投資信託は、少ない金額から購入でき、専門家が様々な資産に分散投資を行うことでリスクを減らすことができるのが魅力の金融商品だ。しかし株式よりも長期保有することが多いと考えられ、いざ解約(売却)となるとその手続きに戸惑う場合があるのではないだろうか。投資信託を解約するにはどのような手続きが必要なのか。今回はネット証券大手の楽天証券とSBI証券の投資信託を解約する場合の手続きについて紹介していこう。
投資信託を解約すべきケースは?
投資信託を解約すべきケースの一例が「基準価額の上昇」や「基準価額の減少」だ。
投資信託の運用成績の良し悪しにより、基準価額が変動する。”基準価額がある程度上昇したら、利益を確定するために”、”基準価額が減り続けていれば、損切りするために”解約するのも手だ。
投資信託による投資を戦略的に行うためにも、各証券会社の投資信託におけるサービス内容を確認してみよう。
投資信託の解約は可能?
株式投資では、自分のタイミングで売買を行うことができる。では投資信託は売ることはできるのだろうか?投資信託の場合、それぞれの投資家から集めた資金をまとめて資産を購入しているため、自分だけのタイミングでその資産を売るということはできない。代わりに行うことができるのが解約だ。解約を行い、その時点での運用成績に応じて換金することが可能だ。投資信託は、基本的にいつでも換金解約を行うことができる。
ただし、商品の中には一定期間換金できない期間が定められているものがある。これは投資信託が立ち上がったばかりの期間に大量の換金が行われてしまうと運用に障害が出てしまうおそれがあるためだ。それを防ぐために定められているのが「クローズド期間」だ。このクローズド期間には、換金解約をすることはできない。特に投資信託が立ち上がる期間にのみ購入できる、単位型の株式投資信託はクローズド期間が定められていることが多い。クローズド期間については、投資信託説明書(交付目論見書)に記載されているので、購入するまえにあらかじめ確認しておこう。
注意が必要なのが、「全期間クローズド」と記載されている投資信託だ。これは、原則として投資信託を購入してから償還されるまで解約はできないというもの。
ただし、商品によっては全期間クローズドであっても一定の条件のもと、解約が可能なものもある。
決算期ごとや3カ月ごとなど一定の期間であれば解約できる、または投資信託の投資対象の価格が一定水準を下回った場合など、条件に付いても記載されているので合わせて確認しておこう。
また、クローズド期間内であっても、投資信託を持っている人が死亡したり、破産したりといった特別な場合は換金することができる。
こちらは全期間クローズとの商品であっても同様だ。それらの事態が起こった場合は、なるべく早めに販売会社に問い合わせると良い。
投資信託を解約するときに必要な費用とは
投資信託を解約する場合かかる費用には、「解約手数料」と「信託財産留保額」の2種類がある。それぞれの金額については、投資信託説明書(交付目論見書)に記載されているので、まずは確認してみること。
解約手数料はほとんどの商品の場合、徴収されることはない。
ただし、一部かかる投資信託の銘柄があるため、できれば購入前にチェックしておきたい。信託財産留保額は、投資信託を途中で売る際に課せられるペナルティのようなものだ。
投資信託で保有している資産は、その人だけでなく同じ投資信託を購入した他の投資家と共有しているもの。投資信託を解約する際には、保有している資産を売って換金するという手間がかかる。
しかし、株式や債券を売るのには、手数料がかかったり、売るタイミングによっては損をしたりすることもある。これらの費用を補うため、信託財産留保額が徴収される。
信託財産留保額は、頻繁な解約を防いで投資信託の運用を安定させるという目的も持つ。信託財産留保額は、あらかじめ一定の割合が定められている。
換金解約する場合は、基準価額からこの割合の金額を差し引いた価額が換金されることになる。この割合も投資信託説明書(交付目論見書)に必ず記載されているので確認しておいたほうがいいだろう。
解約請求と買取請求の違いとは
投資信託を手放して換金したい場合、解約請求ではなく買取請求を行うこともできる。
解約請求は、投資信託の資産を取り崩し、換金して代金を支払う方法。買取請求は、その人が保有していた投資信託を証券会社に譲渡する形となる。
換金する方法は違うが、どちらの場合でも同様に信託財産留保額などはかかり、投資家側にはあまり違いはない。
2009年の税制改正によって、課税方法も同じとなったため、どちらを選択しても違いはなくなった。投資信託を手放す際はどちらかを選ぶ必要があるが、どちらの場合でも手続き、費用、税金などは同じということを頭に入れておこう。
投資信託を解約した時の税金とは
2009年1月の税制改正により、解約請求・買取請求ともにその損益は、譲渡所得として取り扱われるようになった。そのため、税制上の違いもなくなり、どちらを選んでも投資家側には変わりはなく、同様に税金を支払う必要がある。
