ビズリーチ事業部 マーケティング統括部長 楠瀬氏インタビュー
 

求職者と企業を直接つなぎ、即戦力・ハイクラス人材に特化した国内最大級のダイレクトリクルーティングプラットフォームとして転職市場を牽引するビズリーチ。
時代とマッチした急成長の背景とは。そして株式会社ビズリーチが今後目指すところはどこなのか。 ハイクラス層の求職者へのアドバイスとともに、ビズリーチ事業部 マーケティング統括部長の楠瀬氏にお話を伺った。

楠瀬 大介

楠瀬 大介(くすせ・だいすけ)

株式会社ビズリーチ ビズリーチ事業部 マーケティング統括部 統括部長

慶應義塾大学商学部を卒業後、 パチンコ店運営企業に入社。2年間勤めた後、起業し、クラウドソーシングサービスを運営する会社を経営する。2016年3月、株式会社ビズリーチに入社。入社後は、ビズリーチ事業部のビジネス開発職、事業企画を経て、カスタマーマーケティング部へ異動。新規会員獲得の施策立案・実施などを担う。2022年8月よりマーケティング統括部の統括部長を務める。

企業と求職者が直接コミュニケーションできるプラットフォーム

ー ビズリーチさんのハイクラス向けのダイレクトリクルーティングは、企業と求職者を直接繋げる形として業界で注目されていますよね。その設立背景や狙いについてお伺いしたいと思います。

楠瀬さん : 弊社のサービスは2009年に始まりました。当時の人材業界では、企業と求職者が直接コミュニケーションをとるプラットフォームは存在していませんでした。

着想は、創業者である南の転職体験から得ています。当時は転職をしようと思っても、自分の転職先となる候補企業の全てが可視化できるわけではありませんでした。 その体験を通じた課題意識が、企業が求職者を直接スカウトできる転職サイト「ビズリーチ」のコンセプトにつながっています。

ー 自分で作るというのはすごいですね。南氏はもともと人材系企業のご出身だったのでしょうか?

楠瀬さん : いえ、最初は金融業界で働いていて、その後楽天イーグルスの立ち上げに関わりました。転職や人材といった分野に関わりがあったわけではありません。

人材業界の経験がなかったことが、逆にプラスに働いたんだと思います。新鮮な視点で転職市場をとらえた結果、企業と求職者が直接コミュニケーションできるこれまでにない新しいサービスが生まれたのだと思います。

ー なるほど。外部からの視点が新たなアプローチに繋がったのですね。ビズリーチさんが主にハイクラス向けというセグメントを選んだ理由について教えていただけますか?

楠瀬さん「企業が直接スカウトしたい人材」は、即戦力となるスキルや経験を持っている方だと考えました。

また、立ち上げ当時、すでに20代や第2新卒向けの転職サイトが数多く存在していたのですが、ハイクラス向けの転職サイトは少なかったという背景もあります。ハイクラス向けの転職サイトの少なさに事業展開の余地があると考え、ハイクラス領域を選択しました。

ー ハイクラスに絞ったアプローチが強みになったということですね。

楠瀬さん:そうですね。これまでにない新たなサービスだったため、立ち上げの難度は高かったのですが、初期に競合が少ない状況で始められたのは大きかったと思います。

ー 企業が直接ハイクラスな人材にアプローチできる点が、ビズリーチさんの一番の強みでしょうか?

