日本株の取引に慣れてきたので「外国株にチャレンジしたい」という人もいるのではないでしょうか。そこで迷うのが「どの国の株を選べばいいのか」ということです。世界的な有名企業の株式が多くそろう米国株もおすすめですが、今後の発展を期待するなら、東南アジアの「ベトナム株」に注目してみてはいかがでしょうか。この記事では、ベトナム株の特徴と取引ができる証券会社について紹介します。

ベトナム株の基礎知識

(画像=PIXTA)

ベトナム株には、どのような特徴があるのでしょうか。まずは、基礎知識について学んでいきましょう。

ベトナムマーケットの特徴

日本貿易振興機構(ジェトロ)の情報によると、2021年時点でベトナムは、人口約1億人の国ながら平均年齢が31歳と非常に若い国民が多い国です。ベトナムは「中所得国」という位置づけですが、2021年上半期第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(推計値)は、前年同期比6.6%増となっています。成長著しい国ということが理解できるのではないでしょうか。

日本の高度成長期と同じような雰囲気と考えると分かりやすいかもしれません。コロナショックといわれる2020年3月時点でベトナムの代表的な株価指数「VN指数」は暴落し、700を割り込みました。しかし同年終わりにはコロナ前の水準となる1,000前後まで回復。2021年にかけては右肩上がりで推移し、同年10月時点では1,400を突破する勢いを見せています。

過去5年の動きを見ても、乱高下はあるものの総じて右肩上がりで堅調に推移していると言えるでしょう。

ベトナム株は「フロンティア株」に分類される

「先進国」「新興国」といった枠組みとは別に、新しい概念として「フロンティア株(フロンティア市場)」という枠組みが生まれています。フロンティアは、今まで投資が難しかった国かつ新興国の次に発展する国として期待が高い市場です。フロンティアと呼ばれる国々の株式が「フロンティア株」と呼ばれ、ベトナム株もフロンティア株に分類されています。

世界の株式時価総額のうちフロンティア株が占める割合は年々増加傾向です。今後世界のマーケット内で存在感が増し続けることが予測されるでしょう。ただしフロンティア株は、先進国や新興国の株式市場よりも市場の規模が小さく、流動性が低いという注意点もあります。

ベトナム株の手数料

ベトナム株へ投資する際に気になるのがコストです。ベトナム株を売買する際の「手数料」についても確認してみましょう。

ベトナム株の手数料情報

ベトナム株の手数料は、証券会社によっても異なりますが、1.65~2.20%程度です。これだけでも日本株や米国株の手数料より高いですが、さらに最低手数料が決められているため、注意が必要です。最低手数料は証券会社ごとに異なりますが、おおよそ以下のようになっています。

証券会社A 約定代金の一律2.2%(税込)
最低手数料:5,500円(税込)
※売却時の約定代金が5,500円に満たない場合は約定代金に0.55を乗じた金額(税込)が手数料となる
証券会社B 約定代金の一律2.2%(税込)
最低手数料:132万ベトナムドン(税込)=約6,600円(1ベトナムドン=0.0050円で計算)
※売却時の約定代金が最低手数料に満たない場合は約定代金の55%(税込)が手数料となる

このようにベトナム株取引では、日本株の取引時よりかなり割高の手数料がかかります。取引の際は、手数料を考慮しても利益が出るか、十分試算したうえで取引することが必要でしょう。

日本とどちらが安いか

人口の中で若年層の占める割合や成長率などを考えると、日本株よりもまだ割安で購入できると考えていいでしょう。ただベトナム株を含む外国株の場合、株価が値上がりしていても為替レートの動向次第では損失が生じる可能性があるため、注意が必要です。

ベトナム市場と日本市場の3つの違い

ベトナム株取引を始める際は、ベトナム市場と日本市場の違いも把握しておきましょう。ここでは、以下の3つの違いについて紹介します。

・取引時間
・値幅制限
・取引単位

なおベトナムの主な証券市場は、以下の2つです。

ホーチミン証券取引所 上場銘柄数:380
時価総額:3,198兆5,050億ドン
(約14兆7,131億円)
ハノイ証券市場 上場銘柄数:366
時価総額:185兆4,123億ドン)
(約8,529億円)

※2019年6月末時点

取引時間

2021年時点の日本株(東証)の取引時間は「前場:9時~11時30分」「後場:12時30分~15時」ですが、ベトナム株は以下のとおりです。

・前場:9時~11時30分(日本時間:11時~13時30分)
・後場:13時~14時45分(日本時間:15時~6時45分)

現地時間を見ると日本とそれほど変わらないように見えますが、2時間の時差がある点に気を付けましょう。

値幅制限

ベトナム株の値幅制限は、以下のとおりです。

・ホーチミン:前日終値±7%
・ハノイ:前日加重平均値±10%

取引所によって値幅制限の計算方法が異なるため、よく確認しておきましょう。

取引単位

ベトナム株の取引単位は、以下のとおりです。

ホーチミン証券取引所 100株単位
※上限50万株。50万株を超える場合は分割発注
※単元未満株の売却不可
ハノイ証券市場 100単位
※上限なし

売買単位は日本と同じく基本100株単位ですが、取引所によって上限の有無があります。

ベトナム株投資で失敗しないために

ベトナム株は、日本ではまだなじみがある投資先とは言えません。投資に失敗しないためには、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。ここでは、ベトナム株投資で失敗しないためのポイントを4つ紹介します。

