今回は、2022年7月1日付でdoda新編集長に就任された大浦征也氏に、「doda」のサービスの本質であると同時に、今の時代に求められるキャリアオーナーシップについて、また、転職したい人だけでなく多くのビジネスパーソンの、幅広いニーズを満たす「doda」の魅力についてお話を聞きました。

「北極星のように」明るく指し示す目標を抱える大浦氏がサービスを通じて切り拓こうとするキャリアとは何なのか、また、大浦氏がそっと教えてくれた転職成功や企業アピールのコツについても紹介しましょう。
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「doda」サービスの本質に迫るー一貫したキャリアオーナーシップ形成とはー

Q1. 貴社サービス「doda」について、他社サービスと異なる点や、大手転職エージェント・サイトとしての強みをお聞かせください。特に「doda」がほかのサイトやエージェントさんと違う点はキャリアの教養となるような、転職やはたらくにまつわるコンテンツを確立されながらエージェントとしてのサポートも実践されていることだと思います。

大浦さん:我々のサービスの強みは、今すぐ転職をしたい人、転職は考えていないけれどモヤモヤを感じている人など、多くの方のニーズにこたえるチャネル設計と「ビジネスパーソンのキャリアオーナーシップを形成できるサービスであること」です。キャリアオーナーシップの形成はサービスの本質となります。

キャリアオーナーシップとは、「はたらく」を自分のものにする力、つまり「『はたらく』ということを自分でハンドリングできる」という状態です。

ー今の時代、キャリアオーナーシップとはすべてのビジネスパーソンに求められるものだと思います。例えば転職の意思決定も、キャリアオーナーシップといえるのでしょうか?

大浦さん:キャリアオーナーシップを実践するとき、1つのチャネルは「転職」ということになるかもしれません。しかしキャリアオーナーシップの実現の仕方は転職に限りません。例えば今の会社に満足していて、自分の力でキャリアを切り拓いていける方、つまり未来を見据えてはたらくことを自分でコントロールできている方はすでにキャリアオーナーシップを実践できていると思います。

ーなるほど、キャリアオーナーシップにも多様性があるのですね。

大浦さん:そうですね。ですので、サービスのチャネルは広く設計しています。転職を検討していなくても「doda」のメディアにきていただいて読んでいただけるコンテンツや、気楽に相談できるエージェントサービス、他にも「転職する気はあるけど今すぐでなくていい、良いところがあれば転職活動を検討してみたい」という方は「ダイレクトリクルーティング」にだけ登録をするのも有効だと思います。

ありとあらゆるニーズを抱える方に対応するチャネル設計をしているのは、「キャリアオーナーシップ形成」というサービスの本質的な価値にもとづくものです。チャネルの多様性が結果的に、エージェントサービスとしてもマガジンとしても使える便利さや読みやすさなど、機能的な価値にもつながっていると思っています。

キャリアオーナーシップの第一歩は自分を知ること

ー大浦さんが編集長に就任されたときの発信を拝見し、個々が「働く」ということを見つめなければいけない時代だなと考えました。転職するわけではないけど、日々なんとなくモヤモヤを抱えて働く方がキャリアオーナーシップを実践するためにできることとはなんでしょうか?

参照:転職サービス「doda(デューダ)」新編集長就任のお知らせ

大浦さん:そうですね、私が捉えているキャリアオーナーシップの第一歩は自分を知ることです。自分を知る手法は大きく主観的なものと、客観的なものに分けられます。主観的な方法としては、例えばライフラインチャート等を使って、自分はどんなときにモチベーションが上がるか、どういった物事が好きなのかを考えるなど、自己効力感や自己肯定感が高まる因子を見つけることとなります。

客観的な方法では、適性検査で成長の起爆剤となるストレッサー・懸念因子を可視化することや、キャリアアドバイザーに相談する方法があります。

そして、自分を知ったあとの次のステップは「社会を知る」こと。自分のことはわかったが、それをどういうフィールドで生かすことができるのか、やりたいことがどこのフィールドにあるのかを知らないと、何にもならないですよね。そういうときに、転職市場に関するコンテンツを読む、キャリアアドバイザーに相談する、というプロセスが役立ちます。

