子供の教育資金源として、ジュニアNISAの運用を考えている保護者も多いだろう。ジュニアNISAを運用する資金は、口座名義人本人の資金ということになっているが、当然、親や祖父母といった近親者からの出資が基本となる。
「どうせ私が資金を出し、私自身が運用者になるなら……」と自分で持っているNISA口座で、子供の教育資金を運用してしまいたい気持ちになる保護者もいるのではないだろうか。ジュニアNISAもNISAも非課税枠を利用した投資手段ではあるが、似ているようで違う。ジュニアNISAならではのメリット・デメリットがあるのだ。
目次
ジュニアNISAとNISAの違い
ジュニアNISAのメリット・デメリットについて話す前に、ジュニアNISAとNISAの違いと共通点について簡単にまとめておこう。
最大の違いは、1年間の非課税金額だ。非課税金額は、ジュニアNISAが80万円、NISAが120万円。非課税期間は、ジュニアNISAもNISAも5年間なので、5年間ずっと満額で運用した場合は、ジュニアNISAが400万円、NISAで600万円を非課税で運用できる。
口座開設者にも違いがある。ジュニアNISAが日本在住の未成年者が対象であるのに対して、NISAは日本在住の成人であることだ。1人1口座しか開設できないのは同じである。
共通点の1つは、非課税期間が最長5年間であり、5年をすぎた場合は新規で口座を開設し、ロールオーバーできることだ。ジュニアNISAもNISAもロールオーバーの際は、非課税制限枠以上に投資商品を持っていたとしてもそのまま持ち越しが可能になっている。
以前は、ジュニアNISAなら80万円、NISAなら120万円を超える部分は持ち越しをすることができず、課税口座に移すことになっていた。
2つ目の共通点は制度の運用期間だ。制度の運用期間は、ジュニアNISAもNISAも2023年まで。ただし、2023年以後も5年間の非課税期間内である場合は、非課税期間が終了するまでの間は投資商品を非課税で保有することができる。
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国内 株式 | IPO(社) ※2019年実績 |
ミニ株 | 投資信託 取扱数 |
外国 株式 | ||||
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買付 | 売却 | 米国 | 中国 | その他 | ||||
SBI証券
申し込み |
無料 | 無料 | 88 | S株 | 2658本 | ◯ | ◯ | 7ヶ国 |
松井証券 申し込み |
無料 | 無料 | 21 | × | 1254本 | × | × | × |
申し込み |
無料 | 無料 | 11 | × | 2643本 | ◯ | ◯ | 4ヶ国 |
au カブコム 証券 申し込み |
無料 | 無料 | 23 | プチ株 | 1146本 | × | × | × |
証券 申し込み |
無料 | 無料 | 50 | ワン株 | 1182本 | ◎ | ◯ | × |
ジュニアNISAの証券口座比較
ジュニアNISAの口座を開設する際、どの証券会社を選ぶべきだろうか。
ジュニアNISAは損益通算ができないため、値上がりに自信がもてる銘柄を取引するべきだ。
そのため高確率で値上がりし、利益幅の大きい新規公開株(IPO)への投資にジュニアNISAを利用する人は多い。またジュニアNISAの非課税枠80万円を無駄なく投資できる投資信託に利用する人も多い。
IPO株や投資信託だけでなく、外国株など取引を行える商品の種類や銘柄が豊富に揃っていることなどが、NISA口座を選ぶ基準になるだろう。
※1. 2019年度のIPO取扱実績
※2. 楽天証券のNISA口座ではIPO投資はできない
メリット1 年間80万円の非課税枠は相続税対策になる
ジュニアNISAのメリットの1つは相続税対策になることだろう。ジュニアNISAを利用しなくても、教育資金は一括贈与の特例制度と都度贈与を使用すれば、1500万円以上の金額を非課税で子供に贈与することができる。
ただし、一括贈与の特例制度を利用するには贈与を受けた側が30才までに使い切る必要があるなどの条件がつく。また、1500万円は「合計1500万円」であって贈与できる側の人間が何人いても合計額は変わらない。
都度贈与の場合も「子供が必要とするときに必要なだけ」という条件が付いて回る。贈与税は、1年間で120万円以上を贈与した場合に課税されるので、新生児に「将来使うだろうから」と120万円以上のお金を贈与すれば、「新生児にそんなに教育資金は不要のはず」と課税されてしまうのだ。
その点、ジュニアNISAは0才名義でも年間80万円まで資金を提供することができる。相続税のことを気にする必要もないし、運用益は非課税だ。毎年80万円を5年間運用できれば、合計400万円の利益にも非課税、相続税も0円で子供や孫に渡すことができる。
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メリット2 子供の投資教育機会になる
