世界が半導体不足で苦しんでいる最中でも、米国企業のテスラは2021年7~9月期決算で売上高が前年同期比57%増、純利益4.9倍という好成績を発表しました。ほかにもS&P500構成企業の約83%が事前予想を上回る1株あたり利益(EPS)を上げています。さまざまな要因から世界経済の先行きが不透明な中、好調さを見せる米国企業への投資を検討している人もいるのではないでしょうか。

本記事では、米国株価の今後を見極めるポイントを解説しつつ、米国の注目株銘柄や米国株投資におすすめの証券会社を紹介します。

米国株価の今後を見極めるポイント

(画像=PIXTA)
 

米国株式市場全体の今後を考える上で、以下3つのポイントに注目しておきましょう。

インフレ率の推移

まず注目しておきたいのがインフレ率の推移です。一般的に株は、インフレに強いといわれています。適度なインフレは、経済や株価にとって決して悪いことではありません。適度に物価が上昇している間は各国の中央銀行は物価安定に向けて積極的な財政・金融緩和政策を打ち出しやすく、結果的に株価の上昇につながります。

一方、急激なインフレが起こる場合、金融引き締め策が講じられ株価が下落する可能性があるでしょう。また急激なインフレ下では「購買力低下→企業業績の悪化→株価下落」という構図も起こりえます。2021年米国ではインフレの最重要指標である消費者物価(CPI)が上昇傾向です。2021年9月のCPIは前年同月比5.4%上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は4%の上昇でした。

前月比では、CPIが0.4%、コア指数は0.2%とそれぞれに上昇。市場では、FRB(米連邦準備理事会)がいつテーパリング(量的緩和の縮小)を行うかが注目されています。株価の今後を見極めるためには、インフレ率の推移に注目しておくことが大切です。

利上げ幅と時期

FRB(米連邦準備理事会)が政策金利(FF金利)の引き上げる時期および引き上げ幅に注目しておかなければなりません。パウエルFRB議長は、2021年9月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「2022年を通してインフレ率が(2%よりも)高い状況が続けば利上げの環境が整う」と述べています。この発言を踏まえると2022年末ごろが鍵となるかもしれません。

現状では、政策金利の誘導目標は、0~0.25%とされています。しかし現在のFRBのインフレターゲットは2%です。そのため最終的には、政策金利も2%以上に設定されると考えられます。

新型コロナウイルス関連情報

2020年のコロナショックに伴い米国経済は急激に落ち込み、雇用にも大きな影響を及ぼしました。世界金融危機時を越えて1930 年代の大恐慌時以来の失業率となりましたが、ワクチン接種率の高まりや金融政策などによっておおむね回復基調にあることは事実です。しかし2021年8月の非農業部門の就業者数は、前月比23万5000人増にとどまっています。

これは、約72万人増とされていた市場予想を大幅に下回っている数字です。この結果は、新型コロナのデルタ型の拡大によるものといわれており、今後も新型コロナの動向を見ることが大切といえるでしょう。一方で2021年8月にファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンが正式承認された後に、米国株が続伸しました。

また同年10月に製薬大手メルクがコロナ新薬の臨床試験の効果を発表したことで、ダウ平均株価が急伸するなど期待感もあります。良くも悪くも、今後の米国株価を見通す上で新型コロナ関連の情報からは目が離せません。

米国株価の推移

ここで米国株価のこれまでの推移と2020年以降の推移を確認しておきましょう。米国の代表的な株価指数となるS&P500の動きをチャートで紹介します。

2020年以降の株価チャート

引用元;TradingView

2020年は、世界中がコロナショックに見舞われた年です。米国では、2020年2月以降に感染拡大し渡航制限や外出制限などの影響を受け株価が急落。その後の米国政府やFRB(連邦準備理事会)による経済対策によって株価は回復し、コロナショック前の株価水準を上回りました。同年11月には大統領選が行われましたが、選挙前の同年10月中旬ごろから選挙戦の不透明感から株の売り傾向が強まり下落。

しかしバイデン現大統領の勝利結果を受けて株価は回復しました。

過去10年の株価チャート

引用元;TradingView

より長期的な視点で2010年以降のチャートを見ると右肩上がりとなっていることは顕著です。これだけ上昇すると今後の下落の可能性を心配してしまう人もいるかもしれません。実際に2021年時点でも金融引き締め策の実施やそれに伴う株価下落が懸念されています。しかしその場合でも一時的で長期的に見て上昇傾向は変わらない見方も少なくありません。

米国株価の注目銘柄

ここからは、米国株の今後を見極めるにあたり注目しておきたい銘柄を紹介します。

FAANG・テスラ

まず注目したいのがFAANG(Facebook・Amazon・Apple・Netflix・Google=現在Alphabet傘下)といわれる米国のIT(情報技術)企業大手5銘柄とテスラです。冒頭で紹介したようにFAANGの5社だけでなく近年はテスラの急成長が目覚ましい状況です。これら6銘柄が組み入れられているS&P500指数は、時価総額比率で加重平均し指数化されています。

そのため時価総額が巨大化している当6銘柄の株価が、米国の主要株価指数に与える影響は大きいでしょう。

GAFAM

GAFAMも米国のIT企業大手5社の頭文字を取った言葉です。FAANGに含まれているNetflixではなくMicrosoftが含まれています。これらの企業は、巨大すぎて個別で投資しようと思わず、株価をチェックしたことがない人も多いかもしれません。2020年5月時点でGAFAMの時価総額は、合計で約560兆円となり東京証券取引所第1部に上場している約2170社(約550兆円)の合計を上回りました。

