2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナウイルス感染拡大など、世界情勢が不安に陥ったときに上昇する株価指数があります。それが「VIX」です。
VIXとはどのような特徴がある株価指数で、投資にどのように生かしていけばいいのでしょうか。この記事では、VIXについて詳しく見ていきます。
VIX(恐怖指数)とは
VIXとは「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」の略で「恐怖指数」と呼ばれています。シカゴオプション取引所が作った株価指数でS&P500種指数のオプション取引の値動きをもとに算出している指標です。一般的に投資家が市場の先行きに不安を感じているほど、VIX指数の推移数値が高くなるといわれています。
VIXを見ることで、人々が投資や市場に関してどのように感じているかが分かります。
VIXの推移
VIXは、どのように推移してきたかをチェックしてみましょう。リーマンショックやコロナ禍など大きな出来事があったときの動きも確認していきます。
直近1年の推移
2020年初めには、新型コロナウイルス感染拡大の影響で指数が大幅に跳ね上がりました。しかし21年5~6月ごろには値動きも落ち着き、同年10月現在は比較的穏やかに推移しています。
直近5年以内の推移
17年以降VIXは、なだらかに推移していました。しかし20年3~4月にかけてコロナ禍で社会的に不安が広がった時期は指数が今までの4倍以上に急上昇しています。今後の社会経済の見通しが不透明になったことが原因です。その後、同年7~8月ごろになると指数は下落し始め、21年10月時点では値動きも落ち着いてきています。
リーマンショックやコロナショックの影響
よくないニュースが出るとVIXの指数は大きく高騰します。例えばリーマンショックがあった2008年は、9~10月にかけて直前の時期から比較すると3倍ほど高騰しました。また20年初めの新型コロナウイルスが拡大し始めていた頃は、直前期に比べ急激に4倍ほど上昇しました。ただし同年7月以降は徐々に下がり始め、21年10月現在は落ち着いた動きをしています。
VIX指数の投資方法
VIXに投資したい場合は、以下の2通りの方法があります。
・ETFを現物で購入する
・ETFをCFD取引で購入する
ETFを現物で購入する
VIXは、ETF(上場投資信託)という形で取引が可能です。「国際のETF VIX短期先物指数<1552>」という名称で取引されています。ETFのため、市場が開いている時間は時価でいつでも売買できることもメリットです。ETFの値動きは、各証券会社のホームページやYahoo!ファイナンスでもチェックできます。
ETFをCFD取引で購入する
VIXのETFは、CFD(差金決済取引)でも取引できます。ただしCFDができる証券会社は限られるため、取引できる会社の中で自分に合ったところを探して始めましょう。
CFD取引とは
前章で挙げた「CFD」とは、「Contact For Difference」の略で、和訳すると「差金決済取引」です。差金決済取引とは、金融商品を売買する際に購入代金・売却代金をやり取りするのではなく、売買で生じた差金だけをやり取りする取引です。CFDでは、現物のやり取りが発生しません。株価指数や商品(金や銀など)、外国株のCFDがあります。
またFX(外国為替証拠金取引)もCFDと仕組みは似ていると言えるでしょう。なおVIXは、CFDの中の「株価指数CFD」に当たります。株価指数CFDは、そのほかにも「日経225」「NYダウ」「FTSE100」「DAX」など種類はさまざまです。
CFD取引のメリット
CFDのメリットは、主に以下の3つです。
・レバレッジをかけた取引ができる
CFDは証拠金を預けることでレバレッジをかけた取引ができます。レバレッジとは「てこ」のことです。証拠金として差し入れた金額の約10倍の取引ができるため、そう呼ばれています。レバレッジをかけた取引は、少ない資金で大きな利益を期待する人のニーズに合ったものです。
・「売り」から始めることができる
現物株の取引や一般的なETFへの投資の場合は「買い」からしか取引ができません。安いところで購入し、高くなったら売却することで利益を得ることができます。しかしCFDは、「売り」から始めることが可能です。高いところで売り、安くなったら買い戻すことで利益を得ることもできます。売りから始められるということは、市場が下落相場でも利益を得ることができるため、取引の幅が広がるでしょう。
・いつでも取引が可能
通常の株式やETFとは違い、CFDはほぼ24時間取引が可能です。日中仕事などで取引ができない人でも帰宅後の夜に取引ができることは、大きなメリットと言えるでしょう。
