メキシコペソのスワップポイントで生活はできる？

メキシコは政策金利が11.25%(2023年5月29日時点)と高い国です。そのためFX取引においてメキシコペソはスワップポイントによる収益が期待できる、人気の通貨です。

「メキシコペソのスワップポイントだけで生活できるんだろうか」

「どれくらいの資金でどれくらいのスワップポイントが得られるんだろう」
と考える方もいらっしゃるでしょう。 理論上は、メキシコペソのスワップポイントで生活できます。

しかしおすすめはできません。

この記事では取引する資金量に応じて得られるメキシコペソのスワップポイントを具体的に説明し、スワップポイントでの生活をおすすめできない理由についても解説します。

メキシコペソ自体はおすすめの高金利通貨なので、この記事が取引の手がかりになれば幸いです。

まずは知っておきたい基本用語から説明しますので、すでに知識のある方は「実際に生活できるくらいのスワップポイントを得るには？」からご覧ください。

目次

知っておきたい基本用語

スワップポイントで生活するのはなぜ難しいのか？どうすればスワップポイントで稼げるようになるのか？を理解するためには次の4つの基本用語を理解することが必要になります。FX取引全般を行う上でも重要な概念なので、一つ一つ理解していきましょう。

1.スワップポイント

スワップポイントとは、取引する通貨間の「金利差から生まれる利息」です。

たとえば「日本円を売って、米ドルを買う」取引で、米国の金利が5.0%、日本の金利が-0.1%とします。金利差は5.1%となり、金利差に応じたスワップポイントを日ごとに受け取ります。

「金利の低い通貨を売って、金利の高い通貨を買うとスワップポイントを受け取れる」と覚えておきましょう。

2.ポジション

ポジションとは、通貨ペアを買っている、売っている状態のことです。ざっくりと「通貨の持ち高」と認識しておきましょう。
例えば日本円を売って米ドルを買った場合、米ドルの買いポジションを持っている状態となります。

3.レバレッジ

レバレッジは預けた資金に対する取引額の倍率です。たとえば4万円の資金を預け入れ、100万円分外貨を買ったとしたら、レバレッジは100万円÷4万円＝25倍となります。

レバレッジをかければかけるほどリスクが高まり、損失も大きくなりやすい点は必ず頭に入れておいてください。なおレバレッジは25倍が上限と定められています。

4.ロスカット

ロスカットは損失の広がりを防ぐためのルールです。損失額が一定の基準を超えると、ポジションが自動的に精算されます。精算せずに持ち続ければ為替が戻り、損を出さずにすむかもしれません。しかし基準を超えたら強制的にポジションが解消されるため、損失が確定することになります。

計算方法は複雑なのでここでは省略しますが、レバレッジが高いほどロスカットされる可能性が高まります。

ロスカットのリスクに関して詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

メキシコペソのスワップポイントで生活するのは難しい

理論上はメキシコペソのスワップポイントで生活できますが、あまり現実的とはいえませんし、おすすめもできません。なぜなら資金の負担とリスクが大きいためです。

具体的には3つの課題があります。

1.資金の負担

メキシコペソの政策金利(スワップポイント)がいくら高いからといって、生活できるだけのスワップポイントを得るにはそれなりの資金が必要です。

わかりやすく日本の平均給与をもとに考えてみましょう。国税庁によると、2021年の平均給与額は年間およそ443万円です。月収に換算すると36万9,000円です(手取りだと約25万円)。

1ヵ月36万9,000円のスワップポイントを得るにはレバレッジ1倍で3,280万円、レバレッジを最大の25倍かけても131万円が必要です(2023年5月29日時点)。

「生活費に36万9,000円もかからないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、メキシコペソのスワップポイントで月収程度を得るには多くの元手が必要だと、なんとなくイメージできたでしょうか。

レバレッジをかければもっと多くのスワップポイントを得られますが、その分資産をリスクにさらすことになります。

2.金利変動リスク

政策金利が下がればスワップポイントも下がるため、今と同じスワップ収入が続く確約はありません。

上のグラフのようにメキシコは2021年6月から2023年3月まで15回連続で政策金利を引き上げてきましたが、2023年5月には政策金利の据え置きが決まりました。

金利は上がったり下がったりを繰り返しており、安定性の面でスワップポイントを生活の柱とするのは厳しいといえるでしょう。

3.為替変動リスク

金利以上に動きが大きいのが為替レートです。世界情勢が大きく動けば、それまで得てきたスワップポイント以上に為替の変動で損失が出るかもしれません。

上のチャートは2013年～10年間のメキシコペソ円の推移です。2020年2月には5.9円をつけていましたが、3ヵ月後には4.3円となり、およそ27%下落しました。もし2月に10万ペソ買っていたとしたら59万円から43万円へ、16万円のマイナスです。