重要なのは、まずは「自分を知る」その次に「社会を知る」という順番です。

今まではこれがだったと感じています。自分のことは正しくわかっていないのだけれど社会のことを知る、という風に。自分を知ることを後回しにすると、結果的に、「大きい会社に入りたい」「知名度と給与が高いところでいいか」という具合に、社会の物差しに自分をあわせにいく状態になります。社会の物差しにあわせて会社を選んだ結果として陥りがちなのが、入社後に心が動かない、疲弊してしまうというケースです。

「自分を知ったうえで社会を知り、そのうえで自分と今いる社会にギャップを感じる」そんなときは転職という選択肢を選ぶこともできるんです。つまり自分を知り社会を知り、そのギャップにアプローチしていく、このサイクルがキャリアオーナーシップにつながるのでは、と考えています。

サードプレイスと呼ばれるポジションを維持するキャリアアドバイザー

ー自分のことを知るというのは、難しいものだと思います。20代後半や第二新卒の方など転職が初めての方は特に「自分の価値とはなんだろう?どのように伝えるべきだろう」と悩むことが多いといわれます。そんなとき、「doda」のキャリアアドバイザーに相談して、壁打ちして答えを出すことは可能でしょうか?

大浦さん:もちろんです。我々は短期的な転職のためにアドバイスしている、というわけではありません。サードプレイスと呼ばれるポジションとしてのアドバイスを心掛けています。キャリアの相談相手は身近過ぎる家族や友人、同じキャリアの真っただ中にいる職場の人間が最適かというと、そうではありません。

キャリアについては、家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない第3の中立的な立場の相手に相談することで客観視できると思います。

ー「doda」ではキャリア相談のほかにも転職タイプ診断や、年収査定サービスなど、自分を客観視できるサービスが充実していますね。

大浦さん:そうですね。たとえば、弊社では法人向けに「doda Recruiters」というサービスを展開しています。このサービスの仕組みにより、転職希望者は自分を客観視して市場価値を確認できるようになっています。

doda Recruitersとは

「doda」の持つ日本最大級のdodaスカウト会員データベース(約237万人※)に企業が直接アクセスし、転職希望者の登録情報(現職種、スキル、居住地、年収など)を確認した上で、直接スカウトメールが送れるサービス

2021年12月末時点の累計スカウト会員登録数
引用:doda Recruiters(ダイレクト・ソーシング/ダイレクトリクルーティングサービス)|doda中途採用をお考えの法人様へ

スカウトがくるかどうかや、どんな企業からスカウトがくるのかを知ることは、自身にどれだけの価値があるのかを知ること、つまり「市場価値」の客観視につながります。

また「この企業・業界にはこういうキーワードが刺さるんだ」といった風に、経歴の書き方について分析することも可能です。スカウトやレコメンドを受け取るだけでも自分の強みや輪郭が見えるので、上手に活用されている方もいます。

ー「doda」のダイレクトリクルーティングは自分を知り、社会を知るために非常に有効な手段ですね。市場価値を把握していることもキャリアオーナーシップのためには大切なんだと思いました。

転職成功の定義はない、重要なのは判断軸を持ち納得感のある意思決定をすること

ー転職成功とは長い目でみたとき、企業様の成功とイコールになると思います。企業様の採用課題を解決するため、どのような提案をされていますか?

大浦さん:納得感のある採用を実現するために不可欠なのが「判断軸」です。
そのため企業には、学歴や実績だけでなく、候補者の価値観や志向性を見つめるような基準を明示することが納得のいく採用につながるとお伝えするようにしています。

そもそも「転職成功」をどう捉えるかですが、抽象度の高い言い方をすると、我々はそれを「納得感のある意思決定」という言葉で表現します。転職活動では「双方が納得しているか」という点がとても重要ととらえているためです。

ー明確な判断軸を提示することが、転職希望者とのマッチングにおいて企業に求められることなのですね。

大浦さん:そうですね。

注意点として、採用や転職は「成功かどうかが定義できないもの」と認識することが大切です。雇用契約が成立したときに存在するのは、「成功」ではなく、双方の「納得感のある意思決定」です。この感覚を双方が持つことが、転職・採用では重要だと思います。

ーその意味での、人材紹介業の役割とは何なのでしょうか?