投資信託を解約した際に得られる解約差益金は、全額が株式の譲渡所得税として譲渡益課税の対象となる。
源泉徴収ありの特定口座を持っている場合は、他の株式投資などの譲渡損益と損益を通算できる。
その場合は、一律20%の源泉徴収に、復興特別所得税が加わり、20.315%が課せられる。源泉徴収を行っていない場合は、確定申告を行い別途税金を支払う。
楽天証券で投資信託を解約する方法
楽天証券で保有している投資信託を解約する方法を紹介していこう。
まずは楽天証券のサイトにログインする。上部のメニューバーで、「投信」を選択する。次に「注文」、「投資信託」、「解約注文」の順に選択。
現在自分が保有している投資信託の銘柄が表示されるはずだ。銘柄の横に「解約」のボタンが表示されるので、解約したい銘柄の「解約」ボタンを押す。
その銘柄の解約価額や信託財産留保額などの情報と、現在保有している口数などが表示される。
複数の口数を保有している場合、全部解約するのか一部を解約するのかを選択できるので、どちらかを選ぼう。
一部解約する場合は、解約する口数も入力する。入力できたら「確認ボタン」を押す。確認画面で、ファンド名や解約口数、受取代金概算額などを確認し、問題なければ取引暗証番号を入力し、注文ボダンを押す。これで解約注文が終了する。
万が一、注文を取り消したい場合は、「注文紹介・取消」タブを選択し、表示された注文内容の「取消」ボタンを押せば取消しもできる。ただし、約定日を過ぎると取り消すことはできないので注意すること。楽天証券では、投資信託は解約請求のみ選択できる。
SBI証券で投資信託を解約するには
SBI証券で投資信託を解約するには、まずはSBI証券のサイトにログインする。「取引」「投資信託」「売却」の順に選択すると、保有投資信託一覧の画面が表示される。
そこに、現在自分が保有している投資信託が、口数指定買付・金額指定買付別に表示される。売却したい投資信託の銘柄を選び、「売却」ボタンをクリックしよう。
そこで注文入力画面が表示されるはずだ。ここには、銘柄名、基準価額、売却単位、注文可能口数または注文可能額、締め切り時間、重要事項などが表示される。きちんと目を通したうえで、解約したい口数または金額を入力する。
その後、自分の取引パスワードを入力し「注文確認画面へ」ボタンを押すと確認画面に切り替わる。確認画面で問題がないか確認し、間違いなければ「注文発注」ボタンを押して確定しよう。
SBI証券では、買取請求は個人では行うことができず、法人のみが選択可能だ。
SBI証券では定期的に売却するサービスも
SBI証券では、保有している投資信託を定期的に売却して、現金で受け取ることができるサービスもある。それが「投資信託定期売却サービス」だ。
このサービスでは、あらかじめ受け取りたい金額と受け取る日にちを設定する。決められたタイミングで定期的に保有する投資信託を売却し、証券口座へ現金として振り込みがされる。受け取る日時は「毎月」の他、「奇数月」「偶数月」を選ぶこともできる。
さらに、年2回までボーナス月も設定可能だ。定年退職後、それまで行ってきた投資信託の運用(保有)を継続しながら年金のように少しずつ売却し、現金化できる。
売却の手間もかからず、手軽なのが魅力と言える。設定した金額や日時はいつでも変更が可能だ。
投資信託の見分け方・ポイント
投資信託は長期で運用することが多いため、商品の選び方が重要になります。悪い投資信託を見分け、パフォーマンスが良く自分に合った投資信託を選ぶことが大切です。
十分なリターンを得るために必要な投資信託の見分け方や投資信託を選ぶポイントについて紹介します。
良くない投資信託を見分けるには?
よくない投資信託を選ぶと、パフォーマンスが悪く資産がほとんど増えない可能性もあり、最悪元本割れを起こすリスクも高くなります。
投資信託を見分けるためには、「資産規模」「手数料」「運用期間」に注目するとよいでしょう。これらに注目することで、悪い投資信託を選ぶ可能性を低くできます。
資産規模は小さくなっていないか
良くない投資信託を見分けるために、資産規模(純資産総額)に注目をしましょう。純資産総額とは、投資信託の運用総額(時価総額や配当収入などから経費を引いた金額)のことです。
資産規模が小さい投資信託は投資家の解約が多い、または運用による損失が多い可能性があります。「純資産総額が◯億円以上あると絶対に安心!」という数値はありませんが、一般的に「純資産総額100億円以上」が目安とされています。
手数料などのコストは高くないか
投資信託の手数料には、購入時にかかる「購入時手数料」、運用期間中にかかる「信託報酬」、解約時にかかる「信託財産留保額」があります。これらの手数料が高くなるほど、利益は少なくなります。
投資信託を選ぶ際は、特に購入時手数料と信託報酬を比較するようにしましょう。ノーロードの投資信託を選べば購入時手数料は無料です。信託報酬は日々かかる運用コストなので、少しでも低いほうが有利です。投資信託を選ぶ際は、コストが高くないか確認をしましょう。
運用期間は短くないか?
