株式を購入する方法としてよく知られているのは「取引時間内に注文を出して買う」「新規上場株を買う」という2つの方法です。

これらに加えて「立会外分売で買う」という方法があるのをご存じでしょうか。今回は、立会外分売の概要と目的、購入するメリットとデメリットについて解説していきます。

立会外分売とは

(画像=PIXTA)
 

まずは「立会外分売」とは何かを知っておきましょう。株が売り出される方法や行う理由についても解説していきます。

立会外分売の概要

立会外分売とは、上場株式の大株主が、保有する株式を取引時間外に不特定多数の投資家に売り出すことです。大株主は、売り出す株式を発行する企業の場合も多くあります。立会外分売を実施する1~2週間前から前日に「実施予告」があるのが一般的。実施予告は、証券会社ホームページや証券会社のメール配信サービスなどで確認できます。

その後、取扱証券会社で立会外分売に申し込みする流れです。申込受付時間は、証券会社ごとに異なります。立会外分売の情報は、新規上場株のようにかなり前から告知されるわけではありません。そのため確実に申し込むには、こまめに証券会社のホームページを確認することが必要です。

なお立会外分売での売却価格は、前日の終値を元に決定されます。多くは2~3%ほど値引きした価格で売り出され、購入時の手数料がかからないのが特徴です。

なぜ立会外分売を行うのか

立会外分売を行う主な理由は「株式の流動性を高めるため」です。株式を保有する人が増えたり市場に出回る株式が増えたりすることで、流動性が高まることが期待できます。流動性が高まれば株価の上昇につながります。また売り出したのが株式を発行している企業の場合、株価上昇は結果として企業の利益にもなります。

なお取引時間内に購入ができるように売り出す方法もありますが、株式が一気に市場に流入すると株価が下落する恐れも否めません。これを避けるために立会外分売を利用するのです。

立会外分売のメリット

立会外分売で株式を得ることは、投資家側にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。以下の3つのメリットを紹介します。

・株の購入手数料がかからない
・株式を割引価格で購入できる
・より上の取引所へ市場替えを行う可能がある

株の購入手数料がかからない

立会外分売で株式が売り出される場合、通常の株の売買とは異なり購入手数料がかかりません。そのためお得に株式を取得したい人におすすめです。購入手数料がない分、市場で購入するよりも少ない値上がりで利益を得ることができるというメリットもあります。ただし売却時は、売買手数料がかかるため、注意しましょう。

売買手数料は各証券会社で異なるため、短期売買するつもりで立会外分売に参加したのであれば、できるだけ手数料が低い証券会社で申し込みすることがおすすめです。

株式を割引価格で購入できる

立会外分売売り出す株式の価格は、分売実施日の前日の終値をベースに決められます。その際、前日の終値から2~3%台のディスカウントを行って売り出されることが一般的。取引時間中に買い注文を入れるよりも、低い価格で購入できる可能性が高くなります。

割引価格で購入した場合は、普通に購入したときよりも少ない値上がりで利益が出る可能性があることもメリットといえるでしょう。

より上の取引所へ市場替えを行う可能がある

上述したように立会外分売を実施する理由の一つには「市場での株式の流通量を増やす」というものがあります。大株主が保有していた株式を分売することで、株主数を増やすことが期待できるでしょう。例えば東証1部上場の条件は「株主が2200人以上いること」です。立会外分売で株主を増やすことで上の市場への市場替えを狙う企業もあります。

立会外分売が行われる場合は、その企業の今後の動きにも要注目です。

立会外分売のデメリット

立会外分売には、注意点もあります。以下の主な4つのデメリットも確認しておきましょう。

・必ずしも儲かるわけではない
・希望者多数の場合は抽選になる
・購入できる時間が限られている
・常に購入できるわけではないのでこまめにチェックが必要

必ずしも儲かるわけではない

立会外分売で取得した株式は、必ず値上がりするとは限りません。株価の動きによっては、損をする可能性もあります。またIPO(新規上場)とは異なり、立会外分売で売り出される株式は、すでに市場で出回っている銘柄です。評価もある程度定まっていることもあり、そこまで大きな値上がりが期待できないともいえます。

さらに立会外分売の売り出し直後は、多くの人が利益確定のために売り注文を出す傾向のため、需給の状況によっては株価が値下がりする可能性もあるでしょう。

希望者多数の場合は抽選になる

立会外分売で売り出される株式は、希望者全員が購入できるわけではありません。希望者が多い場合は、抽選になります。そのため「何度申し込んでも全く当選しない」ということもあり得るため、期待しすぎないことが重要です。需給の状況によって異なりますが、売出枚数が多いと当選しやすく売出枚数が少ないと当選しにくくなります。

