ユーチューバーがアイドル的人気を誇る時代に、いち早く「投資系YouTuber」のジャンルを切り開いたのがJINさん。

おそらく、FXトレーダーならば、一度はJINさんのチャンネル「オレ的ゲーム速報 FX・株投資部」を覗いてみたことがあるだろう。再生回数の多い放送はだいたい「大損報告」なのだが、実は着実に資産を増やし続けている凄腕トレーダーだった。

JIN(@oreteki_douga)
サラリーマンを経験した後、フリーランスになり「オレ的ゲーム速報@刃」というまとめサイトをオープン。ユーチューブに進出した後、2016年からFX・株投資を本格化し、チャンネル「オレ的ゲーム速報JIN FX投資部」も開設。現在16万人のチャンネル登録者を抱える。なお、株はSBI証券、FXはGMOクリック証券、マネースクエアなどを愛用。
Twitter:@oreteki_douga

FXで1億円以上の利益をゲットした過去も

(画像=PIXTA)

――JINさんはユーチューバーですか?それとも投資家ですか?

ユーチューブのほうが“歴”は古いですね。2014年からやっているので。こう見えて私はちゃんとサラリーマンとして働いた経験があるのですが、退職して暇を持て余していた2005年に、趣味で“まとめサイト”を立ち上げたんです。「オレ的ゲーム速報@刃」という。それを4年ぐらいやっていたらジワジワと見てくれる人が増えてお金を稼げるようになった。

お金が稼げるようになったんで、海外旅行にも行っちゃたりして。そのときに気づいたんです。銀行の両替レートが高すぎるって。年末年始に海外に行くことが多かったんで、年末には円安が進みやすいってことにも気づいた。それで、「もっと有利なレートで米ドルを買う方法がないかな」と思ってたどり着いたのがFXだったんです。実際に取引を始めたのは2016年でした。

――ユーチューブでは、JINさんの「大損報告」が人気のようですが(笑)。ずっと負け続けているんですか?

それが最初はバカ勝ちだったんですよ。ちょうど米国大統領選挙がある年だったので、うまくトランプラリーに乗ることができた。年末は円安が進みやすいというアノマリーにも気づいていたので、大統領選の前にFX口座に5,000万円入れて米ドル/円を買ったら、3カ月で1,000万円の利益が出たんです。

それから1年でさらに4,000万円稼げて、2018年までFX資産は倍々で増えていきました。

――ザッと計算すると1億円以上の利益をあげた?

好調だったのはそこまでです。2018年には米中貿易戦争がはじまって世界的に株価が急落しました。為替市場では円高が進んだ影響で、2,900万円のロスカットを経験しました。その年の8月にはトルコリラが大暴落する「トルコショック」も食らって、今度はトルコリラ/円で300万円のロスカットを経験しました。

さらに、2019年1月には「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれる瞬間的な大暴落で急激に円高が進んで、ここでも2500万円の強制ロスカットを食らってしまいました。

――2018年以降、負けが込んでいますね。

FXに関してはそうですね。2019年のFX収支は約3000万円のマイナスで、昨年のコロナ相場でも一時8,000万円の含み損を抱えて死にそうになりました(笑)。昨年はトランプさんの再選を賭けた米国大統領選挙がありましたけど、アノマリー的に大統領選がある年は円安・ドル高が進みやすいんです。それなのに、コロナショックで3月頭に急激に円高が進んだ後、NYダウや日経平均に連動するように米ドル/円も急回復。そこからNYダウなどと同じようにドル高が進むと思ったら、大統領選なんて関係なくドル安(円高)が進んでしまいました。

私は米ドル/円の買いポジションを握りしめていたので、気が気がじゃなかった。年末に底打ちして今年2月にかけて米ドル/円が急上昇してくれたので、何とか8,000万円の含み損を、4,000万円の損切りで終わらすことができたんです。

買い続けた米国の半導体メーカーの株価は2倍以上に

――FX以外でもトレードしているんですか?

