FX取引にはさまざまな通貨ペアが存在します。最近ではトルコリラや南アフリカランドなどの新興国通貨の通貨ペアでの取引も人気を集めています。新興国通貨は高金利なたスワップポイントが高い点が魅力ですが、投資としてのリスクは高いので注意して取引する必要があります。
今回は、そうした新興国通貨の中でもトルコリラに注目し、特徴やFX取引を行ううえでの注意点を紹介します。トルコリラへのスワップ投資を検討する場合には、参考にしてみてください。
トルコリラはどんな通貨?
トルコは、東ヨーロッパのトラキア地方と西アジアのアナトリア半島にまたがる国です。かつてはオスマン帝国という一大帝国を築き、バルカン半島をはじめ、クリミア半島やアラビア半島、北アフリカなどを支配していたこともあります。
トルコの特徴は、若年層の人口が多いことです。2018年時点でのトルコの人口はおよそ8200万人ですが、0~14歳の人口割合は23.4%となっています。日本での0~14歳の人口割合は12%となっており、将来性も大いに期待できる国と言えます。
また、トルコはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に次いで、21世紀有数の経済大国になる可能性を秘めているとされるNEXT11の一つとして扱われています。NEXT11にはトルコのほか、韓国やイラン、ナイジェリアやインドネシア、エジプトやフィリピンなどの国が含まれます。これらの国々と並び、トルコは広大な土地と資源を持つ、成長可能性の高い国なのです。
トルコリラの特徴
トルコリラの特徴は、高金利であることです。2020年4月時点での主要国の政策金利は、以下のとおりになっています。
国名 | 政策金利名 | 政策金利 |
---|---|---|
日本 | 日本銀行当座預金のうちの超過準備預金の金利 | -0.10% |
米国 | フェデラルファンド金利 | 0.00~0.25% |
欧州(ユーロ) | 中銀預金金利 | -0.50% |
英国 | 準備預金金利 | 0.25% |
豪州 | キャッシュレート | 0.50% |
ニュージーランド | オフィシャル・キャッシュレート | 0.25% |
スイス | SNB政策金利 | -0.75% |
南アフリカ | レポ金利 | 5.25% |
カナダ | 翌日物金利 | 1.25% |
トルコ | 1週間物レポレート | 9.75% |
この表からも分かるとおり、トルコの政策金利は、ほかの国の金利と比較しても突出して高いことが分かります。特に、2019年7月には19.75%の金利を掲げていました。2020年4月時点では10%以下まで引き下げられましたが、ほかの通貨と比較しても高金利であると言えます。
トルコは、長年にわたって高金利政策を続けています。FX取引においてトルコリラの通貨ペアを選んだ場合、金利差によって多額のスワップポイントを受け取ることができる、魅力ある通貨と言えるでしょう。
トルコリラ円の過去の推移
トルコリラのFX取引を行ううえでは、トルコリラ/円の過去の値動きの推移を把握しておくことが重要です。過去10年間のトルコリラ/円のレート(※年間の平均レート)は以下のとおりです。
年 | レート(1トルコリラ) |
---|---|
2011年 | 47.9742円 |
2012年 | 44.4373円 |
2013年 | 51.3400円 |
2014年 | 48.3955円 |
2015年 | 44.7113円 |
2016年 | 36.1153円 |
2017年 | 30.7732円 |
2018年 | 23.5225円 |
2019年 | 19.2412円 |
2020年(3月時点) | 16.9789円 |
このデータからも分かるとおり、2011年以降円高/トルコリラ安が継続されています。20年間で92%下落しており、長期的に見て売りのテクニカルが継続中です。
また、2019年4月から2020年3月におけるトルコリラ円のレートの推移は以下のとおりです。
年月 | レート(1トルコリラ) |
---|---|
2019年4月 | 19.4071円 |
2019年5月 | 18.1544円 |
2019年6月 | 18.5457円 |
2019年7月 | 19.0870円 |
2019年8月 | 18.9137円 |
2019年9月 | 18.8178円 |
2019年10月 | 18.6943円 |
2019年11月 | 18.9699円 |
2019年12月 | 18.6879円 |
2020年1月 | 18.4579円 |
2020年2月 | 18.1751円 |
2020年3月 | 16.9817円 |
2019年のトルコリラ/円は、緩やかな円高トルコリラ安であったことが分かります。中期的に見ても売りのトレンドが継続していることが分かります。
トルコリラの見通し(2021年4月)
トルコリラは10年近く前から長期的に値下がり傾向にあります。
