サイバートラストIPOレポート

【目次】
①️サイバートラストIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(4/2追加)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(4/1追加)

会社名
サイバートラスト株式会社
コード
4498
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 CEO 眞柄 泰利 /1958年生
会社住所
東京都港区六本木一丁目9番10号
設立年
2000年
社員数
214人(2021年2月28日現在)
事業内容
トラストサービス事業
URL
https://www.cybertrust.co.jp/
資本金
540,160,000円 (2021年3月12日現在)
上場時発行済み株数
3,910,600株
公開株数
550,000株
連結会社
2社
スケジュール
仮条件決定:2021/03/29→1,600~1,660円に決定
ブックビルディング期間:2021/03/31 - 04/05
公開価格決定:2021/04/06→1,660円に決定
申込期間:2021/04/07 - 04/12
上場日:2021/04/15→初値6,900円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:みずほ証券
引受証券:大和証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:いちよし証券
引受証券:楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
大株主
SBテクノロジー(株) 64.83%
(有)SPCトラスト 9.85%
日本電気(株) 5.52%
(株)オービックビジネスコンサルタント 5.52%
(株)ラック 5.52%
(株)エヌ・ティ・ティ・データ 1.58%
(株)日立製作所 1.58%
(株)サンブリッジコーポレーション 1.58%
セコム(株) 1.58%
大日本印刷(株) 1.58%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/03 単体実績 
2,629,590 369,144 269,078 2,614,217
2019/03 連結実績 
4,168,907 440,438 207,748 3,094,139
2020/03 連結実績 
4,421,401 535,617 350,748 3,444,846
2020/12 第3四半期連結実績 
3,358,271 326,746 144,642 3,589,292
ロックアップ情報
指定された株主は上場後180日目の2021年10月11日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×公開価格)
9億1300万0000円(550,000株×1,660円)
潜在株数(ストックオプション)
400,000株
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
サイバートラスト株式会社<4498>は認証セキュリティ技術とLinux/OSS技術をベースに、Web認証サービスや組み込みソフト開発などを手掛ける企業である。
 
サイバートラスト
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■沿革

同社は1995年9月に設立された旧サイバートラスト株式会社、2000年6月に設立されたミラクル・リナックス株式会社の2社が2017年10月に合併し、現在のサイバートラスト株式会社として業務を開始している。

また2020年5月には組み込みソフトの開発を手掛けるリネオHD株式会社(2019年7月に一部株式取得済み)の全株式を取得し子会社化した。

・ミラクル・リナックス株式会社の沿革
サイバートラスト
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

・旧サイバートラスト株式会社の沿革
サイバートラスト
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は下記3サービスを提供している。

・認証・セキュリティサービス
・OSSサービス
・IoTサービス
 
サイバートラスト
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●認証・セキュリティサービス

認証・セキュリティサービスでは具体的に下記3サービスを提供する。

① パブリック証明書サービス
同社は認証局(電子証明書の発行や執行などを行う権限を有し、登録局と発行局により構成される)を国内に持つ認証事業者としてSSL/TLS証明書(主としてWebサーバーの認証と通信の暗号化に用いる証明書。通信を暗号化することで第三者による盗聴・改ざんを防ぐ)の「SureServer」を提供している。

② デバイス認証証明書サービス
デバイス認証証明書サービスは、同社が提供のデバイス証明書管理サービス「サイバートラストデバイスID」は、デバイス認証証明書を使い、あらかじめシステム担当者が許可したモバイル端末だけを社内ネットワークにアクセスできるようにするサービスである。

③ 電子認証サービス
電子認証サービスでは、同社では包括的な本人確認・電子署名サービスを提供している。デジタルプロセスのデジタル化において、特に重要となる本人確認のデジタル完結、契約の電子化を含む電子文書の真正性確保を実現するための本人確認・電子署名サービス「iTrust」を提供している。
 

●OSSサービス

OSSサービスにおいて、同社はLinux OS「Asiannux Server(MIRACLE LINUX)」を企業向けLinuxサーバー用途の他、車載システムや産業用コンピューターなどの組込用途に提供している。

ソフトウェアのほか、国内のエンジニアによる10年にわたる長期サポートを提供し、基幹サーバーに求められる安定運用や、特定業務用機器への組込みに必須となる柔軟なカスタマイズまで対応している。
 

●IoTサービス

IoTサービスでは、IoTなどの組込み機器の開発向けの組込みLinux「EMLinux」を提供している。組込みLinuxの不利点とされていた、リアルタイム性、起動の高速化、省リソースなどの課題をLinuxのチューニングによって解決した。

また半導体設計時から廃棄処分工程まで、ライフサイクルを通じてIoT機器のセキュリティ状態を一気通貫で管理できる「セキュアIoTプラットフォーム」サービスを提供している。