購入できる時間が限られている

立会外分売で売り出される株式は、購入締切時間が決められています。例えばある証券会社では、インターネット上で立会外分売の申し込みができますが、申込受付時間は「実施前営業日の17時~実施当日の8時半」の間です。申込時間に仕事や用事がある人は、締め切りまでに申し込みするようにしてください。

常に購入できるわけではないのでこまめにチェックが必要

立会外分売は、常時行われているものではありません。そのためこまめに証券会社のホームページをチェックする必要があります。複数の証券会社で申し込んだほうが当選確率は上がるため、いくつかの証券会社で口座を作っておくのもおすすめです。

立会外分売で購入できる証券会社

立会外分売で株式を購入できる証券会社は限られています。取扱証券会社を確認してみましょう。

証券会社一覧

立会外分売を扱う証券会社は、以下のような会社があります。証券会社ごとに申込方法や申込受付時間が異なるため、各社のホームページなどで確認してください。

店舗型証券会社 ● 野村證券
● みずほ証券
● 大和証券
など
ネット証券会社 ● SBI証券
● 楽天証券
● 松井証券
● マネックス証券
● 岡三オンライン証券
など

おすすめの証券会社

「パソコンやスマホから申し込みできる」「株式取得後の取引もネット上で行える」「手数料が比較的低い」という観点から立会外分売の申し込みをする場合は、ネット証券会社がおすすめです。ここでは、おすすめのネット証券会社を3つ紹介します。立会外分売の申し込みをする場合は、証券会社の口座が必要です。各社の特徴をよく見て口座開設する証券会社を決めましょう。

・SBI証券
ネット証券大手の会社です。取引手数料も低めに抑えているため、立会外分売で取得した株式を売却するのにも向いています。SBI証券の立会外分売のサービス概要は、以下の通りです。

申込方法 インターネット
申込時間 立会外分売実施日前営業日18時~分売実施日8時20分

SBI証券のホームページでは、今までの立会外分売の取扱実績や割引率、実施日の株価(終値・高値・安値)についても紹介されています。立会外分売では、どの程度の利益を得られそうか、イメージをつかむためにも目を通しておきましょう。SBI証券の立会外分売には、注意点もあるのでそちらも確認しておきましょう。

また、当然何度申し込んでも当選しないこともあるため、その点は留意しておいてください。

・楽天証券
こちらもネット証券大手で知られる会社です。立会外分売のサービス概要を確認してみましょう。

申込方法 インターネット
申込時間 立会外分売実施日前営業日の夕刻(おおむね17時15分ごろ)~分売実施日8時20分

楽天証券でもSBI証券と同様に今までの立会外分売の取扱実績が確認できます。割引率と分配実施日の株価(始値・高値・安値・終値)は、参考のために必ず確認しておきましょう。申込時間がSBI証券に比べて若干長くなっているのも特徴です。楽天証券には、取引に応じて楽天ポイントがた まる特典「ハッピープログラム」があります。

楽天ポイントは、ショッピングや投資信託の買付に利用可能です。ショッピングなどでよく楽天グループのサービスを使う人であれば見逃せない特典といえます。

・松井証券
ネット証券のパイオニアとなる証券会社です。若年層(25歳以下)の契約者であれば現物取引の手数料が無料といったユニークなサービスも行っています。立会外分売のサービス概要を確認しておきましょう。

申込方法 インターネット
申込時間 立会外分売実施日前営業日17時~分売実施日8時30分

立会外分売の申込時間は、実施当日の8時30分までとSBI証券や楽天証券よりも長くなっています。

まとめ

立会外分売での株式の取得には「ディスカウントされた価格で株式を取得できる」「購入時の手数料が不要」という大きなメリットがあります。また株主を増やして上場市場を鞍替えしたいと考えている企業が分売で株主を増やすために行うケースも少なくありません。今まで立会外分売にチャレンジしたことのない人は、ぜひ申し込みを検討してみてはいかがでしょうか。

ただし立会外分売で購入した株式を売却する際は、各証券会社の売買手数料がかかります。また取得した銘柄の株価が必ず上昇するとは限りません。市場の動き次第で損失が出る可能性があることも忘れないようにしましょう。