NYダウやナスダック、日経平均のCFD(差金決済取引)でも頻繁にトレードしていますね。ほかにも個別株や原油先物、金先物など、投資と名の付くものは何でも手を出してきました。「負けて覚える」が私の投資スタイルなので。ただ、原油は昨年の相場で凝りました。2020年4月に原油先物価格が史上初のマイナスに転落したじゃないですか?その直前に「ゼロにはならないんだから絶好の買い場」と1バレル=5ドルになったタイミングで買ったんです。

ところがその直後に先物価格はマイナスに転落……。私が使っていた原油CFDのシステム上の問題で、CFD価格はマイナスにならなかったため2ドル台で損切りすることができましたが、一瞬で数百万円のお金が溶けた。手痛い授業料でした。

――FX以外でも負けトレード続きのようですね。

いや、NYダウやナスダックのCFD、米国株では勝ち続けているんです。とくに個別の米国株のパフォーマンスがいい。昨年のユーチューブでも話しているように、半導体関連は絶対に上がると見て、米国半導体メーカーのエヌビディアやオランドのASMLホールディングなどを買っていったんです。リモートワークの普及でパソコン需要やAI(人工知能)、電気自動車分野での半導体需要が伸びるのは必至でしたから。

おまけに、コロナ禍にありながら世界的に急ピッチで景気回復が進んだので、半導体不足が顕著だった。これら半導体関連銘柄は買ってからすでに倍以上に値上がりしています。

――銘柄のスクリーニングはどのようにやっていますか?

伸びしろの大きなテーマに沿って銘柄を選ぶことが多いのですが、「業績が悪くて安値で放置されている知名度の高い銘柄」もコロナ相場では積極的に買っていきました。ウーバーやツイッター、バージン・ギャラクティックHDなどがその代表例。これらの銘柄はコロナショックもあって昨年前半まで20~30ドル台で買えたんです。あの超有名企業の株が20ドル程度で買えちゃうんですよ?

FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和によるコロナバブル相場が巻き起こったら、業績が悪い銘柄でも知名度が高ければ買われやすくなる。そう考えて大量に買い増していったら、いずれも2~3倍に値上がりしました。

――損切りや利確はどうしていますか?

私はアノマリーを重視しています。5月なら「Sell in May」の言葉どおり下げやすいし、「節分天井彼岸底」と呼ばれるように、日本の市場は2月に天井をつけて、3月のお彼岸の時期に安値をつけやすい。11月は翌月末のヘッジファンドの決算に合わせて売り物が出やすい一方で、それが一巡すると年末にかけて株高が進みやすいアノマリーがある。

直近で気をつけているのは8月。2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショックなど、8月には大きな下げが起こりやすい。例年8月を前に株の買いポジションを手舞うことが多くなっています。

テクニカルは200日移動平均線しか使わない

――テクニカル指標は使わないのですか?

昔はいろいろ使っていました。オシレーター系のMACDやボリンジャーバンド、一目均衡表とか。でも、本当に勝っている億トレーダーたちを見てください。みんな、テクニカルなんてチャートに表示していないんですよ。むしろ、“勝ったフリ”をしている偽トレーダーが適当な相場予想をするためにテクニカルを駆使しているケースのほうが多い。

デイトレードなどの短期間に売買を繰り返すスタイルならテクニカルが有効なのかもしれませんが、何カ月もポジションを持つこともあるスウィングトレーダーならテクニカルは、200日移動平均線1つあれば十分です。

――最後に初心者にアドバイスをお願いします。

私がアドバイスできる立場にあるのかわかりませんが、自信を持って言えるのは「負けたらちゃんと反省する」こと。私は動画を撮りながら反省しているからこそ、次のトレードに失敗が生かされているように感じています。損切りせずに放置するなどの失敗を繰り返すことも多いのですが、それでもFXや株のトータルの収支はここ5年で6000万円近くのプラスなんです。あんまりプラスだと宣伝すると、なぜかユーチューブの再生回数が伸びないので「大損報告」がメインになっていますが(苦笑)。

あとは、配当やFXのスワップ狙いの投資はやめたほうがいい。これはトルコリラで痛い目を見た私の教訓です。高い配当と高い金利にはそれ以上のリスクがある。ラクして配当・金利収入を得る投資法なんてない、と知っておいたほうがいいでしょう。