CFD取引のデメリット
CFD取引には、以下のような2つのデメリットもあります。
・リスクが大きい
上述したとおり、CFD取引はレバレッジをかけた取引ができます。証拠金の数倍もの金額の取引ができるため、大きな利益が期待できる半面、相場が思惑と逆に動いたときの損失も大きくなります。
・現物株などとの損益通算ができない
CFD取引で得た利益は雑所得扱いになります。株式などで得た利益は譲渡所得や配当所得となるため、損益通算ができません。特定口座での取引もできないため、一定以上の利益が出た場合は確定申告が必要です。株式投資の特定口座であれば証券会社が行ってくれる損益計算も自分で行うことになるため、しっかりと押さえておきましょう。
VIX指数投資のメリット
VIX指数投資は、現物株投資にないメリットがいくつもあります。
暴落時に利益が得られる
VIX指数は、投資家が今後の相場の見通しについて不安を感じると上昇します。そのため株価の暴落時に利益が得られます。現物株投資では保有株の株価が下落すれば当然損失を被るわけですが、VIX指数投資では下落しても損をしないどころか、もうけが出るのです。
一般的な株式投資のリスクヘッジに使える
株式への投資と同時にVIX指数投資を行うことでリスクヘッジとなります。例えば、「株式を保有して売却したくないが相場が下がりそう」といった場合、VIX指数を購入しておけば相場が下落しても一定の利益を確保できます。
VIX指数投資のデメリット
VIX指数投資のデメリットについても確認しておきましょう。
利益が出にくく、長期投資には向かない
VIX指数は相場に対しての不安が高まれば、指数が上昇するものです。そのため大きな不安材料がない場合、それほど指数は動きません。また上昇したとしてもすぐに指数が戻ることも予想されます。長期投資ではなく、「さっと買ってすぐに売る」という投資方法でないと、利益を得るのは難しいでしょう。購入のタイミングをダラダラと迷ってしまう人には向かないかもしれません。
買い時が難しい
リーマンショックやコロナ禍のような社会不安・相場不安を予想するのは、どんな人でも非常に難しいでしょう。それゆえVIX指数投資は、買い時が非常に難しいことがデメリットです。
VIX投資におすすめの証券会社
VIX指数投資ができる証券会社の中でおすすめの会社を2つ紹介します。どちらもCFD取引ができる会社です。それぞれの特徴を確認してみましょう。
・GMOクリック証券
・IG証券
GMOクリック証券
GMOクリック証券で扱っているVIXは、バラエティCFDの「米国VI」という商品名です。米国の株価指数と同時に投資することでリスクヘッジも可能です。GMOクリック証券では、CFD取引の手数料が無料で、レバレッジは5倍です。少ないコストで取引したい場合にぴったりの証券会社と言えます。
IG証券
IG証券は、CFDだけでなくFX、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションなどさまざまな投資ができる証券会社です。VIX指数のCFDのレバレッジは、10倍です。IG証券は、学習コンテンツが充実していることでも有名です。デモ口座で取引の練習もできるため、興味のある人は目を通しておきましょう。
VIX指数の今後の見通し
2021年10月現在、コロナ禍の騒動も多少落ち着いてきているため、VIX指数は落ち着いた動きをしています。景況感はそれほど不透明ではなく、平常な状態に戻りつつあると評価する向きが多い傾向です。ただ新型コロナウイルス感染拡大の動きが今後どうなるかは、誰にも分かりません。変異株の発生や再び感染拡大といった状況に陥ると世の中の不安感が増す可能性はおおいにあるでしょう。
今後も世界情勢の動きを見ながら、VIX指数の動きにも注目していきましょう。
VIX指数投資は株価暴落時でも利益を狙える!ただしリスクに要注意
VIX指数は、投資家の今後の相場に対する不安感が増すと上昇する指数です。そのためリーマンショックやコロナ禍などで株価が大きく下落した際でも指数を上げていました。株価が下落するときでも利益が狙える点では、株式投資のリスクヘッジとして活用したい投資方法の一つです。なおVIX指数投資は、ETFやCFDを利用して行うことになります。
その中でもCFD取引は、レバレッジをきかせ、差し入れた証拠金の数倍もの金額の投資ができるため、コストを気にする投資家から注目を集めています。ただしCFD取引は、指数が予想に反した動きをした場合は、レバレッジをかけた分損失も大きくなる点には注意が必要です。
メリットだけでなくリスクも十分に把握したうえで投資を始めてみてはいかがでしょうか。