このようにGAFAMは、米国経済をけん引していることに間違いなく、今後も同行を注目し続けることが大切です。

グロース株

米国経済がインフレ傾向にあることを考えると、グロース株の株価動向に注視しておく必要があります。金融緩和時には、市場金利が抑えられているため、比較的低コストで資金調達が可能です。しかし金利の引き締めが実行されると企業によっては、資金調達コストが大きく上昇します。企業業績に大きな影響が出てくる可能性があり、業績悪化が進むと株価下落にもつながりかねません。

コロナ関連

コロナ関連企業も注目です。新型コロナワクチンを開発し全世界に供給しているファイザーとモデルナは、どちらも米国の製薬会社。3回目のワクチン接種の必要性も問われるようになっており、全世界へのワクチンの供給は依然として高い状況といえるでしょう。コロナ関連といえば製薬会社ばかりをイメージしがちです。

しかし例えばWeb会議サービス「Zoom」を提供するズーム・ビデオ・コミュニケーションズのように奇しくも新型コロナの感染拡大の影響を受けて飛躍した企業もあります。

米国株価の今後はどうなる

コロナ禍にありながら堅調な動きを見せている米国株式市場。しかし今後の株価の見通しは、どのように推移していくのでしょうか。

米国株価の2021年以降の見通し

株価は、さまざまな要因が絡み合って変動していくため断定的なことを述べることはできません。そこで各証券会社の予測を踏まえると、米国経済は2021年以降も上向きの景気循環が続くと想定されています。FRBは、金融引き締め方向への転換を示唆しており、調整が入ったとしても株価への影響は一時的で、堅調な地合いは続くとみられている状態です。

しかし新型コロナ感染再拡大や供給制限解除の遅延などリスク要因もあります。これらの動向を引き続き見守ることが必要でしょう。

米国株におすすめのサービスや証券会社

ここからは、米国株に投資する場合におすすめの証券会社を3社紹介します。

SBI証券

ネット証券大手のSBI証券。取り扱っている米国株式銘柄は、4515銘柄(2021年10月1日現在)と豊富です。手数料も魅力で「米国株式手数料Freeプログラム」として、総合口座開設月と翌月の最大2カ月間の米国株取引手数料が無料になります(市場への通常注文時)。またNISA口座での米国ETF買付およびSBI証券が指定するETF9銘柄は、プログラムに関係なくいつでも買付手数料が無料です。

「NISAでお得に米国株に投資をしたい」「個別銘柄だけでなくETFでインデックス投資をしたい」という人に特におすすめです。

IG証券

IG証券では、米国株だけでなくITや金融、ファッション、製薬など世界の優良企業に1株から投資できるCFD(差金決済取引)取引が魅力です。1株から買えるため、例えばテスラ株でも10万円程度(2021年10月22日時点で株価909.68米ドル、1米ドル=113円の場合)で購入することができます。

CFDだけでなくバイナリーオプションやノックアウトオプションにも対応しているため、下落局面で売りから利益を得ることも可能です。相場が上昇しても下落しても利益を狙えることは、今後を見通しにくい市場環境の中では大きなメリットといえるでしょう。

マネックス証券

米国株に強いと評判が高いのがマネックス証券です。大型銘柄から中小型銘柄まで米国の株の取扱銘柄数は、2021年時点で4400銘柄を超えています。1株から購入できるため、少額からの投資ができるでしょう。取引手数料は、1取引あたり約定代金の0.495%(税込み)で最低0米ドル(無料)から最大22米ドル(税込み)となります。

また米国ETFの取引では「USAプログラム(米国ETF買付応援プログラム)」として、9銘柄を対象に買付手数料を全額キャッシュバック。米国株専用スマホアプリや銘柄分析ツール、レポート・セミナーなど豊富な投資情報も提供しているため、米国株投資が初めての人にも心強い証券会社といえます。

米国株価に関するQ&A

最後に米国株価に関してよくある疑問をQ&A形式で紹介します。

Q:米国株は今後暴落の危険はある?

コロナショックにより米国株価は一時急落しましたが、2021年以降、積極的な財政政策と堅調な企業業績によって上昇傾向で推移しています。市場では、この上昇が「あくまで政策によるもので過熱気味だ」として、今後の暴落を懸念する声もあるようです。金融引き締め策が実行されれば一時的な株価下落の可能性がありますが、FRBは市場が混乱しないような対策を講じる可能性が高いでしょう。

Q:米国株投資の税金に関する情報はどこで分かる?

米国株式を取り扱っている証券会社のサイトを確認してみましょう。売却益や配当金に対する税金についての説明があります。

Q:米国株は危険?

米国株に限らず株式投資は、いろいろなリスクがあります。そのため米国株だから危険というわけではありません。危険なのはインフレ率や金利動向、金融政策など、株価に影響を及ぼすさまざまなファクターと株価の動きの関係を分からないまま投資を始めてしまうことです。これらと株価の関係を知り、動向を注意深く見続けるようにしてください。

まとめ

2020年は、コロナショックで株価の急落があった米国株。しかしその後回復して2021年現在も上昇を続けている状況です。2021年10月には、多くの米国企業が決算発表をして株価市場はさらなる好調さを示しています。今後の株価の先行きを不安視する見方もありますが、長期的には上昇を続けることが期待されるでしょう。

米国株が気になる人は、今回おすすめした証券会社で投資を始めてみてはいかがでしょうか。