これまでの運用期間が短い場合は、良くない投資信託の可能性があります。運用期間が短いと、長期的に良いパフォーマンスを出せる投資信託かわからないためです。ある一定期間だけ、たまたまパフォーマンスが良いのかもしれません。
運用期間が半年や1年程度など短い投資信託は、避けたほうが無難です。最低でも運用期間が3年以上ある投資信託を選ぶことをおすすめします。
投資信託を選ぶポイント
投資信託を選ぶ際は「投資対象国」「投資対象」「コスト」「残りの運用期間」「過去の運用実績」の5つのポイントに注目しましょう。
これらのポイントを確認することで、自分に合う投資信託か判断がしやすくなります。また、他の投資信託とパフォーマンスを比較できます。
投資対象国はどこの国にするか?
投資信託を選ぶポイントの1つが、投資対象国です。
投資信託によって「アメリカ」「日本国内」「先進国」「中国」「新興国」「北米」など、投資対象国が異なります。たとえば、三井住友DSアセットマネジメントが運用するグローバルAIファンドは、アメリカやオランダ、カナダ、フランスなど先進国の情報技術関連銘柄を中心に投資をしています。
投資信託によって投資対象国が異なるため、自分の投資目的に合う国か確認してください。
投資対象は何にするか?
投資対象も投資信託を選ぶポイントです。たとえば、アセットマネジメントOneが運用する企業価値成長小型株ファンドは、国内の小型株が投資対象です。
大和アセットマネジメントのダイワ・US-REIT・オープンは、アメリカ市場に上場する不動産投資信託証券に投資をしています。投資対象によって想定される値動きも大きく変わりますので、何に投資をする投資信託を選ぶのか、事前に決めておきましょう。
手数料などのコストの低さ
資産運用をするうえで、手数料は安いに越したことはありません。コストが高くなると、その分利益が圧迫されるためです。投資信託を選ぶ場合は、購入時手数料や信託報酬の手数料を確認しましょう。
できるだけコストを抑えたい方は、ノーロード(購入時手数料無料)で信託報酬は0.5%以下の低コスト投資信託を選ぶと良いでしょう。
純資産総額はどのくらいか?
投資信託を選ぶ際は、純資産総額にも注目しましょう。純資産総額が多いと、たくさんの投資資金が集まり十分な運用益が出ている可能性があります。
逆に、純資産総額が少ないと、投資資金が少ないうえに、運用で損失が出ている恐れがあります。リスクヘッジのためにも、100億円以上など純資産総額が多い投資信託を選びましょう。
残りの運用期間
投資信託を選ぶ際は、これまでの運用期間に加えて、残りの運用期間も確認してください。
残りの運用期間が短い投資信託は、運用がおろそかになり、パフォーマンスが悪化する可能性があるからです。それまでのパフォーマンスが良かったとしても、残りの運用期間が短い投資信託には注意が必要です。できれば、残りの運用期間が長い投資信託を選ぶようにしましょう。
過去の運用実績
過去の運用実績は必ず確認しましょう。パフォーマンスがよく、十分なリターンを出しているか調べてみてください。
各証券会社の投資信託ページで、年率や期間別のリターン数値を確認できます。これまでの運用実績が悪い投資信託を選ぶよりも、運用実績が良い投資信託を選んだほうが、今後の結果に期待が持てます。投資対象国や純資産総額などとあわせて、過去の運用実績も確認してください。
これまで解説してきたように、投資信託を選ぶ際は、純資産総額や運用期間、運用実績などに注目してください。パフォーマンスが良く自分に合った投資信託を選びやすくなります。また、運用中は定期的にパフォーマンスをチェックし、悪ければ他の投資信託への変更を検討しましょう。
投資信託のポートフォリオも定期的に見直そう
投資信託は長期保有が勧められる投資ではあるが、定期的に見直すことは他の投資と同様にとても重要だ。定期的に運用状況を確認することで、運用成績の悪化や損失の気配をいち早くキャッチすることができる。
また、値上がりしてきたタイミングで利益を確定することも可能だ。ファンドが定めるベンチマークの値動きと成績を比較する、純資産残高をチェックするなどして自分が保有する投資信託の状況を確認しておき、タイミングをみて解約を行うことが大切だ。(ZUU online編集部)
投資信託に関するQ&A
投資信託の解約には解約金はかかる?
投資信託の解約金はほとんど徴収されることはないが、信託財産留保額が徴収される。
投資信託の買取請求とは?
買取請求は、その人が保有していた投資信託を証券会社に買取を請求することによって換金する方法。
楽天証券の投資信託を解約する方法は?
楽天証券の投資信託の解約は次のような手順で行う。
楽天証券のサイトにログインし→上部メニューバーの「投信」→「注文」→「投資信託」→「解約注文」の順に選択。解約したい銘柄の「解約」ボタンをクリック→確認→注文
SBI証券の投資信託を解約する方法は?
SBI証券の投資信託の解約は次のような手順で行う。
SBI証券のサイトにログイン→「取引」→「投資信託」→「売却」の順に選択、
保有投資信託一覧からの売却したい投資信託の銘柄を選択→「売却」→注文入力と取引パスワードを入力→「注文確認画面へ」→「注文発注」
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