これは最近の傾向でも変わりなく、最近だと周辺諸国との緊張状態が続いており、さらにアメリカとはバイデン米大統領に替わってからも関係性が好転していない状況で、かつてアメリカからの経済制裁によってトルコショックが起こったことからも周辺諸国との動きには目を見張らせておく必要があります。
トルコリラ投資をするうえで注意したいこと
トルコリラ/円のFX投資をする際には、今後起こる可能性のシナリオについて把握しておくことが大切です。トルコリラ投資をするときに注意しておくべきこととして以下のものが挙げられます。
トルコ経済破綻のリスク
トルコリラへの投資を行うときには、経済破綻のリスクに注意が必要です。トルコは、慢性的な財政赤字と経常赤字が続いています。海外から資金調達をしているうえにトルコリラ安が継続しているので、利子が膨れ上がっている状態となっているのです。
トルコの経常収支は以下のように推移しています。
年 | 経常収支 |
---|---|
2012年 | -470.96億ドル |
2013年 | -630.64億ドル |
2014年 | -430.61億ドル |
2015年 | -320.15億ドル |
2016年 | -330.14億ドル |
2017年 | -470.35億ドル |
2018年 | -270.25億ドル |
このとおり、経常収支は慢性的に赤字の状態となっており、このままの状態が続くと経済破綻の可能性もあるといわれています。赤字を補うためにはトルコリラの発行が必要ですが、すでにインフレが過熱しているのでさらなる金利の上昇が起きる可能性があります。その結果、トルコ経済がさらに悪化する恐れがあるので注意が必要です。
政治的リスク
トルコリラへの投資を行う場合には、政治的リスクにも注意が必要です。トルコと米国は、NATO加盟国として同盟の状態が続いています。しかし、2016年に発生したクーデターによる、アンドリューブランソン氏の解放をめぐって米国との関係が崩れています。
その結果、アブドゥルハミト・ギュル法務大臣とスレイマン・ソイル内務大臣の持っていた米国の資産が凍結されました。加えて、トルコからのアルミ製品や鉄鋼の関税が2倍に引き上げられています。そのため、米国との関係が改善されない場合には、トルコ経済は伸び悩む恐れがあるでしょう。
トルコは、地理的に中東諸国との問題も抱えています。首都のイスタンブールで起きたジャマル・カショギ氏殺害事件をきっかけに、サウジアラビアとの緊張状態が続いている状態です。現在では、サウジアラビアに加えて、UAEやエジプトとの対立軸もあり、予断が許されません。
国債格付けの問題
トルコリラのもう一つの懸念材料は国債格付けです。2020年3月時点における、主要国の国債格付けは以下のとおりとなっています。
国名 | S&P | フィッチ | ムーディーズ |
---|---|---|---|
日本 | A+ | A | A1 |
米国 | AA+ | AAA | Aaa |
英国 | AA | AA | Aa1 |
ドイツ | AAA | AAA | Aaa |
オーストラリア | AAA | AAA | Aaa |
フランス | AA | AA | Aa2 |
トルコ | BB | BBB | B1 |
S&Pの場合、格付がBBB-以上ならば投資適格債、BB+以下は投資不適格債とされます。また、フィッチの場合、BBB-以上ならば投資適格債、BB+以下は投資不適格債とされます。ムーディーズについては、Baa3以上ならば投資適格債、Ba1以下は投資不適格債とされます。
トルコ国債の格付けについては、信用力が低く投機的とみなされています。そのため、リスクの高い投資となっているのが現状です。格付けが低いということは、デフォルトになる可能性も高いということであり、急激な通貨変動が起こる可能性があることを頭に入れてFX取引を行う必要があるでしょう。
トルコリラが天国?
トルコリラは高金利からスワップポイントトレードでは天国と呼ばれていた時期がありました。
一時期には金利が19%を超えたこともありましたが、現在のトルコのエルドアン大統領は金利の引き上げを嫌う傾向があります。
特に2020年11月に新任したばかりの中央銀行総裁を金利引き上げ施策を掲げたことも原因で解任する施策も行うほどです。
そのため、今後は極端な高金利にはなりにくいのではないかと思われます。
条件別でFX会社を比較
初心者は最低取引単位で選ぶ
FXの最低取引単位は会社によって異なり、取引単位が小さいと少額で取引することができます。
例
- 1通貨(ドル/円)→資金100円
- 10000通貨(ドル/円)→資金45000円
少額取引ならリスクなく、FXの実践経験を積むことができます。
そこで、初心者の方には松井証券のFXをお勧めします。
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手数料(スプレッド)も業界最狭水準に設定されていて、FXを始める方におすすめです。
トルコリラのスワップポイント投資は可能?