楠瀬さん :そうですね。約190万人の即戦力人材を直接スカウトできることは、企業様にとって大きなメリットだと思います。

求職者側からすると、企業から直接声がかかってくるという状況は、今まで想像もしていなかった選択肢が現れ、新たな可能性を広げるものだといえます。

たとえば、「こういう会社でも働けるのか」「こんな仕事が世の中に存在するのか」という発見があるかもしれません。企業が直接アプローチするからこそ、求職者側にとっても大きなメリットになっていると思います。 また、企業が送るスカウトメッセージが有料である点もビズリーチのユニークな特徴です。有料であるからこそ、スカウトの品質向上に繋がっているのだと思います。

ほかにも、「ビジネスパーソンのキャリアの選択肢や可能性を広げる求人を取り扱っている」という点も特徴です。たとえば、省庁や地方自治体のDX人材、鹿島アントラーズや日本フェンシング協会などスポーツ団体における経営人材や国立高専での「副業先生」など、希少性の高い求人を定期的に取り扱っています。

また、登録いただいているヘッドハンターも弊社の強みのひとつです。弊社の場合、ヘッドハンターの登録に独自の審査基準を設けています。その結果、高年収の求人を扱うヘッドハンターの方々のほとんどが、ビズリーチを利用してくださっている状況です。

ヘッドハンターを含めて、ハイクラス向け求人の網羅性は、非常に高いと思っています。

時代背景とマッチしたサービスによる成長

ー ビズリーチがハイクラスな求人市場で大きく成長してきた要因は何でしょうか?

楠瀬さん :要因は様々あると考えていますが、時代背景も要因のひとつと捉えています。

創業した2009年以降の10年間で、スマートフォンが広く普及し、インターネットが日常生活に欠かせないものになりました。これにともない、ビジネス環境も大きく変化しています。 ビジネス構造が変化する中で、求められる人材の要件も変わってきたと思います。

昔は新卒で採用し、1つのビジネスをしっかり立ち上げるケースが多かったかもしれません。しかし先行き不透明な現代においては、ビジネスサイクルが早くなり、新たなビジネスを短期間で立ち上げることが必要となりました。そのようなビジネス環境の変化を背景に、即戦力となる人材の採用ニーズが増えてきました。その結果、我々のサービスを利用してくださるお客様の増加につながったのだと思います。

また、求職者側にも変化があります。終身雇用制度の崩壊や人生100年時代を背景に、企業に依存しない主体的なキャリア形成の意識が高まっていると感じます。その中で、転職という選択肢が当たり前になってきました。こうした点が、弊社の事業成長の追い風となったのだと思います。

ー 先ほど少しお話に出た「ヘッドハンター」の存在について質問です。 ハイクラス向けという面もあり、登録されているヘッドハンターの質が非常に重要だと思います。その質を担保するために、行っていることはありますでしょうか?

楠瀬さん :当社独自の厳格な基準を設けて審査しています。また、すべての利用企業様や掲載求人情報についても、法令等に基づき独自の基準で事前審査を行っており、会員の皆様が安心してご利用いただけるようにしています。

「キャリアの健康診断」としての活用

ー ユーザーと企業はそれぞれどのようなニーズを持ち、それを満たそうと考えて登録しているのでしょうか?

楠瀬さん:求職者側に特定のニーズがあるわけではないと感じています。もちろん、転職したいというニーズはあるでしょう。しかし、どのような転職を目指すのかは、人それぞれです。年収を上げたい、成長できる環境に行きたい、やりがいを感じられる仕事がいいといったように、ニーズに対する正解は一人ひとりさまざまです。

多岐にわたるニーズに対して、ビズリーチは、スカウト型のサービスだからこそ、自身のキャリアの選択肢を可視化することができると考えています。すべての選択肢を可視化することによって、自分のニーズをどのように満たしていくのか判断できるようになります。

また、ビズリーチでは企業からだけではなく、ヘッドハンターからのスカウトも受け取れます。それぞれにメリットがあり、たとえばヘッドハンターであれば一度に複数の求人を紹介してくれたり、長期的なキャリアプランを相談するなど、効率的な側面があります。

一方で企業からの直接スカウトは、ヘッドハンターを介さない分、先入観のない状態で企業と向き合える利点があります。 企業からもヘッドハンターからもスカウトが届くことにより、自分の可能性を見つけ、その中から自分に合った選択肢を選ぶことが可能です。

