今回は、2005年、株式会社「キープレイヤーズ」を設立し11,000名以上の個人のキャリアカウンセリング、4,000人以上の経営者の採用相談に乗った経験を持つ高野秀敏氏に、すでに多額の資産を保有しながらプレイヤーでい続ける理由や、転職成功の秘訣をお聞きしました。
高野さんがそっと教えてくれた、仕事を、人生を楽しむコツもお伝えするので、ぜひご一読ください。
キープレイヤーとはすべての人のこと
ー高野さんがファーストキャリアから人材業を選んだ理由や、今のお仕事の内容を教えてください。
私の祖父は保護司で、犯罪をした人の更生を助ける仕事をしていました。天皇陛下から表彰を受けるような、社会的に意義がある仕事に従事する祖父の姿を見て、自分も社会の役に立つ仕事をしたいと思ったんです。
そして、人材業に飛び込み20年間継続してきました。今は主にスタートアップ企業やベンチャー企業への転職支援を行っています。また、各企業のフェーズや課題に応じた採用支援も私の仕事です。
ー高野さんが創設した会社のお名前の一部である「キープレイヤー」とはどのような人材でしょうか?
「キープレイヤー」はすべての人を指します。すべての人が主役だと考えるからです。一人ひとりが、適材適所で活躍できる社会を創っていきたいという思いから生まれた言葉です。
企業に入って活躍し、企業の、さらには日本の未来を創っていく人材を「キープレイヤー」と定義します。
転職支援で大切なのは、カルチャーフィットを重要視した「本質的なマッチング」
ー求職者の転職支援において大切にされていることをお聞かせください。
転職支援では、カルチャーフィットを重要視した、企業との本質的なマッチングを大切にしています。転職では内定獲得より転職後の活躍が重要だと思います。少しでも有名な会社に入って働きたいという方も多いですが、箱はどうあれ、自分が活躍しないと意味がないですよね。
「キャリア形成」を長期的に見たとき、属している企業が有名であるかどうかではなく、プレイヤーとして健闘できるかどうかを重視しなければならない。さらにいうと、求職者がジョインした結果として企業が成長することも、マッチングでは見据える必要があります。
ー5社以上の上場実績を持つ高野さんの目線ですね。
そうです。求職者の方の企業選びについていうと、企業を選ぶときは本質をみなければなりません。財務状況や企業体力だけではなく「自分のものさし」で企業を見る目を養う必要があります。自分のものさし、というのは価値観のマッチ度でもあります。その企業の社員と実際に話をしてみて一緒に働きたいか、事業に共感できるかが、企業を選ぶ上では非常に重要だと考えています。
ー高野さんの、企業と求職者とのマッチング力は、業界でも有名で高く評価されていますが、そのスキルはどのように磨かれたのでしょうか?
何によってマッチングのスキルが磨かれるのか、自分でもわからないですね(笑)。3社を経営していますが自分のノウハウやセオリーを体制化できればと思いつつ、難しいです。私と同じことは今まで誰もできるようになりませんでした。
人材業のマッチング力は、練習による習得や体系化が難しいスキルだからです。なぜマッチング力が高いか、回答するとしたら、昔から強くあった「人の役に立ちたい」という信条だと思います。
ーマッチング力が才能だとすると、高野さんのようなエージェントさんは今後現れないのでしょうか?
いえ、これから若いHRの人がたくさん出てくると思ってます。自身のスキルを絶対視しているわけではないんです。ですから今に甘んじず成長しなければなりません。特に行動力や実践力は、年齢とともにある程度落ちてくるものだと思うので。今のキャリアやマッチング力を維持するには努力が不可欠です。
転職エージェント活用のコツは本音で向き合うこと
ー良い転職エージェントとはどのようなエージェントでしょうか?
良い転職エージェントは正直に話してくれる方です。あと、「中長期の目線でキャリアを考えてくれる、求職者のことを考えたいい案件をもってきてくれる」そんなエージェントは良いエージェントといえます。
一方、自分の都合を優先して求職者にとって最適な提案をしないエージェントはいいとはいえませんね。「月末の数字がほしいので内定について、今日回答してほしい」といった提案をするエージェントは避けるべきです。
あくまで担当するエージェントの方次第になるのは避けられないのですが、ベンチャー/スタートアップ転職におすすめのエージェントはこちらにまとめさせていただいております。
ー転職エージェントとの向き合い方について教えてください。
求職者は転職エージェントに、本音で対応することが第一です。企業選びでは相性も重要になります。本音で話してもらうことで、転職エージェントが相性を判断しやすくなるからです。相性を別の言葉でいうと、カルチャーフィットとなります。企業文化と個人の価値観がマッチするかどうかを見極めるためにも、素直に話してほしいです。
カルチャーフィットする社員が多ければ多いほど、企業理念の実現に向けてスムーズに仕事を進めることができます。ですので本音で話していただくことは、紹介する企業様のためにもなるんです。
ー企業選びではスキルマッチのほか、価値観があうか、相性がいいか、という点も重要なのですね。
そうですね。ほかにも、参画することで成長すると思えるかどうかも企業選びでは重要です。求職者が転職先を見つけ出すことは「企業がキープレイヤーといえる人材を発掘する」ことと同じです。そういう意味で私が提示する「キープレイヤー」とは個人だけでなく法人もさすんです。
ー求職者が企業に合うかどうか、どのように判断していますか?
