本記事は、弓削徹氏の著書『アイデア体質になる! 課題が解決する! キャリアが広がる! メモ・ノートの極意』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
アイデア・企画は出すクセをつければいい
若い人ほどアイデアが出ないのはなぜか
一般には、アタマの柔らかい若年層ほどユニークなアイデアが出てきそうなものです。しかし、実際は逆です。若手より中堅のほうがアイデアは出ます。
企画会議などに出席しても、大学時代から起業をめざしてきた「意識高い系」の若者でもない限り、黙って座っているだけのケースがほとんどです。
周囲の大人たちに遠慮してしまい、発言に気おくれするということもあるでしょう。
しかし、アイデアが出せない原因には主として次の2つがあります。
まず、1つにはアイデアを発想する型ができていないこと、そしてもう1つは過去のアイデア事例を知らないことです。
発想のフレームワークには定まったものがありますが、これを知らなければアイデア出しのコツがわかりません。
また、よく言われるようにアイデアが過去にあった事象の組み合わせであるとするならば、若い人にはそのストックが足りません。
そのため、新しいアイデアが出せない、出しにくいということになるわけです。
一方で30~40代は、いちばんアイデアが出る時期だといえます。
そして、その年代を超えると、今度は発想力ではなく判断力が高まっている時期となってきます。そのため、出てきたアイデアを判断し取捨選択する立場となったり、あるいは過去の経験に照らして「このアイデアは、こう変えれば実現できる」と指導をしたりすることもできるわけです。
フレームワークがあれば発想できる
アイデアが生まれる現場に何度も立ち会えばわかることですが、アイデア発想には枠組みがあります。それをコツとしてつかんでしまえば、とにかくアイデアらしきものは出すことができるようになります。
アイデア発想のフレームワークはいくらもあり、周知のものです。
その多くは“総当たり式”で考えていくような手法ですので、アイデア発想に慣れた人は使ってはいません。しかし、経験が少ない人の場合は、そこからスタートすればいいのです。
そして、過去のアイデア事例を引き出しに持っていれば、それらをアレンジして、適切なアイデアを出すことができます。
よく言われるように、「この世にまったく新しいアイデアなんてない、過去の何かと何かを結びつけたもの」なのです。つまり、別業種での成功事例をアレンジしたものだったり、同業他社の商材を代えたものだったりするわけです。
仮に過去の事例を100集めれば、次の新しいアイデアは出やすくなるでしょう。なにしろ、それだけ過去問題集と向き合ったのですから。
材料となる事例は、本やビジネス雑誌で読んだ内容でもよいのですが、やはり実際に身近に経験した事例のほうが圧倒的に強いといえます。過去の成功体験にしがみつくのは困りますが、得意のパターンを持つことは悪いことではありません。
アイデア・企画を考えるクセをつける
アイデアや企画ができるアタマというのは、クセや習慣にすぎません。天才のひらめきとか、センスではないのです。
いまは大手企業の商品開発担当でヒットを飛ばしている人も、配属されたばかりのときは「企画って何をすればいいんですか?」と上司に質問していたにちがいありません。
アイデアを生み出す習慣やテクニックを身につければいいだけの話なのです。
面白いアイデアを出しはするものの、現実的なものではなく、周囲が絶対にオーケーを出さないような案ばかりという人もいます。
私がいちばん最初に広告会社でアイデアの出し方を学んだときの上司がまさにそんなタイプの人でした。
彼は楽しそうにいろいろなアイデアを出すのですが、いずれも予算的にムリだったり、社会通念上許されなかったり、企業としては受け入れがたいアイデアばかりでした。
私はそれを反面教師として企画術をとらえました。そして、面白くて、新しくて、採用されるアイデアを出せばよいのだ、と考えるようになりました。
ふつうのアイデアだからこそ採用される
採用されるのはふつうのアイデア
そもそも、プランナーやクリエイターが考え出すアイデアは似たようなものだと、クリエイター時代の私は身に染みていました。
知り合いに広告のクリエイターがいたら聞いてみて欲しいのですが、クライアントに提案して却下されたものが10ヵ月後にほかの企業のキャンペーンで実施されたり、書いたばかりのキャッチコピーとよく似たキャッチコピーが、テレビCMから流れはじめたりするような経験は誰もがしています。
真剣に仕事をしているクリエイターたちは、誰もが同じようなアイデアを思いついてしまうものなのです。
私の例ですが、ある家電メーカーのJR駅構内を使った広告キャンペーンのプレゼンをしたときのことです。
それまで未開拓だったスペースも活かそうと思い、階段の「蹴込み(階段の垂直の板の方)」に横長のポスターを貼ることを提案しました。
結局、その企画は採用されなかったのですが、その10ヵ月後くらいに、ふとJRの階段を見ると、あるメーカーの横長ポスターが掲示されていたのです。
プロの考えるアイデアは平準化する
また10数年以上前の、プランナーを名乗っていた頃に、ある財閥系企業の東京・日本橋にある基幹ビルのフロア活用の企画を求められたときのことです。
私が提案した企画は次のようなものでした。
ベンチャー企業を格安の賃料で入居させ、重厚長大企業の人材と交流する空間をつくる……。これは、お互いが持ち得ない発想を交換し、双方に刺激を与えよう、ということが狙いでした。
この企画は、時間こそかかり、ベンチャー企業ではなく「スタートアップ企業を」と変わりましたが、つい最近、現実のものとなりました。
もちろん、担当者も代替わりしているでしょうから、おそらく別の企画者が同様のアイデアを提案したのでしょう。
素材が同じであれば、クリエイター、プランナーが思いつくことは似たり寄ったりになるのです。というか、アイデアを出す訓練を積めば、誰もが同じようなアイデアを考えてしまうのが現実といえます。
その境地をめざして、アイデアを出すクセをつけていけばよいのです。
メモとノートの仕組みで差がつく
企画会議やブレストの席上でも、クリエイターが発言するアイデアの多くは、すでにどこかの企業が採用した事例です。他社ではこういう実施例がある、それをやってみてはどうか、のような。
ですから、斬新で面白いアイデアを出さなければいけない、と気負う必要はないのです。誰もが凡人なのです。その凡人の馬群の中から抜け出す1頭となるには、ほんの少しの仕組みがあればいい。
ほんの少しの工夫と、テクニックで、実現性の高いアイデアを生み出すことができます。その仕組みをたゆまずにつづけることができればいいのです。その仕組みこそがメモ・ノート術なのです。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます