済学部経済研究所Fin TEKセンターと共同で行っている。●HR事業
HR事業では、企業の人材採用・育成・配置・組織開発を、人材評価システム・オンライン教示・コンサルティング・研修など、多岐に渡るサービスを組み合わせて支援している。特にAIによってバイアスを補正した人材評価データを取得・分析し、データに基づく人事を可能とする点が強みである。
具体的にはスマートフォンを用いて受検する人材評価システム「GROW360」と、企業のDX人材育成を評価と教育の両面から支援するサービス「DxGROW」の2つのサービスを提供している。
「GROW360」はユーザー数67万人、累計他者評価件数5,550万件(2021年10月末時点)となっている。
●教育事業
教育事業では、学校や教育機関向けに生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システム「Ai GROW」、非認知能力などを育むSTREM教育動画コンテンツ「GROW Academy」、AIを搭載したオンライン英語学習ツール「e-Spire」を利用したサービスの提供を行っている。
2021年10月末時点で私立中高一貫、国公立中高、通信制高校、塾、小学校などを含めて100校が「Ai GROW」を有償導入しており、ユーザー数7.3万人、累計他者評価件数1,300万件である。
■2021年3月期セグメント損益及び主要取引先
2021年3月期 売上高5.1億円(対前年同期比64%増)、営業利益0.1億円(前年同期▲1.1億円)
・HR事業 売上高3.2億円(同42%増)、セグメント利益1.1億円(同669%増)
・教育事業 売上高2.0億円(同117%増)、セグメント利益0.4億円(前年同期▲0.1億円)
HR事業と教育事業のいずれも2021年3月期は黒字化した。HR事業はセグメント利益が1億円を突破している。また教育事業も売上高が対前年同期比117%増と大幅に伸び、前期の赤字から黒字転換した。
2021年3月期の主要取引先は株式会社ボストン・コンサルティング・グループ0.6億円(売上割合12%)、経済産業省0.6億円(同12%)、日本郵便株式会社0.2億円(同3.8%)である。2022年3月期Q2(累計)も経済産業省(割合15%)、日本郵便株式会社(同14%)は主力取引先となっている。■業績推移
2019年3月期 売上高2.5億円、経常利益▲1.9億円、当期純利益▲2.1億円
2020年3月期 売上高3.1億円、経常利益▲1.0億円、当期純利益▲2.5億円
2021年3月期 売上高5.1億円、経常利益0.1億円、当期純利益0.0億円
2022年3月期(予想) 売上高7.4億円、経常利益0.2億円、当期純利益0.1億円
増収が続く中で2020年3月期まで赤字が継続したが、2021年3月期は若干の黒字となった。
2022年3月期は売上高7.4億円、経常利益0.2億円の予想であり、増収黒字継続も本格的な黒字化には至らない。2022年3月期Q2(累計)は売上高2.7億円、経常利益▲0.3億円となっている。
■財務内容
2021年3月期末時点で資産合計4.9億円に対し純資産合計4.4億円、自己資本比率90%である。借入金なく現預金2.0億円を有している。
資産合計4.9億円のうち現預金2.0億円、売掛金2.2億円などの流動資産合計4.4億円であり、資産の殆どが流動資産により構成されている。
キャッシュ・フロー計算書において、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業C/F)が2020年3月期▲1.3億円、2021年3月期▲1.2億円とマイナスが継続している。2020年3月期は当期純利益▲2.5億円に対し減損損失(1.4億円)の計上がなされ営業C/Fのマイナス幅が減少し、2021年3月期は売上債権の増額(▲1.4億円)により税引前当期純利益(0.0億円)はわずかなプラスの反面、営業C/Fがマイナスに転じた。
ただし2022年3月期Q2時点での営業C/Fは0.4億円でありプラスに転じている。
■資金使途
IPOにより9.4億円の資金調達を行い、下記使途が予定されている。
・採用費及び人件費 4.1億円
・システム開発に係る費用 1.3億円
・事業規模拡大のためのその他営業費用 1.0億円
調達資金の約半数は事業規模拡大に向けた優秀な人材確保・定着・育成のための採用費及び人件費に充当される。
公募320,000株に対し売出1,595,300株であり売出株の多いIPOである。売出はVC保有株を中心に行われる。
■株主構成
筆頭株主はVCのUTEC3号投資事業有限責任組合(株式シェア18%)。VCは4名義で株式を保有し得おりVC比率は50%となっている。
福原社長は株式シェア14%の第2位株主である。
事業会社として教育業界の株式会社ウィザス(同6.7%)、学校法人河合塾(同2.3%)に加えて、シンクタンクの株式会社三菱総合研究所(同0.6%)が株主参入している。
■まとめ
AIを活用した企業の人材評価システムや生徒の能力と教育効果をAIで可視化する評価システムを開発提供する企業のIPO案件である。
自社開発のAIアルゴリズムを搭載した基幹システム「GROW」をベースにHR事業と教育事業を展開している。2021年3月期にセグメント損益で両事業とも黒字化しており、今後の成長が期待できる状態にある。
2021年3月期の売上高5.1億円、経常利益0.1億円から、2022年3月期は売上高7.4億円、経常利益0.2億円に増収増益の予想であるが、本格的な利益成長は2023年3月期以降となる。
2022年3月期を予想数値で着地した後に、2023年3月期から本格的な黒字計上が行われその後も成長を続けることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、AIを活用した人材評価プラットフォームを企業や学校に提供するHRTech×EdTech企業。
上場市場は東証マザーズ。 株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が74億円、2022年3月期の業績予想ベースのPER528 倍となっている。上場当日の株価動向は、資金吸収額が40億円弱あるが、今年最後のIPOとなり、12月後半のIPO銘柄の中では最も需給が良いタイミングでのIPOとなるため、初値は前場の後半もしくは後場まで持ち越されるのではないかと推測する。
セカンダリー市場においては、既存の株主であるVCが売出し後も発行済株式数の17%近く保有していることから、ロックアップ条件をクリアすると売りが出て来ると可能性がある。時価総額と事業規模から機関投資家の買いが多く入るとは考えずらく、VCの保有がなくなるまでは上値が重くなるのではないだおろうか。
当社のビジネスモデルは顧客へのサービスがストック売上になりやすく、いったん黒字になると、それ以降は売上が伸びれば利益が大きく伸長することになりそうだが、来期の業績予想でどれだけ売上と利益が伸長するかを見極めてから投資しても遅くはないと考える。PERの水準が100倍を切る水準まで下がる利益が出ないと上値を追うのは難しいのではないだろうか。