ジュニアNISA口座を開設すると同時に、子供用に課税未成年口座が自動的に開設される。5年間のジュニアNISA運用期間が終了したときに、課税未成年口座に移すか次年度のジュニアNISA非課税枠で運用するかを選ぶためだ。
ジュニアNISAの運用期間が終了した年齢が20才をすぎていれば、成人向けのNISA口座が開設され、ジュニアNISAで運用していた商品はそちらに引き継がれることになる。
これはつまり、ジュニアNISAを開設することで将来子供が投資をする機会を強制的に作るということになる。口座を廃止しすべて現金にすることも可能だが、学校ではまったく教えてくれない投資やお金のことについて、子供に学ぶ機会を与える絶好のチャンスといえるだろう。
これからは一人一人が金融リテラシーを持ち、リスクとリターンを天秤にかけながら資産を増やす努力をする必要がある。現在も、金融リテラシーの高い層と低い層の間の所得差は増えるばかりだ。物心ついたころから投資が身近になるメリットは計り知れないのではないだろうか。
メリット3 制度終了の2023年以後も非課税でロールオーバー可能
ジュニアNISAの制度運用期間は2023年までとなっている。2023年以後は、ジュニアNISAを開設できる年齢であっても新規開設ができない。課税未成年口座に移し、運用益が課税されるようにしなければならないのかと考えてしまうが、継続管理勘定を利用すれば非課税でロールオーバーできる。
継続管理勘定は、ジュニアNISAを利用していた未成年が20歳になるまで非課税でジュニアNISAでの運用商品を所持できるというもの。新規買取はできず、商品の売却のみが可能になっている。課税未成年口座での運用を積極的にしたくない場合は、継続管理勘定でのロールオーバーが便利だろう。
なおジュニアNISA口座名義人の未成年が20才になればNISA口座を開設することができ、ジュニアNISAの商品はNISAに移すことになる。
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デメリット1 ジュニアNISAからの途中引き出しは課税対象
ジュニアNISA口座からの途中引き出しは課税対象だ。ジュニアNISAには払い出し制限がある。口座名義人が18才になるまでは、災害などの特別な事情がない限り払い出しができないのだ。
18才になる前に払い出してしまった場合は、払い出し期間以前の利益までさかのぼった利益に対して課税されることになる。また、ジュニアNISAの払い出しは、口座を廃止することを意味するので、再びジュニアNISAを利用する場合は、新規に口座開設手続きを取る必要があるのだ。
デメリット2 金融機関の途中変更は既存口座を廃止してから
金融機関の変更ができないこともジュニアNISAのデメリットといえる。かつてはNISAも口座開設以後の金融機関変更が不可能だったが、今は制度が変更され年に1度なら金融機関の変更が認められている。しかしジュニアNISAは金融機関の変更は一切認められていない。
どうしても金融機関の変更をしたい場合は、今あるジュニアNISA口座を廃止する手続きを取ってから、変更先の金融機関に新規でジュニアNISA口座を開設する必要がある。
既存のジュニアNISA口座を廃止する場合は、これまでの全ての利益に課税される。またジュニアNISA口座を開設する場合にかかる期間は、1ヶ月から2ヶ月程度かかる場合もある。かかる税金や時間と手間を考えるなら、金融機関の変更をしなくてもいいように、初期の段階で入念に下調べをしておくべきだろう。
デメリット3 投資商品のリバランスが難しい
投資商品のリバランスが難しいこともデメリットの1つだろう。ジュニアNISAは1年間で80万円の非課税投資枠があるが、投資商品を売ったことによって出た空き枠を再利用することはできないのだ。
保有商品を入れ替えながら投資バランスを取ろうとすると、80万円の投資枠の範囲内で入れ替えを行うことになるので、かなり窮屈な思いをすることになる。これを防ぐためには、個別企業の株式を自分で選んで投資する方法よりも、すでに商品内にリバランス機能がついているものを選択することだ。
例えば、投資信託商品のような「優秀な株式を少しずつ詰め合わせた」商品を選ぶことで、1年間80万円という投資としては少額な範囲内でも、バランスを取りながら運用をしていくことが可能だ。
ただし、投資信託の特別分配金はそもそも非課税であることに注意したい。特別分配金は、商品取得時の平均投資元本よりも分配後の基準価格よりも下回った際に配当されるものだ。そもそも非課税なので、特別分配金が出たからといって余分な非課税枠が増えるわけではない。
大まかな目安をあげるなら、年収1年分は貯蓄に回し、それ以上は投資に回す。仮に投資に失敗したとしても、FXでレバレッジをかけるなど、よほどハイリスクな投資を行うか、金融危機のときのような非常事態が起こらない限り、負けてもせいぜい投資額の半分くらいでしょう。 そこで手を引けば、1年分の貯蓄も残っているので、いきなり生活に困窮する可能性は低いはずです。