日本では、株式投資で収益を得るというと、売買による利益を頭に浮かべる人が多いのではないでしょうか。一方、米国の投資家は、配当による収益を重視する傾向があります。高配当の株を保有していれば不労所得を生涯にわたり受け取ることができ、生活を潤すことができるからです。

この記事では、高配当株に注目し、メリットや注意点、選び方と具体的なおすすめの銘柄を紹介していきます。

高配当株とは

(画像=PIXTA)

はじめに高配当株の基本的な知識を説明します。

高配当株の概要

株で利益を得るには2つの考え方があります。一つは株を買って購入時の価格よりも高くなったときに売却し差額によって利益(キャピタルゲイン)を上げる方法。もう一つは株を保有することによる配当や株主優待などのインカムゲインと呼ばれる利益を得る方法です。

・配当金

株式会社が利益を出したときに株主に分配して還元するお金です。企業がもうけを出せなければ当然配当を支払うことはできません。恒常的に配当を還元できているということは、経営が安定していることでもあります。

・高配当株
その名のとおり、配当が高い株です。つまり株主に還元される割合が多い株です。一般的には、配当利回りの高さで高配当かどうかが決まります。配当利回りは「1株当たりの年間配当金÷現在の株価×100」の式で表され、一般的に3%を超えていれば高配当株と見なすことができるでしょう。

日本と米国の高配当株の違い

米国の企業は企業経営の数字に厳しい株主が多く、株主への利益還元を重視します。日本にも毎年連続で配当をしている銘柄は多数ありますが、米国の比ではありません。例えば投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏お気に入りの「コカ・コーラ」は、2021年時点で59年連続増配です。日本では、最も長い銘柄でも30年程度で、配当が長年横ばいという企業も少なくありません。

米国では株主への利益還元の優先度が高いため、高配当株の銘柄がそれだけ多くなります。一方、日本では、長い間、株主への還元よりも内部留保や設備投資に回す傾向がありました。しかし近年は株主還元に目を向ける企業も増加傾向にあります。

高配当株のメリットや危険性

高配当株を保有するメリット、注意すべき点について解説します。

高配当株のメリット

高配当株のメリットは、保有しているだけでインカムゲインが得られることです。キャピタルゲインに比べると金額は抑えられますが、優良株式をある程度保有していれば老後の年金代わりとしても期待できるでしょう。もちろんいざというときには売却できるため、2つのメリットを持つことができます。

また安定して高配当となっている企業は業績も順調に推移している可能性が高いため、配当が下がってしまうリスクも低いでしょう。インカムゲインで長期投資することが目的なので、株の値動きをあまり気にせず投資生活を楽しめます。

高配当株の危険性

現在堅調であっても企業業績が長期悪化すれば、配当金が減額したり無配になったりするリスクは常にあります。株式による配当は、あくまで企業利益が安定的に得られていることが条件です。

また経済や社会に大きな変動があった場合は、企業の方針によって無配、減配となる可能性もある点は理解しておきましょう。

おすすめの高配当株の選び方

高配当株を選ぶための4つのポイントを解説します。

利回りの高さだけで判断しない

利回りは、高配当株選びの指標となります。しかし銘柄の中には、株価が下がったことで利回りが高くなっているケースも少なくありません。株価が下がっている要因によって異なりますが、企業の業績の先行きが見えなくなっている可能性もあります。配当利回りだけではなく業績動向や他の指標なども一緒に確認しましょう。

企業業績が良好か確認

継続した利益を出せる企業でないと安定した配当はできません。営業利益が黒字になっており特別な懸念材料がないことを確認します。計上利益の推移や経営上の不安要素などに目を向け、将来的に安定した業績を上げることが予測されるかを確認しましょう。

財務体質は健全か確認

一時的に業績が良くても財務体質に問題がある場合は、将来的に低迷するリスクがあります。財務体質の確認は、自己資本比率や負債比率などから確認可能です。自己資本比率が高い企業は、業績が一時的に低下しても配当の維持が期待できます。また負債比率が低ければそれだけ借金が少なく安全性が高いと言えるでしょう。

過度な高配当をしている銘柄はNG

業績が好調で利益を上げられている企業でも、あまりに過度な高配当の場合は注意が必要です。1株当たりの利益と配当を比較し利益が配当を上回っている場合は、設備投資や企業経営維持のための社内留保がなく存続や成長に不安があります。リスクの高い銘柄の可能性が高いため、安易に飛びつかないことが大切です。

国内のおすすめ高配当株5選

国内のおすすめ高配当株を紹介します。(配当利回りは2021年10月22日時点の予想配当利回り)

・三菱HCキャピタル(旧:三菱UFJリース)<8593>
配当利回りは4.52%。日立キャピタルと2021年4月に統合し、リースでは、首位級の位置を獲得しています。M&Aで海外展開を加速させており、株式の配当は2021年3月期「0.5円」の増配と好調です。経営統合で規模が拡大し米国と欧州の販売金融がけん引材料となっています。特に海上コンテナのリースや航空機リースが好調で、貸倒関連費用の減少や営業大幅増益と今後も明るい見通しが予測されています。

・日本郵船<9101>
配当利回りは、9.02%。2021年3月期は大幅増配で株価急騰後でも配当利回りが上昇しています。海運業では、国内首位をキープ。陸空についても運送を強化しています。傘下には、郵船ロジスティックスや日本貨物航空などがあり、ばら積み船や自動車船が復調しているため急伸傾向が見えます。投資については、LNGを燃料とする自動車船12隻の建造が決定しています。

