世の中がどのような状況になっても価値を保ち続けることができる資産があります。それは「金」です。アクセサリーの材料として身近な「金」ですが、投資対象としては、どのような特徴を持っているのでしょうか。

この記事では、金投資の特徴やメリット・デメリット、金投資ができる証券会社について解説していきます。

金への投資が注目されている背景

(画像=PIXTA)
 

コロナショックにより2020年3月に、日経平均株価を含めた世界の株式市場が大きく動きました。そのような中、金の価格はコロナショック時でも動じず、その後は上昇に転じています。田中貴金属の参考小売価格によると、20年1月における1グラムあたりの金の平均価格は、5,524円でした。株価が暴落した同年3月の平均価格は5,572円とあまり変わっていません。

その後40年ぶりに最高値を更新し続け、同年8月には最高値で7,063円を付けるなど、右肩上がりに推移しました。金は「有事の金」としても知られており、社会・経済不安が起こった場合でもリスクヘッジ資産として以前から投資家に人気を集めていました。コロナ禍でも再認識され注目を集めているのです。

金の価値はどんなときに上がるのか

金の価値は、どのようなときに上がるのでしょうか。ここでは、以下の4つについて解説していきます。

・需要と供給のバランスが傾いたとき
・インフレの懸念があるとき
・円安になったとき
・地政学的リスクが高まったとき

需要と供給のバランスが傾いたとき

金の価格は、需要と供給により決定するため、需要が増えれば価格は上がります。特に金は、無限に生み出されるものではなく、地球上で採掘できる量が決まっている資産です。世界中に流通する量に限りがあるため、需要が増えたときには価格が上昇するのです。

インフレの懸念があるとき

インフレになると物の価格が上昇し、相対的に現金の価値が下がります。そのためインフレ懸念があると、資産価値低下を嫌って金に資金が流れる傾向にあります。結果的に需要が増えるため、価格が上昇していきます。

円安になったとき

金の取引は「米ドル」で行われているため、為替変動の影響を大きく受けます。円安になると円の価値が下がり米ドルの価値は上がるため、国内の金価格は上昇していきます。

地政学的リスクが高まったとき

金は「株式」「債券」「現金」とは異なり、「実物資産」のため、それ自体に価値があります。地政学的リスクが高まり、株式や現金を発行した企業や国のリスクが高まると、比例して株式は下落し現金の価値が下がります。リスクヘッジのため安全な資産へと資金が流れることで、実物資産の金相場が上昇していくのです。

金の価値はどんなときに下がるのか

金の価格は上昇していくばかりではなく、下落することもあります。どのようなときに下落するのか以下の4つの例を見ていきましょう。

・経済不安や株価の下落が解消したとき
・円高になったとき
・原油価格の高騰
・金利の上昇

経済不安や株価の下落が解消したとき

経済不安や株価の下落が生じている状況下では、資産の価値を下げないためにも金を保有するという人が増えます。反対に、経済に不安がない、株価が上昇するという局面では、資産を株式などに移す人が増えるため、相対的に金の需要が減り、価格が下落する可能性があります。経済不安がなくなりそうだと予測したら、金に投資していた資産を別の金融資産に移し替えるなどの対策が必要になるでしょう。

円高になったとき

上述したように金の価格は、為替変動の影響を受けます。そのため、「円高ドル安」になると米ドルの価値が下がり、国内の金の価値も下がってしまう傾向です。ただし円高ドル安は円で金を買いたい人にはお得な状況です。

原油価格の変動

以前は「原油価格が上がれば金の価格も上がる」といわれるほど原油価格と金の価格は比例して動いていました。直近10年ほどは、シェールガス・オイルの開発や石油需要が減少したことで原油の価値は下がってきています。この流れだと金の価格も下がるはずですが、原油価格の下落は経済の不安につながるという考えもあり金に流れるお金は減ってはいません。

今後も原油価格の変動で金の価格が上下する可能性があるため、注視しておきましょう。

金利の上昇

金利の上昇は、金の価格下落の原因となります。なぜなら金利が上がっている預貯金などの資産に資金を移動させたほうが価値としては上がるからです。金を売って他の資産に資金が流れます。金利が上がる局面では、金に入れた資産をどうするかを考慮することが必要です。ただし金利が上昇したとしても一時的な場合も少なくありません。

経済が本当に安定したとみなされない限りは、金に投資されるお金がいきなり減ることはないでしょう。

金の投資方法5選

金の投資方法は、主に5つあります。詳細を確認していきましょう。

・投資信託
・純金積立
・金先物
・金貨・金地金
・金ETF

投資信託

投資信託の中に金を組み込んでいるファンドがあります。証券投資に抵抗がない人は、投資信託から始めてもいいでしょう。ただし投資信託では、金の現物を手に入れることはできません。