大浦さん:人材会社がサポートできるのは出会いの場を作ることです。出会ってスタートしたあとは当事者間の話となります。

人的資本という言葉もあるように、企業は個人がやりがいを感じながら成長できるフィールドを作れるかがカギですし、個人は自分のキャリアだけでなく、会社や、会社を通して出てくるマーケットにおいて価値を提供できる人材になることが大切。

そういう感覚を持って、双方が理解できるサービスをつくることが我々の役目だと感じています。我々と出会った企業や転職希望者の方には、自分の意思決定が正しかったと思える日常を過ごしていただきたいです。

ー転職がゴールでなくスタートであるとすると、納得のある意思決定をするための判断軸となるのは実績のみではないと感じました。

大浦さん:その通りですね。

「結婚の決め手は?」という話に似ていると思います。「彼は28歳で高学歴、大手企業に勤めていて…」恋愛や結婚においても多くの場合、そういった条件だけが判断軸じゃないと思うんです。初めて出会ったときのエピソードや、価値観に対する共感、足りないところもあるけど、こういうシチュエーションで発せられた言葉が響いた、ということが判断軸になっていると思います。そういった判断軸があると、結婚したあとの絆が強まります。

転職も類似した部分があると思うんです。恋愛と違って転職は、ある意味もっと刹那的で期間が短いものだと思います。しかし判断軸の考え方は類似していますね。納得感のポイントや判断軸を双方でつむげるか、ということが転職したあと、採用したあとの成功につながると思います。

企業へのアピールのコツは自分の言葉で話すこと

ーこれまでにキャリアカウンセリングや面接対策等キャリア支援を行った転職希望者は10,000人を超える大浦さん、ひとりの転職希望者と向き合うときに大事にされていることをお聞かせください。

大浦さん:僕がキャリアアドバイザーとして個人に向き合うとき大事にしているのは、その人の納得感となるポイントと自分だけの判断軸を持っていただくことです。

具体的にいうと、転職理由やその会社を選んだ理由を自分の言葉で説明できるようになってもらいたいです。友人やパートナー、お子様に、自分がなぜ転職するのか、なぜその会社なのかを説明できるお手伝いをします。

自分のことは、言語化しないで、なんとなくの感覚で決めている人が多いかもしれません。
しかしそれを人に説明しようと思ったときに、事の本質がでるものです。「私は、こういう理由で転職して、こんな会社に入るんだ」ということを自分の言葉で語ってもらいたい、その勇気をもってもらいたい、という思いでサポートしています。「ネットでみたのですが、この会社いいと思います」「周りの人が辞めていくから自分も辞めます」ではなく、「自分がなぜいいと思ったのか、なぜ自分はこの職場を去ろうと思ったのか」自分の言葉で説明してほしいです。

面接での企業へのアピールのコツをあげるとしたら、「徹底的に自分の言葉で話せるか」につきます。借りてきた言葉でなくて自分の言葉でメッセージにできるかどうかがポイントになります。

ー大浦さんは「doda」でのキャリアアドバイザー責任者を務められていると思いますが、社員さんと接するときも、「自分の言葉で話すこと」の大切さを伝えているのでしょうか?

大浦さん:そうですね。僕がキャリアアドバイザーにしつこく話しているのは、自分の言葉で話すことと、転職希望者との価値観のずれに向き合い、紐解くことが重要だということです。

まずはとにかくお客様の言葉やインサイトを引き出すよう伝えます。ただし、そのためにはキャリアアドバイザーも自分の言葉をもっていないといけません。だから自分の言葉で話すようにとしつこく言います。

また、キャリアアドバイザーには、価値観を伝え引き出せるようになってほしいと思います。カウンセリングでは「自分であればこっちの企業を選ぶ」などお客様とのあいだに感じる価値観のずれに敏感であることが大切です。

自分のことを知ったうえで、価値観を顧客に伝え、顧客の価値観を引き出す、そして自分と顧客との価値観のギャップみたいなものを紐解いていく、その過程で転職希望者の方は自分の特性とは、魅力とは何であるのか、企業にどう伝えるとよいのか相手側の目線がわかってきます。結果として、企業に対し自分の価値を示すことができるようになるんです。

ー自分の言葉を持ち価値観を言語化することはどの業界でも重要視されるビジネスパーソンとしての力だと思います。

大浦さん:そうですね、弊社で活躍している人間に共通しているのは、「自分がこの仕事をやっていることの意義や意味を言語化できている」点です。もうひとつ、ビジネスパーソンとしてのスキルとは、トライアンドエラーでしかないと思っています。