トルコリラの通貨ペアでFX投資をしている人の中には、スワップポイント目的でエントリーしている人も多くいます。トルコリラは、ほかの通貨と比較してスワップポイントが高く設定されているからです。
2021年4月時点における、トルコリラ/円の通貨ペアのスワップポイントは以下のとおりです。
ヒロセ通商を利用した場合、1万通貨で1日3.6円、1年で1,314円の収益が可能です。レバレッジ1倍で投資する場合、年率は約14.6%と高い状態です。そのため、高レバレッジで投資を行う人もいます。しかし、トルコリラは、ほかの通貨に比べてリスクが高いので、注意して取引を行う必要があるでしょう。
スワップポイント投資はリスクがあるといえる3つの理由
トルコリラでスワップポイントの投資を行うときには、以下の3つのリスクに注意しなければなりません。
流動性が低いためファンドに狙われやすい
トルコリラは、米ドルやユーロなどに比べて流動性が低くなっています。そのため、ファンドが売りを仕掛けて個人投資家の買いポジションを狙ってくる可能性があります。
例えば2019年1月にはファンドの仕掛けによって、個人投資家が持っていた87億円相当のトルコリラ/円のポジションが溶かされています。このときには、トルコリラ/円のレートが一時的に9.2%下落しました。
トルコリラ/円のレートが下落している
トルコリラ/円のレートは、長期にわたって下がり続けています。そのため、スワップポイントで利益を得ても、レートのポジションによっては、利益分が相殺されてしまう恐れもあるので注意が必要です。
政策金利が下がる可能性がある
トルコの政策金利は、2020年4月の時点9.75%となっています。しかし、経済状況によっては政策金利が下がる可能性もあります。一例として、トルコの過去の10年の政策金利は以下のとおりです。
年月 | 政策金利 |
---|---|
2011年1月 | 6.25% |
2012年1月 | 5.75% |
2013年1月 | 5.50% |
2014年1月 | 10.00% |
2015年1月 | 7.50% |
2016年1月 | 7.50% |
2017年1月 | 8.00% |
2018年1月 | 8.00% |
2019年1月 | 24.00% |
2020年1月 | 10.75% |
トルコの政策金利は、2019年は24.0%あったものの、2020年には10.75%まで下がっています。経済状況によっては、さらなる金利の引き下げも考えられるでしょう。金利が下がれば、スワップポイントも少なくなるため、利益が得られなくなる可能性もあります。
スワップポイント投資をするなら低レバレッジで
トルコリラ/円でFX投資を行うならば、低レバレッジでエントリーすることをおすすめします。理由は、ロスカットのリスクを軽減できるからです。
例えば1トルコリラが20円のときにエントリーするとします。レバレッジ1倍の場合、トルコリラが0にならない限りロスカットは起こりません。レバレッジ2倍の場合、9円下がったときにロスカットが発生します。ただし、短時間でトルコリラは9円以上の暴落が起こることは考えにくいので安心と言えるでしょう。
しかし、高レバレッジになると状況は変わります。レバレッジ10倍の場合、1.8円下がるとロスカットとなります。レバレッジ25倍にした場合は、0.72円でロスカットです。トルコリラ/円については、2円程度の変動は起こりえます。そのため、1~3倍程度の低レバレッジでエントリーするのがよいでしょう。
ループイフダンで堅実に稼ぐ
ループイフダンとは、決められた値幅ごとに自動で注文を繰り返して、利益が出たところで決済する方法です。スワップポイントを利用することで安定的に稼ぐことができます。ループイフダンの方法を用いてエントリーすれば、円安トルコリラ高になったときは決済益で稼ぐことができるうえに、円高トルコリラ安になったときはスワップポイントで含み損を相殺できます。
ただし、ループイフダンにもリスクはあります。スワップポイントが低い場合は、すぐに含み損を相殺できなくなるでしょう。そのため、スワップポイントの大きさによってリスクの度合いが異なります。
まとめ
トルコリラの特徴は、スワップポイントの高さです。政策金利が高いので、ほかの通貨よりも高いスワップポイントを受け取ることが可能です。ただし、経済破綻のリスクや政治的リスクを抱えているため、ループイフダンなどで戦略的な投資をすることがおすすめです。
公式サイト
・株式会社フィンテラス(https://finteras.co.jp)
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1987年生まれ。明治大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修士課程修了後に、三井住友銀行に入行し、市場営業部門(東京本店)と香港支店にて為替ディーラー業務に従事。金融投資教育のWebメディア事業を運営する株式会社フィンテラスを設立し、代表取締役に就任。公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
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