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北川真大

北川真大

明治大学法学部卒業後、証券会社に入社し、個人営業に従事。証券営業の経験をもとに金融系の記事執筆やKindle出版を開始し、現在はフリーライターとして活動中。日本株、投資信託、暗号資産、不動産を保有する個人投資家でもあり、日本株の投資歴は累計7年以上に及ぶ。
■保有資格:2級FP技能士・証券外務員一種
Twitter:@kitahiro_writer
note:金融ライター&Kindle 独立への道しるべ
Kindle:きたひろ金融ライター

投資初心者にとって商品選びや銘柄選びは慎重に考えるべき重要なポイントです。今回は、投資信託や日本株への投資経験が豊富で、金融ライターとして活躍される北川真大さんに、初心者におすすめのつみたてNISAの銘柄、投資を始める上でのポイントを伺いました。

過去の実績だけで判断するのは禁物。商品の性質やリスクを把握した上で購入の判断を

― 投資信託や日本株への投資の経験が豊富な北川さんに伺いたいのですが、これから投資を始めたい、という初心者の方が商品を購入する際に気をつけるべきことは何でしょうか?

北川真大さん(以下、北川):投資信託の場合、過去のリターンを見て判断してしまう方が多いのですが、10年~20年後にそのリターンが得られるかはわかりません。実績だけで選ばないほうがいいでしょう。

また、どれほど良い商品でも、下がったところで売ってしまったら意味がありません。その商品の性質やリスクを把握してから購入する意識が大切です。

― 投資信託の商品の性質やリスクを把握するには、どういう観点でリサーチするとよいでしょうか?

北川:リターンのばらつきが平均リターンに対してどれくらいあるかを測る「標準偏差」という指標があります。標準偏差が大きいものはハイリスク・ハイリターンといえます。米国株などが一例です。日本人はどうしてもリスク許容度、いわゆるリスクを許せる度合いが低い傾向にあります。そのため、標準偏差が大きい銘柄には注意が必要です。

また、20%~30%下がったからといって売ってしまうのでは、意味がありません。リーマンショック級の暴落がきたら、50%程度暴落することもあります。自分が商品の価格変動リスクにどこまで耐えられるのかという点も考慮する必要があります。

つみたてNISAでリスクを抑えて運用するには「4資産均等型」がおすすめ

ー つみたてNISAについても質問させていただきたいのですが、つみたてNISAで投資をする上でのポイントはありますか?

北川つみたてNISAは一般NISAと異なり、一部の投資信託等にしか投資できません。株式に100%投資するインデックスファンドや債券を組み合わせたバランス型のファンドがほとんどです。そのため、ある程度リスクを抑えて運用することを考えると、株式50%、債券50%に分散し、その株式と債券の中の半分を国内にして、半分を海外にする投資手法が無難です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用している運用方法として知られています。

ちなみに、GPIFは年率3.38%、累計で98兆円以上の利益を出しています(2001年度~2022年度第3四半期時点)。

ー つみたてNISAで個別の銘柄でおすすめのものはありますか?

北川:バランス型だと、4資産均等型が先ほどのGPIFの運用方法に該当するものです。一例として「ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型」が挙げられます。 8資産均等型だと不動産なども入ってきます。4資産であれば、株式と債券を組み合わせた運用手法になっているものが多いですね。

リスクを取りたい人はS&P500などの米国株を入れればいいですし、米国株だけなのが嫌な人はオールカントリー(全世界株式)などを入れるといいと思います。おすすめ銘柄に関して言えることは、他の人とあまり変わりません。

ー ありがとうございます。北川さんが投資に興味を持たれたきっかけについて教えて下さい。

北川:私は9歳の時に父が亡くなり、以来母子家庭で育ちました。生命保険で下りたお金を証券会社に預け、運用によって増やしてくれました。それによって大学まで行かせてもらえた経験が、投資に興味を抱いたきっかけかもしれません。

ー 投資をすれば自分の資産を増やせることを経験として知っていた、ということですね。北川さんのこれまでの投資の成功・失敗体験についても伺ってもよろしいでしょうか?