ー 選択肢が幅広いというのは強みですね。

楠瀬さん :そうですね。選択肢を俯瞰して比較できるので、ユーザーにとって利便性が高いと思います。

ー 多くの転職エージェントに登録すると、メールがたくさん来て対応が大変ですよね。1つのプラットフォームで企業とヘッドハンターから情報を得られるので、求職者にとって魅力的なサービスだと思います。

楠瀬さん :そうですね。ほかにも、今すぐ転職しようとは考えていない人でも利用できる点が、弊社サービスの特徴です。

転職を考えていない人でも、自分の職務経歴書を定期的に更新したり、スカウトを受け取ってみたりすることで、現在の自分にどのような選択肢や可能性があるのかを可視化できますし、自身の市場価値を知ることで中長期的な視点でキャリアを考えるきっかけとなります。

私たちはこれを「キャリアの健康診断」と呼んでいるのですが、これを行えるのも1つのメリットだと思います。キャリアの健康診断とは、「自身が納得できるキャリアを歩むために、身体の定期健診と同様、定期的にキャリアの現状を把握する(振り返る)」ことと定義しています。すぐに転職したい人はスカウトを活用して活動できますし、まだ転職に悩んでいる人やすぐの転職を考えていない人も自分の状況を整理するためにビズリーチを活用していただけます。

ー すぐに転職を考えていない人でも、自分の市場価値を確認したり、キャリアの棚卸ができたりするのは大きな魅力ですね。 キャリアコンシェルジュのサービスも提供されていますが、それにはどのような目的があるのでしょうか?

楠瀬さん :キャリアコンシェルジュサービスは、プレミアム会員向けに提供しており、一人ひとりが望む形でのキャリア形成をサポートします。既にお話した通り、ビズリーチをご利用頂いている方のニーズは、一人ひとり異なります。なぜなら、キャリアというのはそれぞれが正解を持っており、何をすべきかが画一的に決まるものではないからです。

そのため、転職に対するアクションがわからないという方も存在します。そこで、専門のキャリアコンシェルジュがキャリア形成をサポートします。たとえばコーチングを通じて思考の整理を助けたり、転職の進め方についてアドバイスしたりします。このように、ユーザーと伴走しキャリア形成をサポートするサービスを提供しています。

ユーザーによっては、思考を整理した結果、「転職はしないでおこう」「しばらくは、現在の会社でキャリアを積もう」といった結論に至ることもありますね。

ー 単に転職を推奨するのではなく、一人ひとりのキャリアを共に考えるサービスということですね。

楠瀬さん :そのとおりです。特に、転職は孤独な経験です。自分にしか答えが出せない問題ですし、友人に気軽に相談できるものでもありませんよね。同僚や上司には当然相談できません。

そうした理由からも、私たちとしては相談相手と思っていただける存在でありたいと考えています。

ハイクラス転職市場の今後

ー なるほど、ありがとうございます。現状と今後のハイクラス向け転職市場については、どのようにお考えでしょうか?

楠瀬さん :労働寿命の延長や人生100年時代、終身雇用の崩壊など、働き方が非常に多様になってきているので、これからは自分のキャリアをどう築いていくかは自分自身で考える必要がある時代になってきています。

その結果、転職という選択をする方も増えてくると思います。 そうした背景を含めて考えると、転職市場は今後も拡大し続けるものと予想できます。特にハイクラス市場と呼ばれる領域では、ビジネス環境の変化が激しくなる中、大手企業をはじめとして新規事業に参入する企業が増加していることから、特定の知識や経験、スキルを持つ人材を求める動きがますます活性化していくと思います。

そうした人材は、比較的ハイクラスに多いと感じています。以前は新卒や第二新卒が多く入社し、総合職として働くことが主流でした。最近ではジョブ型雇用が増え、「あなたの仕事はこれです。これをプロフェッショナルとしてこなしてください」というスペシャリストや即戦力を求める傾向があります。