求職者が企業にあうかどうかの判断は、インスピレーションによるものが大きいです。最初の会話、表情や言葉、雰囲気から読み取れる価値観から、その方と企業との相性を判断します。まあ、勘だけではなく、投資する、読書する、人に会う、といった23年間の経験から、求職者と企業の相性についてジャッジできるようになった、ということもあるんだと思います。
スタートアップの成功には泥臭い努力が不可欠
ー伸びるスタートアップの特徴をお聞かせください。
成長するスタートアップ企業の特徴として挙げられるのは、「経営者に巻き込み力がある、成長市場をとらえている、その市場の中で勝てる経営メンバーである、補足すると、競合が弱い」ということです。
あと、数字を追ってる会社、売上を上げることに全力で取り組んでいる会社はやはり強いと思います。例えば人材の仕事でいうと、たくさんの人に会わなければならない、たくさんの人に会うためには、たくさんスカウトメールを送らなければならない、つまり、たくさん行動することが必要になるんです。
ー泥臭い努力が必要になる、ということでしょうか?
そうですね、社員一人ひとりがスピードと熱量をもって量のあるタスクをこなしていける状態が必要です。それには質のいいビジョンと、社員がそれを信じている、ということが大切です。伸びる企業はミッション、ビジョン、バリューが浸透していると思います。
ただし、伸びる企業の特徴についても、やはりセオリーで定義し切れるものではない、というのが事実です。私のジャッジに関していうと、直観的なものがあります。昔から私は伸びる企業の選定において、勘が利くところがありました。今も同僚に「お前、あの会社1年目から伸びるって言ってたけど、なんでわかったの?」と聞かれることがあるんです。
ースタートアップで活躍する人の特徴を教えていただけますでしょうか。
スタートアップで活躍する人は、巻き込み力があって、前向きで結果にコミットできる方、チームプレーができる方です。10,000人のキャリアカウンセリング経験があるので、スタートアップで活躍する人、つまり「経営者が喉から手が出るほど欲しい人材」については、ある程度リスト化できています。
①圧倒的な巻き込み力
②お金に対する嗅覚がある
③選んだ市場で勝てる仲間を呼び込めてる
④嫌なくらいやり切る力がある
⑤負けず嫌い
⑥スピードが尋常じゃなくはやい
⑦とにかく諦めない
⑧頑固であり素直でもある
⑨愛敬がある
⑩未来をワクワク楽しく語れる
反対に、スタートアップで伸び悩む人が陥りやすいのは、自分の仕事の守備範囲を勘違いしてしまうことです。例えば、縦割り型の大企業に慣れていると、スタートアップの「結果を出すために必要なことはすべてやる」という考え方についていけないことがあります。
こうした陥りがちな失敗もある程度リスト化しており、「大企業からスタートアップ転職」の記事にまとめております。スタートアップ転職で失敗する型をある程度理解したうえで転職するだけでも、入社後のギャップを小さく抑えられるでしょう。
ースタートアップ企業の必要性について教えていただけますでしょうか。
日本国は低成長国になっていて、このままだといろんな国に抜かれてしまうといわれています。伸ばしていくには新しい産業を創る、スタートアップを創出していくことが必要です。
イノベーションや雇用が創出される可能性があるスタートアップ企業が成長すれば多くの雇用が生まれ日本が豊かになります。仕事を通してスタートアップ企業の創出、運営、日本の未来を応援したいと思います。
「転職して良かった」たくさんの求職者からの声
ー求職者がスタートアップ企業に参画するメリットやデメリットをお聞かせください。
スタートアップ企業に参画するメリットは、成長産業にトライするやりがいや、若くして権限委譲されること、将来自分で事業をやるときに役立つこと、あと、うまくいったときの達成感があることですね。企業の業績とは関係なく、伸びている業界で働くということは、すなわち個人の市場価値を上げることと同一です。
デメリットは、当然事業がうまくいかなかったら、お給料も上がらないことですね。
ースタートアップ企業に転職した方のご様子はどうでしょうか。
幸いなことに、転職支援した、たくさんの求職者の方から「紹介してもらえてよかった」、「転職してよかった」、という声をいただきます。ご活躍されて幹部になって、採用まで手掛けられ、仕事のご依頼をいただくこともしばしばあります。嬉しいことですね。
企業に対しても、私がご縁をつないで入社した方について、「ときどきでいいのでご様子を教えてくださいね」、と伝えています。「MVPになった」とか「昇給した」といった報告をいただくこともあり、これもまた嬉しいなと思います。転職支援した方で年収何億円になったという人も少なくないです。
人とのかかわり以上のエンタメは存在しないープレイヤーでい続ける理由ー
ー高野さんはすでに実績も築かれていて、一定の資産を保有されていると思いますが、まだ前線でお仕事されているのはなぜでしょうか?