成長見込みがない銘柄には投資をしない

ベトナムは経済成長著しい国ですが、成長分野はいくつかあります。2020年12月に日本貿易振興機構が公表した報告書によると、2019年時点で最も伸びが大きかったのは「製造業」です。特にコンピューター電子製品・部品の輸出関連が好調で、他にサービス業も注目を集めています。これから投資する場合は「製造業(中でも輸出関連)」「サービス業」のような成長分野の銘柄に投資を検討しましょう。

ベトナムの株価指数チェックに慣れる

外国株の中でも証券会社での取り扱いが増えている米国株の情報は入りやすく、ダウ平均株価などの株価指数は、毎日のニュースでも簡単に確認できます。しかしベトナムの株価については、なかなか情報が入りません。株価指数も暴落や高騰などの情報がない限り、ニュースではほとんど目にしないでしょう。

ベトナム株への投資を検討している場合は、今後の株価指数のチェックも視野に入れることが大切です。例えば投資情報関連サイトやベトナム株を扱う証券会社のホームページなどで確認できます。

ベトナムの経済指数チェックに慣れる

株式指数の動き同様にベトナムの経済指数の動きについてもニュースではほとんど報道されていません。ベトナム株へ投資する場合は、どのように経済指数をチェックするかを考えておくことが必要です。情報が入ってくるのを待つのではなく、自分から情報収集する必要がある点は押さえておきましょう。

ある程度言語は理解できるように

繰り返しになりますが、ベトナム株の情報はなかなか入りにくいのが現状です。そのためある程度は、現地の言葉を理解し、ベトナム国内の経済ニュースを確認できるようにしておくことをおすすめします。

ベトナム株メリット・デメリット

ベトナム株投資を始める前に、どのようなメリット・デメリットがあるのかもチェックしてみましょう。

ベトナム株のメリット

ベトナム株投資のメリットは、以下のとおりです。

・高い経済成長率
・「中国の次」としての注目度の高さ

さらなる発展が期待できる「フロンティア株」という点が投資に値するとされています。コロナ禍もあり今後の動向を注視していく必要もありますが、長い目で見ると経済成長は今後も続くと考えていいでしょう。また米国と中国の貿易摩擦が問題になっている中、ベトナムが「中国の次」の輸出拠点として注目されています。

これから世界中の投資家の目がますますベトナムに向くことも期待されるところです。

ベトナム株のデメリット

ただベトナム株投資には、次のようなデメリットもあります。

・カントリーリスク
・為替の動き
・外国人の株式保有制限がある

発展著しいベトナム株とはいえ、今後どうなるかをはっきりと予測できるわけではありません。そのためカントリーリスクがあることは認識しておきましょう。特に政治経済の動きには、アンテナを張りめぐらしておくことが大切です。あわせてベトナムドンで投資することになるため、為替の値動きも要チェックです。大きく円高に振れた場合、損失が出る可能性もあります。

ベトナム株を買える証券会社の比較ポイント

ベトナム株の取引を行う場合、どの点を見て証券会社を選ぶといいのかを紹介します。

投資コスト

投資コストがどの程度かかるかチェックしてください。具体的には、以下の点を見てみましょう。

・手数料
・為替スプレッド

ベトナム株は、取り扱っている証券会社が多い米国株に比べると取引時のコストが高い傾向です。1回取引するごとにどの程度のコストがかかるかは、必ず確認してください。

ネット取引

外国株取引の場合、電話注文のみの証券会社もありますが、簡単に注文を出したいのならばネット取引対応の証券会社がおすすめです。

株の銘柄

「どのくらいの数の銘柄を扱っているか」「どの業種の銘柄があるか」についてもチェックしましょう。

ベトナム株を購入できるおすすめの証券会社

ベトナム株の購入ができる証券会社は限られています。その中でもおすすめの会社を3つ紹介します。

SBI証券

主要ネット証券と呼ばれる証券会社の中で唯一ベトナム株取引ができるのがSBI証券です。インターネットからの注文はもちろん、電話注文も受け付けています(注文方法により手数料率は異なる)。SBI証券ではホーチミン、ハノイの2つの証券取引所を合わせて320銘柄を扱っており、選択肢が非常に多い点も取引のメリットと言えるでしょう。

アイザワ証券

アジア株取引に積極的なのがアイザワ証券です。特にベトナム株については、2018年に国内企業で初めてベトナムの証券会社を子会社化するなどかなり力を入れています。取扱銘柄数も282(2021年6月末時点)と非常に多く、現在取り扱いがない銘柄でも要望があれば取り扱いを検討するほど柔軟な対応が期待できる証券会社です。

岩井コスモ証券

ベトナム株をはじめ外国株は、ネットからの注文ができません。注文時はネットサポートセンターへ電話をして発注することになります。注文は当日のみ有効なので、その日に約定しない場合は改めて電話発注が必要です。少々面倒ですが、店舗数が多く顧客サポートが期待できる証券会社です。

さらなる発展が期待できるベトナム株だがリスクには要注意!

フロンティア株とも呼ばれるベトナム株は、国の経済発展もあり今後が期待できる株式です。外国株に興味がある人であればチェックしておく価値があるでしょう。ただしベトナム株の情報は、なかなか入ってこないため、積極的に情報にアクセスすることが必要です。

将来有望とはいえ、社会や経済に不安定な面がある点も否めません。取引を始める際はあくまでも自己責任のうえで、許容できるリスクの範囲内で投資を行うことが重要です。