シイエヌエスIPOレポート

【目次】
①️シイエヌエスIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント

会社名
株式会社シイエヌエス
コード
4076
市場
マザーズ
業種
情報・通信業
売買単位
100株
代表者名
代表取締役社長 関根 政英 / 1966年生
会社住所
東京都渋谷区恵比寿南一丁目5番5号 JR恵比寿ビル9階
設立年
1985年
社員数
163人(2021年6月30日現在)
事業内容
システムエンジニアリングサービス
URL
https://www.cns.co.jp/
資本金
123,600,000円 (2021年7月15日現在)
上場時発行済み株数
2,828,000株
公開株数
520,000株
連結会社
1社
スケジュール
仮条件決定:2021/08/02→1,700~1,940円に決定
ブックビルディング期間:2021/08/04 - 08/11
公開価格決定:2021/08/12→1,940円に決定
申込期間:2021/08/13 - 08/18
上場日:2021/08/20→初値3,010円
シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
主幹事証券:東海東京証券
引受証券:岩井コスモ証券
引受証券:SBI証券 (SBI証券の詳細記事はこちら)
引受証券:松井証券 (松井証券の詳細記事はこちら)
引受証券:水戸証券
引受証券:東洋証券
引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
大株主
富山広己 24.11%
N&KT(株) 23.92%
関根政英 7.11%
シイエヌエス従業員持株会 5.36%
小野間治彦 4.48%
楠見慶太 4.47%
(株)エヌ・ティ・ティ・データ 3.99%
生活協同組合コープさっぽろ 3.99%
戸田忠志 2.39%
種田政行 2.15%
業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産
2018/05 単体実績 
3,852,718 357,150 225,265 1,199,837
2019/05 連結実績 
4,434,200 275,878 142,928 1,444,898
2020/05 連結実績 
4,577,752 486,211 325,306 1,719,947
2021/02 第3四半期連結実績 
3,490,070 391,319 263,314 1,920,823
ロックアップ情報
指定された株主は上場後180日目の2022年2月15日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
調達額(公開株数×仮条件上限)
10億880万0000円(520,000株×1,940円)
潜在株数(ストックオプション)
なし
ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
株式会社シイエヌエス<4076>は株式会社NTTデータとの取引関係が強い中堅のSI事業者である。
 
シイエヌエス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

■事業内容詳細

同社は1985年設立の中堅SI事業者である。主なサービスとしては下記4つを提供している。

・システム基盤事業
・業務システムインテグレーション事業
・ビッグデータ分析事業
・デジタル革新推進事業

上記4事業を展開しているが単一セグメントであり、セグメント毎の損益などの開示はない。
 
シイエヌエス
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)

●システム基盤事業について

システム基盤事業は①オンプレミス基盤事業と、②クラウド基盤事業の2つのサービスを提供している。

まず①オンプレミス基盤事業は従来からのSI事業である。同社のパートナーである株式会社NTTデータや株式会社野村総合研究所を経由して、金融機関等のシステム開発を受託している。クラウドサービスの構築・運用においてもオンプレ基盤の技術要件が不可欠であり、今後も中核事業の1つとして注力する

次に②クラウド基盤事業は、AWS(Amazon Web Service)などのパブリッククラウド(サービス事業者が不特定多数の企業や個人に対してサービスを提供するクラウドサービスの形態)を活用したシステム構築サービスなどを手掛けている。本事業においても株式会社NTTデータを始めとするSI事業者と連携してサービスを提供している。
 

●その他事業について

ビッグデータ分析事業はSAS Institute Japan株式会社とパートナー関係にあり、顧客に対しサービスを提供している。

またデジタル革新推進事業では、顧客のDXを推進することを目的に様々な技術ソリューションを提供中。ServiceNow社の製品を活用したシステム保守・運用業務変革の取り組みを、株式会社NTTデータと推進している。

 

■2020年5月期の主要取引先

2020年5月期 売上高46億円
・株式会社NTTデータ 売上高11億円(割合23%)
・デュアルカナム株式会社 売上高9.3億円(同20%)
・株式会社野村総合研究所 売上高7.3億円(同16%)