「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉のとおり、お金や名声は大事ですが、私にとって何が大事かというと、人の役に立つことです。それは小さなころから変わりません。人間は一人では生きていけないし、人類は人とのかかわりをつむぐ能力によって生き残ってきたわけです。
その、かかわりの中にあるロマンみたいなものは、人間にしかわからないと思います。僕にとってのロマンとは、人の役に立って喜んでもらうことなんです。仕事をとおして、人とのかかわりの中で感じられる「人間らしさ」が面白いんです。それ以上のエンタメというのは見つかりません。お金を増やすこと、それだけで一生を終えることはつまらないんです。
ー例えば「年末ジャンボで10億当たったら仕事を辞める」という発想はないわけですね。
そうですね(笑)。仕事しなくなったらつまんないですよ。私の周りに、ある程度の財があって、適度の資産運用をして、という風に引退している人はいくらでもいます。しかしみんな話がつまらなくなっちゃいましたね。やはり現役の人の話のほうが面白いです。人間、面白くないと生きられないと思うんです。挑戦している限り、若くいられます。
「情けは人のためならず」とは、人に対して情けを掛けておけば、巡り巡って自分に良い報いが返ってくるという意味の言葉です。仕事を通して人の役に立つことは、結局自分のためになることだと私は実感しています。 とはいえ、パンを食べられないのに、人の役に立つことはできません(笑)。ですから人のために何かしようとしたら、人一倍努力しなければならないし、得意なことをやるべきです。
仕事を楽しむコツは目の前のことを全力でやること
ー今、この会社にずっといるべきかわからない方、スタートアップ企業に転職したいけれど怖い方など、キャリアに迷いを感じているすべての方に、人生の長い時間を費やす仕事を楽しむ方法について、教えてください。
得意なことをやって喜んでもらうのがいいです。苦手なことでも必要だと思えばチャレンジしたほうがいいと思いますが、強みを生かせる何かに全力で取り組んで、結果を出して喜んでもらえるというのが、仕事を、人生を楽しむポイントだと思っています。
ー全力で取り組み結果を出すということも、仕事を楽しむコツになるのですね。
そうですね。まずは目の前のことをやり切って成果を上げることです。やり切ったうえであわないなら転職すればいいです。しかし「やりきれるかどうか」というのは、本人自身の問題です。それは会社を変えても変わらない。
「会社」という変数と「自分」という変数があるとしたら、自分という変数のフルコミット・最大化は今の会社でもできます。そのうえで、アウトプットの範囲に限りがあると感じたなら、会社を変えることで、仕事に対する楽しさや満足感が変わる場合もあります。
いずれにせよ今努力してない方が、転職したら幸せになれるかというとそれは違います。まずは努力、それに才能や、場所がかけ合わさっていくというイメージが大切です。
適切なコンディショニングで信条を貫く、それがキャリアビジョン
ー高野さんのキャリアビジョンをお聞かせください。
「他者に貢献をして、喜んでもらう」ただそれだけです。それには日々食事や運動をきちんとして、コンディションを維持してベストなプレイができる・戦える状態を維持しなければなりません。バランスを保って、信条を貫きたい、そうありたいと思って生きています。
ー高野さんは目が生き生きしていて非常にお若くみえます。人の役に立ちたいという本質と、いつまでも第一線で戦っていたいという信条を持ちつつ、生活をしっかりとコンディショニングされていることが活力になっているのですね。高野さんのようにキャリアの根幹にある素直な思いを見つめ、自分の強みを把握することで、短期間での成功につながるのではと思いました。
宮城県仙台市出身の男性実業家。東北大学経済学部卒業後、1999年、人材紹介サービス事業を行う株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社し6年間キャリアアドバイザーに従事する。
その後2005年、株式会社キープレイヤーズを設立。11,000名以上の個人のキャリアカウンセリング、4,000人以上の経営者の採用相談にのった経験を持つ。スタートアップ企業支援においては、55社以上の投資、5社上場、154社上場支援実績あり。また、50社以上の社外役員、アドバイザー、エンジェル投資を日本国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。学校や学生団体での講演回数は100回を超える。
日本では、株式会社クラウドワークス、株式会社メドレー、株式会社識学などが代表的な投資先として挙げられる。傍らで渋谷のバーのオーナーも務める。
オフィシャルサイト:ベンチャー転職/スタートアップ転職のキープレイヤーズ
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