本記事は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! - 世界一やさしい「使える経済学」5つの授業』(ワニブックス)の中から一部を抜粋・編集しています。

経済学は金のなる木? ── 学んで損はない!

さて、「生命保険と宝くじ、それは全く違う商品だから、両方買って何が悪いの?」と思った人もいるかもしれません。全然悪くはありません。

たしかに平均的に損はしますが、娯楽として機能している面もありますよね。

要は、そうした当たり前の現象の解釈をめぐって、学者同士が意見を出し合ってきたという話です。

朗報! 経済学を学んだ人の所得は高い

「つまらない」という理由で、今まで経済学を敬遠してきた人もいるかもしれません。

でも、つまらない話を理解するというのも、意外とみなさんの人生に影響するみたいです。うっかり損はしたくないでしょうし、お金はもっと欲しいですよね?

実は経済学全般がみなさんの役に立つのではないか、という経済学の教科書にも出てくる話をしておきます。

何よりの根拠は、「経済学を学んだ人の所得が多くなる」と主張するデータが存在するからです。

ダン・ブラック氏、セス・サンダース氏、ローウェル・テイラー氏の3人は、アメリカの大学の卒業生のデータから専攻ごとの所得水準を分析しました(図)。

ここでは経済学を基準にして、そこからどの程度、所得に差があるかを示しています。また、統計上、はっきりとした差が見出された専攻だけを抜粋していますので、自分の専攻が見当たらないこともあるかもしれません。

さて、グラフを見ると電気工学やコンピューター科学といった理系の専攻の出身者が経済学専攻の出身者より10~20%程度、所得が高いと出ています。

文系と比較すると経営学や政治学、社会学などの専攻出身者よりは10~20%近く経済学専攻の所得が高くなっています。

私が大学時代に専攻していた哲学はとても悲惨なもので、大きな差がついています。実に47.6%も所得が劣るという結果ですが、なぜでしょう?

グラフから推測できることはたくさんありますが、経済学が割といい位置にいるということは、社会でも有用そうだと言ってもいいのではないでしょうか。

もちろん、経済学を専攻する人がそもそもお金にがめついだけで、学んだ内容が重要だったとは言い張れないかもしれません。しかし、3人はより詳細な分析を加えることで経済学を学んだことの見返りが見出せると報告しています。

まとめ

とりあえず「非合理性のわな」を知るだけでもOK!

経済学の内容や、そのアイデアを勉強した人は所得が高い。

これから展開する行動経済学の内容も、そうした効果をみなさんにもたらせることを期待しています。

おそらくあなたも、これから紹介していく非合理性の罠に、どこかでおちいっているはずです。わかっていても簡単には止められないのが、非合理性の罠の怖いところですが、まずは知っておいていただかないと立ち止まりようもありません。

多くの人が同じように非合理な判断をする結果、3割バッターへの評価のような歪みが生じているなら、そこは稼ぎのねらい目であるかもしれません。

もちろん、行動経済学のアイデアはなんでも解決できる魔法のステッキではありません。それでも、判断が正しいか困ったとき、足元を支えるステッキにはなれるでしょう