新型コロナウィルスの影響を受け、収入が減少したり仕事を失ったりする人が増加しています。これに伴い、住宅ローンの支払いが困難になるケースも増えているようです。独立行政法人住宅金融支援機構によると新型コロナウィルスの感染拡大が始まった2020年2月ごろからお客様コールセンターに以下のような相談が増え始めているようでした。

・新型コロナウィルスの影響で今月分は入金できない
・収入が不安定になっている
・ボーナスが減りそうなのでボーナス返済をとりやめることはできないか

収入が減少するなどして住宅ローンの支払いが難しくなったら、どうすればよいのでしょうか。

住宅金利は値下げ交渉するべし

(画像=PIXTA)

住宅ローンの支払いが難しくなった場合、まず考えたいのが住宅ローンのリスケジュール(返済条件変更)です。特に社会状況の変化などが原因の場合は交渉にのってくれる可能性があります。

住宅ローンの支払いが難しくない場合でも、低金利時代の今、支払っている住宅ローンの金利は見直したいものです。住宅ローンの金利を値下げしてくれる可能性はゼロではありません。コロナ禍により、国から柔軟な対応を求められていることもあり、銀行側でも状況に応じて相談に乗ってくれるでしょう。

また、一般的に住宅ローンは20~30年など長期間の返済となります。銀行視点で考えれば、その間銀行は、利息というストック収益を安定的に手にすることができるのです。例えば、金利が低い他の銀行に借り換えられてしまうと本来得られるはずだった収益を失ってしまいます。銀行側からすると金利が低い他の銀行で借り換えられてしまうより、多少値下げしてでも顧客をつなぎ止めておいたほうがマシだと判断する可能性もあるのです。

加えて、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」も定められました。この特例では住宅ローン以外の債務の免除や減額を申し出ることが可能です。こちらも確認してみましょう。

住宅ローンの借り換えは複数申し込みが当たり前

借り換えを複数申し込むメリット

  • 最低金利でなく、実際の金利がわかる
  • 比較して、条件が良いローンを選べる
  • 他社の条件を提示して交渉することで、
    金利が安くなるケースがある

借り換えもあるが値下げしてくれるなら言うことなし

現在借り入れしている金融機関とは別の金融機関へ借り換えをする選択肢もあります。一般的に借り換えするメリットがあるといわれる目安は、以下の3つの条件を満たす場合です。

・借り換え後の金利差が年1%以上ある
・住宅ローンの残高が1,000万円以上残っている
・残りの返済期間が10年以上

しかし住宅ローンの借り換えには、デメリットもあります。例えば、借り換えに伴う諸費用がかかることは大きなデメリットになってくるでしょう。住宅ローンを借り換える場合、まずは現在住宅ローンを組んでいる金融機関の全額繰上返済の手数料が必要になります。さらに以下のような費用もかかってくるため、事前にどのぐらいかかるか試算しておくことが重要です。

・不動産抵当権抹消費用
・新規住宅ローンの保証料
・新規住宅ローンの事務手数料
・不動産抵当権設定費用
・印紙代など

金融機関によって保証料や事務手数料は異なりますが、一般的に住宅ローンの借り換え諸費用は、総額で約30万~80万円といわれています。そのため他の金融機関で借り換えるよりも既存の住宅ローンの金利を値下げしてもらったほうが諸費用や面倒な手続きを回避できるのです。銀行にとっても抵当権抹消手続きなど手間暇のかかる手続きをしなくて済むため、いわば両者にとってWin-Winともいえるでしょう。

値下げ交渉をするべき場合

では、金利の値下げ交渉をするべきなのはどのような場合でしょうか。ここでは、値下げ交渉を検討したい3つのケースを解説します。

現在の金利が明らかに高い場合

他の金融機関の金利と比べて現在の住宅ローン金利が明らかに高い場合は、金利の値下げ交渉をすべきでしょう。特に10年以上前の現代の低金利時代以前に住宅ローンをメガバンクなどで借りた人は、該当する人がいるかもしれません。

メインバンクなど金利は高いが丁寧なサービスがある場合

メインバンクで住宅ローンを借りている人も多いでしょう。メインバンクで住宅ローンを借りた場合、ATM手数料無料やポイント獲得制度など、丁寧なサービスを受けられるというメリットもあります。そもそも住宅ローンの金利が他の金融機関と比べて明らかに高い場合、金利の値下げ交渉をすべきでしょう。

新しい金融機関に借り換えが億劫という場合

新しい金融機関での借り換えが億劫という場合も金利の値下げ交渉をするべきです。上述したように住宅ローンの借り換えには、諸費用がかかるだけでなく手続きに手間がかかります。一般的な住宅ローンの借り換えの場合には、以下のようなプロセスが必要です。