上記3社で売上の約6割が計上されている。尚、デュアルカナム株式会社は生活協同組合コープさっぽろグループのシステム開発会社である。同社は北海道に子会社(株式会社シイエヌエス北海道、2016年4月設立)を有することで、生活協同組合コープさっぽろグループの案件に対応している。

2019年5月期、2021年5月期Q3(累計)も上記3社で2020年5月期と同等の売上割合を維持しており、親密取引3社中心に手堅く売上を計上している。
 

■業績推移

2018年5月期 売上高39億円、経常利益3.6億円、当期純利益2.3億円
2019年5月期 売上高44億円、経常利益2.8億円、当期純利益1.4億円
2020年5月期 売上高46億円、経常利益4.9億円、当期純利益3.3億円
2021年5月期 売上高48億円、経常利益4.9億円、当期純利益3.5億円
2022年5月期(予想) 売上高53億円、経常利益5.1億円、当期純利益3.3億円
※2019年5月期から連結決算

着実に増収増益を続けている。2020年5月期は売上高46億円、経常利益4.9億円の規模であり、中堅SI会社の事業規模である。

2021年5月期に若干の増収増益の後、2022年5月期は売上高50億円、経常利益5億円の大台突破の予想である。既存顧客に加え、新規顧客による金融系のクラウド構築での需要を背景に増収増益を予想している。

尚、2020年5月期決算が公開申請決算期であり、期越え決算でのIPOである。
 

■財務状況

2020年5月期末時点で資産合計28億円に対し純資産合計17億円、自己資本比率61%である。借入金なく現預金16億円を有しており、財務内容に対し特段の懸念事項はない。

資産合計28億円のうち流動資産合計21億円であり、資産の74%が流動資産により構成されている。

また2021年5月期末時点では資産合計31億円に対し純資産合計20億円、自己資本比率64%となっている。
 

■資金使途

IPOにより6.6億円の資金調達を行い下記使途が予定されている。

・クラウド基盤事業やビッグデータ分析事業に加え、上場後の内部管理体制強化のための人材採用費 2.1億円
・新技術習得などの継続的な人材育成を目的とした教育研修費 0.9億円
・新規ビジネスモデル構築のための研究開発費等 0.9億円
・情報一元化による業務効率化を目的とした社内基幹システムへの資金 1.5億円

調達資金は人材採用費及び社内基幹システムへの投資を中心に充当される。
 

■株主状況

筆頭株主は富山会長であり株式の24%を保有している。また第2位株主(株式シェア24%)のN&KT株式会社は富山会長の資産管理会社であり、富山会長の関係先で株式の48%が保有されている。関根社長は第3位株主(同7.1%)である。

主力取引先の株式会社NTTデータ(同4.0%)、生活協同組合コープさっぽろ(同4.0%)も株主参入している。

上記2社の取引先を除き、個人中心の株主構成であり、ファンドや金融機関の株主参入はない。
 

■まとめ

株式会社NTTデータとの取引関係が強い中堅SI事業者のIPO案件である。

システムのクラウド化ニーズを背景に、着実に増収増益を続けている。2022年5月期は売上高53億円、経常利益5.1億円の予想であり、初めて経常利益は5億円を突破する予想である。

株式会社NTTデータなどの主力取引先中心に手堅く業績を拡大しているが、IPOによる調達資金を活用するなどして成長を加速させることができるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。
IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
当社は、システムインテグレーションサービス事業を展開している。上場市場は東証マザーズ。株価のバリュエーションは、公開価格時価総額が55億円、2022年5月期の業績予想ベースのPERが16.4倍となっている。

上場当日の株価動向は、資金吸収額が約12億円と少額であるため、需給はタイトであり、初値は後場まで持ち越されると考えられる。セカンダリー市場においては、上場当日が当面の高値となって、その後しばらくは調整局面が続くと考えられる。過去の業績の推移を見る限りにおいては、安定性はあるものの成長性には乏しく、株価のバリュエーション的には、PER15倍~20倍のレンジが妥当だと考えられる。

また、時価総額と成長性の観点から、機関投資家の買いも期待できず、個人投資家が飛びつきそうなIRネタがでない限り、株価の動きは鈍いと考えておくべきだろう。ひとつだけ、株価が動くネタがあるとすれば、事業の安定性から無借金企業なので、配当の実施がアナウンスされれば、配当利回りの観点から買いが入る可能性もある。