更にIoT製品の継続的な開発と長期利用を支援するサービス「EM+PLS(イーエムプラス)」、IoT向け認証局サービスを提供している。
 

■2020年3月期の部門別売上高

2020年3月期 売上高44億円
・認証・セキュリティサービス 28億円(対前年同期比11%)
・OSSサービス 10億円(同▲4.4%)
・IoTサービス 6.0億円(同2.4%)

認証・セキュリティサービスが売上の約6割を占める主力事業である。尚、組み込みソフトの開発等を手掛けるOSSサービスは若干の減収となっている。

また収益モデル別の売上高は下記となっている。

・ライセンス 6.4億円(対前年同期比30%)
・プロフェッショナルサービス 11億円(同8.2%)
・リカーリングサービス 27億円(同0.8%)

電子証明書サービスや自社製品のサポートサービスなど、継続的な収益が見込まれるリカーリングサービスからの売上が6割を占めており、非常に安定した収益構造となっている。
 

■業績推移

2018年3月期 売上高26億円、経常利益3.7億円、当期純利益2.7億円
2019年3月期 売上高42億円、経常利益4.4億円、当期純利益2.1億円
2020年3月期 売上高44億円、経常利益5.4億円、当期純利益3.5億円
2021年3月期(予想) 売上高48億円、経常利益6.9億円、当期純利益4.0億円
※2019年3月期より連結決算

着実な増収増益を続けており、2019年3月期以降は売上高40億円台で推移している。また2020年3月期に経常利益5億円の大台を突破した。

2021年3月期も引き続き増収増益を予想している。2021年3月期Q3(累計)は売上高34億円、経常利益3.3億円であり、通期予想達成に向けた進捗は順調である。
 

■財務状況

2020年3月期末時点で資産合計49億円に対し純資産合計34億円、自己資本比率70%である。借入金なく現預金19億円を有しており、財務状態に対し特段の懸念事項はない。

ソフトウェアなどの無形固定資産10.5億円の計上はあるものの、資産合計のなかで現預金19億円が最大の科目となっている。
 

■資金使途

IPOにより4.9億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。

・認証・セキュリティサービスにおける設備投資 1.7億円
・OSSサービスにおける設備投資 1.1億円
・IoTサービスにおける設備投資 2.2億円

調達資金は3事業部門の設備投資に充当される。

公募株数250,000株に対し、売出株数300,000株であり、若干ながら売出株数が多い状態である。売出は筆頭株主のSBテクノロジー株式会社が全株を拠出する。

■株主状況

ソフトバンクのグループ企業であるSBテクノロジー株式会社<東証1部:4726>が筆頭株主(株式シェア65%)であり親会社となっている。

第2位株主(同9.9%)の有限会社SPCトラストは同社の役職員及び業務委託契約を締結するものに対するインセンティブを目的として設立されており、全て潜在株式で保有されている。

3位株主・日本電気株式会社(6701:株式シェア5.5%)、4位株主・株式会社オービックビジネスコンサルタント(4733:同5.5%)、5位株主・株式会社ラック(3857:同5.5%)など、事業会社中心の株主構成である。
 

■まとめ

ミラクル・リナックス株式会社と旧サイバートラスト株式会社が合併して設立された、認証・セキュリティサービス及びLinux系組込みソフト開発サービスなどを手掛ける企業のIPO案件である。

事業の主軸は認証・セキュリティサービスである。事業全体としてリカーリングサービスでの売上が約6割を占めており、安定した収益構造となっている。リカーリングサービス中心のビジネスモデルの中で着実な増収増益を続けており、今後も着実な利益成長が期待できる。

継続的な成長の維持が見込まれる中で、IPOを機に成長を加速化させることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社グループは、「トラストサービス事業」具体的には、さまざまなモノがインターネットサービスやインターネットに繋がり、またIT技術の活用によってあらゆるモノやプロセスがデジタル化される昨今のデジタル社会において「ヒト」「モノ」「コト」の正しさを証明し、お客様のサービスの信頼性を支えるサービス事業を展開している。

上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が65億円、2021年3月期の業績予想ベースのPERが 16.3倍となっている。この類のサービスを展開する上場企業との比較において、公開価格のPERは割安だといえる。上場当日の株価動向は、資金吸収額が10億円と少額であり、初値は上場当日に付くかどうか微妙なところである。大株主というよりも親会社のSBテクノロジーは持ち株をマーケットで売却することは考えられないので、上場後の需給は非常にタイトな状態が続くはずだ。よって、初値が上場日に付けば、初値が付いた後にストップ高まで買い上げられる可能性が高いと推測する。

セカンダリー市場においては、リカーリングサービス売上比率が60%超となっていることから、2022年3月期も増益基調が続くと考えられるが、5月に開示される業績予想次第では、上場後の調整の後、上値を試す展開となる可能性が高い。