これにともない、転職市場は盛り上がりを見せており、ハイクラス向けの転職市場も引き続き活性化すると思われます。

ー なるほど。企業としては、新たなビジネスにあわせて特定のスキルや知識を持つ人を求める傾向があるということですね。

楠瀬さん :はい。具体例として、自動車メーカーのケースが挙げられます。かつてはエンジン車の製造が主な業務だったと思いますが、EV(電気自動車)の時代になり、ガソリンではなく電気で動く車を作ることが主流になりつつあります。

ガソリンエンジンを動かす技術と、電気を使って物を動かす技術は全く異なりますよね。

ガソリンエンジンを作るプロフェッショナルと、電気で車を動かすプロフェッショナルは全く異なるということです。こうした現象は、自動車業界に限らず様々な業界で起こっています。そのため、求められる人材の要件が変わってきている様子です。

自分の選択肢と可能性をいつでも確認できるキャリアインフラになる

ー ビズリーチさんの今後の展望はどのようなものでしょうか。

楠瀬さん :私たちは、ビズリーチをはじめとしたHR Techサービスの提供を通じて、働く人の「キャリアインフラ」になることを目指しています。人生100年時代を生きる私たちにとって「働くこと」は、人生における大きなテーマであり、キャリアを常に考え続ける必要があります。そのため、私たちは働く人が自分らしくキャリアを築いていく上で必要なキャリアインフラになりたいと考えています。

たとえば、大学時代には私たちの「ビズリーチ・キャンパス」というサービスを使ってキャリア観を醸成してもらい、多くの選択肢から自身の志向性にあった道を選択してもらう。そしてビジネスの経験を積んだ方には「ビズリーチ」を通じて自身のスキルや経験を活かせる新たな選択肢や可能性を見つけてもらう。

また、企業に提供している人材活用プラットフォーム「HRMOS」シリーズを通じて、働き始めてから退職するまでに培ってきたスキルや経験を可視化することで自身が納得できるキャリアを歩んでいただく。

キャリアの選択肢は、今の会社でのさらなる活躍も含みます。働く人のキャリアの選択肢と可能性を広げることができるサービスを提供し続けたいと考えています。

また、インフラとは日々生活している中で特に意識するものではありませんよね。同様に、キャリアを考えることが当たり前になるべきだと私たちは考えています。その当たり前を当社の様々なサービスで実現することを目指しています。

ー ありがとうございます。最後に、特にハイクラス層で転職を迷っている、踏み切れないといった方々に向けてメッセージがあればお願いします。

楠瀬さん :転職について悩んでいる方は多いと思います。「転職したほうがいいかな」「周りが転職しているから自分もすべきかな」といったように、不安から漠然とした悩みを持つケースも多いでしょう。

まずは、ビズリーチに登録してもらって、自分の可能性がどこにあるのか、自分の選択肢が何なのかを知ることをおすすめします。そうすることで、漠然とした悩みを具体化することができます。

自身の悩みの根幹が把握できたら、「この会社で頑張るべきだ」「こんな選択肢があるなら、こちらで頑張ってみよう」といったように思考を進めることができますよね。ただぼんやりと悩むだけでは、具体的な解決策にはつながりません。弊社のサービスは、基本的に無料で利用可能です(※一部有料のサービスあり)。まずは、スカウトを通じて自分の可能性を発見してほしいと思っています。

ー 一歩踏み出してみることが大事だということですね。

楠瀬さん :そうですね。企業やヘッドハンター、あるいはキャリアコンシェルジュと話すことで気づくことも多いと思います。一人で漠然と悩むことは、悪いことではありません。しかし、それ以外の方法が数多くあることも忘れないでいただきたいですね。

ー 本日は貴重なお話をありがとうございました。

ビズリーチ、ビズリーチ・キャンバスをはじめとしたサービスを活用し、キャリアインフラの構築を目指すビズリーチ。激しく変動する転職市場において、そのニーズはますます高まっていくことだろう。 あなたも「キャリアの健康診断」として、自分の現在地や可能性をまず確認することからはじめてみてはいかがだろうか。