北川:トータルでプラスになっているとはいえ、他人に自慢できるほどの金額ではありません。つみたてNISAでは利益(含み益)が出ていますが、個別銘柄で短期投資する場合、成功率は正直なところ五分五分です。利益のほうが多いので一応儲かっていますが、利益率はつみたてNISAに負けています。

成功した投資のケースは、長期的な目線で「このタイミングだったら2年~3年後は上がるだろう」と判断して投資したものがよく上がります。最近だと、日本の銀行株や商社株はうまく儲かりました。逆に「ちょっとベンチャー企業に投資して一発当ててみよう」と考えて投資したものは、大体失敗していますね。

ー 長期的な目線での判断が大切ということですね。現在の投資ポートフォリオは、個別銘柄が中心でしょうか?

北川:2023年3月から、ポートフォリオを大幅に変更しました。以前は現金比率が10%程度だったのですが、現在は45%程度に増やしています。日本株が全体の約10%を占め、つみたてNISAで運用している分も持っています。ほかには、不動産を1部屋所有している状況です。

現金比率を45%まで増やした理由について教えて下さい。

北川:現金50%と、それ以外のリスクを有する資産を50%にするのがもっともバランスがよいと考えているからです。株価が上昇している時期は、株式をはじめとしたリスク資産を増やせば増やすほどリターンは増えるものの、落ちた時のダメージが大きくなります。特に2023年5月現在の株価は高いと感じているため、安くなったタイミングで買い増しできる余力をある程度残そうと考えています。

2020年や2021年は、ひたすら日本株・米国株などのリスク資産を買い増ししていました。2022年以降、米国株を中心に相場の動向が怪しくなってきたため、少しずつ減らしていった感じです。

ー 長年投資されていても、やはり投資は難しいと思うポイントはありますか?

北川:やはり何年やっていても、恐怖感に勝てない時がありますね。先日アメリカで3つの銀行が倒産した件もありました。1行だけなら大丈夫だろうと思っていたら、2行目、3行目が来ました。ところが、負の連鎖が続いていくのかと思ったら、今は一応沈静化しています。

2007年8月のパリバショックや2008年9月のリーマンショックに重ねてしまい、焦って資産の一部を売ったところ、結局そのあと上がりましたね。こういうことが多々あるので、やはり恐怖心には勝てないなと感じます。

お金に余裕がある人は一般NISAを。始めるタイミングは好きなタイミングで

ー NISAの話に戻りますが、現在の一般NISAとつみたてNISAの2種類は、それぞれどのような人に向いているでしょうか?

北川:現行のNISA制度はあと1年しか残っていませんが、お金に余裕がある人は一般NISAがおすすめです。一方、お金に余裕がない人は、つみたてNISAのほうが適しています。お金に余裕がないと、一般NISAの年間120万円の枠を十分に活用できないからです。

ー 来年から新しいNISAが始まります。それまで待つべきか、それとも今すぐ始めたほうがよろしいのでしょうか?

北川:NISAについては、タイミングを見るようなものではないと思っています。NISA口座の開設にお金はかかりません。証券口座やNISA口座を開設だけしておいて、2024年から投資を始めても問題ないと思います。

今から証券口座、NISA口座を開設するなら、スマホで簡単に口座開設ができるSBI証券・楽天証券をはじめとしたネット証券がおすすめです。私は、SBI証券でつみたてNISA口座を開設して、楽天証券では日本株専用の証券口座として利用しています。

ちなみに、現状のつみたてNISAや一般NISAから新しいNISAに変わる際、特別な手続きは不要だと金融庁も発表しています。したがって、タイミングを見たい人は見ればいいですし、見ない人は今すぐ始めてもいいでしょう。今の株価が高いか安いかは、5年後、20年後を見ない限り誰にもわかりません。

― 最後にこれから投資にチャレンジしていこう、という読者に一言いただけますでしょうか?

北川:投資に絶対はありませんし、NISAで投資をしていても損をすることはあります。ただ、損を怖がって銀行預金やリスクの低い保険だけで資産運用をしていても、モノの値段が年間3%程度上がる状況では物価上昇分すらカバーできません。

リスクの低い銀行預金や保険にこだわることは、物価上昇(インフレ)によって確実に資産が目減りする「必敗の投資法」といえます。給料が上がらず、モノの値段がどんどん上がってしまう状況に備えるためにも、NISA口座を開設してできる限り早めに投資を始めるべきでしょう。