10万ペソで日々得られるスワップポイントは数百円ですから、為替によって損益が一気にマイナスになるかもしれません。さらに2020年には金利も下がっており、金利の下落と為替の下落のダブルで痛手を負う可能性もあります。

とくに新興国の通貨は先進国にくらべてレートが大きく変動しやすいため、注意が必要です。

実際に生活できるくらいのスワップポイントを得るには？

ここでは月20万円、月10万円のスワップポイントを得るためにはどれぐらいの資金が必要か、具体的に計算してみましょう。

また目安として、月のスワップ収入のおおよそ妥当といえる額と必要な資金もお伝えします。

なお、計算にあたっての前提条件は以下とします。

月20万円のスワップポイントを得る場合

スワップポイント20万円を得るにはレバレッジを3倍かけても592万円が必要です。日本の平均年収443万円を考慮すると、1年分の収入をまるっとつぎこんでも足りません。スワップポイントで20万円を得るのはハードルが高いといえるでしょう。

月10万円のスワップポイントを得る場合

家賃や住宅ローンを払っていると生活費が月10万円というのはあまり現実的ではないかもしれません。それでも10万円をスワップポイントで得ようと思うと、290万円以上のまとまった金額が必要です。

初心者がスワップポイントを得るには月5万円以下からがおすすめ！

5万円以下となると生活するには不十分でしょうが、生活の足しにはなりますし、取引に必要な資金も現実味を帯びてきます。

月5万円のスワップポイントを得る場合

コンパクトカー1台分ぐらいの金額となり、月20万円、10万円を追う場合とくらべて現実的な数字です。

ただしFX取引は余裕資金でおこなうのが鉄則ですから、預貯金をすべてメキシコペソに使うのは大変危険です。ほかの通貨または金融商品(株や投資信託など)も購入してリスク分散することも考えたいところですし、判断は慎重におこないましょう。

月1万円のスワップポイントを得る場合

必要な資金額は29万6,000円となります。平均年収443万円を月収換算すると36万9,000円ですから、およそ1ヵ月分の給料で月1万円のスワップポイントが得られる計算です。

自身の総資産額や出費の予定、ほかの金融資産とのバランスも考えて取引額を決めていきましょう。

メキシコペソ取引で利益を得るための3つのコツ

メキシコペソの取引において利益を得るために、抑えておきたいコツが3つあります。メキシコペソに限らずFX取引全般にも通ずる点があるため、ぜひ覚えておきましょう。

1.余裕のある資金管理を心がける

スワップポイントは毎日コツコツ積み重なるもので、通貨を長く持つことでまとまった金額になっていきます。とはいえ通貨を持っているあいだも為替レートは動き続けます。もし為替が下がった場合、起こりうるのがロスカットです。

レートが悪くなっても時間が経てば回復してくるかもしれませんが、損失がロスカットの基準に該当すれば自動的にポジションが精算され、損失を確定することになります。FX取引ではロスカットをできる限り避けたいため、資金管理は非常に重要です。

過去10年間におけるメキシコペソの底値は4.2円のため、4.2円まで下がってもロスカットされない余裕が1つの目安となるでしょう。

2.レバレッジは低めに設定する

メキシコペソ円の取引では、レバレッジを低めに設定することが推奨されます。これは、メキシコペソが主要通貨に比べて流動性が低く、値動きが激しい傾向があるためです。

高金利通貨ペアの取引において、投資家はスワップポイントを狙って取引量を増やす傾向がありますが、予期せぬ価格の急落時にロスカットのリスクが高まるため、レバレッジのかけすぎには注意が必要です。

また、メキシコペソにはメキシコの経済問題や地政学的なリスクも存在します。インフレ問題や原油産出量の低下、米国との関係悪化などが通貨価値に影響を及ぼす可能性が考えられます。こうした為替変動リスクを避けるためにも、メキシコ関連のニュースには常に注意を払っておくことが重要です。

3.スワップポイントだけでなく為替差益もとっていく

為替は金利よりも変動しやすいため、為替で利益が出ているようであればポジションを決済して、利益をとっていくことも大切です。為替の変動で得た利益でまたメキシコペソを買ってポジションを増やせば得られるスワップポイントも増やせます。

スワップポイントは毎日コツコツ時間をかけて積み上がっていく一方、為替は短期間でも利益が出る可能性があります。スワップポイント目的の取引でも、為替の動きはこまめにチェックしましょう。

FAQ

最後にスワップポイント重視でメキシコペソを取引する際によくある質問を3つ紹介します。

本記事で参考にしたサイト一覧

1. みんなのFX
2. DMM FX
3. GMOクリック証券
4. SMBC日興証券
5. LIGHT FX