活躍している人材の共通項は日々の業務が次の日の資産になっている、ということです。特に人材業界は、物が売れる、売れないの世界ではなく、正解が見えづらい部分があります。今日の仕事が正しかったかは何年後かにならないとわからないことも多いです。成功か失敗かというより今日、目の前のお客様とのやり取りで何を学び、次にどう活かせるのかが重要になります。

「はたらく今日が、いい日に。」「doda」ブランドコンセプトに込められた思いとは

ー「はたらく今日が、いい日に。」というブランドコンセプトについて、込められている想いや、このコンセプトが生まれた背景をお聞かせいただけますでしょうか。

大浦さん:実は、このコンセプトを決めるとき「が」なのか「を」なのかで意見が分かれたんです。
「はたらく今日を、いい日に」だと、「自分で頑張って今日という日をよくしよう」という意味合いが強くなります。しかし、今日がどうなるのかは自分だけで能動的に決めるかというとそうでないほうが多いです。

たとえばどんな仕事でも必ず、わずかでもどこか生き生きしている瞬間があると思うんです。その生き生きポイントは、100%自分だけで作り出さなければいけないか、というと必ずしもそんなことはありません。

仕事で生き生きする瞬間というのは、色んな人とのかかわりの中で生まれるものです。「誰かから言われた一言がうれしい、その言葉がやりがいにつながっている」、「誰かからもらえたチャンスで頑張れている」とか、ときとして能動的なものでないケースもあります。

ー環境によってもいい日は作り出されるのですね。

大浦さん:そうですね。「自己肯定感や自己効力感を持てるような環境でないのだとしたらアクションしましょう」そんなメッセージも「はたらく今日が、いい日に。」という言葉には込められています。そして、いい日を生み出している、日常への感謝や、目の前にあることを大切にしてほしいとも思います。

ー自分で「はたらく」を管理する、というキャリアオーナーシップのお話から、ブランドコンセプトのお話まで、大浦さんがサービスに掲げる信念が一貫しているなと感じました。

北極星のような明確な信念とキャリアビジョン

ー大浦さんの今後のキャリアビジョンについて教えていただけますでしょうか。

大浦さん:キャリア形成において、僕には北極星のように明確な目標があります。ひとつの大きなキャリアの方向性としてお伝えするなら、個人がもっと自由に能力を伸ばせる、再チャレンジしやすい国にしたいです。国語算数等の受験科目だけじゃなく、体育や音楽、芸術等でも個性が発揮でき、しっかりと経済的にも自立できる人が増える。もっと大きくいうと日本をもっと豊かな国にしたいです。

現実的にはその、「学」をとってきた人が疲れ、音楽やスポーツに癒されるという話なわけです。

今、学歴や社歴がネックになって再チャレンジがしにくい社会になっていると思います。受験科目や暗記が得意であればいい会社に入れるというような考え方は、日本の豊かさを損なっていると思います。勿論、学歴や学びの履歴も十分に評価すべき指標であり、当然に一つの合理性があり、それ自体を否定するものではありません。ただ、日本にもっと個人の可能性を拓くような多様なモノサシやタグのようなものを整備したい、その思いが北極星のように僕のキャリアを指し示します。

ー大浦さんは公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)理事や、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事など、業界におけるポジションをお持ちだと思います。具体的なキャリアビジョンとしては、そういった立場で、日本を豊かにするような活動をしていきたいと思われますか?

大浦さん:具体的なキャリアビジョンの話では、日本では新卒入社から右肩上がりにポジションや給与が上がっていき、役職定年を迎えると少し報酬が下がってそのまま引退というような考え方がありますが、僕のキャリア曲線の最高点は40代後半くらいに置きたいです。40代後半まで上がっていってその後はいい意味で下がっていきたいです。最後は現場に戻り、1キャリアアドバイザーとして終わりたいと思っています。新卒のときと同じ給料もらって(笑)最後は現場をやって終わりたいです。

ー今のお話をお聞きしまして、大浦さんが実践されているキャリア支援の在り方は、目標の北極星として掲げる日本の豊かさから逆算したミッションに基づいているのではと思いました。そういった信念を持つ方が日本の人材業界でご活躍されている、ということが心強いと感じました。大浦さん今日はありがとうございました。