・既存の住宅ローンを借りている銀行の店頭で「完済手続き」を行う
・次に住宅ローンを借り換える銀行の店頭で「住宅ローン申し込み」を行う
・後日に「契約締結」を行う

平日仕事をしている人であれば、会社を休む必要があるかもしれません。そのような場合は、住宅ローンの借り換えよりもまず金利の値下げを申し入れるほうがいいでしょう。

値下げ交渉の方法

では、実際に金利の値下げ交渉をする場合、どのようにすればいいでしょうか。

返済予定表を確認する

値下げ交渉の最初のステップは、既存の住宅ローンの返済予定表を確認することです。返済予定表は、住宅ローンを実行する際に銀行が発行する書類で一般的に「返済残高」「返済方法」「契約時の金利」「残りの返済期間」などの情報が記載されています。返済予定表が手元にない人は、銀行に再発行を依頼して入手しましょう。なお、多くの金融機関では返済予定表の再発行に手数料が必要です。

銀行に再発行を依頼することで銀行に「実は借り換えを検討していますよ」というメッセージを送ることにもなり交渉開始の糸口になる可能性もあります。

金利の安い金融機関で借り換え審査を受ける

実際に金利の安い金融機関で借り換え審査を受けます。一般的には、既存の住宅ローンの返済予定表をもとに実際に借り換えた場合の返済シミュレーションが行われる傾向です。シミュレーションには、1~2週間程度かかるケースもあるため、スケジュールに余裕を持たせておくといいでしょう。また、できれば複数の金融機関で借り換え相談をしましょう。

なお一般的に返済シミュレーションは、紙の書類として発行されます。

金利値下げを申し入れる

返済シミュレーションが入手できたらいよいよ金利値下げの申し入れです。銀行の店頭へ出向き単刀直入に「金利を値下げしてください」と申し入れます。その際、入手した返済シミュレーションを提示し「他行へ乗り換えるとこれだけ金利が安くなる」という事実を銀行と共有することが重要です。なお金利値下げ申し入れの時期は、一般的に「1~3月まで」「7~9月まで」がいいとされています。

なお、銀行によっては金利の引き下げに本店決裁が必要になることもあるため、決算期に合わせて金利値下げを申し入れる場合、ある程度余裕を持たせて2月や8月に行うといいかもしれません。

値下げ交渉の注意点

ところで値下げ交渉を展開するにあたっては、申し入れの時期以外にもいくつかポイントがあります。

住宅ローンを借りている銀行の現在の金利水準を確認する

まずは、住宅ローンを借りている銀行の現在の金利水準を確認することです。2021年現在、日本では未曽有の低金利政策が継続しており金融機関の金利も相応に下がっています。住宅ローンを借り入れした当初の金利水準よりも大きく下がっていた場合、金利を現行の水準近くまで下げてもらえる可能性が期待できるでしょう。

現在の住宅ローンの返済をしっかりと行う。

現在の住宅ローンの返済をしっかりと行うこともポイントです。一般的に金利の値下げは、銀行内で審査が行われます。そのため現在の住宅ローンの返済がしっかりと行われていないと金利の値下げ以前の話になってしまいかねません。可能な限り住宅ローンの返済は確実に行いましょう。

主要金融機関の変動金利と全期間固定金利一覧

主要金融機関の変動金利と全期間固定金利(25年、30年、35年、フラット35)を一覧にしました。すべて2021年7月の基準金利に基づいています。なお金利は常に変動しているため、各金融機関のホームページなどで最新の情報を確認することも大切です。

また、借入金に対する自己資金額の割合、保証料前払いの有無、借入期間適用時の基準金利、各種プラン利用の有無などの諸条件により、実際の適用金利は変わりますので、金利の値下げを申し入れる際や、他の金融機関への借り換えを検討する際には、各金融機関に直接ご確認下さい。

    全期間固定型
金融機関名 変動型 25年 30年 35年
みずほ銀行 0.375 0.940 0.970 0.980
三井住友銀行 0.475 1.320 1.320 1.320
三菱UFJ銀行 0.345~0.475※ 1.70 ~1.83※ 1.79 ~ 1.92※ 1.84~ 1.97※
りそな銀行 0.470 1.200 1.300 1.300
三井住友信託銀行 0.445 NA 0.870 NA
中央労働金庫 0.575 NA NA NA
新生銀行 0.450 1.000 1.200 1.400
ソニー銀行 0.457 1.618 1.618 1.618
楽天銀行 0.527 NA NA NA
auじぶん銀行 0.410 NA 1.340 1.380
PayPay銀行 0.380 NA 1.280 1.340

NA=該当なし

※三菱UFJ銀行 適用金利や引下幅は、お申込内容や審査結果等により決定いたします。

まとめ

以上、住宅ローンの金利値下げにつきその実際の方法やポイントなどについて解説しました。住宅の購入は「人生で最も高額な買い物」といわれています。つまり、長期にわたって支払う返済額には、大きな負担となる利息を含んでいます。わずか1%程度の違いが30年、35年といった長いスパンでは、非常に大きな差を生む可能性があるのです。

現在組んでいる住宅ローンの金利を正しく把握したうえで値下げの可能性があれば速やかにアクションを起こしましょう。