CO2排出削減や低炭素への移行を進めた事業展開に将来性が感じられます。

・極東貿易<8093>
配当利回りは、5.77%。産業向け機械や設備などの専門商社です。海外販路に強みがあり、周辺事業に関連するM&Aを積極的に展開しています。収益認識基準適用により一時的に売上高が約3割目減りしていますが、工作機械向けや建機向けの部品事業が好調です。関係会社株売却特損も解消し、配当は約2.4倍の増加を見せています。

これを受けて2022年3月期は、前期比85円増の「1株当たり145円」となる見通しです。子会社の経営方針を販売型から提案型へと切り替えるなど改革の効果に期待が寄せられます。

・ソフトバンク<9434>
配当利回りは5.61%。「ソフトバンク」「ワイモバイル」の通信事業やヤフー、ZOZOなどの買収で非通信を拡大させています。通信事業でのソフトバンク値下げやワイモバなど廉価プラン比率上昇により収益は微増です。しかしデジタル化需要旺盛で法人事業が好調です。LINE統合の無形資産償却をこなし小幅な営業収入増益傾向にあります。PayPay持分では利益改善しています。

今後は、通信プランの強化による他社からの流入増が期待され、韓国NAVER社との共同投資など海外資本との提携強化を図っているのも好材料と言えるでしょう。

・日本たばこ産業<2914>
配当利回りは5.77%。国内で喫煙離れが進む中、M&Aで海外たばこ事業を拡大中です。食品・医薬品も展開しており、順調な伸びを見せています。国内紙巻きたばこは数量減が続いていますが、海外たばこで英国など高単価地域の販売量が想定を超えて増加しています。世界的に見ると、たばこ産業は、景気の影響を受けにくい事業といわれておりコロナ禍の影響もあまり見られません。

営業減益幅の縮小を受けて一時的な減配がありましたが、2022年12月期は事業集約などの効果による反発が期待されます。

米国のおすすめ高配当株5選

米国のおすすめ高配当株を5つ紹介します(配当利回りは、2021年10月1日現地取引終了時点)。

・AT&T
配当利回りは、7.65%。グローバルに電気通信、メディア、技術サービスを提供する企業で、通信、ワーナーメディア、ラテンアメリカの3つの事業を運営しています。通信事業では、無線・有線の通信、ビデオ、ブロードバンドサービスを提供しています。同社の株価は、2020年乱調状態にありましたが、携帯電話事業の安定化、ストリーミング配信事業の契約者数の増加など、明るい材料が見えてきています。

このところの業績低迷により残念ながら6年連続の増配記録が途切れました。しかしケーブルテレビ事業などの中核事業の成長が見られ将来的な展開にも期待がもてます。

・エクソン モービル
配当利回りは、5.71%。原油および天然ガスの探査、生産、貿易、輸送と販売、ならびに原油、天然ガス、石油製品、石油化学製品など特殊製品の製造、輸送、販売を幅広く行う世界的な企業です。各種原材料の生産に加え、流通センターのグローバルネットワークを構成することで世界中の顧客にさまざまな燃料、潤滑油、その他の製品および原料を提供しています。

時価総額が高く高配当の企業として知られる同社は、20年以上も連続して「増配」を達成。安定感のある投資先としてはオススメの銘柄です。

・アッヴィ
配当利回りは、4.65%。研究ベースのバイオ医薬品企業です。事業内容は、医薬品および治療薬の研究、開発、製造、商業化および販売を行っています。主力3薬品は以下のとおりです。

・リウマチ薬:ヒュミラ
・白血病薬:イムブルビカ
・C型肝炎薬:Viekira Pak

世界的なシェアを誇り、開発中の新薬にも期待がもてます。さまざまな治療分野の製品を提供しており、さらに流通センターや公共倉庫を所有しています。卸売業者、流通業者、政府機関、医療施設、独立小売業者を対象として直接世界中で販売されています。同社は、営業キャッシュフローが潤沢で配当原資への不安は当分予想されないため、減配についての心配は低いでしょう。

・シェブロン
配当利回りは、5.04%。シェブロン(Chevron Corp)は、子会社・関連会社への投資を管理し、総合的なエネルギーおよび化学品事業に従事する企業です。事業内容は、原油と天然ガスの探査・開発・生産、流通、販売です。コロナ禍において原油価格が下落した昨年には、株価が急降下しましたが原油相場の回復に従って高いリターンを示しています。

株価が回復しても配当利回りは高い水準にあり、2021年春には増配しています。

・インターナショナル ビジネス マシーンズ
配当利回りは、4.56%。世界的なテクノロジー会社として知られる同社は、25年もの長期にわたる増配を継続しています。5年後の配当利回りの予想は5.37%と高水準が期待できるでしょう。不採算のハードウェア事業を縮小し、ビッグデータ、クラウド、セキュリティー、モバイル端末向けサービスに軸足を移すことで将来的な成長を図っています。今後も安定した事業展開が期待できます。

まとめ

高配当株銘柄は保有しているだけで資産形成に貢献します。日本では、キャピタルゲインが注目されがちですが、インカムゲインに目を向けることでさらに魅力的な銘柄に出会えるチャンスが広がるでしょう。