純金積立

貴金属メーカーや地金商、証券会社、銀行で取り扱っています。定期的に少しずつ金に投資する方法です。定期的に購入することで価格の平準化が期待でき、リスク分散にもなります。また購入した金は、手元に保有するわけではないため、盗難・紛失の心配もありません。購入先によって現物に交換できるケースとできないケースがあります。

金先物

金先物取引も投資信託同様、市場で取引を行います。証拠金を入れることで証拠金の数倍の取引ができるため、少ない金額で大きな取引ができる点がメリットです。ただ金先物も投資信託同様に現物は手元には持てません。

金貨・金地金

貴金属メーカーで取り扱っており、店舗などで購入します。手元に持つことも預けておくことも可能です。

金ETF

金は、投資信託のように証券会社で購入することもできます。上場投資信託の「金ETF」です。証券市場が開いている時間に株式のように時価で取引ができる点が人気の理由です。また積み立てとして毎月少しずつ買い増しができる点もコツコツと投資をしたい人に向いています。ただし投資信託での金投資は、金の現物を手元に持てるわけではありません。

金投資におすすめの証券会社

金投資におすすめの証券会社を4つ紹介します。

SBI証券

ネット証券大手としておなじみのSBI証券では、純金積立を取り扱っています。ホームページ上では、金の価格情報もリアルタイムで公開しているので、購入を検討している場合は、ぜひチェックしておきましょう。なお現在SBI証券で証券総合口座を保有している人が金投資を行う場合は、専用口座の開設が必要です。ただし金ETFや金投資信託ならば証券総合口座での取引ができます。

IG証券

IG証券では、CFD(差金決済取引)という形で金の取引が可能です。証拠金を入れておけばその金額の20倍の取引ができます。コストをかけずに取引したい人におすすめです。そのほか、金ETFも取り扱っています。ただしCFDの場合は差金決済取引のため、現物交換はできません。

マネックス証券

マネックス証券では、純金積立を取り扱っています。業界最低水準の1.65%(税込)の積立手数料も魅力の一つです。マネックスゴールド口座を開設すると、オンライン上で目標の重量を達成するまでの期間も試算できます。100グラムから現物転換もできるため、手元でゴールドバーの保管も可能です。

楽天証券

楽天証券でもSBI証券、マネックス証券同様に純金積立を取り扱っています。ホームページには、金投資初心者のための学習用コンテンツが充実している点もおすすめポイントです。買い注文や積み立てもホームページ上で簡単に行えます。なお楽天証券でも他の証券会社同様に証券総合口座とは別に金投資専用口座の開設が必要です。

金に投資するメリット・デメリット

金に投資するメリットやデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

金に投資するメリット

金に投資するメリットは、以下のとおりです。

・金は、地球上に量の限りがあるため、価値がなくなることがない
・通貨とは異なり国のリスクに左右されることがない
・株価が下落しているときでも下がりにくい
・現物で持つこともできる

「価値が下がりにくい」「国のリスクに左右されることがない」という安定性がメリットと言えます。そのほか、株式などとは異なり実物資産のため、現物で持つことができる点もメリットとして評価される点です。

金に投資するデメリット

金に投資するデメリットは、以下のとおりです。

・現物で持つと紛失・盗難のおそれがある
・利息・配当がない
・取引は米ドルのため、取引時は為替の影響を受ける

現物で保管した場合は、紛失や盗難のおそれがあります。また金は、預金や株式のように利息や配当はつきません。さらに米ドルで売買されるため、為替変動の影響を受けます。基本的に購入時よりも円高になると資産価値は減少します。

有事の際も安定が期待できる「金」。ただしリスクには要注意!

金は政情不安や経済の不安がある時代でも安定した価格を保てるため、以前から人気のある投資商品の一つです。投資手段も金地金購入や純金積立だけではなく、投資信託や金ETFなどさまざまな方法を選べる点もおすすめと言えるでしょう。ただし絶対に値下がりしないわけではありません。

今後、日本でも金利の上昇や株価の上昇などがあれば、金の市場にあった資産が株式市場や預貯金に流れ込み、値下がりすることも考えられます。これから金への投資を検討するならば、「投資信託や純金積立などの中でどの投資方法が自分に向いているか」「どのようなリスクがあるのか」をよく考えたうえで行うようにしましょう。